軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro

文字の大きさ
上 下
295 / 483
第十五章 第二次世界大戦(攻勢編)

空母対空母Ⅲ

しおりを挟む
「この私に、降伏せよと? あり得ませんわ」

 シュニーヴィント上級大将が一時休戦を要求してきた。これに対するユニコーンの回答は、このようであった。

「しかし、こちらの主砲は失われてしまった。我々にグラーフ・ツェッペリンを撃沈し得るほどの火力は最早ない」

 ラムゼー大将は冷静に答えた。

「まだ反対側の主砲が残っていますわ」
「それを言うなら、グラーフ・ツェッペリンもまだ主砲を半分残している」
「では、どうせよと?」
「まあ、そう聞かれると困るのだがな」
「偉そうにしておいて何も考えていないのですか。呆れましたわ」
「現状、我々にとって最前の選択肢は、ここで君が自沈することだ。そうでなければドイツ軍に鹵獲されるだろう」

 時間をかければドイツ海軍の艦艇が集まってきて鹵獲されるだろう。グラーフ・ツェッペリンを早々に撃沈できなかった時点で、ユニコーンの状況は詰んでいるのだ。

「自沈? 鹵獲? 何を腑抜けたことを。そのような選択肢はあり得ませんわ。グラーフ・ツェッペリンを撃沈するまで、戦闘を停止することはあり得ません」
「ではどうするつもりなんだ?」
「やれることなら、まだあります。ふふ。ドイツ人に目にものを見せてくれましょう」
「分かった。好きにしたまえ」

 ユニコーンはグラーフ・ツェッペリンに対し、交渉は論外であり、どちらかが倒れるまで戦闘は継続されるであろうと電報を送った。

 ○

「閣下、ユニコーンからの返答です」

 その返事を受け取ったシュニーヴィント上級大将は顔を顰めた。

「馬鹿な……。ここから一体どうするつもりで――」
「ユニコーンが急速に接近してきています!!」
「何? 体当たりでもする気か?」
「そのようです!!」
「まったく、嫌な手を打ってくるな……。ツェッペリン、起きてくれ」

 操艦はある程度手動でできるが、やはり船魄には劣る。ユニコーンの突撃を回避するべくシュニーヴィント上級大将ほツェッペリンを起こそうとするが、すっかり疲れ果てているツェッペリンは起きる気配がない。

「ダメだな、これは」
「ど、どうされるのですか!?」
「可能な限り回避行動を取れ! まあ回避できるとは思っていないが」

 案の定、グラーフ・ツェッペリンの巨躯では急速に向きを転換することは叶わない。こういう時は小柄なユニコーンの方が有利である。それに両国の造船技術の差もあるだろう。

「ダメです! 衝突します!!」
「総員、衝撃に備えよ!!」

 シュニーヴィント上級大将はツェッペリンの身体を支えつつ、自らも椅子の背を掴んで衝撃に備えた。そして、ユニコーンの艦首がツェッペリンの艦尾に激突した。

「んなっ、なん、だっ…………」

 ツェッペリンはその衝撃で目覚めたようだ。しかし目覚めた瞬間から激痛に晒されているので、意識は朦朧としている。

「ユニコーンが突撃してきたんだ。君の艦尾に派手に食い込んでいるな」
「は……? クソッ……。痛いぞ、まったく…………」
「ユニコーン、止まりました」
「さて、どうしたものかな」

 グラーフ・ツェッペリンとユニコーンはお互いにのめり込むようにして停止した。ほんの数十メートル先に敵艦があるという経験はシュニーヴィント上級大将にも初めてである。

「どうする、つもりだ……?」
「君は休んでおいてくれ。我々が何とかする」
「クソッ……」

 ツェッペリンは取り敢えず悪態をついておく以外に考えを廻らすことはできなかった。と、その時であった。

「閣下! ユニコーンから敵兵が乗り込んで来ています!!」
「ほう。移乗攻撃とは、我々は本当に中世に来たのかな」

 ユニコーンからイギリスの水兵が大挙して乗り込んで来た。

「閣下! 何を落ち着いてらっしゃるんですか!」
「大丈夫だ。こういう事態も想定してある。すぐに兵を向かわせて迎撃させよう」
「本当に、大丈夫なのだろうな……」
「ああ、安心してくれ」
「早く、皆殺しにしろ……。イギリス人などが、我に乗り込んでくるとは、虫唾が走る……」
「安心してくれと言ったろう」

 シュニーヴィント上級大将の言葉は本当であった。ツェッペリンの飛行甲板の上で銃撃戦が行われ、それから僅か20分ほどで、艦内に侵入した敵を掃討したとの報告が入った。世界でドイツ軍だけが保有している突撃銃(アサルトライフル)の威力によって、たちまち敵を殲滅したのである。

「――ほら、言っただろう?」
「よ、よくやった。で、ここから、どうするのだ?」
「もう我々が仕事をする必要はない。空軍から援軍が来ている」
「空軍? 大丈夫、なのか?」
「ああ。ユニコーンの高角砲は半分は破壊しているからな」

 つまりユニコーンの左から近付けば、人間の機体でも全く問題なく攻撃できるということである。

「お、噂をすればもう来たぞ」
「そう、か」

 空軍のスツーカは独特のサイレンのような音を立てながら次々と急降下爆撃を仕掛け、精確に爆弾を投下していく。爆弾の一つは艦橋に命中し、艦橋は火の手に包まれた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

処理中です...