【完結】豚公爵様は、実はスパダリ?!~ただ一緒に居ただけの没落令嬢な私が、何故か溺愛されています~

ゆきのこ

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本編

王立学園へ

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爺やが我が家へやって来た翌日の早朝ーーー。
私は、ハイネス公爵家の馬車で早速、王立学園へと旅立つ事となった。

「お前は幼い頃より気立ての良い娘だったからな、ハイネス公爵様の元でもきっと大丈夫だ。しっかりやりなさい。」

「フレイヤ・・・くれぐれも体には気を付けるのよ?お手紙を待っているわね・・・」

「お父様もお母様も・・・今生の別れではありませんよ?休暇を頂けたら、また帰って来ますから・・・」

涙を流しながら見送る両親を少しでも励まそうと虚勢を張ってみるが、そう言う私の瞳にも涙が浮かんで来てしまう。

この16年間ーーー・・・本当に色んな事が有った。

正直・・・楽しい事ばかりでは無かった。苦しい事の方が多かったと思う。
ただ、どんな状況に陥っても変わらず愛情を注ぎ続けてくれた両親には・・・本当に感謝しか無い。
そんな両親と産まれて初めて離れ離れになるのだから、悲しい訳が無いし寂しい訳が無かった。

「フレイヤ・・・学園できっと私の事を聞かれる事が多々有ると思うから・・・きちんと私が独身で誰のものにもなっていないと伝えて頂戴よ?」

「わ、わかりました・・・お姉様。万が一、聞かれた場合は答えておきますね。」

相変わらず過ぎるお姉様に『寧ろ笑かそうとしているのか?!』と言う疑問すら浮かんで来たが、
本人は至極真剣らしいので・・・笑っては失礼だと思い、グッと口許に力を入れて閉じた。

「フレイヤ様・・・そろそろお時間で御座います。」

昨日と同様、上から下まで高級服に身を包んだ爺やがそっと私に耳打ちした。

私はハイネス公爵家のメイドとして雇い入れて貰ったのだから、爺やは上司になった訳で・・・
だからこそケジメは大事だと思い、以前の様に接して頂かなくて大丈夫だと、他のメイドと同じ様に接してくれ!と散々お願いしたのだがーーー・・・

ご覧の有り様である。

私がジロリと睨みをきかせても全く動じない様子の爺やに・・・最早、何を言っても無駄だと思った私は小さな溜息をついて諦めた。

「では・・・行って参りますね!!」

そう告げて馬車へ乗り込んだ私はーーー、
家族の姿が見えなくなる迄、窓から精一杯手を振り続けた。















「フレイヤ様・・・、泣いても宜しいのですよ?」

とうとう姿が見えなくなってしまい、馬車の窓を閉めてソファへと深く腰掛けた私に爺やが優しく言葉を掛けてくれた。

「泣かないわ・・・!と言うか、泣く必要が無いもの?こんな恵まれている没落令嬢、他にいる?!私はとても恵まれているんだから・・・。」

そう、恵まれ過ぎているのだ・・・私は。

家を探し出して、わざわざ迎えに来て貰い・・・
メイドとして雇い入れて貰えるだけでも光栄なお家なのに・・・私の様に何の才も無い小娘に破格の給金を用意してくれた。
王立学園へと通える様に手筈を整えてくれて、おまけに私の学費の面倒まで見れくれると言うのだから・・・。

ただの幼なじみというだけの私なんかの為に・・・、

(泣いている暇なんて無いわ・・・!全身全霊をかけてエドにお仕えしなくては・・・!)

「変わりませんねぇ・・・フレイヤ様は。坊っちゃまもさぞかし、お喜びになるでしょう・・・」

薄っすらと涙を光らせている爺やは、真っ白のハンカチで目元を押えながらそう呟く。

「そうかしら・・・?ガッカリしてしまわないか、私は心配だわ。」

寧ろ、絶対にガッカリされると思っている・・・。

だってエドマンドの記憶の中の私は・・・新作の美しいドレスをいつも身に纏い、メイド達に全身の手入れをされて居た頃の私だ。
今は・・・手は水仕事でガサガサだし、髪もキシキシだし、肌だってしっとりスベスベとは程遠い・・・。

冷静に自己分析をすればする程・・・エドマンドと再会するのが怖くなってしまう始末だ。

「でも・・・エドは、人を外見だけで判断する様な人じゃ無かったもの・・・。きっと、変わってないって信じているわ。」

「・・・・・・。」

私の言葉に明後日の方向を眺め出した爺やに・・・少し違和感を覚えたが、その違和感の正体に心当たりが有った私は慌てて訂正した。

「嫌だ!私ったら・・・とんだ失礼を・・・!〝エドマンド〟よね!」

メイドとして雇われている分際で、主人を略称呼びなんてあり得ない失態である。
思わず、顔を赤くして恥ずかしさの余り俯いていると・・・爺やの笑い声が聞こえて来た。

「ほっほっほっ!フレイヤ様、お勤めは明日からですぞ?どうか・・・昔の様に呼んであげて下さいませ。」

「ま、まぁ!エドマンド様がお望みになられるので有ればね・・・!」

私をまるで子供の時と同じ様に扱う爺やに、少し反抗したい気持ちもあり・・・ツーンとそっぽを向いてしまった。



「いえ・・・!この爺が一緒にいる時は、必ず〝エド〟と呼んで下さいませ!!!」



そっぽを向いた私の正面へと爺やが凄い勢いで、おまけに眼前まで来たものだから・・・
驚きの余り、思わず何度も頷いてしまった。

「これで爺の寿命も少しは延びました・・・。有難う御座います、フレイヤ様。」

(そ、そんな大袈裟な・・・。)

向かいのソファへと座り直した爺やに満面の笑みでお礼を言われた私は・・・
色々と腑に落ちなかったが、あの鉄壁の笑みを崩す自信も無かったので、一先ずこのお願いを聞き届ける事とした。

「あら?止まってしまったけれど・・・」

「どうやら学園内の敷地に入った様ですな。」

そう爺やから聞いた私は、咄嗟に馬車の窓を開けて外の景色を確認した。
止まっていた馬車は門番の許可が降りたのか、ゆっくりと進み出す。

(うわあああ!凄い・・・!いつか見た王宮の様だわ・・・!!!)

それはかつての私がエドにエスコートして貰って行った・・・舞踏会会場である王宮と見間違う程の立派な建物だった。
王都に来る事自体が、数年ぶりの私にとって・・・この学園は正に夢の様な場所なので、窓の外から視線が外せなくなってしまった。



暫くしてーーー・・・
馬車が完全に停止し、爺やに誘われるがまま馬車から降りた私は・・・
とうとう王立学園へと足を踏み入れたのだった。



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