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第十五章 第二次世界大戦(攻勢編)
ユニコーン
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さて、エディンバラのモンゴメリー元帥は、ベルファストで起こった諸々の出来事の報告を受け取っていた。
「何? 首相が死んだだと?」
『は、はい。ユニコーンの艦載機によって、撃ち殺されました』
「何だって!? いや、そもそもユニコーンは起動しているのか!? 詳しく聞かせろ!」
そういう訳で、モンゴメリー元帥は事の一部始終を報告された。
「――状況は分かった。チャーチルが死んだことについては、こちらで対応しておく」
チャーチルについては防衛の指揮を執っている間にドイツ軍の空襲を受けて戦死したと、公式発表がなされた。
「で、ユニコーンは命令を聞くのか?
『わ、分かりません。その、下手なことを言ったら殺されそうですので……』
「そうか。だが、少なくとも我が国を守るという意思はあるんだ。命令を聞かせる必要はない。グラーフ・ツェッペリンを攻撃するように、上手く仕向けておいてくれ。頼んだぞ」
『は、はい……』
たまたまベルファストにいた海軍士官がこの大役を押し付けられることとなった。しかし、ユニコーンは以外にもすんなりとグラーフ・ツェッペリンを撃沈することに協力してくれた。元帥の読み通り、少なくともイギリスを守るつもりはあるようだ。
○
その日。イギリスの上空を自らの庭の如く飛び回っていたツェッペリンの艦載機が、数機のイギリス軍機の攻撃を受けた。
「ふん、無駄な抵抗を。今更何をしても戦況は変わらぬというのに」
ツェッペリンは早々に邪魔者を片付けようと戦闘機を繰り出した。しかし、次の瞬間であった。
「な、何だと……? わ、我の艦載機が……」
「ん? どうしたんだ、ツェッペリン?」
突然顔を青くしたツェッペリンに、シュニーヴィント上級大将は心配そうに尋ねた。
「わ、我の艦載機が、一瞬で落とされたのだ……。イギリス軍風情が……!」
護衛の戦闘機を落とされて、残るは爆撃機のみ。普段ならばイギリスの戦闘機など爆撃機の機銃だけで圧倒できる。だがそれは叶わず、ツェッペリンの小隊は壊滅させられた。
「あ、あり得ない……。我が、圧倒されるだと……?」
「まさか……。どうやら、恐れていた事態が、起こってしまったようだ」
「な、何だ?」
「我々だけが船魄の技術をいつまでも独占できる訳がない。イギリスがついに、君の同類を生み出すことに成功したということだろう」
「そういう、ことか……」
考えられる原因は一つしかない。イギリスが船魄を実用化したということである。
「な、なるほどな。ようやく我に肩を並べることのできる者が現れたか。ふはははは、面白い!」
自らの独壇場を破壊されたことに衝撃を受けたツェッペリンであったが、取り敢えず強がっておくことにした。
「まあ、その意気でいてくれると助かるよ」
「何だその微妙な反応は」
「ともかくだ、こうなった以上、作戦を見直さなければならない。第一の目標は、イギリス上空の制空権を維持すること。第二の目標は、恐らく君と同様の空母だと思われる敵の船魄を見つけ出し、撃沈することだ」
「お、おう。だが敵の撃沈が第一ではないのか?」
「イギリスには30万のB軍集団が上陸しているんだ。制空権を奪われたら、これが一瞬で壊滅するぞ」
「分かった」
ツェッペリンもここは素直にシュニーヴィント上級大将の指示に従うことにした。
さて、敵に船魄がいると分かってからの対応は迅速を極めた。
ツェッペリンはイギリス各地の飛行場に待機させておいた戦闘機を飛ばし、常時飛ばしている100機を全て戦闘機にして、制空権を維持することに全力を尽くすことにした。また空軍からも多数の偵察機が飛ばされ、ツェッペリン自身が攻撃を受けないよう全力で警戒することとされた。
そして早速、ユニコーンとツェッペリンは激突することとなった。
「敵の小隊と遭遇。数は8だな」
「いけるか?」
「ああ。今度こそ叩きのめしてくれる」
爆撃機の混じった敵部隊に、ツェッペリンは10機の戦闘機で当たった。敵はツェッペリンとほとんど同等の技量を持っており、互角の戦いを繰り広がるが、流石に戦闘機の数の差で押し切ることができた。
「ど、どうだ。やはり、奇襲を受けなければ、我の敵ではないな」
余裕ぶっているが、かなり集中して疲れたのか、ツェッペリンは汗を垂らして呼吸が乱れていた。
「よくやった。で、何機落とされたんだ?」
「3機だが」
「ふむ……。これほど恒常的に損失が発生するとなると、君の為の戦闘機をもっと作ってもらわないといけないな」
「それくらい何とかしろ」
「ああ。心配しないでくれ」
その後もツェッペリンは制空権の維持に努め、毎回損害を出しつつも、敵に同数以上の損害を与え続けた。しかし地上に援護を行うことはできず、戦線は膠着することとなった。もっとも、既にイングランドは完全に制圧しており、これ以上攻め込む必要もないだろうが。
「何? 首相が死んだだと?」
『は、はい。ユニコーンの艦載機によって、撃ち殺されました』
「何だって!? いや、そもそもユニコーンは起動しているのか!? 詳しく聞かせろ!」
そういう訳で、モンゴメリー元帥は事の一部始終を報告された。
「――状況は分かった。チャーチルが死んだことについては、こちらで対応しておく」
チャーチルについては防衛の指揮を執っている間にドイツ軍の空襲を受けて戦死したと、公式発表がなされた。
「で、ユニコーンは命令を聞くのか?
『わ、分かりません。その、下手なことを言ったら殺されそうですので……』
「そうか。だが、少なくとも我が国を守るという意思はあるんだ。命令を聞かせる必要はない。グラーフ・ツェッペリンを攻撃するように、上手く仕向けておいてくれ。頼んだぞ」
『は、はい……』
たまたまベルファストにいた海軍士官がこの大役を押し付けられることとなった。しかし、ユニコーンは以外にもすんなりとグラーフ・ツェッペリンを撃沈することに協力してくれた。元帥の読み通り、少なくともイギリスを守るつもりはあるようだ。
○
その日。イギリスの上空を自らの庭の如く飛び回っていたツェッペリンの艦載機が、数機のイギリス軍機の攻撃を受けた。
「ふん、無駄な抵抗を。今更何をしても戦況は変わらぬというのに」
ツェッペリンは早々に邪魔者を片付けようと戦闘機を繰り出した。しかし、次の瞬間であった。
「な、何だと……? わ、我の艦載機が……」
「ん? どうしたんだ、ツェッペリン?」
突然顔を青くしたツェッペリンに、シュニーヴィント上級大将は心配そうに尋ねた。
「わ、我の艦載機が、一瞬で落とされたのだ……。イギリス軍風情が……!」
護衛の戦闘機を落とされて、残るは爆撃機のみ。普段ならばイギリスの戦闘機など爆撃機の機銃だけで圧倒できる。だがそれは叶わず、ツェッペリンの小隊は壊滅させられた。
「あ、あり得ない……。我が、圧倒されるだと……?」
「まさか……。どうやら、恐れていた事態が、起こってしまったようだ」
「な、何だ?」
「我々だけが船魄の技術をいつまでも独占できる訳がない。イギリスがついに、君の同類を生み出すことに成功したということだろう」
「そういう、ことか……」
考えられる原因は一つしかない。イギリスが船魄を実用化したということである。
「な、なるほどな。ようやく我に肩を並べることのできる者が現れたか。ふはははは、面白い!」
自らの独壇場を破壊されたことに衝撃を受けたツェッペリンであったが、取り敢えず強がっておくことにした。
「まあ、その意気でいてくれると助かるよ」
「何だその微妙な反応は」
「ともかくだ、こうなった以上、作戦を見直さなければならない。第一の目標は、イギリス上空の制空権を維持すること。第二の目標は、恐らく君と同様の空母だと思われる敵の船魄を見つけ出し、撃沈することだ」
「お、おう。だが敵の撃沈が第一ではないのか?」
「イギリスには30万のB軍集団が上陸しているんだ。制空権を奪われたら、これが一瞬で壊滅するぞ」
「分かった」
ツェッペリンもここは素直にシュニーヴィント上級大将の指示に従うことにした。
さて、敵に船魄がいると分かってからの対応は迅速を極めた。
ツェッペリンはイギリス各地の飛行場に待機させておいた戦闘機を飛ばし、常時飛ばしている100機を全て戦闘機にして、制空権を維持することに全力を尽くすことにした。また空軍からも多数の偵察機が飛ばされ、ツェッペリン自身が攻撃を受けないよう全力で警戒することとされた。
そして早速、ユニコーンとツェッペリンは激突することとなった。
「敵の小隊と遭遇。数は8だな」
「いけるか?」
「ああ。今度こそ叩きのめしてくれる」
爆撃機の混じった敵部隊に、ツェッペリンは10機の戦闘機で当たった。敵はツェッペリンとほとんど同等の技量を持っており、互角の戦いを繰り広がるが、流石に戦闘機の数の差で押し切ることができた。
「ど、どうだ。やはり、奇襲を受けなければ、我の敵ではないな」
余裕ぶっているが、かなり集中して疲れたのか、ツェッペリンは汗を垂らして呼吸が乱れていた。
「よくやった。で、何機落とされたんだ?」
「3機だが」
「ふむ……。これほど恒常的に損失が発生するとなると、君の為の戦闘機をもっと作ってもらわないといけないな」
「それくらい何とかしろ」
「ああ。心配しないでくれ」
その後もツェッペリンは制空権の維持に努め、毎回損害を出しつつも、敵に同数以上の損害を与え続けた。しかし地上に援護を行うことはできず、戦線は膠着することとなった。もっとも、既にイングランドは完全に制圧しており、これ以上攻め込む必要もないだろうが。
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