1 / 23
出会い①
しおりを挟む
今日は35度越えの真夏日だ。
イベント企画会社に勤める僕、川瀬玲は、取引先からの帰り道、荷物を受け取りに他の会社へ寄ったら普段と違う道に出てしまい迷ってしまった。
別に急ぎだとか、今すぐ必要な訳でもなかったんだけど近かったからなぁ。
都内の民家と企業と店舗が混在する道は、日陰もなくジリジリと太陽が照り付けてくる。
「あっつ…」
ただでさえスーツなのに荷物を抱えているのだ。
シャツが身体に纏わりつき不快な汗が流れる。
どこかで落ち着いて地図アプリを開きたい…。
すると、涼しげな麻の暖簾がかかった店を見つけた。
他の店はいつ空いているのか分からない服屋くらいしかないし、大きい道路に面してもいないからコンビニもない。
「このお店に聞いてみるか…」
店に入ろうとした時だった。
大きいのぼり旗が死角になり店から出てきた人物に気が付かなかった。
「わっ!」
思い切りぶつかった二人だが小柄な玲の方が吹き飛ばされてしまったのだ。
そして運悪く、お堀を模した溝に足を滑らせ怪我をしてしまったようだ。
しかし、足の痛みも気にならない程玲はぶつかった相手に見惚れてしまった。
驚いた様子でこちらを覗き込む、長身で和装のどこか色気のある男性に一目惚れしてしまったのだ。
ーーーー
妙齢の身長180cmはありそうな店主は桐生樹というらしい。
色白で色気がありピンと背筋を伸ばしている。
細身に見えるが和装の下にはしっかりとした体格をしていそうだ。
少し垂れ目気味で鼻筋が通っており、ウェーブがかった髪は女性が放っておかないだろう。
目の保養だ……!
「道に迷ってしまったんですか、それは災難でしたね。この辺りは目立つ店もありませんからね。
怪我も大丈夫ですか?こちらも気づかず申し訳ありませんでした。
今日は暑いですし、良ければ落ち着くまで休んで行ってください。」
穏やかで心地よい桐生の声に、天は二物も三物も与えるのだと思った。
この人は神が気まぐれに産み落とした奇跡に違いない。
ここは日本の和雑貨とお茶のお店のようだ。涼しい店の中は、ブラウンやグレーやネイビーがシックにまとまりひのきの良い香りがする。
仕事柄、内装を見てしまう。
最近増えてきたインバウンド用に日本風のデザインをする事があるが、あくまで"風"なのだ。
自分の好みを押し出しては仕事にならないし、海外の日本のイメージに沿った企画にしなければならないのは理解している。
外国人観光客向けの派手な和柄が苦手な玲はこのデザインに非常に共感が持てた。
「よろしければこちらをどうぞ。お干菓子くらいしかありませんが。」
そういって出されたのは、よく冷えたほうじ茶と可愛らしい花を模ったカラフルな落雁だった。
「うわ!素敵ですね。お邪魔してしまった上にここまでしていただいて…」
気遣ってもらって嬉しい反面、正直なところ玲は足がズキズキと痛みを感じ始めたので会話どころではなかった。これは捻っただろうなというのは分かる。
「趣味で開けているような店ですから…あ、そうだ。確か裏にサポーターがあったはずだから見てきますね。」
そういうと桐生は裏へと消えていった。
何から何まで申し訳ないな…と思いながらほうじ茶を飲んだ。
わぁ…美味しい。まろやかでほのかに甘みがあって、適度に香ばしい。
次いで落雁を口に運ぶ。
ほろほろと口の中で溶けてなくなり、嫌な甘さが口に残らない。
めちゃくちゃいい和三盆とか使ってるんだろうな…値段を聞くのが怖い。
そう思いながら自身が着席しているカフェスペースを観察する。
カフェといってもランチやスイーツなどはなく、専らお茶がメインなようだ。
先程出してもらったほうじ茶や緑茶を持ち帰りできるスタンドがあり、店内ではお抹茶を点ててもらえるみたいだ。
一度、本場のお抹茶を飲んでみたいなぁと思ってたんだよな。
玲は興味を引くものばかりのこの店を、いたくきにいってしまった。
「お待たせしました。サポーターありましたよ。」
そう言いながら黒いサポーターを掲げた桐生が戻ってきた。
「昔、祖母が使おうとして開けたみたいなんですが、なんだかしっくり来なかったようで。よろしければ付けさせてもらってもいいですか?」
こんな色男にサポーターを付けさせるなんて気恥ずかしいが、素直に好意は受け取る事にした。
イベント企画会社に勤める僕、川瀬玲は、取引先からの帰り道、荷物を受け取りに他の会社へ寄ったら普段と違う道に出てしまい迷ってしまった。
別に急ぎだとか、今すぐ必要な訳でもなかったんだけど近かったからなぁ。
都内の民家と企業と店舗が混在する道は、日陰もなくジリジリと太陽が照り付けてくる。
「あっつ…」
ただでさえスーツなのに荷物を抱えているのだ。
シャツが身体に纏わりつき不快な汗が流れる。
どこかで落ち着いて地図アプリを開きたい…。
すると、涼しげな麻の暖簾がかかった店を見つけた。
他の店はいつ空いているのか分からない服屋くらいしかないし、大きい道路に面してもいないからコンビニもない。
「このお店に聞いてみるか…」
店に入ろうとした時だった。
大きいのぼり旗が死角になり店から出てきた人物に気が付かなかった。
「わっ!」
思い切りぶつかった二人だが小柄な玲の方が吹き飛ばされてしまったのだ。
そして運悪く、お堀を模した溝に足を滑らせ怪我をしてしまったようだ。
しかし、足の痛みも気にならない程玲はぶつかった相手に見惚れてしまった。
驚いた様子でこちらを覗き込む、長身で和装のどこか色気のある男性に一目惚れしてしまったのだ。
ーーーー
妙齢の身長180cmはありそうな店主は桐生樹というらしい。
色白で色気がありピンと背筋を伸ばしている。
細身に見えるが和装の下にはしっかりとした体格をしていそうだ。
少し垂れ目気味で鼻筋が通っており、ウェーブがかった髪は女性が放っておかないだろう。
目の保養だ……!
「道に迷ってしまったんですか、それは災難でしたね。この辺りは目立つ店もありませんからね。
怪我も大丈夫ですか?こちらも気づかず申し訳ありませんでした。
今日は暑いですし、良ければ落ち着くまで休んで行ってください。」
穏やかで心地よい桐生の声に、天は二物も三物も与えるのだと思った。
この人は神が気まぐれに産み落とした奇跡に違いない。
ここは日本の和雑貨とお茶のお店のようだ。涼しい店の中は、ブラウンやグレーやネイビーがシックにまとまりひのきの良い香りがする。
仕事柄、内装を見てしまう。
最近増えてきたインバウンド用に日本風のデザインをする事があるが、あくまで"風"なのだ。
自分の好みを押し出しては仕事にならないし、海外の日本のイメージに沿った企画にしなければならないのは理解している。
外国人観光客向けの派手な和柄が苦手な玲はこのデザインに非常に共感が持てた。
「よろしければこちらをどうぞ。お干菓子くらいしかありませんが。」
そういって出されたのは、よく冷えたほうじ茶と可愛らしい花を模ったカラフルな落雁だった。
「うわ!素敵ですね。お邪魔してしまった上にここまでしていただいて…」
気遣ってもらって嬉しい反面、正直なところ玲は足がズキズキと痛みを感じ始めたので会話どころではなかった。これは捻っただろうなというのは分かる。
「趣味で開けているような店ですから…あ、そうだ。確か裏にサポーターがあったはずだから見てきますね。」
そういうと桐生は裏へと消えていった。
何から何まで申し訳ないな…と思いながらほうじ茶を飲んだ。
わぁ…美味しい。まろやかでほのかに甘みがあって、適度に香ばしい。
次いで落雁を口に運ぶ。
ほろほろと口の中で溶けてなくなり、嫌な甘さが口に残らない。
めちゃくちゃいい和三盆とか使ってるんだろうな…値段を聞くのが怖い。
そう思いながら自身が着席しているカフェスペースを観察する。
カフェといってもランチやスイーツなどはなく、専らお茶がメインなようだ。
先程出してもらったほうじ茶や緑茶を持ち帰りできるスタンドがあり、店内ではお抹茶を点ててもらえるみたいだ。
一度、本場のお抹茶を飲んでみたいなぁと思ってたんだよな。
玲は興味を引くものばかりのこの店を、いたくきにいってしまった。
「お待たせしました。サポーターありましたよ。」
そう言いながら黒いサポーターを掲げた桐生が戻ってきた。
「昔、祖母が使おうとして開けたみたいなんですが、なんだかしっくり来なかったようで。よろしければ付けさせてもらってもいいですか?」
こんな色男にサポーターを付けさせるなんて気恥ずかしいが、素直に好意は受け取る事にした。
59
あなたにおすすめの小説
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる