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第二十章 キューバ戦役
鳳翔の参戦
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『お久しぶりです、瑞鶴さん』
「そんな久しぶりって程じゃないと思うけど、援軍に来てくれたのは助かるわ」
『先日の戦いでは何もできませんでしたから、少しでもお役に立てると嬉しいです』
原子力空母鳳翔は瑞鶴やツェッペリンより遥かに巨大であり、全長なら大和より60mも長い。
『それと、皆さんには朗報です。帝国海軍はグレナダ鎮守府の備蓄を皆さんに提供すると決定しました』
「備蓄なんてあったのね」
『鎮守府ですから。それと、航空機輸送艦も連れて来ましたので、この場で補充ができますよ』
「それはありがたいわね。よろしく頼むわ」
まだ瑞鶴の修理は行えないが、艦載機の補充は受けられる。航空機輸送艦から海上要塞に荷降ろしして、それを瑞鶴に載せるという二度手間であったが、グアンタナモ基地に戻るよりは早く済むだろう。
『瑞鶴、ドイツの艦載機はないのか?』
ツェッペリンが尋ねてきた。
「いやいや、ある訳ないでしょ」
『む……そうか……』
ツェッペリンは日本の艦載機を使うのが非常に嫌そうである。
「我慢しなさい。ないよりはマシでしょ」
『それはそうだがな……』
「大体、補給が欲しいならドイツ海軍に頼めばいいじゃない。あんたの妹は割とすぐそこにいるでしょ」
『シャルンホルストを沈めた手前、そんなことができるか?』
「ま、無理ね」
ドイツ軍と協力するというのは、当分は無理そうである。
○
一方その頃。シャルンホルストに代わってグナイゼナウ率いるドイツ海軍大洋艦隊第二隊群は、依然としてバハマに留まっていた。つまりエンタープライズの目と鼻の先なのだが、目下のところ特に攻撃を受けてはいない。アメリカ軍もイギリス領を攻撃して無駄に敵を増やしたくはないのだろう。
「グナイゼナウ、キューバが大変なことになってるみたいだけど、何か手を打つつもりはないのかしら?」
プリンツ・オイゲンはグナイゼナウに尋ねた。
「今の所は特にないよ」
「あらそう? 私達の位置なら、アメリカ軍を叩くのにちょうどいいと思うけどね」
キューバ戦争の前線はバハマのちょうど目の前だ。第二隊群がアメリカ軍の横腹に殴り掛かれば、急激に戦線を拡大させているアメリカ軍が逆に崩壊するかもしれない。
「それは分かってる。だけど、エンタープライズの標的にされると私達の戦力で相手するのは厳しいし、日本軍と協力することになるのは御免だよ」
「旗艦ともあろう者が、そんな非合理的な理由で選択を下していいものかしら」
「後者は忘れてくれ。それでも、前者だけで十分な理由だろう?」
「ええ。癪に障るけど、その通りね」
第二隊群の戦力は、戦艦がグナイゼナウのみ、空母はペーター・シュトラッサーのみ、重巡洋艦はプリンツ・オイゲンとザイドリッツだけという貧弱な戦力だ。これでアメリカ海軍を相手にするのは不可能である。
とにもかくにも、グナイゼナウは動きたくなかったし、現実的に考えても動けないので、アメリカ軍の監視だけを続けることにした。
○
さて、瑞鶴とツェッペリンは艦載機の補充を済ました。瑞鶴やゲバラは大和より広い鳳翔の艦内に移った。有賀中将はあくまで大和の艦長なので大和に残ったが、連絡武官を何人か寄越してくれた。大した人数がいる訳でもないので司令部を置くのは大和でもよかったのだが、鳳翔が自分の艦から出たくないということで、このようになっている。
鳳翔は夕風の押す車椅子に乗って現れた。手足が機械になっている鳳翔は自ら歩くことも食事を摂ることもできないのである。
「船魄として会うのは初めてですね、瑞鶴さん」
「ええ。なかなか、その、痛々しい見た目してるわね……」
瑞鶴は特に悪口のつもりはなかったのだが、夕風は悪い意味に捉えてしまったようだ。
「ちょっとあなた! 鳳翔様に失礼ですよ!」
「い、いや、別に悪い意味で言ったんじゃないんだけど……」
「まあまあ、夕風。私は気にしていませんから」
「そう、ですか……。ですが鳳翔様、この人達にはくれぐれも気を付けてくださいね!」
「それ本人の前で言う?」
何故か夕風に敵意を向けられつつ、作戦会議が始まった。
「恐らく、私に期待されているのは地上への支援、そうですよね?」
鳳翔は早速ゲバラに尋ねた。
「その通りだ。地上への支援には、やっぱり数が重要だからね」
船魄がどれほど精確に爆弾を命中させられても、爆弾の積載量そのものを増やすことはできない。瑞鶴やツェッペリンでは地上支援に限界があった。
「承りました。それを想定して、艦上爆撃機を多めに搭載しています。補給用の航空爆弾も」
「おお、実に頼もしいね。今のアメリカ軍は、かなり前のめりになっている状態だ。ここで後ろを爆撃して補給線を切断すれば、戦況は一気に傾くだろう」
「そのつもりです。それと瑞鶴さん達には、可能な限り護衛をお願いします。私の操縦の腕は、まだあまり高くありませんから」
「分かった。お互い一つの仕事に集中した方がやりやすいからね」
世界最大の空母が味方に加わったことで月虹はにわかに勢いを取り戻し、キューバ軍と共にアメリカ軍への反撃を開始した。
「そんな久しぶりって程じゃないと思うけど、援軍に来てくれたのは助かるわ」
『先日の戦いでは何もできませんでしたから、少しでもお役に立てると嬉しいです』
原子力空母鳳翔は瑞鶴やツェッペリンより遥かに巨大であり、全長なら大和より60mも長い。
『それと、皆さんには朗報です。帝国海軍はグレナダ鎮守府の備蓄を皆さんに提供すると決定しました』
「備蓄なんてあったのね」
『鎮守府ですから。それと、航空機輸送艦も連れて来ましたので、この場で補充ができますよ』
「それはありがたいわね。よろしく頼むわ」
まだ瑞鶴の修理は行えないが、艦載機の補充は受けられる。航空機輸送艦から海上要塞に荷降ろしして、それを瑞鶴に載せるという二度手間であったが、グアンタナモ基地に戻るよりは早く済むだろう。
『瑞鶴、ドイツの艦載機はないのか?』
ツェッペリンが尋ねてきた。
「いやいや、ある訳ないでしょ」
『む……そうか……』
ツェッペリンは日本の艦載機を使うのが非常に嫌そうである。
「我慢しなさい。ないよりはマシでしょ」
『それはそうだがな……』
「大体、補給が欲しいならドイツ海軍に頼めばいいじゃない。あんたの妹は割とすぐそこにいるでしょ」
『シャルンホルストを沈めた手前、そんなことができるか?』
「ま、無理ね」
ドイツ軍と協力するというのは、当分は無理そうである。
○
一方その頃。シャルンホルストに代わってグナイゼナウ率いるドイツ海軍大洋艦隊第二隊群は、依然としてバハマに留まっていた。つまりエンタープライズの目と鼻の先なのだが、目下のところ特に攻撃を受けてはいない。アメリカ軍もイギリス領を攻撃して無駄に敵を増やしたくはないのだろう。
「グナイゼナウ、キューバが大変なことになってるみたいだけど、何か手を打つつもりはないのかしら?」
プリンツ・オイゲンはグナイゼナウに尋ねた。
「今の所は特にないよ」
「あらそう? 私達の位置なら、アメリカ軍を叩くのにちょうどいいと思うけどね」
キューバ戦争の前線はバハマのちょうど目の前だ。第二隊群がアメリカ軍の横腹に殴り掛かれば、急激に戦線を拡大させているアメリカ軍が逆に崩壊するかもしれない。
「それは分かってる。だけど、エンタープライズの標的にされると私達の戦力で相手するのは厳しいし、日本軍と協力することになるのは御免だよ」
「旗艦ともあろう者が、そんな非合理的な理由で選択を下していいものかしら」
「後者は忘れてくれ。それでも、前者だけで十分な理由だろう?」
「ええ。癪に障るけど、その通りね」
第二隊群の戦力は、戦艦がグナイゼナウのみ、空母はペーター・シュトラッサーのみ、重巡洋艦はプリンツ・オイゲンとザイドリッツだけという貧弱な戦力だ。これでアメリカ海軍を相手にするのは不可能である。
とにもかくにも、グナイゼナウは動きたくなかったし、現実的に考えても動けないので、アメリカ軍の監視だけを続けることにした。
○
さて、瑞鶴とツェッペリンは艦載機の補充を済ました。瑞鶴やゲバラは大和より広い鳳翔の艦内に移った。有賀中将はあくまで大和の艦長なので大和に残ったが、連絡武官を何人か寄越してくれた。大した人数がいる訳でもないので司令部を置くのは大和でもよかったのだが、鳳翔が自分の艦から出たくないということで、このようになっている。
鳳翔は夕風の押す車椅子に乗って現れた。手足が機械になっている鳳翔は自ら歩くことも食事を摂ることもできないのである。
「船魄として会うのは初めてですね、瑞鶴さん」
「ええ。なかなか、その、痛々しい見た目してるわね……」
瑞鶴は特に悪口のつもりはなかったのだが、夕風は悪い意味に捉えてしまったようだ。
「ちょっとあなた! 鳳翔様に失礼ですよ!」
「い、いや、別に悪い意味で言ったんじゃないんだけど……」
「まあまあ、夕風。私は気にしていませんから」
「そう、ですか……。ですが鳳翔様、この人達にはくれぐれも気を付けてくださいね!」
「それ本人の前で言う?」
何故か夕風に敵意を向けられつつ、作戦会議が始まった。
「恐らく、私に期待されているのは地上への支援、そうですよね?」
鳳翔は早速ゲバラに尋ねた。
「その通りだ。地上への支援には、やっぱり数が重要だからね」
船魄がどれほど精確に爆弾を命中させられても、爆弾の積載量そのものを増やすことはできない。瑞鶴やツェッペリンでは地上支援に限界があった。
「承りました。それを想定して、艦上爆撃機を多めに搭載しています。補給用の航空爆弾も」
「おお、実に頼もしいね。今のアメリカ軍は、かなり前のめりになっている状態だ。ここで後ろを爆撃して補給線を切断すれば、戦況は一気に傾くだろう」
「そのつもりです。それと瑞鶴さん達には、可能な限り護衛をお願いします。私の操縦の腕は、まだあまり高くありませんから」
「分かった。お互い一つの仕事に集中した方がやりやすいからね」
世界最大の空母が味方に加わったことで月虹はにわかに勢いを取り戻し、キューバ軍と共にアメリカ軍への反撃を開始した。
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