5 / 23
初めての茶道②
しおりを挟む
「では早速ですが、私が点ててみますね。皆さんが良くイメージされるお抹茶は薄茶と言い、飲みやすい濃さのものになります。」
桐生がお抹茶茶碗を乗せたお盆を移動させた。
「本来なら夏の今の時期は平茶碗が良いんですが、お椀型の方が点てやすいんです…とすみません、また話が長くなってしまいました。川瀬さんって真剣に聞いてくれるからつい色々教えたくなってしまって…」
「いえ!どんどん教えてください!!とても興味深いですし聞いていて楽しいです。僕、仕事でもこの仕事は何のためにするのかって分かった方がモチベーション上がるタイプで…って今は仕事関係ないですよね。」
「川瀬さんって上司に可愛がられてそう。教えるの楽しいんじゃないかな…じゃあ、ここからは一度最後まで見ていてください。」
桐生のお点前はそれはそれは素晴らしく美しいものだった…と思う。
多分何かすごい技術があるんだろうけどよく分からなかった。が自分の本音であり感想だ。
次に自分がやる時に少しでも覚えていようと瞬きも忘れて見つめていたのだが、あっという間に次の工程へ進み目の前にお抹茶茶碗が勧められていた。
「今回は、マナーを忘れて飲んでみてください。どうぞ。」
「いただきます…。」
差し出されたのはベージュのお椀に鞠の絵が描かれた器だった。
暖かいお椀に口をつける。
「…!!」
ふんわりきめ細やかな泡の乗った、初めて飲むお抹茶は全く苦味がなくまろやかで甘ささえ感じた。
「お抹茶ってこんなに美味しいんだ…」
思わず言葉にする。
抹茶は苦くてまずいイメージだったのだが、あっという間に飲み干してしまった。
「すごい…すごく美味しかったです!!えっと…こう言う時って結構なお点前で…って言うんでしたっけ?」
「そうですね、あとは他の流派は分かりませんが、結構なお服加減でございます。とかお服具合って言いますね。」
「そうなんだ…じゃあ結構なお服加減でございます!」
その言葉に桐生は目を細める。
「では次は川瀬さんの番ですね。」
その言葉に汗ばんだ手を握る。
「最初なんですから、完璧にやろうとしなくて大丈夫ですよ。まずは楽しんでいただければ。」
そうは言っても憧れている人の前で情けない姿を見せたくないんだよなぁ…。
そう思いながら玲はグッと腹に力を入れた。
ーーーー
お盆の上にずらりと並べられた茶器は壮観だった。
それぞれの名称や置く位置の決まりがあるのだが、一回で全て覚えるなんて難しいから先ずは感覚で。何度も聞いてください。と桐生に言われる。
「本当は帛紗で棗や茶杓を清めるんですが今回は省きましょう。」
さっき桐生が点てている時に行っていた意味があるかよく分からない、帛紗で拭く行為だ。
これがマナーなのかと突っ込み出したらきりがないしな。
カトラリーだって使おうと思えば全ての料理は一組で食べる事ができるわけだし…。
「まず茶碗にお湯を入れて器を温めてください。茶筅も一緒に少し回してお湯はこの建水に捨ててください。」
「はい。」
「水気を布で軽く拭いたら、棗の蓋を開けてください。ここにお抹茶の粉が入っています。あ、蓋は裏返しに置いたりせずお盆の縁に立てかけるようにしてください。」
「はい。」
「茶杓でつの字を書くようにお抹茶を掬ってください。思ったより多めで、あ。もう少しいいですよ…はい、それくらいです。これを二杯分入れたら茶杓で縁を軽くトンとしてください。」
「えっ、トン?…はい。」
「ではいよいよお抹茶を点てていただきますね。お湯は理想は50ccくらいでいいですが目分量で大丈夫ですよ」
「はい……!」
言われるがままだ。自分が何をしているのかよく分からない。だがようやくお湯を入れ、点てる所まで来た。
少しワクワクする。
「私は川の字でと習いましたがやりやすい方法で大丈夫です。力まず手首のスナップを意識してください。」
先程見た桐生をイメージして点ててみる。しかし…
「なんか…全然泡立たないです。」
使っているのは同じお抹茶とお湯のはずなのに緑の液体が揺れるだけで全く美味しそうに感じない。
「泡はそんなに気にしなくていいんですが…もう少し手首のスナップを早くしてみましょう。おおぶくになったら茶筅の先で泡を潰すようにしてください。」
結局最後まであまり泡立たないお抹茶が出来上がった。
▼▼▼▼▼▼
帛紗:和柄の布みたいなやつ。ハンカチ代わりと考えたら分かりやすい。
古帛紗:帛紗より分厚めの和柄の布。器を運ぶ時に使っていました。最近ではコースターに使う人もいるらしい。
わの向き:二つ折りにして折った側の事
茶筅:お抹茶を点てるのに使うあれ
棗:お抹茶ケース
茶杓:お抹茶を掬う耳かきみたいな形の棒
桐生がお抹茶茶碗を乗せたお盆を移動させた。
「本来なら夏の今の時期は平茶碗が良いんですが、お椀型の方が点てやすいんです…とすみません、また話が長くなってしまいました。川瀬さんって真剣に聞いてくれるからつい色々教えたくなってしまって…」
「いえ!どんどん教えてください!!とても興味深いですし聞いていて楽しいです。僕、仕事でもこの仕事は何のためにするのかって分かった方がモチベーション上がるタイプで…って今は仕事関係ないですよね。」
「川瀬さんって上司に可愛がられてそう。教えるの楽しいんじゃないかな…じゃあ、ここからは一度最後まで見ていてください。」
桐生のお点前はそれはそれは素晴らしく美しいものだった…と思う。
多分何かすごい技術があるんだろうけどよく分からなかった。が自分の本音であり感想だ。
次に自分がやる時に少しでも覚えていようと瞬きも忘れて見つめていたのだが、あっという間に次の工程へ進み目の前にお抹茶茶碗が勧められていた。
「今回は、マナーを忘れて飲んでみてください。どうぞ。」
「いただきます…。」
差し出されたのはベージュのお椀に鞠の絵が描かれた器だった。
暖かいお椀に口をつける。
「…!!」
ふんわりきめ細やかな泡の乗った、初めて飲むお抹茶は全く苦味がなくまろやかで甘ささえ感じた。
「お抹茶ってこんなに美味しいんだ…」
思わず言葉にする。
抹茶は苦くてまずいイメージだったのだが、あっという間に飲み干してしまった。
「すごい…すごく美味しかったです!!えっと…こう言う時って結構なお点前で…って言うんでしたっけ?」
「そうですね、あとは他の流派は分かりませんが、結構なお服加減でございます。とかお服具合って言いますね。」
「そうなんだ…じゃあ結構なお服加減でございます!」
その言葉に桐生は目を細める。
「では次は川瀬さんの番ですね。」
その言葉に汗ばんだ手を握る。
「最初なんですから、完璧にやろうとしなくて大丈夫ですよ。まずは楽しんでいただければ。」
そうは言っても憧れている人の前で情けない姿を見せたくないんだよなぁ…。
そう思いながら玲はグッと腹に力を入れた。
ーーーー
お盆の上にずらりと並べられた茶器は壮観だった。
それぞれの名称や置く位置の決まりがあるのだが、一回で全て覚えるなんて難しいから先ずは感覚で。何度も聞いてください。と桐生に言われる。
「本当は帛紗で棗や茶杓を清めるんですが今回は省きましょう。」
さっき桐生が点てている時に行っていた意味があるかよく分からない、帛紗で拭く行為だ。
これがマナーなのかと突っ込み出したらきりがないしな。
カトラリーだって使おうと思えば全ての料理は一組で食べる事ができるわけだし…。
「まず茶碗にお湯を入れて器を温めてください。茶筅も一緒に少し回してお湯はこの建水に捨ててください。」
「はい。」
「水気を布で軽く拭いたら、棗の蓋を開けてください。ここにお抹茶の粉が入っています。あ、蓋は裏返しに置いたりせずお盆の縁に立てかけるようにしてください。」
「はい。」
「茶杓でつの字を書くようにお抹茶を掬ってください。思ったより多めで、あ。もう少しいいですよ…はい、それくらいです。これを二杯分入れたら茶杓で縁を軽くトンとしてください。」
「えっ、トン?…はい。」
「ではいよいよお抹茶を点てていただきますね。お湯は理想は50ccくらいでいいですが目分量で大丈夫ですよ」
「はい……!」
言われるがままだ。自分が何をしているのかよく分からない。だがようやくお湯を入れ、点てる所まで来た。
少しワクワクする。
「私は川の字でと習いましたがやりやすい方法で大丈夫です。力まず手首のスナップを意識してください。」
先程見た桐生をイメージして点ててみる。しかし…
「なんか…全然泡立たないです。」
使っているのは同じお抹茶とお湯のはずなのに緑の液体が揺れるだけで全く美味しそうに感じない。
「泡はそんなに気にしなくていいんですが…もう少し手首のスナップを早くしてみましょう。おおぶくになったら茶筅の先で泡を潰すようにしてください。」
結局最後まであまり泡立たないお抹茶が出来上がった。
▼▼▼▼▼▼
帛紗:和柄の布みたいなやつ。ハンカチ代わりと考えたら分かりやすい。
古帛紗:帛紗より分厚めの和柄の布。器を運ぶ時に使っていました。最近ではコースターに使う人もいるらしい。
わの向き:二つ折りにして折った側の事
茶筅:お抹茶を点てるのに使うあれ
棗:お抹茶ケース
茶杓:お抹茶を掬う耳かきみたいな形の棒
43
あなたにおすすめの小説
猫カフェの溺愛契約〜獣人の甘い約束〜
なの
BL
人見知りの悠月――ゆづきにとって、叔父が営む保護猫カフェ「ニャンコの隠れ家」だけが心の居場所だった。
そんな悠月には昔から猫の言葉がわかる――という特殊な能力があった。
しかし経営難で閉店の危機に……
愛する猫たちとの別れが迫る中、運命を変える男が現れた。
猫のような美しい瞳を持つ謎の客・玲音――れお。
彼が差し出したのは「店を救う代わりに、お前と契約したい」という甘い誘惑。
契約のはずが、いつしか年の差を超えた溺愛に包まれて――
甘々すぎる生活に、だんだんと心が溶けていく悠月。
だけど玲音には秘密があった。
満月の夜に現れる獣の姿。猫たちだけが知る彼の正体、そして命をかけた契約の真実
「君を守るためなら、俺は何でもする」
これは愛なのか契約だけなのか……
すべてを賭けた禁断の恋の行方は?
猫たちが見守る小さなカフェで紡がれる、奇跡のハッピーエンド。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
誓いを君に
たがわリウ
BL
平凡なサラリーマンとして過ごしていた主人公は、ある日の帰り途中、異世界に転移する。
森で目覚めた自分を運んでくれたのは、美しい王子だった。そして衝撃的なことを告げられる。
この国では、王位継承を放棄した王子のもとに結ばれるべき相手が現れる。その相手が自分であると。
突然のことに戸惑いながらも不器用な王子の優しさに触れ、少しずつお互いのことを知り、婚約するハッピーエンド。
恋人になってからは王子に溺愛され、幸せな日々を送ります。
大人向けシーンは18話からです。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
【完結】執着系幼馴染みが、大好きな彼を手に入れるために叶えたい6つの願い事。
髙槻 壬黎
BL
ヤンデレ執着攻め×鈍感強気受け
ユハン・イーグラントには、幼い頃から共に過ごしてきた幼馴染みがいる。それは、天使のような美貌を持つミカイル・アイフォスターという男。
彼は公爵家の嫡男として、いつも穏やかな微笑みを浮かべ、凛とした立ち振舞いをしているが、ユハンの前では違う。というのも、ミカイルは実のところ我が儘で、傲慢な一面を併せ持ち、さらには時々様子がおかしくなって頬を赤らめたり、ユハンの行動を制限してこようとするときがあるのだ。
けれども、ユハンにとってミカイルは大切な友達。
だから彼のことを憎らしく思うときがあっても、なんだかんだこれまで許してきた。
だというのに、どうやらミカイルの気持ちはユハンとは違うようで‥‥‥‥?
そんな中、偶然出会った第二王子や、学園の生徒達を巻き込んで、ミカイルの想いは暴走していく────
※旧題「執着系幼馴染みの、絶対に叶えたい6つの願い事。」
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる