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第十四章 第二次世界大戦(覚醒編)
北海の戦いⅡ
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イギリス各地から出撃した多数の戦闘機は、早速ドイツ側の偵察網に引っ掛かった。
「南西から多数の敵機が接近してきています! 数は200ほど!」
「ほう。ようやく我の居場所を掴んだようだな」
「いや、それにしては数が少な過ぎる。恐らくはこれも偵察だろう」
「200機で偵察だと? 幾らなんでも多過ぎるのではないか?」
「君を見つけて一機でも生きて帰れればいいと、そういう魂胆なんだろう」
流石のグラーフ・ツェッペリンでも逃げる200機の敵を完全に殲滅するのは困難だろう。とは言え、まだ発見された訳ではなさそうだ。
「なるほど。では見つかる前に全て叩き落としてくれよう」
「それがいい。すぐに出撃しよう」
「我に命令するな」
ツェッペリンはカタパルトで18機の艦上戦闘機を発艦させると、残りの発艦を待たずに接近しつつある英空軍に突撃させた。戦力比は今回も10倍を超えているが、ツェッペリンにとっては大したことではない。
「ふん。人間の戦闘機など、我の前では児戯に等しいというものである」
「頼りにしてるぞ」
ツェッペリンの言葉は大言壮語ではなく、10倍の敵を相手にして完全に圧倒していた。バトル・オブ・ブリテンを経験した歴戦のパイロット達も、抵抗という抵抗をすることすらできず、一方的に撃墜されていった。ツェッペリンの艦載機は人間を乗せていては到底不可能な動きを繰り返し、火の粉を振り払うようにイギリスの戦闘機を撃墜していった。
「ん? 敵の増援か」
戦闘開始からおよそ15分。ツェッペリンは戦場に乱入するものの姿を認めた。
「援軍が来たのか?」
「ああ。同じく200機ばかりの別の部隊がやって来た」
「大丈夫か?」
「問題ない。こちらも発艦させた戦闘機を投入すれば戦力は互角であろう」
既に最初に会敵した部隊は残存60機程度。敵は総勢260である。ここでツェッペリンが新たに発艦させた16機を加えれば、戦力比は260対34。比率では互角というより優位に立った。
「そうか。なら大丈夫だな」
「うむ。愚かな抵抗であるな」
かくしてツェッペリンは早々に400機の英軍機をほぼ全滅させた。一度の空戦の戦果としては第二次世界大戦始まって以来最大のものである。
○
「アイゼンハワー大将閣下! グラーフ・ツェッペリンの艦載機と交戦していた第12飛行隊ですが、全滅したとのこと! 生還したのは8機のみです!」
「何てことだ……。我々は馬鹿げた化け物を相手にしているらしい」
連合国遠征軍総司令部に飛んできた報せは甚だ絶望的なものであった。北海における航空戦が始まって僅か4時間で連合国軍は航空戦力の5分の1を失ったのである。
「で、敵の位置は分かったのか?」
「今回も、敵を目視で確認することはできませんでした。しかし敵機が向かってきた方角から、敵のおおよその位置を推定することはできます」
「それなら、それに賭けるしかない。皆、異論はないな?」
ある程度の位置は掴めた。ここで総攻撃を仕掛ける他にはない。
「これで、今度こそツェッペリンを仕留めるんだ。流石の奴でも1,600機に一気に攻撃を喰らえば、生きては帰れまい」
実にツェッペリンの戦闘機の50倍近い戦力である。ツェッペリンもこれが一気に襲いかかって来たら、流石に対処しきれないだろう。しかし、ツェッペリンがこれを黙って見逃してくれる筈がないのである。
「閣下!! 一大事です! マートルシャム飛行場が攻撃を受けています!!」
「何だと!? 戦況はどうなっている!?」
「状況は混乱しており、詳細は不明です!」
「クソッ。先手を打たれた。こっちが各個撃破されるぞ……」
まさか1,600もの航空機を一つの飛行場から飛ばす訳にはいかない。イギリス各地の飛行場から飛ばした戦闘機を合流させてツェッペリンを攻撃しようという計画だったのだが、その前に各個撃破されつつあるのだ。
と、そこに更に悪い報せが飛んでくる。
「閣下! コルティスホール飛行場が攻撃を受けています!!」
「ば、馬鹿なッ! ツェッペリンだけで二箇所を同時に攻撃してるのか!?」
「そ、そうとしか、考えられません」
「どうして奴はこんなピンポイントで攻撃してくるんだ!」
半ば愚痴のようであったアイゼンハワー大将の問いに、航空戦力司令官のリー=マロリー英空軍中将は答える。
「バトル・オブ・ブリテンで、我が軍の飛行場やレーダー設備の場所はドイツ軍に露見していますからね」
「どうしてそのままにしていたんだ!」
「お言葉ですが、まさかドイツ軍が我が国に再び攻撃してくると、誰が想像し得たでしょうか」
「…………クソッ。中将、この状況をどうにかする作戦はあるか?」
「各飛行場から戦力を集結させることができれば、勝利の可能性はあるでしょう。幸いにして我が軍のレーダー網は狙われていないようですから、敵軍の位置は分かります」
「分かった。……いや、待て。レーダーが生きてるならどうして飛行場への襲撃を察知できなかったんだ?」
「敵は極めて低空を飛行して接近してきたようです。加えて敵は非常に少数。至近距離に近づかれるまで察知できないのは無理もないかと。しかし地上であれば、レーダーの他にも各所の目視による監視拠点が使えます」
「貴官は冷静だな。空のことは頼んだぞ」
「最善を尽くします」
グラーフ・ツェッペリンがこんなにも早くイギリス本土に攻め込んでくるとは、誰にとっても予想外であった。しかしそんな中でも、連合国遠征軍司令部はやれるだけの手段を尽くした。
「南西から多数の敵機が接近してきています! 数は200ほど!」
「ほう。ようやく我の居場所を掴んだようだな」
「いや、それにしては数が少な過ぎる。恐らくはこれも偵察だろう」
「200機で偵察だと? 幾らなんでも多過ぎるのではないか?」
「君を見つけて一機でも生きて帰れればいいと、そういう魂胆なんだろう」
流石のグラーフ・ツェッペリンでも逃げる200機の敵を完全に殲滅するのは困難だろう。とは言え、まだ発見された訳ではなさそうだ。
「なるほど。では見つかる前に全て叩き落としてくれよう」
「それがいい。すぐに出撃しよう」
「我に命令するな」
ツェッペリンはカタパルトで18機の艦上戦闘機を発艦させると、残りの発艦を待たずに接近しつつある英空軍に突撃させた。戦力比は今回も10倍を超えているが、ツェッペリンにとっては大したことではない。
「ふん。人間の戦闘機など、我の前では児戯に等しいというものである」
「頼りにしてるぞ」
ツェッペリンの言葉は大言壮語ではなく、10倍の敵を相手にして完全に圧倒していた。バトル・オブ・ブリテンを経験した歴戦のパイロット達も、抵抗という抵抗をすることすらできず、一方的に撃墜されていった。ツェッペリンの艦載機は人間を乗せていては到底不可能な動きを繰り返し、火の粉を振り払うようにイギリスの戦闘機を撃墜していった。
「ん? 敵の増援か」
戦闘開始からおよそ15分。ツェッペリンは戦場に乱入するものの姿を認めた。
「援軍が来たのか?」
「ああ。同じく200機ばかりの別の部隊がやって来た」
「大丈夫か?」
「問題ない。こちらも発艦させた戦闘機を投入すれば戦力は互角であろう」
既に最初に会敵した部隊は残存60機程度。敵は総勢260である。ここでツェッペリンが新たに発艦させた16機を加えれば、戦力比は260対34。比率では互角というより優位に立った。
「そうか。なら大丈夫だな」
「うむ。愚かな抵抗であるな」
かくしてツェッペリンは早々に400機の英軍機をほぼ全滅させた。一度の空戦の戦果としては第二次世界大戦始まって以来最大のものである。
○
「アイゼンハワー大将閣下! グラーフ・ツェッペリンの艦載機と交戦していた第12飛行隊ですが、全滅したとのこと! 生還したのは8機のみです!」
「何てことだ……。我々は馬鹿げた化け物を相手にしているらしい」
連合国遠征軍総司令部に飛んできた報せは甚だ絶望的なものであった。北海における航空戦が始まって僅か4時間で連合国軍は航空戦力の5分の1を失ったのである。
「で、敵の位置は分かったのか?」
「今回も、敵を目視で確認することはできませんでした。しかし敵機が向かってきた方角から、敵のおおよその位置を推定することはできます」
「それなら、それに賭けるしかない。皆、異論はないな?」
ある程度の位置は掴めた。ここで総攻撃を仕掛ける他にはない。
「これで、今度こそツェッペリンを仕留めるんだ。流石の奴でも1,600機に一気に攻撃を喰らえば、生きては帰れまい」
実にツェッペリンの戦闘機の50倍近い戦力である。ツェッペリンもこれが一気に襲いかかって来たら、流石に対処しきれないだろう。しかし、ツェッペリンがこれを黙って見逃してくれる筈がないのである。
「閣下!! 一大事です! マートルシャム飛行場が攻撃を受けています!!」
「何だと!? 戦況はどうなっている!?」
「状況は混乱しており、詳細は不明です!」
「クソッ。先手を打たれた。こっちが各個撃破されるぞ……」
まさか1,600もの航空機を一つの飛行場から飛ばす訳にはいかない。イギリス各地の飛行場から飛ばした戦闘機を合流させてツェッペリンを攻撃しようという計画だったのだが、その前に各個撃破されつつあるのだ。
と、そこに更に悪い報せが飛んでくる。
「閣下! コルティスホール飛行場が攻撃を受けています!!」
「ば、馬鹿なッ! ツェッペリンだけで二箇所を同時に攻撃してるのか!?」
「そ、そうとしか、考えられません」
「どうして奴はこんなピンポイントで攻撃してくるんだ!」
半ば愚痴のようであったアイゼンハワー大将の問いに、航空戦力司令官のリー=マロリー英空軍中将は答える。
「バトル・オブ・ブリテンで、我が軍の飛行場やレーダー設備の場所はドイツ軍に露見していますからね」
「どうしてそのままにしていたんだ!」
「お言葉ですが、まさかドイツ軍が我が国に再び攻撃してくると、誰が想像し得たでしょうか」
「…………クソッ。中将、この状況をどうにかする作戦はあるか?」
「各飛行場から戦力を集結させることができれば、勝利の可能性はあるでしょう。幸いにして我が軍のレーダー網は狙われていないようですから、敵軍の位置は分かります」
「分かった。……いや、待て。レーダーが生きてるならどうして飛行場への襲撃を察知できなかったんだ?」
「敵は極めて低空を飛行して接近してきたようです。加えて敵は非常に少数。至近距離に近づかれるまで察知できないのは無理もないかと。しかし地上であれば、レーダーの他にも各所の目視による監視拠点が使えます」
「貴官は冷静だな。空のことは頼んだぞ」
「最善を尽くします」
グラーフ・ツェッペリンがこんなにも早くイギリス本土に攻め込んでくるとは、誰にとっても予想外であった。しかしそんな中でも、連合国遠征軍司令部はやれるだけの手段を尽くした。
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