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本編
くすぐったい空間
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「ーーーっという訳で、私が一緒に行く事になったの!宜しくお願いね?エド!」
「父上から〝マチルダ嬢宛にエスコートの申し出をした〟と聞いた時はどうなる事かと思ったけれど・・・フレイなら安心だよ。こちらこそ宜しくね?」
ハイネス公爵邸へとエスコートの申し出の返事をしにお父様とやって来た私は、勝手知ったるエドマンドのお部屋でいつものお喋りを楽しんでいた。
幼なじみである私達は互いに略称呼びで〝エド〟〝フレイ〟と呼び合っている。
「僕・・・こういう大きなパーティーは初めてで、きっとフレイに迷惑をかけると思うけど・・・。」
俯いて意地らしく指をくるくるとしているエドマンドに、思わず背中を軽く叩いて喝を入れる。
「何言ってるの!エドがしっかりエスコートしてくれなくちゃ!それに、茶会だけなら私も場数を踏んでいるし、2人で力を合わせれば大丈夫よ!」
「う、うん・・・。」
尚、不安そうなエドマンドの様子に少し違和感を感じてはいたが・・・舞踏会を翌日に控えていた為、それ以上深くは聞かなかった。
「明日、とっても楽しみね?エド!」
「うん・・・そうだね・・・フレイ。」
歯切れの悪いエドマンドの答えを聞いた所でメイドからお呼びがかかり、私は帰宅する事となってしまった。
「お父様・・・このドレスを、私に・・・?」
帰宅して早々、お父様に呼ばれて書斎を訪ねると・・・私の為に誂えて下さったというドレスがマネキン人形に着せられていた。
私はお姉様のようにドレスに目がないという訳では無いが・・・そんな私でも目を輝かせてしまう程に素敵なドレスは、
お父様の経営するお店にも並べた事のない珍しい島国のドレスらしく、リボン等の大きな装飾は一つも無いが、キラキラと輝く小さな石が散りばめられていて・・・とても美しく輝いている。
色は私の年齢では先ず着ないスカイブルーのお色味のドレスだったが、私が着ても違和感のないパステル調に仕上げられており・・・
要約すると・・・とても人目を集める新作ドレスだった。
「お前の舞踏会デビューだ。これ位のドレスで無くてはな!」
「でも・・・お姉様にお小言を頂いてしまいそうですわ・・・。」
とにかく目立ちたがり屋の姉は、私がこんな素敵なドレスを着る事をきっと許さないだろう・・・。
何より、同じ舞踏会に参加すると聞いている手前、非常に面倒くさい事に発展してしまいそうだ。
「マチルダにも納得のいくドレスを用意しているから、心配しなくて良い。楽しんで来なさい。」
お父様の優しい笑顔に嬉しくなった私は、少し不安因子を残しつつも・・・この素敵なドレスを素直に受け取る事とした。
「有り難うございます・・・!お父様・・・!」
そして迎えた舞踏会当日の夕刻ーーー・・・
「どうかな?エド・・・」
お迎えに来てくれたエドマンドにとっておきのドレスと一応、綺麗に身支度した自分の姿をゆっくり回って見せてみる。
「え・・・あ・・・。」
顔を赤くしながら目を見開いているエドマンドは、恐らく悪くは思っていないという事位は推測出来るが・・・
どう思っているのかきちんと口にして欲しい私は、じぃぃっとエドマンドの言葉を待つ。
「か、か、可愛いよ・・・フレイ。」
益々赤くなるエドマンドの熱が移ってしまったのか・・・聞いた私まで顔が赤くなる感覚に襲われてしまった。
「あ、あ、ありがとう・・・エド。」
何だかくすぐったい様な、恥ずかしい様な、心地良い様な・・・産まれて初めて味わう空間に戸惑いながらも私達二人は馬車へと乗り込み、舞踏会の会場である王宮へと向かった。
「父上から〝マチルダ嬢宛にエスコートの申し出をした〟と聞いた時はどうなる事かと思ったけれど・・・フレイなら安心だよ。こちらこそ宜しくね?」
ハイネス公爵邸へとエスコートの申し出の返事をしにお父様とやって来た私は、勝手知ったるエドマンドのお部屋でいつものお喋りを楽しんでいた。
幼なじみである私達は互いに略称呼びで〝エド〟〝フレイ〟と呼び合っている。
「僕・・・こういう大きなパーティーは初めてで、きっとフレイに迷惑をかけると思うけど・・・。」
俯いて意地らしく指をくるくるとしているエドマンドに、思わず背中を軽く叩いて喝を入れる。
「何言ってるの!エドがしっかりエスコートしてくれなくちゃ!それに、茶会だけなら私も場数を踏んでいるし、2人で力を合わせれば大丈夫よ!」
「う、うん・・・。」
尚、不安そうなエドマンドの様子に少し違和感を感じてはいたが・・・舞踏会を翌日に控えていた為、それ以上深くは聞かなかった。
「明日、とっても楽しみね?エド!」
「うん・・・そうだね・・・フレイ。」
歯切れの悪いエドマンドの答えを聞いた所でメイドからお呼びがかかり、私は帰宅する事となってしまった。
「お父様・・・このドレスを、私に・・・?」
帰宅して早々、お父様に呼ばれて書斎を訪ねると・・・私の為に誂えて下さったというドレスがマネキン人形に着せられていた。
私はお姉様のようにドレスに目がないという訳では無いが・・・そんな私でも目を輝かせてしまう程に素敵なドレスは、
お父様の経営するお店にも並べた事のない珍しい島国のドレスらしく、リボン等の大きな装飾は一つも無いが、キラキラと輝く小さな石が散りばめられていて・・・とても美しく輝いている。
色は私の年齢では先ず着ないスカイブルーのお色味のドレスだったが、私が着ても違和感のないパステル調に仕上げられており・・・
要約すると・・・とても人目を集める新作ドレスだった。
「お前の舞踏会デビューだ。これ位のドレスで無くてはな!」
「でも・・・お姉様にお小言を頂いてしまいそうですわ・・・。」
とにかく目立ちたがり屋の姉は、私がこんな素敵なドレスを着る事をきっと許さないだろう・・・。
何より、同じ舞踏会に参加すると聞いている手前、非常に面倒くさい事に発展してしまいそうだ。
「マチルダにも納得のいくドレスを用意しているから、心配しなくて良い。楽しんで来なさい。」
お父様の優しい笑顔に嬉しくなった私は、少し不安因子を残しつつも・・・この素敵なドレスを素直に受け取る事とした。
「有り難うございます・・・!お父様・・・!」
そして迎えた舞踏会当日の夕刻ーーー・・・
「どうかな?エド・・・」
お迎えに来てくれたエドマンドにとっておきのドレスと一応、綺麗に身支度した自分の姿をゆっくり回って見せてみる。
「え・・・あ・・・。」
顔を赤くしながら目を見開いているエドマンドは、恐らく悪くは思っていないという事位は推測出来るが・・・
どう思っているのかきちんと口にして欲しい私は、じぃぃっとエドマンドの言葉を待つ。
「か、か、可愛いよ・・・フレイ。」
益々赤くなるエドマンドの熱が移ってしまったのか・・・聞いた私まで顔が赤くなる感覚に襲われてしまった。
「あ、あ、ありがとう・・・エド。」
何だかくすぐったい様な、恥ずかしい様な、心地良い様な・・・産まれて初めて味わう空間に戸惑いながらも私達二人は馬車へと乗り込み、舞踏会の会場である王宮へと向かった。
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