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第十四章 第二次世界大戦(覚醒編)
ツェッペリンの初陣
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さて、その時のことであった。キール軍港にサイレンが響き渡った。空襲警報である。
「何だこれは?」
ツェッペリンはシュニーヴィント上級大将に問う。上級大将は敵軍の空襲であると答えた。
「であれば、その敵とやらを我が全て叩き落としてやろう」
「まだ一度も戦ったことがないんだろう? 本気か?」
「大した問題ではない。我にとってみれば人間など全て雑魚も同然である」
「……メンゲレ君、本当にツェッペリンを動かしていいのか?」
「既にツェッペリンは完璧な状態になっています。実戦経験がない、という問題は、やってみなければ分かりませんな」
「了解した。ならばやってみよう。ツェッペリン、急いで艦橋に向かうぞ」
「お前に言われるまでもない」
空母グラーフ・ツェッペリンを見たこともないのに、ツェッペリンは自分という存在について、生まれた瞬間から相当明確に認識しているようだ。果たして本当に戦えるのかはまだ分からないが。
総統を含め閣僚達は直ちに防空壕に入り、ツェッペリンとシュニーヴィント上級大将はグラーフ・ツェッペリンの艦橋に向かった。ツェッペリンは初めてのことだと言うのに、さも当然のように艦に乗り込んで、その艦橋に登った。艦橋には既に兵員が配置されていた。計器を見たり通信をしたりする兵士達である。
「お前達が我の部下か。精々頑張ることだな」
「閣下……これが船魄という奴ですか?」
「ああ、そうだ。まあ大目に見てやってくれ」
「閣下、敵の陣容ですが、合計で500機はいるものかと思われます」
「それは厳しいな……」
この時代のレーダーでは機種などを判別することは不可能である。ざっくりとした敵の数と現在地しか情報はない。とは言え、いつもの編成だとすれば、半分は護衛の戦闘機、半分は戦略爆撃機であろう。
「500か。人間の機体であれば、どうということはあるまい」
「君の艦載機は70機しかないんだぞ? しかも戦闘機は30機だけだ」
「それだけあれば十分である」
まだ艦載機を発艦させたこともないのに、ツェッペリンはこの大言壮語である。
「随分と自信家だな。一先ずは離岸して速度を出そう」
「無論だ。誰に向かって言っている」
「ああ、そうだったな」
ツェッペリンが初めて艦を動かすのである。ここに来てもなお大半の人間は懐疑的であった。
「これより出撃する。お前達は衝撃にでも備えていろ」
「おお……」
ツェッペリンが港から離れるように意思すると、艦は独りでに動き始めた。単に艦を一人で動かせたと言うだけでもツィクロン作戦は大成功だと言えるだろう。
「港を出ました。艦載機を出せます」
「よし。ツェッペリン、艦載機を発艦させてみようか」
「我に命令するな。お前達は情報を我に伝えるだけでよいのだ」
「やれやれ」
グラーフ・ツェッペリンにはドイツの他にはアメリカしか実用化できていないカタパルトが搭載されている。カタパルトの圧縮空気が残っている内は、日本の空母のように風上に向かって全速力で航行しながら発艦作業を行う必要はないのである。
「艦載機、発艦」
既にカタパルトにセットされている艦上戦闘機Fw190が2基、カタパルトによって瞬時に時速140kmにまで加速され、ツェッペリンの飛行甲板から優雅に飛び立った。ドイツの航空母艦から初めて艦載機が飛び立った瞬間であった。
「おお……。本当に、無人でこんなことができるとは……」
「シュニーヴィント、お前も我を疑っていたのか?」
「正直言うとな。だがその認識は改めるべきのようだ」
航空母艦とは極めて短い滑走路のようなもの。発艦と着艦は非常に高度な技術を必要とするものだ。それが無人でできるとは、船魄という技術はつくづく恐ろしいものだと、シュニーヴィント上級大将は思った。
「次の2機、カタパルトに取り付け終わりました!」
およそ30秒後、艦橋の士官が報告する。カタパルトの装着や格納庫から飛行甲板への移送などの作業は人力で行われているのだ。ここは瑞鶴に劣っているところだと言えるだろうが、別に作業が遅くなる訳ではない。
「うむ。ご苦労。では発艦する」
かくしてツェッペリンは素早く発艦作業を行い、5分で18機を空に上げることに成功した。しかしここでカタパルトの圧縮空気切れである。空気を再充填するには1時間はかかるので、今回はもう使えない。
「カタパルトはもう使えんか。なれば普通に発艦するとしよう」
「条件は揃っているのか?」
「そういうことはそこら辺にいる連中に聞け」
「現在の速度は20.4ノット、風速は向かい風6ノット。問題ありません」
「だそうだ」
「よかろう。残りの艦載機も発艦を行う」
風を利用して発艦するこちらの方が高い技量が必要となるが、ツェッペリンは問題なくやり遂げた。兵士達が大急ぎで艦載機を甲板に上げて、34機全てを発艦させるのに30分ほどかかった。
「ここまでは順調だな。後は本当に10倍の敵相手にどうにかなるのかだが……」
「我を見くびるな。一人も残さず殺し尽くしてくれる」
「頼んだぞ」
ツェッペリンの航空戦隊はキールに迫る連合国の大群に攻勢を仕掛けたのである。
「何だこれは?」
ツェッペリンはシュニーヴィント上級大将に問う。上級大将は敵軍の空襲であると答えた。
「であれば、その敵とやらを我が全て叩き落としてやろう」
「まだ一度も戦ったことがないんだろう? 本気か?」
「大した問題ではない。我にとってみれば人間など全て雑魚も同然である」
「……メンゲレ君、本当にツェッペリンを動かしていいのか?」
「既にツェッペリンは完璧な状態になっています。実戦経験がない、という問題は、やってみなければ分かりませんな」
「了解した。ならばやってみよう。ツェッペリン、急いで艦橋に向かうぞ」
「お前に言われるまでもない」
空母グラーフ・ツェッペリンを見たこともないのに、ツェッペリンは自分という存在について、生まれた瞬間から相当明確に認識しているようだ。果たして本当に戦えるのかはまだ分からないが。
総統を含め閣僚達は直ちに防空壕に入り、ツェッペリンとシュニーヴィント上級大将はグラーフ・ツェッペリンの艦橋に向かった。ツェッペリンは初めてのことだと言うのに、さも当然のように艦に乗り込んで、その艦橋に登った。艦橋には既に兵員が配置されていた。計器を見たり通信をしたりする兵士達である。
「お前達が我の部下か。精々頑張ることだな」
「閣下……これが船魄という奴ですか?」
「ああ、そうだ。まあ大目に見てやってくれ」
「閣下、敵の陣容ですが、合計で500機はいるものかと思われます」
「それは厳しいな……」
この時代のレーダーでは機種などを判別することは不可能である。ざっくりとした敵の数と現在地しか情報はない。とは言え、いつもの編成だとすれば、半分は護衛の戦闘機、半分は戦略爆撃機であろう。
「500か。人間の機体であれば、どうということはあるまい」
「君の艦載機は70機しかないんだぞ? しかも戦闘機は30機だけだ」
「それだけあれば十分である」
まだ艦載機を発艦させたこともないのに、ツェッペリンはこの大言壮語である。
「随分と自信家だな。一先ずは離岸して速度を出そう」
「無論だ。誰に向かって言っている」
「ああ、そうだったな」
ツェッペリンが初めて艦を動かすのである。ここに来てもなお大半の人間は懐疑的であった。
「これより出撃する。お前達は衝撃にでも備えていろ」
「おお……」
ツェッペリンが港から離れるように意思すると、艦は独りでに動き始めた。単に艦を一人で動かせたと言うだけでもツィクロン作戦は大成功だと言えるだろう。
「港を出ました。艦載機を出せます」
「よし。ツェッペリン、艦載機を発艦させてみようか」
「我に命令するな。お前達は情報を我に伝えるだけでよいのだ」
「やれやれ」
グラーフ・ツェッペリンにはドイツの他にはアメリカしか実用化できていないカタパルトが搭載されている。カタパルトの圧縮空気が残っている内は、日本の空母のように風上に向かって全速力で航行しながら発艦作業を行う必要はないのである。
「艦載機、発艦」
既にカタパルトにセットされている艦上戦闘機Fw190が2基、カタパルトによって瞬時に時速140kmにまで加速され、ツェッペリンの飛行甲板から優雅に飛び立った。ドイツの航空母艦から初めて艦載機が飛び立った瞬間であった。
「おお……。本当に、無人でこんなことができるとは……」
「シュニーヴィント、お前も我を疑っていたのか?」
「正直言うとな。だがその認識は改めるべきのようだ」
航空母艦とは極めて短い滑走路のようなもの。発艦と着艦は非常に高度な技術を必要とするものだ。それが無人でできるとは、船魄という技術はつくづく恐ろしいものだと、シュニーヴィント上級大将は思った。
「次の2機、カタパルトに取り付け終わりました!」
およそ30秒後、艦橋の士官が報告する。カタパルトの装着や格納庫から飛行甲板への移送などの作業は人力で行われているのだ。ここは瑞鶴に劣っているところだと言えるだろうが、別に作業が遅くなる訳ではない。
「うむ。ご苦労。では発艦する」
かくしてツェッペリンは素早く発艦作業を行い、5分で18機を空に上げることに成功した。しかしここでカタパルトの圧縮空気切れである。空気を再充填するには1時間はかかるので、今回はもう使えない。
「カタパルトはもう使えんか。なれば普通に発艦するとしよう」
「条件は揃っているのか?」
「そういうことはそこら辺にいる連中に聞け」
「現在の速度は20.4ノット、風速は向かい風6ノット。問題ありません」
「だそうだ」
「よかろう。残りの艦載機も発艦を行う」
風を利用して発艦するこちらの方が高い技量が必要となるが、ツェッペリンは問題なくやり遂げた。兵士達が大急ぎで艦載機を甲板に上げて、34機全てを発艦させるのに30分ほどかかった。
「ここまでは順調だな。後は本当に10倍の敵相手にどうにかなるのかだが……」
「我を見くびるな。一人も残さず殺し尽くしてくれる」
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