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第十一章 キューバ戦争
ユカタン海峡海戦
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「閣下! 偵察隊から入電! 敵航空隊を確認しました! 数はおよそ500!」
スプルーアンス元帥はエンタープライズ艦橋で報告を受けた。まさかこの決戦艦隊が敵の先制攻撃を受けて壊滅するなど論外である。アメリカ海軍は大量の偵察機を飛ばして絶対に敵を見逃さない体制を整えていた。
「流石に多いな。それだけの数となると……エンタープライズ、君に頼る他にはなさそうだ」
「ふふ。承知しました、閣下」
と言うのは、他の船魄の艦載機を乗っ取って操れるというエンタープライズ固有の能力のことである。エンタープライズが操れば、日本軍の船魄にも後れは取らない。と、そこで、エンタープライズのお目付け役として同乗しているマッカーサー元帥が口を出してきた。
「エンタープライズ、そんなことをして本当に大丈夫なのか? 一人の船魄が操れる艦載機には限りがあると、お前が言っていたじゃないか」
「ふふ、元帥閣下、私のことを心配してくださるんですか?」
「まあそれもあるが、それよりも、そんなことをして運用効率が落ちないのかと聞いている」
「鋭いですね、陸軍の方なのに。確かにこれほどの機体を同時に操れば、一機当たりの運用効率は落ちます」
「そ、そういうことは早く言いたまえ!」
前回の戦いでそんなことを聞かされていないスプルーアンス元帥は憤る。
「聞かれていませんから」
「聞かれずともそういう情報は言うものだ」
「そうですか。しかし、効率が落ちるとは言っても、私以外のアメリカの船魄と比べれば、比べ物にもなりません。事実、前回は私の艦載機が日本の艦載機と互角に戦っていたでしょう?」
「それはそうだが……」
「つまり、いずれにせよ私の全て任せるのが最も効率的なのです」
「分かった。委細君に任せよう」
「ふふ。喜んで」
早速エンタープライズは全ての空母の艦載機を掌握し、たった一人で600機の艦載機を同時に操り始めた。
「いや、まて。敵が500機ともなると、敵は短期決戦を望んでいることは明白だ。敵はこちらを攻撃することに全力を掛けてくるだろう。一旦は迎撃に専念する為、戦闘機だけを出せ」
「……分かりました」
迎撃などという受動的な任務にエンタープライズは不満そうであったが、命令に逆らうほどではなかった。かくしてユカタン海峡にて、この戦争始まって以来の大海戦が幕を開けた。
○
さて、アメリカ艦隊はユカタン海峡の辺りで激しい戦闘を演じているが、対する日本側機動部隊はかなり東方、ジャマイカの沿岸辺りに布陣していた。空母がわざわざ敵に近寄ってやる必要はない。
「瑞鶴さん、戦況はどうですか?」
妙高は問う。
『前にニューヨークで戦った時と同じね。アメリカ軍にしてはやけに艦載機の操縦が上手い。どういうカラクリかはしらないけど、エンタープライズが全て操ってるわ』
「妙高は戦況が聞きたいんですけど」
妙高は部隊の指揮を執ると性格が変わるらしい。瑞鶴を相手にも全く遠慮する様子が見られない。
『ああ、ごめん。戦況は互角ってところね。どうやら私の方が技量は上みたいだけど、そう簡単に艦隊を攻撃することもできないし、エンタープライズの技量が劣る空母の艦載機はもう落とされ始めてるわ』
「具体的には?」
『私、ツェッペリン、信濃、大鳳は問題ないわね。他の子の技量は足りてないわ』
「そうですか……」
隼鷹、飛鷹、龍驤、千歳、千代田。いずれも軍艦としての経験はあるが、船魄化されてからの実戦経験には乏しい。エンタープライズという狂った船魄と戦うのは難儀だろう。
『あ、でも、龍驤は割と頑張ってるわね。評価を訂正するわ』
「了解です」
『でも数が少ないのが残念よね』
「それは仕方ないでしょう」
実は赤城や加賀と同世代に当たる古参の空母龍驤であるが、排水量は1万トンと少ししかなく、運用できる機体は精々40機であった。瑞鶴の半分である。
『で、このまま攻撃し続ける?』
「一先ずは様子見を。もう少ししたら次の判断をします」
『分かった。あんた、旗艦なんか向いてないと思ってたけど、なかなか板についてるじゃない』
「そ、それほどでも……」
瑞鶴に褒められると結構嬉しい妙高であった。かくして戦闘は暫く継続し、15分ほどが過ぎたところで、妙高は信濃に通信を掛けた。
「信濃、戦況はどうかな? 押し切れそう?」
『我にそれを聞くのか。現下、我が方が優勢ではあるが、敵軍の抵抗激しく、敵艦に一太刀入れられる気配はない』
「分かった。じゃあ一旦引き上げる」
『よいのか?』
「この調子だと無駄に消耗するだけだよ」
『分かった』
妙高はこれ以上の攻撃が無駄だと判断し、全ての空母に撤退を命じた。また同時に、艦上戦闘機以外を収容して、アメリカ側の攻撃に備えるように命令した。
スプルーアンス元帥はエンタープライズ艦橋で報告を受けた。まさかこの決戦艦隊が敵の先制攻撃を受けて壊滅するなど論外である。アメリカ海軍は大量の偵察機を飛ばして絶対に敵を見逃さない体制を整えていた。
「流石に多いな。それだけの数となると……エンタープライズ、君に頼る他にはなさそうだ」
「ふふ。承知しました、閣下」
と言うのは、他の船魄の艦載機を乗っ取って操れるというエンタープライズ固有の能力のことである。エンタープライズが操れば、日本軍の船魄にも後れは取らない。と、そこで、エンタープライズのお目付け役として同乗しているマッカーサー元帥が口を出してきた。
「エンタープライズ、そんなことをして本当に大丈夫なのか? 一人の船魄が操れる艦載機には限りがあると、お前が言っていたじゃないか」
「ふふ、元帥閣下、私のことを心配してくださるんですか?」
「まあそれもあるが、それよりも、そんなことをして運用効率が落ちないのかと聞いている」
「鋭いですね、陸軍の方なのに。確かにこれほどの機体を同時に操れば、一機当たりの運用効率は落ちます」
「そ、そういうことは早く言いたまえ!」
前回の戦いでそんなことを聞かされていないスプルーアンス元帥は憤る。
「聞かれていませんから」
「聞かれずともそういう情報は言うものだ」
「そうですか。しかし、効率が落ちるとは言っても、私以外のアメリカの船魄と比べれば、比べ物にもなりません。事実、前回は私の艦載機が日本の艦載機と互角に戦っていたでしょう?」
「それはそうだが……」
「つまり、いずれにせよ私の全て任せるのが最も効率的なのです」
「分かった。委細君に任せよう」
「ふふ。喜んで」
早速エンタープライズは全ての空母の艦載機を掌握し、たった一人で600機の艦載機を同時に操り始めた。
「いや、まて。敵が500機ともなると、敵は短期決戦を望んでいることは明白だ。敵はこちらを攻撃することに全力を掛けてくるだろう。一旦は迎撃に専念する為、戦闘機だけを出せ」
「……分かりました」
迎撃などという受動的な任務にエンタープライズは不満そうであったが、命令に逆らうほどではなかった。かくしてユカタン海峡にて、この戦争始まって以来の大海戦が幕を開けた。
○
さて、アメリカ艦隊はユカタン海峡の辺りで激しい戦闘を演じているが、対する日本側機動部隊はかなり東方、ジャマイカの沿岸辺りに布陣していた。空母がわざわざ敵に近寄ってやる必要はない。
「瑞鶴さん、戦況はどうですか?」
妙高は問う。
『前にニューヨークで戦った時と同じね。アメリカ軍にしてはやけに艦載機の操縦が上手い。どういうカラクリかはしらないけど、エンタープライズが全て操ってるわ』
「妙高は戦況が聞きたいんですけど」
妙高は部隊の指揮を執ると性格が変わるらしい。瑞鶴を相手にも全く遠慮する様子が見られない。
『ああ、ごめん。戦況は互角ってところね。どうやら私の方が技量は上みたいだけど、そう簡単に艦隊を攻撃することもできないし、エンタープライズの技量が劣る空母の艦載機はもう落とされ始めてるわ』
「具体的には?」
『私、ツェッペリン、信濃、大鳳は問題ないわね。他の子の技量は足りてないわ』
「そうですか……」
隼鷹、飛鷹、龍驤、千歳、千代田。いずれも軍艦としての経験はあるが、船魄化されてからの実戦経験には乏しい。エンタープライズという狂った船魄と戦うのは難儀だろう。
『あ、でも、龍驤は割と頑張ってるわね。評価を訂正するわ』
「了解です」
『でも数が少ないのが残念よね』
「それは仕方ないでしょう」
実は赤城や加賀と同世代に当たる古参の空母龍驤であるが、排水量は1万トンと少ししかなく、運用できる機体は精々40機であった。瑞鶴の半分である。
『で、このまま攻撃し続ける?』
「一先ずは様子見を。もう少ししたら次の判断をします」
『分かった。あんた、旗艦なんか向いてないと思ってたけど、なかなか板についてるじゃない』
「そ、それほどでも……」
瑞鶴に褒められると結構嬉しい妙高であった。かくして戦闘は暫く継続し、15分ほどが過ぎたところで、妙高は信濃に通信を掛けた。
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『我にそれを聞くのか。現下、我が方が優勢ではあるが、敵軍の抵抗激しく、敵艦に一太刀入れられる気配はない』
「分かった。じゃあ一旦引き上げる」
『よいのか?』
「この調子だと無駄に消耗するだけだよ」
『分かった』
妙高はこれ以上の攻撃が無駄だと判断し、全ての空母に撤退を命じた。また同時に、艦上戦闘機以外を収容して、アメリカ側の攻撃に備えるように命令した。
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