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本編
私は気にしないわ?
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「はい、お水を頂いて来たんだけどーー・・・飲める?エド・・・」
「有り難う・・・フレイ。頂くよ」
誰も居ないバルコニーで外の風に暫く当たっていたエドマンドは、ようやく落ち着きを取り戻した様子だ。
私が渡したお水を一気に飲み干すと・・・少し顔色も良くなって来た気がする。
「本当にごめんね・・・フレイ・・・。僕のせいで初めての舞踏会だって言うのに、台無しだよね・・・」
「エドが謝る事じゃ無いわ?それに、エドは何も悪く無いし・・・どう考えたってお姉様が悪いわよ!」
本心からそう伝えるが、自分を励ます為の社交辞令だと思ってしまっているエドマンドは、困り笑いを浮かべている。
「マチルダ嬢の言っている事は正しいよ・・・。僕が太っていて醜いのは事実だから。陰で〝豚公爵〟だなんてあだ名まで付けられちゃってさ・・・。本当に情けないよ・・・。」
「エド・・・」
涙を浮かべながら自嘲気味に言い放ったその言葉は・・・とても痛々しくて、何と言葉を掛けてあげたら良いのか分からず・・・名前を囁く事しか出来なかった。
暫く沈黙が続き、星空を眺めていると・・・会場からワルツの音楽が聞こえ始めた。
バルコニーという事もあり、音は微かにしか聞こえないが・・・二人きりのこの静かなバルコニーで踊るには十分だった。
「エド・・・折角だから、一曲お相手して下さらない?」
「僕の様な・・・醜い豚男なんかと踊っても楽しく無いよ・・・?」
差し伸べた私の手をチラリと見ると、すぐに俯いて顔を手で覆い隠してしまうエドマンド。
「エド・・・貴方がどうかは知らないけれど、私は貴方の見た目を気にした事なんて無いわ?」
「フレイは・・・優しいから・・・」
俯きながら弱々しくポツリと囁くエドマンドの言葉に・・・まだ私の言っている事が社交辞令だと思い込んでいる事が伺えてしまい、思わず強めの口調で反論してしまう。
「違う!優しくなんて無い!・・・エド、貴方が見た目なんか気にさせない位、内面が魅力的な男性だからよ?それに、見た目で言うのなら・・・私だってそんな綺麗では無いわ?」
「そんな!フレイは・・・とても綺麗で今日だって、注目を集めていたじゃ無いか・・・!」
「あれは、この珍しいドレスを見ていただけよ!お姉様だって・・・いつも着ているドレスに注目が集まっているだけなのに、いつの間にか自分が美人だと勘違いを拗らせて・・・あんな阿呆になってしまって・・・。」
お父様が誂えて下さるドレスは、いつも珍しく新しいデザインや素材の物ばかりで・・・
茶会等では私達は囲まれる側の人間で、いつも注目の的だった。
そして、数回ほどエスコートを受けて舞踏会やパーティーに出席した姉は、とうとう勘違いをしてしまったらしいのだ。
「とにかく!私はエドと踊りたいの!!!」
何だか言葉を連ねるのが面倒に思えて来てしまった私は、両頬に空気を詰めて膨らませるとエドマンドを睨みあげた。
そんな私の顔を見て、エドマンドの顔からようやく笑みが溢れる。
「ぷっ・・・!分かったから・・・そんな顔しないでよ~!」
「エドがさっさと踊らないからでしょ!散々、焦らしといて・・・!」
私が改めて差し出した手を取り、エドマンドが優しく私の手の甲に口付けを落とすと・・・ダンスが自然と始まる。
エドマンドのダンスリードが非常に上手だった為、ダンスの先生にセンスが無いと何度も匙を投げられてしまっていた私でも、楽しく踊る事が出来た。
「有り難う・・・フレイ・・・。」
「こちらこそ・・・!」
二人きりのバルコニーでそのまま何曲も自由気ままに踊っていた私達を、夜空が照らしていた。
そして、これが・・・私にとって最初で最後の舞踏会となったーーー。
「有り難う・・・フレイ。頂くよ」
誰も居ないバルコニーで外の風に暫く当たっていたエドマンドは、ようやく落ち着きを取り戻した様子だ。
私が渡したお水を一気に飲み干すと・・・少し顔色も良くなって来た気がする。
「本当にごめんね・・・フレイ・・・。僕のせいで初めての舞踏会だって言うのに、台無しだよね・・・」
「エドが謝る事じゃ無いわ?それに、エドは何も悪く無いし・・・どう考えたってお姉様が悪いわよ!」
本心からそう伝えるが、自分を励ます為の社交辞令だと思ってしまっているエドマンドは、困り笑いを浮かべている。
「マチルダ嬢の言っている事は正しいよ・・・。僕が太っていて醜いのは事実だから。陰で〝豚公爵〟だなんてあだ名まで付けられちゃってさ・・・。本当に情けないよ・・・。」
「エド・・・」
涙を浮かべながら自嘲気味に言い放ったその言葉は・・・とても痛々しくて、何と言葉を掛けてあげたら良いのか分からず・・・名前を囁く事しか出来なかった。
暫く沈黙が続き、星空を眺めていると・・・会場からワルツの音楽が聞こえ始めた。
バルコニーという事もあり、音は微かにしか聞こえないが・・・二人きりのこの静かなバルコニーで踊るには十分だった。
「エド・・・折角だから、一曲お相手して下さらない?」
「僕の様な・・・醜い豚男なんかと踊っても楽しく無いよ・・・?」
差し伸べた私の手をチラリと見ると、すぐに俯いて顔を手で覆い隠してしまうエドマンド。
「エド・・・貴方がどうかは知らないけれど、私は貴方の見た目を気にした事なんて無いわ?」
「フレイは・・・優しいから・・・」
俯きながら弱々しくポツリと囁くエドマンドの言葉に・・・まだ私の言っている事が社交辞令だと思い込んでいる事が伺えてしまい、思わず強めの口調で反論してしまう。
「違う!優しくなんて無い!・・・エド、貴方が見た目なんか気にさせない位、内面が魅力的な男性だからよ?それに、見た目で言うのなら・・・私だってそんな綺麗では無いわ?」
「そんな!フレイは・・・とても綺麗で今日だって、注目を集めていたじゃ無いか・・・!」
「あれは、この珍しいドレスを見ていただけよ!お姉様だって・・・いつも着ているドレスに注目が集まっているだけなのに、いつの間にか自分が美人だと勘違いを拗らせて・・・あんな阿呆になってしまって・・・。」
お父様が誂えて下さるドレスは、いつも珍しく新しいデザインや素材の物ばかりで・・・
茶会等では私達は囲まれる側の人間で、いつも注目の的だった。
そして、数回ほどエスコートを受けて舞踏会やパーティーに出席した姉は、とうとう勘違いをしてしまったらしいのだ。
「とにかく!私はエドと踊りたいの!!!」
何だか言葉を連ねるのが面倒に思えて来てしまった私は、両頬に空気を詰めて膨らませるとエドマンドを睨みあげた。
そんな私の顔を見て、エドマンドの顔からようやく笑みが溢れる。
「ぷっ・・・!分かったから・・・そんな顔しないでよ~!」
「エドがさっさと踊らないからでしょ!散々、焦らしといて・・・!」
私が改めて差し出した手を取り、エドマンドが優しく私の手の甲に口付けを落とすと・・・ダンスが自然と始まる。
エドマンドのダンスリードが非常に上手だった為、ダンスの先生にセンスが無いと何度も匙を投げられてしまっていた私でも、楽しく踊る事が出来た。
「有り難う・・・フレイ・・・。」
「こちらこそ・・・!」
二人きりのバルコニーでそのまま何曲も自由気ままに踊っていた私達を、夜空が照らしていた。
そして、これが・・・私にとって最初で最後の舞踏会となったーーー。
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