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第十一章 キューバ戦争
大航空戦
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さて、ルメイ大将が率いるは、1,200機のB29戦略爆撃機、60機のB50戦略爆撃機、600機のF86戦闘機の大部隊であった。護衛戦闘機を飛ばす為に高度は8,000mほどまで落とされており、ルメイ大将は司令部となるべく改造を施したB50から指揮を執っている。
「閣下、目標は大和でよろしいのですよね?」
「いいや、違う」
「は?」
「たった一隻の船を狙って爆撃などできるものか。それに、装甲目標相手に焼夷弾を落としたところで意味がない」
「は、はい」
「だから、我々の目標はシエンフエーゴスだ」
「なるほど。しかし、前線では我が軍と敵軍がかなり近距離に陣地を構えています。誤爆の危険性が大き過ぎるのでは……」
士官は当然、シエンフエーゴスに籠る敵軍を爆撃するものだと思った。
「何を言っているんだ、お前は? 我々の目標は市街地だ。民間人だ」
「な、何故、民間人を今更狙う必要が……? キューバをいくら爆撃しても兵器の生産量には影響ありませんが……」
キューバ軍が使用している武器兵器はほぼ全て外国産である。いくらキューバの生産力を落とした所で意味がない。
「そんなんじゃない。シエンフエーゴスを地図から消せば、もうシエンフエーゴスを攻撃する必要はなくなる。そうだろう?」
「な……そ、そんな話、聞いたことがありませんが……」
「先住民族の殲滅は合衆国の得意とするところじゃないか。歴史の勉強をサボってきたのか、君達は?」
「い、いや、しかし……」
「これは命令だ。逆らうことは許さん。シエンフエーゴスを地図から消せ!! これこそが真の民主化なのだ!!」
「は、はい……」
ルメイ大将に逆らえる者などいなかった。権限の上でもそうであるし、彼に反論しようと思う者など誰一人として存在しなかった。
「閣下! 敵です! 西から数百の敵機です!!」
「いいところに来たな。相手は震電で、一撃離脱に特化している。こちらはドッグファイトに持ち込んで撃ち落とせ!!」
「はっ!」
いくら狂気に取り憑かれていても、彼の能力は本物であった。彼は全世界の戦闘機、爆撃機、攻撃機の能力を把握しているのである。
「閣下! 震電だけではありません! 普通の戦闘機も混じっています!」
「メキシコからなら、大抵の戦闘機で届くか……。相手は十三式戦闘機だ。厄介だが、乱戦に持ち込んで時間を稼げ!」
「はっ!」
かくして両軍合わせて2,500機という稀に見る大規模な航空戦が開始されたのである。
○
「なーんか、空は大変なことになってるわね」
瑞鶴は祥雲を飛ばしてのんびりと戦闘を観察していた。瑞鶴でも見たことのない大量の戦闘機と爆撃機が入り乱れて殺し合いをしている。
「空軍がここまでしてくれるとは意外だった。後で感謝しておかなければ」
「私達の仕事はないわね」
「敵が近くに来たら、君も参戦してくれ。見間違えられることはないだろう」
「分かった」
戦闘は激しく続き、敵も味方の多数が撃墜されていった。シエンフエーゴスまで200kmを切った時点で、B29は400機、F86は250機が落とされ、日本側も300機以上を失っていた。
「閣下、敵を電探に捉えました。すごい数です」
「だろうな。瑞鶴、この辺りで頼む」
「ええ。好きなだけ殺せるわね」
瑞鶴の颶風40機が戦闘に参加する。全体から見れば大した数ではないし、この中では唯一のプロペラ戦闘機であるが、その戦闘能力は依然として隔絶していた。彼女にとってこの戦場は、B29を好きなだけ撃墜できる狩場でしかなかった。
○
「閣下! 新手はとんでもない奴らです!! プロペラ機なのに全く歯が立ちません!!」
「瑞鶴だ。間違いない。俺はこれを何度か見たことがある」
「ど、どうすれば……」
「構うな!! 奴の銃弾はその内切れる!! 奴に構わず全速力でシエンフエーゴスに向かえ!!」
いくら瑞鶴の能力が人間を超えていても、戦闘機が携行できる銃弾の数はたかが知れている。800機のB29を落とし切るなど到底不可能なのだ。
「どうやら瑞鶴は、我々が大和を狙っていると思っているらしい。その妨害に来たというのが妥当なところだろう」
「そ、それは……」
「つまり、奴の目的は我々を皆殺しにすることじゃない。恐れることはない! 我々は民主化の十字軍なのだ!!」
「はっ!」
瑞鶴もまた、アメリカ軍を殲滅できるなどとは思っていなかった。故に大和への照準を逸らすことが目的であったが、それは全く見当違いである。
「間もなくシエンフエーゴス直上です!!」
「よーし。全機ありったけの爆弾を投下せよ!! 小屋の一つも納屋の一つもシエンフエーゴスに残すな!! 全てを燃やし尽くせッ!!」
B29は半分残っている。これだけあれば十分だ。ルメイ大将は民間人を殺す為だけに開発されたナパーム弾で絨毯爆撃を行わせた。無数の爆弾がひゅうひゅうと音を立てて投下される。
「こ、これが、焼夷弾……」
シエンフエーゴスは今や、炎の絨毯に覆い尽くされた。都市が丸ごと燃え上がり、人も建物も全てを焼き尽くしていた。
「何と美しい……。諸君、目に焼き付けておきたまえ! これこそが民主主義の炎なのだ!! 独裁と専制を浄化する聖なる炎なのだ!!」
「はぁ……」
およそ4千の兵を数時間で失いながらも、ルメイ大将の作戦は成功に終わった。
国際連盟はアメリカの重大な戦争犯罪を強く非難し、改めて全世界にアメリカに対する制裁を呼び掛けたが、とっくに制裁を受けているアメリカにとっては大したことではない。
「閣下、目標は大和でよろしいのですよね?」
「いいや、違う」
「は?」
「たった一隻の船を狙って爆撃などできるものか。それに、装甲目標相手に焼夷弾を落としたところで意味がない」
「は、はい」
「だから、我々の目標はシエンフエーゴスだ」
「なるほど。しかし、前線では我が軍と敵軍がかなり近距離に陣地を構えています。誤爆の危険性が大き過ぎるのでは……」
士官は当然、シエンフエーゴスに籠る敵軍を爆撃するものだと思った。
「何を言っているんだ、お前は? 我々の目標は市街地だ。民間人だ」
「な、何故、民間人を今更狙う必要が……? キューバをいくら爆撃しても兵器の生産量には影響ありませんが……」
キューバ軍が使用している武器兵器はほぼ全て外国産である。いくらキューバの生産力を落とした所で意味がない。
「そんなんじゃない。シエンフエーゴスを地図から消せば、もうシエンフエーゴスを攻撃する必要はなくなる。そうだろう?」
「な……そ、そんな話、聞いたことがありませんが……」
「先住民族の殲滅は合衆国の得意とするところじゃないか。歴史の勉強をサボってきたのか、君達は?」
「い、いや、しかし……」
「これは命令だ。逆らうことは許さん。シエンフエーゴスを地図から消せ!! これこそが真の民主化なのだ!!」
「は、はい……」
ルメイ大将に逆らえる者などいなかった。権限の上でもそうであるし、彼に反論しようと思う者など誰一人として存在しなかった。
「閣下! 敵です! 西から数百の敵機です!!」
「いいところに来たな。相手は震電で、一撃離脱に特化している。こちらはドッグファイトに持ち込んで撃ち落とせ!!」
「はっ!」
いくら狂気に取り憑かれていても、彼の能力は本物であった。彼は全世界の戦闘機、爆撃機、攻撃機の能力を把握しているのである。
「閣下! 震電だけではありません! 普通の戦闘機も混じっています!」
「メキシコからなら、大抵の戦闘機で届くか……。相手は十三式戦闘機だ。厄介だが、乱戦に持ち込んで時間を稼げ!」
「はっ!」
かくして両軍合わせて2,500機という稀に見る大規模な航空戦が開始されたのである。
○
「なーんか、空は大変なことになってるわね」
瑞鶴は祥雲を飛ばしてのんびりと戦闘を観察していた。瑞鶴でも見たことのない大量の戦闘機と爆撃機が入り乱れて殺し合いをしている。
「空軍がここまでしてくれるとは意外だった。後で感謝しておかなければ」
「私達の仕事はないわね」
「敵が近くに来たら、君も参戦してくれ。見間違えられることはないだろう」
「分かった」
戦闘は激しく続き、敵も味方の多数が撃墜されていった。シエンフエーゴスまで200kmを切った時点で、B29は400機、F86は250機が落とされ、日本側も300機以上を失っていた。
「閣下、敵を電探に捉えました。すごい数です」
「だろうな。瑞鶴、この辺りで頼む」
「ええ。好きなだけ殺せるわね」
瑞鶴の颶風40機が戦闘に参加する。全体から見れば大した数ではないし、この中では唯一のプロペラ戦闘機であるが、その戦闘能力は依然として隔絶していた。彼女にとってこの戦場は、B29を好きなだけ撃墜できる狩場でしかなかった。
○
「閣下! 新手はとんでもない奴らです!! プロペラ機なのに全く歯が立ちません!!」
「瑞鶴だ。間違いない。俺はこれを何度か見たことがある」
「ど、どうすれば……」
「構うな!! 奴の銃弾はその内切れる!! 奴に構わず全速力でシエンフエーゴスに向かえ!!」
いくら瑞鶴の能力が人間を超えていても、戦闘機が携行できる銃弾の数はたかが知れている。800機のB29を落とし切るなど到底不可能なのだ。
「どうやら瑞鶴は、我々が大和を狙っていると思っているらしい。その妨害に来たというのが妥当なところだろう」
「そ、それは……」
「つまり、奴の目的は我々を皆殺しにすることじゃない。恐れることはない! 我々は民主化の十字軍なのだ!!」
「はっ!」
瑞鶴もまた、アメリカ軍を殲滅できるなどとは思っていなかった。故に大和への照準を逸らすことが目的であったが、それは全く見当違いである。
「間もなくシエンフエーゴス直上です!!」
「よーし。全機ありったけの爆弾を投下せよ!! 小屋の一つも納屋の一つもシエンフエーゴスに残すな!! 全てを燃やし尽くせッ!!」
B29は半分残っている。これだけあれば十分だ。ルメイ大将は民間人を殺す為だけに開発されたナパーム弾で絨毯爆撃を行わせた。無数の爆弾がひゅうひゅうと音を立てて投下される。
「こ、これが、焼夷弾……」
シエンフエーゴスは今や、炎の絨毯に覆い尽くされた。都市が丸ごと燃え上がり、人も建物も全てを焼き尽くしていた。
「何と美しい……。諸君、目に焼き付けておきたまえ! これこそが民主主義の炎なのだ!! 独裁と専制を浄化する聖なる炎なのだ!!」
「はぁ……」
およそ4千の兵を数時間で失いながらも、ルメイ大将の作戦は成功に終わった。
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