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第十二章 ドイツ訪問(上陸編)
ドイツを動かす
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瑞鶴はツェッペリンにマトモな考えがあるとは微塵も思っていなかったが、一応真面目に質問してやることにした。
「そうねえ……まずどうやってドイツに行く気なの?」
「簡単ではないか。我らは軍艦なのだぞ?」
「それはそうだけど、燃料が持たないでしょ」
「ぐぬっ……」
ツェッペリンは早々にボロを出した。
「で、では、お前が日本に行った時のように、ドイツ海軍に補給させればよいではないか」
「いや、まあ、協力してくれればいいけど、ヒトラーに会いに行くなんて言って、本当に手を貸してくれると思ってるの?」
「お前の方が無茶な理由で日本軍に燃料を補給させたではないか」
「まあ、それはそうね」
瑞鶴は最初から東京を攻撃するつもりで帝都に旅立ったが、ツェッペリンはあくまでヒトラー総統と話がしたいというだけである。どちらかと言えばツェッペリンの方がまだ軍の協力を得られそうなものである。
「大体、どうして日本軍はお前に手を貸したのだ?」
「私を帝国本土で袋の鼠にして捕獲する為ね。まあその程度の計略に私が引っかかる訳がないんだけど」
「なるほど……。ということは我らもドイツに決闘を挑みに行けばよいのか」
「あのねえ、こっちからそれを言ったら終わりでしょ。和泉が頭のおかしい博打打ちだったから成り立った話で、普通はそんな話に乗ってくれる訳がないじゃない」
「文句の多い奴だな、貴様は」
「マトモな提案しないあんたが悪いでしょ」
「……よかろう。なれば我がドイツ海軍と話をつけてくる。お前は黙って見ているがいい」
「本気? 捕まっても知らないわよ」
「そんなヘマを我がするものか。では行ってくる」
「え、ホントに言ってんの?」
「我は本気だ。ではまた会おう」
ツェッペリンは瑞鶴に馬鹿にされたのが悔しくて、自分の案を実現することにやっけになっていた。そういう訳で彼女は自らの戦闘機を飛ばして、ドイツ海軍の基地があるバミューダ諸島に単身で乗り込んだ。
○
全く聞いていない艦載機の襲来にシュロス基地のドイツ兵達は大慌てだったが、ツェッペリンはそんなことなど意に介さず基地に強行着陸した。撃墜されても文句は言えない蛮行である。
ツェッペリンは飛行場の兵士に堂々と名乗り、船魄達の基地に案内させた。ツェッペリンは一応味方ということになっているので、こんな隙だらけの状態でもドイツ軍は手を出してこなかった。
さて、ツェッペリンを出迎えたのは、見知らぬ物静かな船魄であった。赤毛に青い目、黒い軍服に黒い翼、一番目立つのは両腕が機械になっていることである。
「見た事のない船魄だな。名は何と言う?」
「私はザイドリッツ。アトミラール・ヒッパー級重巡洋艦の四番艦、つまりプリンツ・オイゲンの妹です。どうぞこちらへ、グラーフ・ツェッペリンさん」
「ほう。礼儀のなった船魄ではないか。気に入ったぞ」
「はぁ。ありがとうございます」
ザイドリッツは全く心のこもっていない声で言った。ツェッペリンは「もっと喜べ」などと言いたくなったが、ぐっと堪えた。
「しかし何なのだ、その腕は」
「船魄の性能改善に向けた試験だそうです」
「よく分からんが、分かった。で、シャルンホルストはどこにいる?」
「シャルンホルストはツェッペリンさんをお待ちしています。こちらへ」
「うむ」
ザイドリッツに案内された先の応接間にはシャルンホルストが待ち構えていた。ソファに座って机の上に銃を置いて手入れをしている。
「グラーフ・ツェッペリン……」
「そうだ。我こそはグラーフ・ツェッペリンである。お前と話しに来た」
「それはそう、だろうけど。まずは座って」
「うむ」
ツェッペリンは自分の艦内の椅子のように遠慮なくソファに座り込んだ。ザイドリッツはツェッペリンを案内し終えるとすぐに立ち去ってしまった。
「それで、何の用?」
「結論から言おう。我らに給油艦を貸せ」
「……それは何故?」
「我が総統に会いに行くのだ。そしてドイツが国連の武力制裁を支持するよう、我が総統に説得していただくのだ」
「…………ダメに決まっている」
「何故だ?」
「あなた達は基本的にドイツの敵。今はアメリカとの戦争で役に立つから一時的に協力しているに過ぎないし、本国は黙認しているに過ぎない」
北米方面艦隊が一時的に月虹と手を組んでいるだけで、流石に月虹をドイツ本国に近寄らせる訳にはいかないのである。
「ではお前が何とか本国と交渉しろ。我らを我が総統に会わせよとな」
「……してもいいけど、確実に拒否される。我らが総統がどれほどの重要人物だと思っている?」
「どれほど重要かだと? そんなもの、ヨーロッパの歴史上最も偉大なお方に決まっているではないか」
歴史上誰も成し遂げられなかったヨーロッパ統一という偉業を成し遂げたのだ。その偉大さはカール大帝やナポレオンをも上回るものであろう。
「分かっているなら、どうしてそれが無謀だと分からない?」
「我はお前なんぞよりよほど長く我が総統のお傍におったのだぞ?」
「それはそうだろうけど、あなたはドイツを裏切ったのだから、我が総統と会う権利などない」
「お、お前がそんなことを決めるな」
「誰に聞いてもこう答える」
「…………クソッ、分かった、それは認めよう」
ヒトラー総統に自由に会える権利などないと改めて宣告されて、ツェッペリンは大きく溜息を吐いた。
「そうねえ……まずどうやってドイツに行く気なの?」
「簡単ではないか。我らは軍艦なのだぞ?」
「それはそうだけど、燃料が持たないでしょ」
「ぐぬっ……」
ツェッペリンは早々にボロを出した。
「で、では、お前が日本に行った時のように、ドイツ海軍に補給させればよいではないか」
「いや、まあ、協力してくれればいいけど、ヒトラーに会いに行くなんて言って、本当に手を貸してくれると思ってるの?」
「お前の方が無茶な理由で日本軍に燃料を補給させたではないか」
「まあ、それはそうね」
瑞鶴は最初から東京を攻撃するつもりで帝都に旅立ったが、ツェッペリンはあくまでヒトラー総統と話がしたいというだけである。どちらかと言えばツェッペリンの方がまだ軍の協力を得られそうなものである。
「大体、どうして日本軍はお前に手を貸したのだ?」
「私を帝国本土で袋の鼠にして捕獲する為ね。まあその程度の計略に私が引っかかる訳がないんだけど」
「なるほど……。ということは我らもドイツに決闘を挑みに行けばよいのか」
「あのねえ、こっちからそれを言ったら終わりでしょ。和泉が頭のおかしい博打打ちだったから成り立った話で、普通はそんな話に乗ってくれる訳がないじゃない」
「文句の多い奴だな、貴様は」
「マトモな提案しないあんたが悪いでしょ」
「……よかろう。なれば我がドイツ海軍と話をつけてくる。お前は黙って見ているがいい」
「本気? 捕まっても知らないわよ」
「そんなヘマを我がするものか。では行ってくる」
「え、ホントに言ってんの?」
「我は本気だ。ではまた会おう」
ツェッペリンは瑞鶴に馬鹿にされたのが悔しくて、自分の案を実現することにやっけになっていた。そういう訳で彼女は自らの戦闘機を飛ばして、ドイツ海軍の基地があるバミューダ諸島に単身で乗り込んだ。
○
全く聞いていない艦載機の襲来にシュロス基地のドイツ兵達は大慌てだったが、ツェッペリンはそんなことなど意に介さず基地に強行着陸した。撃墜されても文句は言えない蛮行である。
ツェッペリンは飛行場の兵士に堂々と名乗り、船魄達の基地に案内させた。ツェッペリンは一応味方ということになっているので、こんな隙だらけの状態でもドイツ軍は手を出してこなかった。
さて、ツェッペリンを出迎えたのは、見知らぬ物静かな船魄であった。赤毛に青い目、黒い軍服に黒い翼、一番目立つのは両腕が機械になっていることである。
「見た事のない船魄だな。名は何と言う?」
「私はザイドリッツ。アトミラール・ヒッパー級重巡洋艦の四番艦、つまりプリンツ・オイゲンの妹です。どうぞこちらへ、グラーフ・ツェッペリンさん」
「ほう。礼儀のなった船魄ではないか。気に入ったぞ」
「はぁ。ありがとうございます」
ザイドリッツは全く心のこもっていない声で言った。ツェッペリンは「もっと喜べ」などと言いたくなったが、ぐっと堪えた。
「しかし何なのだ、その腕は」
「船魄の性能改善に向けた試験だそうです」
「よく分からんが、分かった。で、シャルンホルストはどこにいる?」
「シャルンホルストはツェッペリンさんをお待ちしています。こちらへ」
「うむ」
ザイドリッツに案内された先の応接間にはシャルンホルストが待ち構えていた。ソファに座って机の上に銃を置いて手入れをしている。
「グラーフ・ツェッペリン……」
「そうだ。我こそはグラーフ・ツェッペリンである。お前と話しに来た」
「それはそう、だろうけど。まずは座って」
「うむ」
ツェッペリンは自分の艦内の椅子のように遠慮なくソファに座り込んだ。ザイドリッツはツェッペリンを案内し終えるとすぐに立ち去ってしまった。
「それで、何の用?」
「結論から言おう。我らに給油艦を貸せ」
「……それは何故?」
「我が総統に会いに行くのだ。そしてドイツが国連の武力制裁を支持するよう、我が総統に説得していただくのだ」
「…………ダメに決まっている」
「何故だ?」
「あなた達は基本的にドイツの敵。今はアメリカとの戦争で役に立つから一時的に協力しているに過ぎないし、本国は黙認しているに過ぎない」
北米方面艦隊が一時的に月虹と手を組んでいるだけで、流石に月虹をドイツ本国に近寄らせる訳にはいかないのである。
「ではお前が何とか本国と交渉しろ。我らを我が総統に会わせよとな」
「……してもいいけど、確実に拒否される。我らが総統がどれほどの重要人物だと思っている?」
「どれほど重要かだと? そんなもの、ヨーロッパの歴史上最も偉大なお方に決まっているではないか」
歴史上誰も成し遂げられなかったヨーロッパ統一という偉業を成し遂げたのだ。その偉大さはカール大帝やナポレオンをも上回るものであろう。
「分かっているなら、どうしてそれが無謀だと分からない?」
「我はお前なんぞよりよほど長く我が総統のお傍におったのだぞ?」
「それはそうだろうけど、あなたはドイツを裏切ったのだから、我が総統と会う権利などない」
「お、お前がそんなことを決めるな」
「誰に聞いてもこう答える」
「…………クソッ、分かった、それは認めよう」
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