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出会い①
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今日は35度越えの真夏日だ。
イベント企画会社に勤める僕、川瀬玲は、取引先からの帰り道、荷物を受け取りに他の会社へ寄ったら普段と違う道に出てしまい迷ってしまった。
別に急ぎだとか、今すぐ必要な訳でもなかったんだけど近かったからなぁ。
都内の民家と企業と店舗が混在する道は、日陰もなくジリジリと太陽が照り付けてくる。
「あっつ…」
ただでさえスーツなのに荷物を抱えているのだ。
シャツが身体に纏わりつき不快な汗が流れる。
どこかで落ち着いて地図アプリを開きたい…。
すると、涼しげな麻の暖簾がかかった店を見つけた。
他の店はいつ空いているのか分からない服屋くらいしかないし、大きい道路に面してもいないからコンビニもない。
「このお店に聞いてみるか…」
店に入ろうとした時だった。
大きいのぼり旗が死角になり店から出てきた人物に気が付かなかった。
「わっ!」
思い切りぶつかった二人だが小柄な玲の方が吹き飛ばされてしまったのだ。
そして運悪く、お堀を模した溝に足を滑らせ怪我をしてしまったようだ。
しかし、足の痛みも気にならない程玲はぶつかった相手に見惚れてしまった。
驚いた様子でこちらを覗き込む、長身で和装のどこか色気のある男性に一目惚れしてしまったのだ。
ーーーー
妙齢の身長180cmはありそうな店主は桐生樹というらしい。
色白で色気がありピンと背筋を伸ばしている。
細身に見えるが和装の下にはしっかりとした体格をしていそうだ。
少し垂れ目気味で鼻筋が通っており、ウェーブがかった髪は女性が放っておかないだろう。
目の保養だ……!
「道に迷ってしまったんですか、それは災難でしたね。この辺りは目立つ店もありませんからね。
怪我も大丈夫ですか?こちらも気づかず申し訳ありませんでした。
今日は暑いですし、良ければ落ち着くまで休んで行ってください。」
穏やかで心地よい桐生の声に、天は二物も三物も与えるのだと思った。
この人は神が気まぐれに産み落とした奇跡に違いない。
ここは日本の和雑貨とお茶のお店のようだ。涼しい店の中は、ブラウンやグレーやネイビーがシックにまとまりひのきの良い香りがする。
仕事柄、内装を見てしまう。
最近増えてきたインバウンド用に日本風のデザインをする事があるが、あくまで"風"なのだ。
自分の好みを押し出しては仕事にならないし、海外の日本のイメージに沿った企画にしなければならないのは理解している。
外国人観光客向けの派手な和柄が苦手な玲はこのデザインに非常に共感が持てた。
「よろしければこちらをどうぞ。お干菓子くらいしかありませんが。」
そういって出されたのは、よく冷えたほうじ茶と可愛らしい花を模ったカラフルな落雁だった。
「うわ!素敵ですね。お邪魔してしまった上にここまでしていただいて…」
気遣ってもらって嬉しい反面、正直なところ玲は足がズキズキと痛みを感じ始めたので会話どころではなかった。これは捻っただろうなというのは分かる。
「趣味で開けているような店ですから…あ、そうだ。確か裏にサポーターがあったはずだから見てきますね。」
そういうと桐生は裏へと消えていった。
何から何まで申し訳ないな…と思いながらほうじ茶を飲んだ。
わぁ…美味しい。まろやかでほのかに甘みがあって、適度に香ばしい。
次いで落雁を口に運ぶ。
ほろほろと口の中で溶けてなくなり、嫌な甘さが口に残らない。
めちゃくちゃいい和三盆とか使ってるんだろうな…値段を聞くのが怖い。
そう思いながら自身が着席しているカフェスペースを観察する。
カフェといってもランチやスイーツなどはなく、専らお茶がメインなようだ。
先程出してもらったほうじ茶や緑茶を持ち帰りできるスタンドがあり、店内ではお抹茶を点ててもらえるみたいだ。
一度、本場のお抹茶を飲んでみたいなぁと思ってたんだよな。
玲は興味を引くものばかりのこの店を、いたくきにいってしまった。
「お待たせしました。サポーターありましたよ。」
そう言いながら黒いサポーターを掲げた桐生が戻ってきた。
「昔、祖母が使おうとして開けたみたいなんですが、なんだかしっくり来なかったようで。よろしければ付けさせてもらってもいいですか?」
こんな色男にサポーターを付けさせるなんて気恥ずかしいが、素直に好意は受け取る事にした。
イベント企画会社に勤める僕、川瀬玲は、取引先からの帰り道、荷物を受け取りに他の会社へ寄ったら普段と違う道に出てしまい迷ってしまった。
別に急ぎだとか、今すぐ必要な訳でもなかったんだけど近かったからなぁ。
都内の民家と企業と店舗が混在する道は、日陰もなくジリジリと太陽が照り付けてくる。
「あっつ…」
ただでさえスーツなのに荷物を抱えているのだ。
シャツが身体に纏わりつき不快な汗が流れる。
どこかで落ち着いて地図アプリを開きたい…。
すると、涼しげな麻の暖簾がかかった店を見つけた。
他の店はいつ空いているのか分からない服屋くらいしかないし、大きい道路に面してもいないからコンビニもない。
「このお店に聞いてみるか…」
店に入ろうとした時だった。
大きいのぼり旗が死角になり店から出てきた人物に気が付かなかった。
「わっ!」
思い切りぶつかった二人だが小柄な玲の方が吹き飛ばされてしまったのだ。
そして運悪く、お堀を模した溝に足を滑らせ怪我をしてしまったようだ。
しかし、足の痛みも気にならない程玲はぶつかった相手に見惚れてしまった。
驚いた様子でこちらを覗き込む、長身で和装のどこか色気のある男性に一目惚れしてしまったのだ。
ーーーー
妙齢の身長180cmはありそうな店主は桐生樹というらしい。
色白で色気がありピンと背筋を伸ばしている。
細身に見えるが和装の下にはしっかりとした体格をしていそうだ。
少し垂れ目気味で鼻筋が通っており、ウェーブがかった髪は女性が放っておかないだろう。
目の保養だ……!
「道に迷ってしまったんですか、それは災難でしたね。この辺りは目立つ店もありませんからね。
怪我も大丈夫ですか?こちらも気づかず申し訳ありませんでした。
今日は暑いですし、良ければ落ち着くまで休んで行ってください。」
穏やかで心地よい桐生の声に、天は二物も三物も与えるのだと思った。
この人は神が気まぐれに産み落とした奇跡に違いない。
ここは日本の和雑貨とお茶のお店のようだ。涼しい店の中は、ブラウンやグレーやネイビーがシックにまとまりひのきの良い香りがする。
仕事柄、内装を見てしまう。
最近増えてきたインバウンド用に日本風のデザインをする事があるが、あくまで"風"なのだ。
自分の好みを押し出しては仕事にならないし、海外の日本のイメージに沿った企画にしなければならないのは理解している。
外国人観光客向けの派手な和柄が苦手な玲はこのデザインに非常に共感が持てた。
「よろしければこちらをどうぞ。お干菓子くらいしかありませんが。」
そういって出されたのは、よく冷えたほうじ茶と可愛らしい花を模ったカラフルな落雁だった。
「うわ!素敵ですね。お邪魔してしまった上にここまでしていただいて…」
気遣ってもらって嬉しい反面、正直なところ玲は足がズキズキと痛みを感じ始めたので会話どころではなかった。これは捻っただろうなというのは分かる。
「趣味で開けているような店ですから…あ、そうだ。確か裏にサポーターがあったはずだから見てきますね。」
そういうと桐生は裏へと消えていった。
何から何まで申し訳ないな…と思いながらほうじ茶を飲んだ。
わぁ…美味しい。まろやかでほのかに甘みがあって、適度に香ばしい。
次いで落雁を口に運ぶ。
ほろほろと口の中で溶けてなくなり、嫌な甘さが口に残らない。
めちゃくちゃいい和三盆とか使ってるんだろうな…値段を聞くのが怖い。
そう思いながら自身が着席しているカフェスペースを観察する。
カフェといってもランチやスイーツなどはなく、専らお茶がメインなようだ。
先程出してもらったほうじ茶や緑茶を持ち帰りできるスタンドがあり、店内ではお抹茶を点ててもらえるみたいだ。
一度、本場のお抹茶を飲んでみたいなぁと思ってたんだよな。
玲は興味を引くものばかりのこの店を、いたくきにいってしまった。
「お待たせしました。サポーターありましたよ。」
そう言いながら黒いサポーターを掲げた桐生が戻ってきた。
「昔、祖母が使おうとして開けたみたいなんですが、なんだかしっくり来なかったようで。よろしければ付けさせてもらってもいいですか?」
こんな色男にサポーターを付けさせるなんて気恥ずかしいが、素直に好意は受け取る事にした。
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