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第一章 魔王、出会う
2話 ワシから自己紹介します
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「さて、落ち着いたところで自己紹介をしようか」
結局、少年は3杯目のおかわりをしたにも関わず、「肉とか食べたい!」とのたまったので優しく拳で解決に至り、頭を押さえて悶絶する少年に真っ裸では色々油断が出来ないと懇願されたので半渇きのパンツを履かせ終え、そして、食事を終えてこちらを見つめる鏡花の様子を確認してスイレンは声をかけた。
そういうと少年と鏡花は顔を見合わせて眉を寄せるのに気づいたが気にせずにスイレンは口を開いた。
「まずはワシはスイレンという。Fランク冒険者だ」
「吉田 健太、16歳。えーと……そのなんだ、異世界人です」
「ちょ、アンタ、馬鹿なの! ああ、もう馬鹿って知ってた!」
あっさり自分が異世界人である事を口にした黒髪の少年、健太に怒りを露わにする鏡花。
そして、渋々と言った様子を見せる鏡花が「香川 鏡花」と呟くように自己紹介した。
スイレンも鏡花よりの考え方であるので健太は軽率だと思う。
当の本人、健太は頭をガシガシと掻きながらたいして困った様子も見せずに言ってくる。
「だってさ、王都で俺達の恰好見てみんな俺達が異世界人って気づいてただろ? 仮にこの人、スイレンさんにばれなかったとしても、見ず知らずの俺達の面倒を見てくれたというお人好しに嘘を吐くのはいい気分しないぜ」
「そ、それはそうかもしれないけど」
「第一、俺達は様子見する余裕すらないじゃん。腹を割って、貸せる力があるなら貸してくださいって頭を下げるしかないと思うけど、どう?」
あっけらかんと言う健太の言葉に鏡花は呆れるが、スイレンは半周して逆に関心した。
こいつは面白い、面白い馬鹿だと。
くっくく、と笑いを漏らしつつ、健太の頭を馬鹿にするようにポンポンと叩きながらスイレンは言う。
「ああ、確かに異世界人、おそらく勇者召喚された者だろうとは気づいてたぞ。こっちでは黒髪、黒目はまったくおらん訳じゃないが極めて珍しい上、2人ともとなるとさすがにな」
「ほら見ろ、俺の言う通りだろ?」
「結果論よ。アンタは軽率馬鹿」
馬鹿馬鹿と言われ続けてムッとしたらしい健太が「なんだとぅ?」と噛みつきそうな顔を向けるが「はぁ? 何よ?」と切り返されるだけで怯む様子から力関係がはっきりと分かってしまったとスイレンは納得顔で頷く。
虚勢を張ってまだ張り合おうとする健太と受けて立つと言わんばかりの鏡花が睨み合うのを見て、話が進まないと呆れを隠さずに手を叩いてこっちに注目させる。
「はいはい、お前等が仲が良いのは分かったから話を続けるぞ」
「違うぞ! こいつは幼馴染なだけで仲なんか……」
「幼馴染じゃなかったらとっくに前に見捨ててるわよ、感謝してよね?」
貶し合う2人だが、健太が起き抜けに一番最初に鏡花の心配した様子と鏡花も状況を理解した後に最初に健太の元気な様子を確認してホッとしたのをスイレンは見ている。
どうやらお互いに幼馴染の領域を超えて男女、恋愛対象という括りには入ってなさそうであるが仲は良いのだろうとスイレンは思う。
どう見ても姉弟という感じだよな、と思うスイレンであった。
ふっふん、と得意気に健太を見つめる気の強そうな猫目を細めて、スラッとした鼻を上げるようにして笑う鏡花に健太は歯軋りをして悔しそうだ。
「やれやれ、で、勇者召喚された者達は国のバックアップを受けているという噂だったんだが、なんでお前達はこんな様に?」
スイレンが20~30人ぐらい召喚されたのだろう? と付け加えると頷く健太が答える。
「ああ、29人だ」
「30人よ。アンタ、自分をカウントしてないでしょ?」
半眼の鏡花に突っ込まれた健太はグッと唸って口をへの字にして肩を震わせる。
ふぅ、とため息を零す鏡花は健太に任せてられないとばかりにスイレンと向き合う。
「確かにバックアップは受けてる。勇者として相応しいスキルと言われた者、10人弱の一握りだけね」
「あれっておかしいよな、俺達は同じクラスメートなのに贔屓されて、巻き込まれただけだとしても面倒見る義務はあるだろう! しかも、あいつ等も俺達をあっさり見捨てたしな」
思い出していら立つ健太は、初日に銅貨一枚すら貰えずに王様にポイされたと愚痴る。
2人を見つめるスイレンは肩を竦めて口の端を上げて笑みを浮かべる。確かに呼ぶ事は出来ても返す術はないはずなので健太の言うように面倒を見るのは常識と思えるがそうではない事が分かるスイレンは失笑をせざる得ない。
「確かに捨てられて酷い目にあったんだろうが、ワシは良かったと思うぞ?」
「どうしてだよ!? 捨てられた仲間のほとんど死んだし、消息が分からなくなってるんだぜ?」
亡くなった者には悪いがな、と告げるスイレンに噛み付く健太と対称に鏡花は「もしかして」と呟いてスイレンを凝視する。
「一般には『勇者召喚』と呼ばれておるが、実は只の異世界人召喚だ。何故ならお前等、そして残りの28人を含めて勇者であるはずがない。残った奴らが魔王に挑んだら間違いなく勝てん。魔王に勝負できるのは勇者のみだからな」
だから、残されていたら無謀にも魔王に挑まされて死ぬか、国の兵器として管理されるかの違いしないとスイレンは上げていた口の端を震わせる。
先程、失笑したのは王族の愚かさは相変わらずだと呆れ返っていた為である。
「どうして、そう言い切れるの?」
凝視していた鏡花が言ってくる。
全ての根底が崩れたと言いたげの鏡花を見つめるスイレンは親指で自分を指す。
「だって、ワシが魔王だし」
そう言われた健太と鏡花が仲良く埴輪のようにスイレンを見つめた。
結局、少年は3杯目のおかわりをしたにも関わず、「肉とか食べたい!」とのたまったので優しく拳で解決に至り、頭を押さえて悶絶する少年に真っ裸では色々油断が出来ないと懇願されたので半渇きのパンツを履かせ終え、そして、食事を終えてこちらを見つめる鏡花の様子を確認してスイレンは声をかけた。
そういうと少年と鏡花は顔を見合わせて眉を寄せるのに気づいたが気にせずにスイレンは口を開いた。
「まずはワシはスイレンという。Fランク冒険者だ」
「吉田 健太、16歳。えーと……そのなんだ、異世界人です」
「ちょ、アンタ、馬鹿なの! ああ、もう馬鹿って知ってた!」
あっさり自分が異世界人である事を口にした黒髪の少年、健太に怒りを露わにする鏡花。
そして、渋々と言った様子を見せる鏡花が「香川 鏡花」と呟くように自己紹介した。
スイレンも鏡花よりの考え方であるので健太は軽率だと思う。
当の本人、健太は頭をガシガシと掻きながらたいして困った様子も見せずに言ってくる。
「だってさ、王都で俺達の恰好見てみんな俺達が異世界人って気づいてただろ? 仮にこの人、スイレンさんにばれなかったとしても、見ず知らずの俺達の面倒を見てくれたというお人好しに嘘を吐くのはいい気分しないぜ」
「そ、それはそうかもしれないけど」
「第一、俺達は様子見する余裕すらないじゃん。腹を割って、貸せる力があるなら貸してくださいって頭を下げるしかないと思うけど、どう?」
あっけらかんと言う健太の言葉に鏡花は呆れるが、スイレンは半周して逆に関心した。
こいつは面白い、面白い馬鹿だと。
くっくく、と笑いを漏らしつつ、健太の頭を馬鹿にするようにポンポンと叩きながらスイレンは言う。
「ああ、確かに異世界人、おそらく勇者召喚された者だろうとは気づいてたぞ。こっちでは黒髪、黒目はまったくおらん訳じゃないが極めて珍しい上、2人ともとなるとさすがにな」
「ほら見ろ、俺の言う通りだろ?」
「結果論よ。アンタは軽率馬鹿」
馬鹿馬鹿と言われ続けてムッとしたらしい健太が「なんだとぅ?」と噛みつきそうな顔を向けるが「はぁ? 何よ?」と切り返されるだけで怯む様子から力関係がはっきりと分かってしまったとスイレンは納得顔で頷く。
虚勢を張ってまだ張り合おうとする健太と受けて立つと言わんばかりの鏡花が睨み合うのを見て、話が進まないと呆れを隠さずに手を叩いてこっちに注目させる。
「はいはい、お前等が仲が良いのは分かったから話を続けるぞ」
「違うぞ! こいつは幼馴染なだけで仲なんか……」
「幼馴染じゃなかったらとっくに前に見捨ててるわよ、感謝してよね?」
貶し合う2人だが、健太が起き抜けに一番最初に鏡花の心配した様子と鏡花も状況を理解した後に最初に健太の元気な様子を確認してホッとしたのをスイレンは見ている。
どうやらお互いに幼馴染の領域を超えて男女、恋愛対象という括りには入ってなさそうであるが仲は良いのだろうとスイレンは思う。
どう見ても姉弟という感じだよな、と思うスイレンであった。
ふっふん、と得意気に健太を見つめる気の強そうな猫目を細めて、スラッとした鼻を上げるようにして笑う鏡花に健太は歯軋りをして悔しそうだ。
「やれやれ、で、勇者召喚された者達は国のバックアップを受けているという噂だったんだが、なんでお前達はこんな様に?」
スイレンが20~30人ぐらい召喚されたのだろう? と付け加えると頷く健太が答える。
「ああ、29人だ」
「30人よ。アンタ、自分をカウントしてないでしょ?」
半眼の鏡花に突っ込まれた健太はグッと唸って口をへの字にして肩を震わせる。
ふぅ、とため息を零す鏡花は健太に任せてられないとばかりにスイレンと向き合う。
「確かにバックアップは受けてる。勇者として相応しいスキルと言われた者、10人弱の一握りだけね」
「あれっておかしいよな、俺達は同じクラスメートなのに贔屓されて、巻き込まれただけだとしても面倒見る義務はあるだろう! しかも、あいつ等も俺達をあっさり見捨てたしな」
思い出していら立つ健太は、初日に銅貨一枚すら貰えずに王様にポイされたと愚痴る。
2人を見つめるスイレンは肩を竦めて口の端を上げて笑みを浮かべる。確かに呼ぶ事は出来ても返す術はないはずなので健太の言うように面倒を見るのは常識と思えるがそうではない事が分かるスイレンは失笑をせざる得ない。
「確かに捨てられて酷い目にあったんだろうが、ワシは良かったと思うぞ?」
「どうしてだよ!? 捨てられた仲間のほとんど死んだし、消息が分からなくなってるんだぜ?」
亡くなった者には悪いがな、と告げるスイレンに噛み付く健太と対称に鏡花は「もしかして」と呟いてスイレンを凝視する。
「一般には『勇者召喚』と呼ばれておるが、実は只の異世界人召喚だ。何故ならお前等、そして残りの28人を含めて勇者であるはずがない。残った奴らが魔王に挑んだら間違いなく勝てん。魔王に勝負できるのは勇者のみだからな」
だから、残されていたら無謀にも魔王に挑まされて死ぬか、国の兵器として管理されるかの違いしないとスイレンは上げていた口の端を震わせる。
先程、失笑したのは王族の愚かさは相変わらずだと呆れ返っていた為である。
「どうして、そう言い切れるの?」
凝視していた鏡花が言ってくる。
全ての根底が崩れたと言いたげの鏡花を見つめるスイレンは親指で自分を指す。
「だって、ワシが魔王だし」
そう言われた健太と鏡花が仲良く埴輪のようにスイレンを見つめた。
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