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5章 表舞台へ、静かに階段を上る
65話 男はバザーが開催されている闇市に降り立つ
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情報屋が御者する馬車に揺られて出発して1,2時間経った頃、幌をぴっちり閉じられて外が見えない俺がぼやくように話しかけた。
「元締めがいるという闇市まで後どれくらい? いい加減、飽きてきたんだが」
「もう少しだ。遠目に見え始めているから1時間もかからない。我慢してくれ」
ややうんざりした声音で返事をする情報屋に俺は苦笑する。
まあ、この1,2時間で同じ質問を10回はしたからしゃーないか~
「もう見え始めているなら外を見せてくれてもいいんじゃねぇ? 息苦しいしさ」
「すまないな、これも元締めの指示で本来は特別隠す意味はないんだが……どんな狙いがあるのか知らないが特にアンタには効果はない……だろう?」
「はぁ? 何の事だ?」
見えてないと分かっているのに肩を竦める俺は苦笑を浮かべる。
うへぇ、見破られてらぁ。
幌つきの馬車に乗り込まされた時にこっそりと探査を10にしておいたので、プリットの位置も余裕で捉えている。
おそらく国単位は網羅出来そうだが、細かいところまで一気に調べようというのは無理そうだ。
試しにやろうとした結果、頭が割れそうな頭痛に苛まされたしな……
単純に俺の脳の領域が足りてないのか、一気にスキルを上げたせいで使いこなせないのか……
両方が正解で、また両方が不正解だろうと思われる。
人の許容領域を明らかに超えているだろうし、また使いこなせば今以上には使えると思う。
まったく使えるのか使えないのか分からんスキルだな……
『道具も知恵も使い様。スキルも同じ』
おっ、スキル製造機! 久しぶりに喋ったと思ったら痛いところだが良い事を言うな?
『そして、私を上手に扱う主に貰われたかった』
ぶは、喋ったら喋ったら毒を吐くとか!
ってか、お前はどれだけ上等だと思ってやがんだ!? 最近、お前が反応してスキルを提供した時ってエロ関係ばっかだろ!!
『……』
おおうぉーぃ! 相変わらず都合が悪くなると黙るよな、お前っ!
片眉をピクピクさせてコメカミを揉んでいると黙り込んで機嫌が悪くなったと勘違いした情報屋が申し訳なさそうに言ってくる。
「本当にもう少しだから辛抱してくれ。アンタにとっても無駄に元締めとの関係を悪化させる事はしたくないだろ?」
「……はぁ、了解したよ。着くまで黙ってるから御者に専念してくれ」
俺がそう言うと「そうしてくれると助かる」と情報屋が言って馬の蹄の音と車輪が地面に接する音だけが静かに聞こえてくる。
はぁ、とりあえずスキル製造機に怒りをぶつけたところで無意味だし、堪えるとも思わないからスル―する。重要な事は使いこなしてるとは言えない探査で位置関係は問題ないし、突然、ここで放りだされても問題なく帰れる事は間違いない。
まあ、そんな事より、今は情報屋が言った、わざとなのか、漏れた本音なのか分からないが「これも元締めの指示で本来は特別隠す意味はないんだが」の部分。
元締めが俺に興味を持っているという情報屋の言葉を信じるなら……
絶対、これって試されてるよな……今後の対応や言動から探りを入れようとしてきそうな気がする。
能力的なものを調べる意図もあるだろうけど、人となり、考え方を多く知ろうとしてるような気がする。
だから、きっと情報屋は意図的に元締めの指示だと洩らしたのだと思う。情報を売り買いする者として元締めの真意が知る機会を見逃したくないから俺と元締めの成り行きから拾える情報が欲しいのだろう。
その情報にどれだけの価値があるかは俺にはさっぱりだから放置しようと思うが問題は元締めへの対応だ。
おそらく闇市に着いたら、至るところから監視の目があると思われる。
本来なら探査や危険探知が仕事をして、それらの反応を捉えられるのだろうが使いこなしてないせいか、敵意があったり、殺意を向けられないと上手く反応しない。
ほとんど人がいない場所であればそうでもないが、闇市と呼ばれる場所が人が少ないとは思えないし、勝手なイメージだがアヤシイと思える者達など見渡せばいくらでもいそうだ。
だから、俺は腹を決める。
見られるのは仕方がないから、あえて自然体で通すと。
そういった本職相手に上手く誤魔化し切れるとは思えないし、なのに足掻くようにして隠そうとすると底が浅いと思われる。
それだったら見たければ見ろ、と堂々として下手にちょっかいをかけたら叩き潰すとばかりに余裕を見せた方がいい。
俺が『名もなき英雄』と知られているのは間違いないはず、正面から敵に回すのは愚策と知っているだろう。多少、俺の性格から有利に進められる術を見つける事に成功したとして良くて痛み分け。
なので俺がすべき対応は
過剰な利益を求めない。
へりくだらない。
そして……
「決して、大事なモノを見失わない」
呟くように漏れた言葉、モヒン、冒険者ギルドのみんな、農場で働く子達、先輩と慕うマロン達。
何より、ターニャ達、俺の嫁達にとってどうであるか……
完全勝利など求めない。むしろ多少なら負けてもいいと思っている。
百戦錬磨の相手にガチで勝負を挑むのは馬鹿げているし、そこまで自惚れてない。
はっきり言って好意的な対応をしてくれている情報屋にすらそっち方面で敵う気がしてないのに、その上役に対してどうにかなるという考えは馬鹿すぎる。
その多少の負け、不利を背負っても元締めとの繋がりを持つ事は意義があると俺は考えていた。
組織として冒険者ギルドは信用が出来そうだが、やはり商売など金が絡む関係ではそれほど力にはなって貰えない。
商売と言えば、それぞれの分野に冒険者ギルドとは違うギルドが存在するらしい。
前回の情報屋の話の流れで知ったチロの素性、皮ギルドの事を知り、細かく住み分けがされていた。
皮ギルドはチロを通じて繋がりの強化を持ちかける事は出来るだろうがその他のギルドとなると出来なくはないが凄まじく時間と金がかかる。
冒険者として、そして農場を運営などをしている俺にとって金以上に時間が問題だ。
その短縮を計る為の窓口が俺には必要なわけだが、一般的には国、貴族、もしくは大商人などになって貰うのが手っ取り早い。
しかし、前回のワイバーン襲撃の時の国としての考え、軍の情けない有様、そして、街を守護すべき貴族、プリットにいるフェレチオ子爵の対応……取引相手として最悪と言えた。
まして、フェレチオ子爵についてはティテールの事があるから余計に取引相手として信用は出来ない。
だから、リモメ王国に頼る事は出来ない。情報屋が語った内容を信用するなら隣国もきな臭いようなのでそちらも頼れなさそうだ。
まったく、あっちもこっちもだな……
それで消去法で闇市の元締めに頼る事を視野に入れている訳だが……
俺に興味を持っており、無駄に刺激せずにこちらから接触させる、または待てるだけの人物。
「闇市に入ったから、そろそろ幌から出てきてもいいぞ」
「有難う」
考え事をしていて気付くのが遅れたが、言われてみれば人の気配、活気がある人の声が聞こえてくる。
ゆっくりと御者席側から顔を出す俺は、元締めが想像通りのキレ者であれば助かるんだが、と思い溜息を零す。
「キレ過ぎても困るんだがな」
「何の話だ?」
「別に、それより想像してた闇市とだいぶ違うな」
俺は元締めの事を考えるのを一旦止め、情報屋の言葉を流し、辺りを見渡す。
プリットでは西洋風な建物だったが、こちらは中近東の土壁で作られたような建物が目に付く。
店も中近東で見られるバザーといった感じに見え、店の屋根も布で作られており、雨が降り出したらそれほど持ちそうにない。
まあ、多分、合羽のように雨が弾き易い布なのかもしれないが酷く頼りない。
「プリットから馬車で2時間程しか離れてないのに全然違う」
「まあ闇市だしな。ここで住むつもりはないから簡易になって当然だ」
なるほど、ずっとここで商売、住居として利用するつもりもなく、例えば国などから追われた時に躊躇なく逃亡出来る為にか。
実用的だな。
馬車で進む道なりに見渡していると商売している人達を見ても悪党とはっきり分かる風体をしているものがほとんど見当たらない。
「なんか強面のおっさんが売り買いしてると思ってたけど普通な人?」
「なわけないだろ? ここは闇市だぞ。買いに来てる客の大半が脛にキズありだし、売る側は真っ当な奴を捜す方が大変だ」
情報屋に呆れ顔で言われて、もう一度見るが客と思われる人にニコニコと対応して商品、拳ぐらいの大きさの小袋にパンパンに入った白い粉を見せて同じぐらいの小袋にパンパンに入った金を受け取る姿を見る。
こ、小麦粉かなんかだよな? 超高級な感じの?
半眼の変顔になって固まる俺に情報屋が言ってくる。
「ここ闇市では大抵のモノは手に入る。あそこにある木箱、家紋入りのがあるだろう? あれは軍からの横流し品だ。更にここを奥の端には女がメインのドレ……」
「ストップッ!!! それ以上は言わんでくれ。俺はその手のは興味もないし、知ったら俺はきっと暴れる」
情報屋の言葉を黙らせて覗き込むようにして睨みつける俺に降参とばかりに手綱を持ったまま軽く両手を上げる。
分かってくれたらしい情報屋から顔を離して嘆息しつつ、無駄に入ってた肩から力を抜く。
「そうしないとどうにもならない人もいるだろうし、ここでの流儀もあるんだろう。だが、俺は納得できそうにないから知らないままにさせてくれ」
「そうだな、アンタには関係ない話を無駄にしてすまない」
そう言うと再び、御者に専念する情報屋の隣に腰掛ける俺は遠い目をして周りを見渡す。
知らないフリをして見過ごすなんて最低なのは分かってる。少し前の俺だったらあんな事を言わずに何も考えずに飛び出した。
だが、俺は農場を運営し始めて、子供達を受け入れ、ワイバーン襲撃の後にも更に受け入れた結果、今、金策に奔走している。
綺麗事だけではどうにもならないと知ってしまった。
義侠心で助けにいって解放したら俺の心は晴れるだろう。
しかし、その後はどうする?
売られてきた子達が帰るべき場所はあるのだろうか?
一部はあるかもしれない。でも大半の子達に帰るべき場所はなく、帰っても居場所はなく、結局違う場所に売られるだけだろう。
根本的な解決にならないからだ。
なら、俺が農場などに受け入れる? 現状で金策に奔走しているのにどれだけいるか分からない、いや、今後、同じような道を辿ると思われる子達を全て。
無理だ、現実的じゃない。
くそう、大事なモノを見失わないと元締めと面談する上で覚悟を決めたつもりだったが、こんなところでも覚悟を求められるとは思ってなかった……
今は見て見ぬふりをする。でも絶対に時間がかかってもなんとかしてやる!
下唇を噛み締めて感情を抑える俺の脳裏でワイバーンに襲われようとしていた青髪の少女の言葉が蘇る。
「どうしてこうなるの! 私は弱い人達を守る為に、必死に出世して漸く、手が届くと思ってたのに!」
あっ、そうか、トリルヴィはこういう人達も本当の意味で救いたいと頑張っていたのか。
それで自分に足りない部分を俺に協力を求め、更に覚悟も求めた。
もっと早くこれを説明されていれば……いや、多分、その時に言われても上辺しか理解しなかっただろうし、こうやって分かってくると現時点でもどの程度、正しい理解が出来てるか自信がない。
まったくとんでもない子だ。ナリも顔も可愛いのに俺の手に負えないかもしれない宿題を置いて帰ってしまった。
纏まらない考えに苛立つ俺が頭を掻いていると隣にいる情報屋が馬車を停める。
今まで見ていた土壁の粗末な家と違い、西洋風の大きな屋敷、とは言ってもプリットにはこれ以上の屋敷は沢山あるがここの事情を知ってしまった俺から見てもそれなりの身分の者が住んでいるのが分かった。
「元締めの屋敷に到着した。ここからはアンタ1人で行かせるように言われてる」
「そうか、案内してくれて有難う」
そう言うと俺は馬車から降りて、「プリットでまた会おう」と軽く手を振られると情報屋は馬車を発車させた。
去っていく情報屋の背後で軽く手を振って見送る俺は
「帰りは送ってくれないのね……」
この行動から情報屋には俺が現在地とプリットの位置を理解していると確信されていると感じさせられた。
色々と諦めた俺は屋敷に向かい、ドアノッカーを叩いてドアの前で待つ。
しばらくすると片眼鏡をかけた白髪混じりの好々爺といった執事服を着た初老の男性がドアを開け、俺の存在を確認して静かにお辞儀してきた。
「シーナ様ですね? 主がお待ちしております。早速、ご案内します」
そう言うとドアを大きく開いて俺を中へと招き入れる。
むぅ、執事と思われる人までに顔とか割れてるの?
中に入ると「こちらです」と初老の執事に案内されて奥にある部屋に連れて行かれると甲高い女の声がドア越しから聞こえてきた。
えっ? この声って……
眉を寄せる俺の様子に気付いているだろうし、俺が聞こえてる声も気付いているはずの初老の執事は意にも返さない様子でドアのノブを掴むと躊躇なく開く。
開かれると先程までドア越しだった甲高いと思われてた声は嬌声であり、真正面にある大きな椅子には30代と思われる精悍な男が座り、色っぽい女が男を椅子にするように背中を預けるような格好でいた。
「ああんっ!!」
男に下から大きく突き上げられて、舌を突き出して喘ぐ女。
ちなみに男も女も全裸でヤッてる最中だ。
豊満な胸を潰すように乱暴に掴んで身を捩る隙間から俺を覗く男が口の端を上げて告げる。
「早く入れ、『名もなき英雄』」
俺に話しかける最中も突き上げるのを止めない男を見て嘆息する俺。
そうきたか……
呆れながらも俺は入室し、俺が入ったのを確認して初老の執事も入室して静かにドアを閉じた。
「元締めがいるという闇市まで後どれくらい? いい加減、飽きてきたんだが」
「もう少しだ。遠目に見え始めているから1時間もかからない。我慢してくれ」
ややうんざりした声音で返事をする情報屋に俺は苦笑する。
まあ、この1,2時間で同じ質問を10回はしたからしゃーないか~
「もう見え始めているなら外を見せてくれてもいいんじゃねぇ? 息苦しいしさ」
「すまないな、これも元締めの指示で本来は特別隠す意味はないんだが……どんな狙いがあるのか知らないが特にアンタには効果はない……だろう?」
「はぁ? 何の事だ?」
見えてないと分かっているのに肩を竦める俺は苦笑を浮かべる。
うへぇ、見破られてらぁ。
幌つきの馬車に乗り込まされた時にこっそりと探査を10にしておいたので、プリットの位置も余裕で捉えている。
おそらく国単位は網羅出来そうだが、細かいところまで一気に調べようというのは無理そうだ。
試しにやろうとした結果、頭が割れそうな頭痛に苛まされたしな……
単純に俺の脳の領域が足りてないのか、一気にスキルを上げたせいで使いこなせないのか……
両方が正解で、また両方が不正解だろうと思われる。
人の許容領域を明らかに超えているだろうし、また使いこなせば今以上には使えると思う。
まったく使えるのか使えないのか分からんスキルだな……
『道具も知恵も使い様。スキルも同じ』
おっ、スキル製造機! 久しぶりに喋ったと思ったら痛いところだが良い事を言うな?
『そして、私を上手に扱う主に貰われたかった』
ぶは、喋ったら喋ったら毒を吐くとか!
ってか、お前はどれだけ上等だと思ってやがんだ!? 最近、お前が反応してスキルを提供した時ってエロ関係ばっかだろ!!
『……』
おおうぉーぃ! 相変わらず都合が悪くなると黙るよな、お前っ!
片眉をピクピクさせてコメカミを揉んでいると黙り込んで機嫌が悪くなったと勘違いした情報屋が申し訳なさそうに言ってくる。
「本当にもう少しだから辛抱してくれ。アンタにとっても無駄に元締めとの関係を悪化させる事はしたくないだろ?」
「……はぁ、了解したよ。着くまで黙ってるから御者に専念してくれ」
俺がそう言うと「そうしてくれると助かる」と情報屋が言って馬の蹄の音と車輪が地面に接する音だけが静かに聞こえてくる。
はぁ、とりあえずスキル製造機に怒りをぶつけたところで無意味だし、堪えるとも思わないからスル―する。重要な事は使いこなしてるとは言えない探査で位置関係は問題ないし、突然、ここで放りだされても問題なく帰れる事は間違いない。
まあ、そんな事より、今は情報屋が言った、わざとなのか、漏れた本音なのか分からないが「これも元締めの指示で本来は特別隠す意味はないんだが」の部分。
元締めが俺に興味を持っているという情報屋の言葉を信じるなら……
絶対、これって試されてるよな……今後の対応や言動から探りを入れようとしてきそうな気がする。
能力的なものを調べる意図もあるだろうけど、人となり、考え方を多く知ろうとしてるような気がする。
だから、きっと情報屋は意図的に元締めの指示だと洩らしたのだと思う。情報を売り買いする者として元締めの真意が知る機会を見逃したくないから俺と元締めの成り行きから拾える情報が欲しいのだろう。
その情報にどれだけの価値があるかは俺にはさっぱりだから放置しようと思うが問題は元締めへの対応だ。
おそらく闇市に着いたら、至るところから監視の目があると思われる。
本来なら探査や危険探知が仕事をして、それらの反応を捉えられるのだろうが使いこなしてないせいか、敵意があったり、殺意を向けられないと上手く反応しない。
ほとんど人がいない場所であればそうでもないが、闇市と呼ばれる場所が人が少ないとは思えないし、勝手なイメージだがアヤシイと思える者達など見渡せばいくらでもいそうだ。
だから、俺は腹を決める。
見られるのは仕方がないから、あえて自然体で通すと。
そういった本職相手に上手く誤魔化し切れるとは思えないし、なのに足掻くようにして隠そうとすると底が浅いと思われる。
それだったら見たければ見ろ、と堂々として下手にちょっかいをかけたら叩き潰すとばかりに余裕を見せた方がいい。
俺が『名もなき英雄』と知られているのは間違いないはず、正面から敵に回すのは愚策と知っているだろう。多少、俺の性格から有利に進められる術を見つける事に成功したとして良くて痛み分け。
なので俺がすべき対応は
過剰な利益を求めない。
へりくだらない。
そして……
「決して、大事なモノを見失わない」
呟くように漏れた言葉、モヒン、冒険者ギルドのみんな、農場で働く子達、先輩と慕うマロン達。
何より、ターニャ達、俺の嫁達にとってどうであるか……
完全勝利など求めない。むしろ多少なら負けてもいいと思っている。
百戦錬磨の相手にガチで勝負を挑むのは馬鹿げているし、そこまで自惚れてない。
はっきり言って好意的な対応をしてくれている情報屋にすらそっち方面で敵う気がしてないのに、その上役に対してどうにかなるという考えは馬鹿すぎる。
その多少の負け、不利を背負っても元締めとの繋がりを持つ事は意義があると俺は考えていた。
組織として冒険者ギルドは信用が出来そうだが、やはり商売など金が絡む関係ではそれほど力にはなって貰えない。
商売と言えば、それぞれの分野に冒険者ギルドとは違うギルドが存在するらしい。
前回の情報屋の話の流れで知ったチロの素性、皮ギルドの事を知り、細かく住み分けがされていた。
皮ギルドはチロを通じて繋がりの強化を持ちかける事は出来るだろうがその他のギルドとなると出来なくはないが凄まじく時間と金がかかる。
冒険者として、そして農場を運営などをしている俺にとって金以上に時間が問題だ。
その短縮を計る為の窓口が俺には必要なわけだが、一般的には国、貴族、もしくは大商人などになって貰うのが手っ取り早い。
しかし、前回のワイバーン襲撃の時の国としての考え、軍の情けない有様、そして、街を守護すべき貴族、プリットにいるフェレチオ子爵の対応……取引相手として最悪と言えた。
まして、フェレチオ子爵についてはティテールの事があるから余計に取引相手として信用は出来ない。
だから、リモメ王国に頼る事は出来ない。情報屋が語った内容を信用するなら隣国もきな臭いようなのでそちらも頼れなさそうだ。
まったく、あっちもこっちもだな……
それで消去法で闇市の元締めに頼る事を視野に入れている訳だが……
俺に興味を持っており、無駄に刺激せずにこちらから接触させる、または待てるだけの人物。
「闇市に入ったから、そろそろ幌から出てきてもいいぞ」
「有難う」
考え事をしていて気付くのが遅れたが、言われてみれば人の気配、活気がある人の声が聞こえてくる。
ゆっくりと御者席側から顔を出す俺は、元締めが想像通りのキレ者であれば助かるんだが、と思い溜息を零す。
「キレ過ぎても困るんだがな」
「何の話だ?」
「別に、それより想像してた闇市とだいぶ違うな」
俺は元締めの事を考えるのを一旦止め、情報屋の言葉を流し、辺りを見渡す。
プリットでは西洋風な建物だったが、こちらは中近東の土壁で作られたような建物が目に付く。
店も中近東で見られるバザーといった感じに見え、店の屋根も布で作られており、雨が降り出したらそれほど持ちそうにない。
まあ、多分、合羽のように雨が弾き易い布なのかもしれないが酷く頼りない。
「プリットから馬車で2時間程しか離れてないのに全然違う」
「まあ闇市だしな。ここで住むつもりはないから簡易になって当然だ」
なるほど、ずっとここで商売、住居として利用するつもりもなく、例えば国などから追われた時に躊躇なく逃亡出来る為にか。
実用的だな。
馬車で進む道なりに見渡していると商売している人達を見ても悪党とはっきり分かる風体をしているものがほとんど見当たらない。
「なんか強面のおっさんが売り買いしてると思ってたけど普通な人?」
「なわけないだろ? ここは闇市だぞ。買いに来てる客の大半が脛にキズありだし、売る側は真っ当な奴を捜す方が大変だ」
情報屋に呆れ顔で言われて、もう一度見るが客と思われる人にニコニコと対応して商品、拳ぐらいの大きさの小袋にパンパンに入った白い粉を見せて同じぐらいの小袋にパンパンに入った金を受け取る姿を見る。
こ、小麦粉かなんかだよな? 超高級な感じの?
半眼の変顔になって固まる俺に情報屋が言ってくる。
「ここ闇市では大抵のモノは手に入る。あそこにある木箱、家紋入りのがあるだろう? あれは軍からの横流し品だ。更にここを奥の端には女がメインのドレ……」
「ストップッ!!! それ以上は言わんでくれ。俺はその手のは興味もないし、知ったら俺はきっと暴れる」
情報屋の言葉を黙らせて覗き込むようにして睨みつける俺に降参とばかりに手綱を持ったまま軽く両手を上げる。
分かってくれたらしい情報屋から顔を離して嘆息しつつ、無駄に入ってた肩から力を抜く。
「そうしないとどうにもならない人もいるだろうし、ここでの流儀もあるんだろう。だが、俺は納得できそうにないから知らないままにさせてくれ」
「そうだな、アンタには関係ない話を無駄にしてすまない」
そう言うと再び、御者に専念する情報屋の隣に腰掛ける俺は遠い目をして周りを見渡す。
知らないフリをして見過ごすなんて最低なのは分かってる。少し前の俺だったらあんな事を言わずに何も考えずに飛び出した。
だが、俺は農場を運営し始めて、子供達を受け入れ、ワイバーン襲撃の後にも更に受け入れた結果、今、金策に奔走している。
綺麗事だけではどうにもならないと知ってしまった。
義侠心で助けにいって解放したら俺の心は晴れるだろう。
しかし、その後はどうする?
売られてきた子達が帰るべき場所はあるのだろうか?
一部はあるかもしれない。でも大半の子達に帰るべき場所はなく、帰っても居場所はなく、結局違う場所に売られるだけだろう。
根本的な解決にならないからだ。
なら、俺が農場などに受け入れる? 現状で金策に奔走しているのにどれだけいるか分からない、いや、今後、同じような道を辿ると思われる子達を全て。
無理だ、現実的じゃない。
くそう、大事なモノを見失わないと元締めと面談する上で覚悟を決めたつもりだったが、こんなところでも覚悟を求められるとは思ってなかった……
今は見て見ぬふりをする。でも絶対に時間がかかってもなんとかしてやる!
下唇を噛み締めて感情を抑える俺の脳裏でワイバーンに襲われようとしていた青髪の少女の言葉が蘇る。
「どうしてこうなるの! 私は弱い人達を守る為に、必死に出世して漸く、手が届くと思ってたのに!」
あっ、そうか、トリルヴィはこういう人達も本当の意味で救いたいと頑張っていたのか。
それで自分に足りない部分を俺に協力を求め、更に覚悟も求めた。
もっと早くこれを説明されていれば……いや、多分、その時に言われても上辺しか理解しなかっただろうし、こうやって分かってくると現時点でもどの程度、正しい理解が出来てるか自信がない。
まったくとんでもない子だ。ナリも顔も可愛いのに俺の手に負えないかもしれない宿題を置いて帰ってしまった。
纏まらない考えに苛立つ俺が頭を掻いていると隣にいる情報屋が馬車を停める。
今まで見ていた土壁の粗末な家と違い、西洋風の大きな屋敷、とは言ってもプリットにはこれ以上の屋敷は沢山あるがここの事情を知ってしまった俺から見てもそれなりの身分の者が住んでいるのが分かった。
「元締めの屋敷に到着した。ここからはアンタ1人で行かせるように言われてる」
「そうか、案内してくれて有難う」
そう言うと俺は馬車から降りて、「プリットでまた会おう」と軽く手を振られると情報屋は馬車を発車させた。
去っていく情報屋の背後で軽く手を振って見送る俺は
「帰りは送ってくれないのね……」
この行動から情報屋には俺が現在地とプリットの位置を理解していると確信されていると感じさせられた。
色々と諦めた俺は屋敷に向かい、ドアノッカーを叩いてドアの前で待つ。
しばらくすると片眼鏡をかけた白髪混じりの好々爺といった執事服を着た初老の男性がドアを開け、俺の存在を確認して静かにお辞儀してきた。
「シーナ様ですね? 主がお待ちしております。早速、ご案内します」
そう言うとドアを大きく開いて俺を中へと招き入れる。
むぅ、執事と思われる人までに顔とか割れてるの?
中に入ると「こちらです」と初老の執事に案内されて奥にある部屋に連れて行かれると甲高い女の声がドア越しから聞こえてきた。
えっ? この声って……
眉を寄せる俺の様子に気付いているだろうし、俺が聞こえてる声も気付いているはずの初老の執事は意にも返さない様子でドアのノブを掴むと躊躇なく開く。
開かれると先程までドア越しだった甲高いと思われてた声は嬌声であり、真正面にある大きな椅子には30代と思われる精悍な男が座り、色っぽい女が男を椅子にするように背中を預けるような格好でいた。
「ああんっ!!」
男に下から大きく突き上げられて、舌を突き出して喘ぐ女。
ちなみに男も女も全裸でヤッてる最中だ。
豊満な胸を潰すように乱暴に掴んで身を捩る隙間から俺を覗く男が口の端を上げて告げる。
「早く入れ、『名もなき英雄』」
俺に話しかける最中も突き上げるのを止めない男を見て嘆息する俺。
そうきたか……
呆れながらも俺は入室し、俺が入ったのを確認して初老の執事も入室して静かにドアを閉じた。
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書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。
【第七部開始】
召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。
一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。
だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった!
突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか!
魔物に襲われた主人公の運命やいかに!
※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。
※カクヨムにて先行公開中

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
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孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
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こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

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俺は楽しみにしていることがあった。
それはある人と話すことだ。
「おはよう、優翔くん」
「おはよう、涼香さん」
「もしかして昨日も夜更かししてたの? 目の下クマができてるよ?」
「昨日ちょっと寝れなくてさ」
「何かあったら私に相談してね?」
「うん、絶対する」
この時間がずっと続けばいいと思った。
だけどそれが続くことはなかった。
ある日、学校の行き道で彼女を見つける。
見ていると横からトラックが走ってくる。
俺はそれを見た瞬間に走り出した。
大切な人を守れるなら後悔などない。
神から貰った『コピー』のスキルでたくさんの人を救う物語。
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