執着の茶室〜無垢なスーツは和装男子に暴かれる〜

メカラウロ子

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「本日は、よろしくお願いいたします!」

ついに来た…イベント当日が…。

取材NG、完全招待客のみ参加。

「あ!玲さーん。いたいた。」

紋付き袴姿の夏樹が用務員用入り口から入ってきた所を西谷と一緒に迎えた。

「わー、夏樹くん。袴よく似合ってるね!」

「おぉ!なんかいつもと違うな。さっすがイケメン。」

いつもはパーカーか普段着用の着流しだからピシッとした格好は綺麗な顔立ちをより目立たせた。

「ありがと、樹兄さんなら車止めてるからもう少ししたら来るよ。」

格好いいなんて毎日言われ慣れているんだろう、にべもなく話を続けた。

「すみません、遅くなりました。ちょっと駐車場が混んでいて…」

樹の声が後ろから聞こえる。

「いえ、まだ時間ありますか、ら…」

そこに立っていた男のあまりの美貌と威圧感に言葉を失った。

前髪をいつもとは違って上げ、長身であるため動く蝋人形のような非現実感がある。

彼が通る度に周りは会話を止め、視線を逸らせないでいた。

「うっわ…すご、なんかすごすぎて感想が出てこないな。」

「うん…」

「だからアレと一緒に入ってくるの嫌なんだよねぇ。今は年取って落ち着いたけど、全盛期なんて凄かったんだから。」

それは例のホスト時代の?まだこれより上があったって事?

「桐生さんの全盛期とか直視出来なさそー。」

「玲さん、西谷さん、いよいよですね。本日はよろしくお願いします。お二人ともスーツが素敵ですね。」

「よろしく…お、お願いします…」

「樹さんの方がよっぽど素敵ですよ…」

初めて憧れの芸能人に会ったかのようなまごつく二人の態度に夏樹は冷めた目で見てくる。



「出番までもう少しありますが、舞台袖まで案内しますね。」

そう言って西谷に二人が連れられるや否や、女性陣、若い男性社員にわっ!と囲まれた。

「ちょ、ちょっと川瀬くん!あんな凄いのどうやって知り合ったの!?」

「お茶の先生って言うからおっさんかと思ってたのに。」

「あの一緒にいた子もまたタイプ違って可愛いよねー。」

怒涛の質問責めに対応に困惑する。

「何で川瀬みたいなのがあんな人といるのか分かんねぇな、話し合わなさそうじゃね?」

「引き立て役にしかならないよね。」

「いいなあ私もそこ通いに行こうかな、川瀬さん紹介してくれない?」

「そ、れは…あ、あの僕そろそろプロジェクターの方に行かないと…」

逃げるようにその場から去った。


ーーーー


舞台に登場した樹と夏樹に会場は歓声を上げた。

池辺の代わりの女優無理かぁ…の声を一蹴し、皆の注目を集める。

特に海外企業からのビジターは、「KIMONO!」と叫んでいる。


「やっぱ、映像出ると分かりやすくていいですね。」

「上からの図だからお抹茶点てる瞬間もよく見えますね。」

樹が立つステージの背後では、手元を拡大した映像が映し出されている。

借りたプロジェクターが役に立って良かった。

玲はエンジニア室でミキサーの後ろへ立ち経過を見守っていた。



紹介して…か。

さっき言われた時、秘密基地が他者に暴かれるような感情の他にまた別の感情が湧き上がってきたように感じた。

ここで、僕が止めた所で…きっと知らない人に同じような事をたくさん言われているに決まっている。

「あの方、川瀬さんのお知り合いなんですよね。すごく雰囲気あるっていうか、普段何食べてるんだろ。」

ふいにミキサーに話しかけられた。

僕も最初は霞でも食って生きていると思っていた。

「分かるー!あとすっごい隠れ家的なバル知ってそうだよね。」

近くにいたスタッフが加わる。

本当は外食が苦手だから料理が得意で自炊派だ。

「やっぱり朝は納豆と味噌汁なのかな。」

実はお茶よりもコーヒーが好きで朝はパン派だ。

「めちゃくちゃ几帳面そうだよね。」

以外とズボラだし、足癖が悪い。

「許嫁に絶世の美女がいそう。」

僕は…

僕はあの人が好きだ。

きっとこれからも誰かに囲まれる樹を見る事になるだろう。

何で玲が樹と居るのか、みんなが感じる疑問だろう。

自分だって不釣り合いな事くらい理解している。

では仮に、玲が絶世の美女だったら?美女でなくともかっこいい男性だったら?

みんな玲に樹を紹介をしろと言うだろうか?何故一緒に居るかなんて聞かないだろう。

それに気付く度に落ち込んで、自分なんかが最初から望みなんてないと詰って。

胸が苦しい。

日々の疲労のせいか、思考はどんどんネガティブになって行く。

この会場で、樹を直視出来ていなかったのは玲だけだった。
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