執着の茶室〜無垢なスーツは和装男子に暴かれる〜

メカラウロ子

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夏樹①

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「ねー。場所分かんないからってすぐ俺呼ぶのやめてくんない?」

「なつくんなら昔良く押入れで遊んでたし記憶力いいから分かると思って。」

部屋の外の会話で目が覚めた。

あの後いつのまにか眠ってしまい、どうやら樹に客室へ運ばれたらしい。

布団が敷かれ、その中に収まっていた。

客人でありながらしっかりと人の家で寝てしまった…後でお礼言わないと…

「いや、それいつの話?分かるわけないじゃん。」

……このまま待っていても終わらなさそうだしトイレにも行きたいし起きるか。

「おはよう…ございます。」

「あれ、お客さん?こっちに連れ込むの珍しいね?」

「あの人は…そんなんじゃないよ。大事なお客様なんだ。おはようございます玲さん。よく眠れましたか?」

「すみません、家に招いてもらっておきながらがっつり寝てしまって…いつのまにか布団も敷いてもらっちゃって…」

どことなく樹と雰囲気の似た青年が樹と立っていた。

幼い少年のような甘いトロンとした顔付きからは、小さい頃から可愛い可愛いと言われて育ったんだろうなというのが容易に想像できる。

「いえいえ、気にしないでください。お疲れでしたから。あ、この子は僕の従兄弟で大学生の…」

「大学院ね!大学・院生だから!夏樹でーす。よろしく。」

玲の手を取り勢いよくぶんぶん振られた。

「なつくん、馴れ馴れしくしてるけどその人歳上だからね。敬いなさいよ?」

「え!30歳?絶対1コくらいしか違わないと思ったのに!!」

この子のテンションは寝起きの頭には刺激が強すぎる…。

「あはは…いいんです、よく言われるから。すみません、起きて早々申し訳ないんですけどお手洗いお借りします。」

「はい、どうぞ。あ、そうだ朝ごはん食べますよね?その間に準備しておきますから。」


トイレから戻ると夏樹が興味津々と言った様子でこちらを伺ってきた。

「それにしても、樹兄さんも意外なとこ来るなー。それとも純朴そうな顔して実は…みたいな?」

「えっと…何の話?」

「あれ?あんた樹兄さんのセフレでしょ?最近減ったと思ってたけど。」

「???」

「だってお疲れって…、あれ…本当に違うやつ?やっば。今のナシナシ!忘れてください。」

樹がモテるであろう事は間違いないし、多くの関係を持っていただろう事は容易に想像できる。

だが自分は男だし、それにセフレ??

しかしそんな爛れた関係を自分と結んでいるとこの子が勘違いするほど手当たり次第だったのだろうか?

あの樹さんが?

どうしよう、理解が追いつかない。


パタパタと戻ってきた樹は玲の様子に眉をひそめた。

「ちょっと、なつくん何か変なこと言った?玲さん、気にしないでくださいね。」

「なっ…!何も言ってないって!ね?」

大学院生からの圧が強い。
何でもないですという他なかった。


「昨日仕事が忙しくてお茶の練習ができないって仰っていたので、使っていない茶器一式を差し上げようかと思っていたんですが、どこに仕舞ったのか忘れたのでなつくんを呼んだんですよ。」

「酷いんですよー。歳上だからってすぐ俺をパシリにするんだから。」

「悪いけどなつくんにはお茶と着付けも手伝ってもらうからね。今日暇だって聞いてるよ。」

「えぇー!俺最近お茶行ってないから忘れてんだけど。」

朝食をいただき、一息付いて3人でコーヒーを飲んでいた。

美形二人の会話に圧倒される。

「そ、そんな!茶器一式なんて高価なもの受け取れないですよ。」

「うーん。こちらとしては仕舞い込むと悪くなるし使っていただいた方がありがたいんですが…」

「そーそー。大したやつじゃないし貰っちゃいなよ。いっぱいあるんだから。」

この一言で、夏樹もとんでもない金持ちの家の子なんだろうなというのを確信した。



ーーーーー



「玲さん華奢だねー。着物映え体型だよ。はい、袖通して。」

茶室の準備に向かった樹に代わり夏樹に着せてもらっている。

サクサク一人であっという間に着た夏樹は、手早く玲の分にもとりかかり要領の良さを感じた。

「にしても、樹兄さんのところで真面目にお茶習ってるなんてね。だって殆どが顔目当てだし。」

「それは…さっきの、セ…フレって話?」

「いやー。流石にお客さんには手を出してないと思うよ?そういうの上手くやってるし。てかこれ言ったのバレたら怒られるから内緒ね!」

人懐っこい顔でマシンガントークな夏樹はこういった態度で可愛がられてきたんだなぁと分かる。

どうやら夏樹曰く、樹が爛れた生活をしていたのは周知の事実でむしろ今の方が樹らしくないのだそうだ。

「最近そういうのなかったからさー。こっちには連れてきた事無かったし。けどまあ、玲さんって樹兄さんに恋してる感じじゃないもんね。どちらかと言うと憧れ的な?勘違いしてごめんね。」

「なんか…未だに信じられないって言うか。いつも大人でかっこよくて、落ち着いてるイメージだから…」

「いやー、ナイナイ。俺が高校ん時とか凄かったもん。親戚の集まりとかの時一人だけホストみたいな格好してさ。俺は他のおばちゃん達より話しやすくて好きだったけど。」

ホストな樹が想像できない。

「けどそうだな、桐生のおばあちゃんが亡くなった辺りからは大人しくて、心配してたんだけど…まあ友達らしいの俺しかいないし玲さん仲良くしてあげてよ。」

樹に友達が居ない訳がない。

自分の前にいたお客さんとよく話し込んでいるのを見かけるし、業者とも仲が良さそうだ。

それが親しい友人かと言われるとそうでもないだろうが、そんな事言ったら玲だってただの先生と生徒の関係だ。

「けど凄いね、僕のところの親戚関係なんて冷めたもんだしこんなに明け透けに恋愛事情話さないよ…」

「ウチはちょっと特殊だからねー。聞いてないのに勝手に情報は入ってくるし、言ってないのにみんな知ってるから。俺の代はそこまでだけど、樹兄さんの時はまだまだ大変だったって聞いたし…ハイ、出来たよ鏡みて。」

いつのまにか着付けが完了していた。

「わ…昨日も着せてもらったけど、なんか着物って着るだけで存在感出るな…。」

「玲さんお爺さんの着物似合うねー。それ昔着せてもらった事あるけど俺全然似合わなかったんだよね。」

「あの…さっきの。」

「ん?」

「樹さんは、人気者だから、僕なんかじゃなくてももっと凄い人が仲良くしてくれると思うよ。」

そう、わざわざ自分じゃなくても。

その言葉に夏樹が口を開きかけた時、茶室の準備ができたからと樹に呼ばれた。
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