あなたと二人

ゆきちん

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登場

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廊下いっぱいに拡がって騒がしく話していた同級生達だが、他校から来た人達は事前情報として『いきなりキレて暴れだす』『何かあればあのヤバい姉が乗り込んでくる』というありもしない噂話が流れていたのでコソコソと腫れ物を避けるようにして絡まれないよう端に寄るので真ん中に道が開かれてしまい、その中心をユキとノンちゃんは歩いた



「あはっ まるでモーゼだね……違う、ユーキか」


「『ー』しか合ってないじゃん
バカすぎてツッコむ気にもならない……
て言うか、ノンちゃんも私といたら変に誤解されるから離れてていいよ」


「ナハハハハッ
んな事、気にしないでいいって~っ
他の人よりユキちゃんのが大切だもん
それにこういうのって気持ちいいね
何か偉くなったみた~い
キャハハハハッ」


普通の女子なら恥ずかしがったり嫌な気持ちに苛まれてしまいこの真ん中を通るのを嫌がるのだろうしユキとは今後距離を置きたがるのだろうが、目立ちたがり屋でもある彼女はケラケラ笑いながらこの状態を楽しんでいた



『まっ、この状態ならノンちゃん以外に友達は出来ないのは決定だから気楽にはなったな
て言うかこの状況に私が居づらい気持ちでいるのに何でノンちゃんの方が嬉しそうにしてんのよ……
ホントにこの子の考えはたまにわかんないわ』


相変わらずの彼女にユキも多少呆れてはいたが、注目されるのは好まないユキはとりあえずとっとと教室に行こうと歩いていた


「ノンちゃんは6組だから教室はここから私と反対側でしょ
さっさと行きなよ」



一年生は校舎の横の中途半端な場所に下駄箱があり、一端渡り廊下を歩いてから校舎の廊下に出てくる構造になっていた
そこが2組のユキと6組のノンちゃんとの教室へ向かう分岐点となっていた


ノンちゃんはユキを一人で行かせて大丈夫かと少し不安そうな顔をしながら教室に入って行ったのでユキも自分の教室へ向かった



教室の外にまで聞こえくる夢と希望に溢れた元気で賑やかなまだ見ぬクラスメイト達の話し声はユキを一層教室内に入るのを躊躇わせたが、廊下でも注目を集めていたので戻るのも恥ずかしいし、どちらにせよ好奇の目で見られるのは変わらないと諦めた

そして不良が立ちすくむ姿ほどカッコ悪い事もないのでユキは気持ち的には後退りしたい思いを殺して余計に不機嫌そうな表情になり教室に足を踏み入れた



すると予想通り廊下と同様に教室中の視線が一気にユキに集まった
すると、これまでキャッキャと廊下まで聞こえていた賑やかだった教室内が一瞬にして静寂に包まれて緊張感で張り積めた空気になった



ザワザワザワ……


ユキと目を合わさないようにしながらも横目で見ながら小声で話す人達を見てウンザリした気持ちになり一瞬立ち止まったが「はぁっ」と気だるそうに小さくため息をついてから自分の席に座った



とんでもない問題児の噂が流れているユキを気にしてさっきまでの賑やさはないがヒソヒソと話し声は出ていて、相変わらずユキを煙たそうな目で見ながら聞こえくる噂にユキは相手にもしたくないので聞こえていないような顔をしてふて腐れたようにドカッと座ったまま目を閉じた



『あぁ……イライラする
だから来たくなかったんだよな
お前ら、とっとと慣れて私はいないものだと思って話しかけて来るなよ』



当時は今のようにファッションの一部として髪の毛を染める学生はほとんどおらず、高校生の茶髪でさえも『不良』『調子にのってる』と言われていた時代だったので、中学生が金髪にしている事自体本当にヤバい不良だと思われても仕方のない事だった


しかしユキの金髪は反抗心や個性という意味合いてはなく『私に近寄るな!』という警告の意味を込めて金髪にしていて、幼顔のユキはノーメイクで鏡を見ると迫力のない自分の顔立ちをコンプレックスに感じたので、メイクはレディース活動の時だけにしようと思っていたのだが思いきって学校でも歌舞伎役者のような元の顔立ちがわからないような厚塗りでメイクをする事にしたのだった


この見た目にしたのは自分を変えたいとか周りへの強さの威嚇、反抗心というよりは、これ以上傷付きたくないという自分を守る為の方法の一つだった



『私に近寄るな!
話しかけるな!
友達なんていらない
同じ学校、同じクラスでもあんた達に対して仲間意識なんて欠片もないんだ
この金髪とメイクはその警告だ』



そんな人を拒絶していたユキだったので、周りでキャッキャと楽しそうに初めて会った者同士が仲良くなろうと会話をしている姿を見ても羨ましさも全くなかった



『はあっ……とりあえず私に近づかなきゃ勝手にキャピキャピやってればいいんじゃない』



完全に冷めて屈折した考えでユキが大人しく座って目を閉じていると周りに人はいなくなっているが、ユキから離れた場所では大声でユキ刺激しないように気を使いながらも再び友達同士でキャッキャする話し声も聞こえ始めた

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