【完結】豚公爵様は、実はスパダリ?!~ただ一緒に居ただけの没落令嬢な私が、何故か溺愛されています~

ゆきのこ

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本編

貴女の様な没落令嬢が・・・

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ついにやって来てしまった舞踏会の日ーーー。

数年ぶりにドレスに袖を通し、侍女に身支度をして貰い、アクセサリーを身に着けた私は・・・浮き足立ってしまっていた。

今の自分には・・・どれもこれも分不相応な高級品ばかりだけど、アレコレ考えるのは止めて、一夜だけエドマンドに甘えて魔法にかけて頂く事としたのだ。

「どう・・・かしら?」

「勿論、とっても似合っているよ?」

俯きがちにエドマンドに一応お決まりの質問をしてみれば・・・、蕩けそうな笑顔でそう返されてしまい、まだ会場に入ってすら居ないのにノックダウンしてしまいそうになった。

そのまま、エドマンドに促され腕に手を回すと・・・今日の舞踏会の為に敷かれた大きなレッドカーペットの上を歩きながら、会場である講堂へと向かう。

ふと横を見上げれば、隣には・・・一際目立つ光沢の有る黒い燕尾服に身を包み、いつもはおろしている流れる様にサラサラな髪をハーフアップで整えたエドマンドの姿が映る。

(かっこ良い~!いつもに増してかっこよく見えるわ!!)

直視出来ない程にかっこよくなってしまったエドマンドからは・・・何なら色気すら感じる。

(そしてご令嬢方の刺すような視線も・・・感じる。)

これはもう覚悟していた事だが・・・
それでも何処からとも無くチクリチクリと感じるこの視線に・・・何も感じないかと聞かれれば答えはノーである。

「フレイ?どうかした?」

「いや・・・やっぱり、エドの相手が私で良いのかと心配になっちゃって・・・ほら、綺麗なご令嬢が沢山いらっしゃるから・・・」

そう・・・いくら侍女に綺麗にして貰ったと言えど、所詮は付け焼き刃の美しさなのだ。
日々、自分を美しく見せる為に時間とお金を費やしている貴族のご令嬢方と肩を並べると・・・やはり私は見劣りしてしまうのが、悲しいが現実だ。

(絶対に思われてるよな~!何でエドの隣があんな女なの?!って、全然釣り合ってないわよ!って・・・)

自分でも分かっているだけに・・・そこを突かれてしまうとぐうの音も出ないのだ。
出来れば面と向かっては言われないで済むように、何とか回避したい。

「フレイが一番可愛いと僕は思うけど・・・?」

「・・・っ!!!あ、有難う。お世辞でも嬉しいわ。」

「お世辞でそんな事言わないよ!本当に思ってなきゃ言う意味無いじゃないか。」

(誰か・・・!助けて・・・!死んじゃう!!私の心臓が破裂して死んじゃうからぁぁ!!!)



ほどなくして舞踏会の会場へ着いた私はーー・・・、

隣に居るエドマンドに夢中でご令嬢方の視線などすっかり忘れてしまっていた。



「フレイ凄いね・・・!6年振りとは思えぬ程、上手だったよ?」

「ふふ、エドのリードが上手なだけよ・・・?」

早速1曲ほどダンスを踊った私達は、踊り場から少し離れるとシャンパンで小さく乾杯をした。

没落してからダンスの練習など勿論していないし、そもそも没落する前から私はダンスのセンスだけは皆無らしく・・・先生から匙を投げられた事も1回や2回では無いレベルなのだ。

(ベルダに付き合って貰って、こっそり練習しといて良かった~!とりあえず、何とかステップを間違えずには済んだわ・・・。)

とは言え・・・昔と変わらずエドマンドのリードが完璧以上だったから何とかなった話てある。
相手がエドマンドじゃなかったら・・・きっと笑い者にされてしまっていた事でしょう。
もしくは、足を踏みまくって殿方が怒って帰ってしまっていたかも・・・?

「フレイ、少しだけ此処で待てる?僕・・・軽食を取って来るよ。」

「え?私が行ってくるわよ?どんな物が良いー」

「駄目。今日はエスコートを引き受けたんだから・・・全部任せて。」

メイドとして主人に物を取ってきて貰うなど言語道断で有るので、私が行こうとしたのだが・・・口元に人差し指を当てて来たエドマンドが顔を近付けてそう言って来たものだから・・・ドキドキし過ぎて身動きが取れなくなってしまい・・・

結局、イタズラっ子の様な笑みを浮かべたエドマンドの後ろ姿を見送る事となってしまった。

(エドの奴ぅぅぅ!!絶対に確信犯だーーー!!!)

顔の熱を少しでも冷まそうと手で顔を仰ぎながら、小さく息を吐いたその時だった。



「ーーーきゃっ?!」



冷たいという感覚に襲われて思わず悲鳴にも似た声を小さく上げてしまう。

ぽたぽたと落ちる雫を感じて・・・ああ、私は水を掛けられたんだと頭がようやく理解をした。

「フレイヤ・ハンメルン様?ーーーここは、貴女の様な没落令嬢が来るような所では無くてよ?」

私に水を掛けたであろうご令嬢は・・・私を睨みながらも口角だけは上げながらそう吐き捨てる様に言ってきた。

「女子寮に部屋を持っているもんだから・・・何処ぞの貧乏地方貴族かと思っていたら、貴族でも無かったんだもの・・・。驚いたわぁ?」

複数のご令嬢達の高笑いが聞こえるーーー。

すぐ近くで起こっている現実の事の筈なのに・・・俯瞰している自分が居た。

あぁー・・・ついにバレてしまったのか。とか、
折角のドレスが濡れちゃった。とか、
何でこんな事されなきゃ・・・。とか、
色んな感情が津波の様に押し寄せて来て、目頭が熱くなって来てしまう。

そのまま俯いて泣き崩れれば・・・周りの同情を引けるかもしれないが、令嬢達の思うツボであると思うと・・・涙は引っ込んだ。

(泣くもんか・・・!泣いてたまるか・・・!!)

顔を上げてご令嬢を睨み返してやると、私の反応が予想外だったのか少し彼女達も狼狽えた様子だ。



「ーーー何の騒ぎ?」



ナイスタイミングと言うべきか・・・最悪のタイミングと言うべきか・・・
軽食をいくつか乗せた皿を両手に持ったエドマンドが驚いた様子で立っていた。
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