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本編

もしかして・・・私?

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「フレイは・・・変わらないね。昔のまんまだ・・・。」

「私から言わせれば・・・エドも変わってないわよ?まぁ、女性の扱いには少し慣れている様だけど?」

私の言葉を聞いたエドマンドが「ぷっ」と吹き出したかと思えば・・・そのまま笑い出してしまう。
嫌味を言ったつもりの私は・・・心底可笑しそうに笑うエドマンドに怪訝そうな顔を向けてしまっていた。

「そんな訳無いだろう?!僕は変わったよ・・・!現に僕が〝豚公爵〟だと誰も気付かないじゃないか・・・。」

「・・・・・・?ーーー私は、6年前からエドの顔は整っている方だと思っていたけど?」

少し・・・いや、かなり?体が大きめであった事は事実だが・・・顔だけで言うと非常に整った目鼻立ちをしていたのだ。

(実際、痩せたらご令嬢方が放っておかないんだもの・・・。私と違って元が良かったって事よね、)

「・・・・・・!!でも、今の僕の方が格好良いよね?今の僕の方がフレイも嬉しいよね・・・?」

「え?別に・・・?見た目が変わって嬉しいとか悲しいとか・・・そんな感情は無いけれど・・・?」

確かに・・・再会した時はエドマンドだと分からないその変貌ぶりに、驚きはしたけれど・・・。
嬉しいという感情も、悲しいという感情も特に無かった。

それよりもーーー

「見た目云々よりも・・・エドが変わらず接してくれた事の方が・・・とても嬉しかったわ?」

「有り難う」と言葉を続けたかったのだが・・・エドマンドの顔を見てみれば、
もうそれはそれは真っ赤に染まってしまっており・・・思わず私まで驚いて言葉を失う程だった。

「だ、大丈夫・・・?エド・・・どうしたの・・・?」

「ふ、フレイのせいだよ・・・!何で分からないの・・・?!鈍すぎ・・・!!」

心配して覗き込む様にそう声を掛けると・・・恥ずかしいのか、エドマンドは手で顔を隠しながら、私にそう言い放った。

(え・・・私ってーーー鈍いの・・・?!)

地味にショックだったその言葉に打ち拉がれていた私は・・・顔を俯かせたまま一人で考え込んでしまっていた。



(・・・ん?待てよ・・・)



公爵様と爺やの態度といい・・・

舞踏会のエスコートに・・・

謎のキス・・・


あれ?
そう言えば・・・舞踏会終わりのキスってーーー
確か意味が有ったような・・・?

・・・そうだ!

手の甲なら・・・〝今日は楽しかった。〟

額や頬なら・・・〝またエスコートしたいです。〟

唇なら・・・〝自分以外のエスコートは受けないで〟だ。

これは、言わばエスコートの永久指名みたいなもので、
最上の愛情表情とも巷では言われていた。


(・・・ん?あれ・・・?ーーーって事は??)





(もしかしてーーー・・・エドの想い人って・・・私なんじゃ・・・?!)





その予感を確かめるかの様に・・・今までエドマンドが自分にして来た数々の行動に想いを巡らせてみれば・・・
予感は確信へと、どんどん変わっていった。

(いやいやいや・・・!でも、私が都合良く考えているだけかもしれないわ・・・!)

こんな都合の良い話が私の身に起きる訳が無い・・・!と没落令嬢ならではの発想が私に少しばかりの冷静さを取り戻させたが・・・。

それでも頬は赤く染まり、鼓動は早まってしまう。
何だか恥ずかしくなってしまい・・・、今度は私がエドマンドの方を振り返る事が出来なくなってしまった。

そんな私の気持ちを知ってか・・・
背後から優しく包む様に抱き締めて来たエドマンドに・・・一気に熱が上がり、心臓が跳ね上がってしまう。



「フレイ・・・もしかして・・・やっと、気付いてくれたの・・・?」

「ひょぇ・・・?!な、何の事かしら・・・?わわわ、私はただ・・・考え事をしていただけよ・・・?!」

耳元で色っぽく囁くエドマンドの声にもう頭も目もグルグル状態の私は・・・必死に誤魔化してはみたものの・・・苦しく、口からデマカセで誤魔化したのがバレバレだ。

「僕の想い人だよ・・・。気付いたんでしょ・・・?」

「ひっ、卑怯よ・・・!私に言わせようとしているでしょ・・・?!!」

私からの告白を遠回しに強請るかの様なその言い回しに・・・もう頭がしっちゃかめっちゃかの私は・・・逃れたくてそんな事を言ってしまった。

告白に卑怯もクソも無いのは重々承知の上だが・・・
このやり取りから、とにかく逃れたい一心で出てしまった言葉だった。



「・・・・・・・!!!」



勢いよく横を向いた私は・・・エドマンドと顔の距離が驚く程近くなってしまい、鼻先が当たってしまっていた。
まるでキスしそうなその距離感に・・・前回の記憶も相まって・・・もうドキドキし過ぎて心臓が破けそうになってしまう。

「フレイ・・・?」

そう言いながら近付いてくるエドマンドの顔と、私の頬に添えられたエドマンドの手の感触に・・・抗えない私は瞳を閉じてしまう。


(キ、キスされるーーー!)


そう身構えたものの・・・いつまで経っても唇には何の感触も降ってこない。

(ん?あれ・・・?)

堪らず目を開けると・・・エドマンドは近くには居るものの、いつもの距離感で目の前に居た。

「・・・あ、ごめん。咄嗟につい・・・確認したくなってしまって・・・。」

「え・・・。」

「いや・・・キスだよ。僕の気持ちにあの時はまだ気付いて無かったって事だから・・・嫌だったんじゃ無いかと心配になって・・・」

「・・・・・・っ!!!」

まるでキスを望んでいるかの如く、目を閉じて何なら唇も少し尖らせていたかもしれない自分の姿を客観的に想像してしまった私は、頭から湯気が出る勢いで顔を赤く染め上げてしまった。

背後でエドマンドが必死に謝罪の言葉を繰り返しているが・・・もう、恥ずかしさの余り何も耳に入らない・・・。というか、聞きたくない私は、顔を両手で覆ったまま身動きが出来なくなってしまう。

(ううう・・・恥ずかしい。でも・・・公爵様と爺やが戻って来てしまう前に、エドと話をしないと・・・!)

「「・・・・・・・。」」

私が何を言っても反応しない為か、エドマンドも気付けば俯いてしまっており沈黙が続いてしまっていた。

(今よ!今なのよ!!今頑張らねば・・・いつ頑張るの!フレイヤ!)

「フレイ・・・。本当にごめん・・・。僕、・・・6年前の別れ際に伝えた言葉で告白したつもりになっちゃってて・・・。」

私が自分で自分を鼓舞していると、意気地なしの私なんかよりも先に口火を切ったエドマンドが控えめにそう呟いた・・・。

(6年前の・・・別れ際ーー・・・??)

エドマンドからそう言われた私は、何とか6年前のエドマンドとの別れの日の記憶を掘り起こした。




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