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第九章 大東亜戦争Ⅱ(戦中編)
特別攻撃部隊
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一九四五年十二月四日、アメリカ大統領官邸ホワイトハウス。
「大統領閣下、日本から降伏を促す親書が届きました」
トルーマン副大統領は、日本から届いた親書をルーズベルト大統領に手渡した。
「降伏、だと?」
ルーズベルトは心底信じられないと言った声で言った。
「はい。イギリスはとうに降伏し、ソ連も戦争を離脱した今、我々の味方は世界のどこにもいません。日本との講和に応じるべきでは?」
「何を言っているんだね、ハリー。合衆国の国是は、全ての有色人種を地上から抹殺すること。そしてこの戦争の目的は、その最大の障害たる日本人を絶滅させることにある。違うかね?」
「日本人を奴隷化するというのは聞いていましたが、絶滅するというのは初耳なんですが……」
「おや、言っていなかったかね。まあ当然、最初は奴隷化だ。そうして日本の文化を奪い、言語を奪い、精神を奪い、教育を破壊し、日本人をじっくりと絶滅させていくのだ。私が生きている間には実現できないだろうが、そこは後世の大統領達に任せよう」
「はぁ、なるほど。ですが今更そんなことは不可能だと思いますが……」
「アメリカは負けない。この広大な国土、資源、生産能力があればいかなる国にも負けない。我々は日本を完全に奴隷化するまで戦い続ける。日本との交渉など論外だ。分かったかね?」
「はあ、分かりました。では引き続き、本土決戦ということで」
「準備を進めたまえ」
ルーズベルトには日本と交渉する気など毛頭ない。ハワイとアメリカ本土の間を遮るものは何もない。現在の小康状態が終わるとすれば本土決戦になることは間違いないだろう。
さて、ルーズベルトが狂気に取り憑かれていることは明白であった。それが生来のものなのか戦争に負け続けで狂ってしまったのかは分からないが、ともかく、トルーマンはこれ以上戦争を続けることの無意味さを理解していた。
トルーマンはマッカーサー大将を密かに呼び出して面会していた。
「何の用ですか、副大統領閣下?」
「単刀直入に言おう。ルーズベルトは気が狂っている。彼は日本を滅ぼすまで戦争を止める気などないが、そんなことは不可能だ」
「ルーズベルトが狂っている? 今更気付いたんですか?」
マッカーサー大将は挑発するように言う。
「……君はいつから気付いていたんだね?」
「奴が大統領になった時からですよ。あの男は大統領になってからずっと、どうやって戦争を起こすかばかり考えていました。合衆国の国益の為に戦争するのではなく、戦争することそのものが奴の目的です。大体、そんなこと知識人なら誰でも気付いてると思いますよ?」
「そ、そうか。いや、そんなことはどうでもいいんだ」
「私に何をさせたいんです?」
「奴は政治的には無能だが、プロパガンダだけはヒトラー並に上手い。馬鹿な人民は未だに正義の戦争をしていると信じ込んでいる。これを止めるには最早、武力で政権を倒すしかない」
「要するに、俺にクーデターを起こせってことですね?」
「そう大きな声で言うな。しかし、今はまだその時ではない。ルーズベルトを信じている人民が圧倒的多数派な以上、そんなことをしたら国が割れてしまう」
「じゃあ、いつになれば奴を殺していいんですかね?」
マッカーサーは内心では今すぐルーズベルトを殺したかった。ルーズベルトが起こした無用の戦争で、何百万というアメリカ人、何十万という彼の部下が死に追いやられたのだから。
「まだ分からない。だがこちらで準備を進める。君も信頼できる者を選んで、いつでもクーデターを起こせるようにしておきたまえ」
「了解です。喜んで協力しますよ」
政府上層部はルーズベルト排除に向けて動き出した。
○
一九四五年十二月九日、ホワイトハウス。
「大統領閣下、たった今、日本艦隊がハワイを出ました。戦力は空母4、戦艦1、他30隻程度です」
「また瑞鶴がやって来るか。面白くなって来たじゃないか。で、敵の狙いはどこだ?」
「まだ分かりません。しかし軍部としては、西海岸の主要都市のいずれか、特にサンフランシスコかロサンゼルスに攻撃を行うものかと予想しています」
「よろしい。では我が軍の総力を挙げ、敵を撃退しようではないか。ルメイ中将、任せたよ」
「はっ。敵は皆殺しにしてやります」
「例の特別攻撃部隊、ですか……」
「ああ。これから戦争はもっと楽しくなるよ」
カーチス・ルメイ陸軍中将は、民間人の虐殺を好んで行うアメリカ軍でも屈指の狂人である。だが、だからこそ、ルーズベルトに全幅の信頼を寄せられていた。
○
同日。ルメイ中将は直ちにサンフランシスコに飛び『特別攻撃部隊』に志願した数百の兵士に向かって演説していた。
「諸君、まずは諸君の勇気に感謝したい! 君達の命を私に預けてくれたこと、心より感謝する。これは民主主義を防衛する為の聖戦である! 諸君は民主主義に殉じた英雄として、未来永劫、アメリカ合衆国の歴史にその名が刻まれるだろう! 君達の犠牲の先に、民主主義の勝利があるのだ! 民主主義よ、永遠なれ!!」
「「「民主主義、万歳!!」」」
兵士は民主主義を信じ、死に向かって行く。
「大統領閣下、日本から降伏を促す親書が届きました」
トルーマン副大統領は、日本から届いた親書をルーズベルト大統領に手渡した。
「降伏、だと?」
ルーズベルトは心底信じられないと言った声で言った。
「はい。イギリスはとうに降伏し、ソ連も戦争を離脱した今、我々の味方は世界のどこにもいません。日本との講和に応じるべきでは?」
「何を言っているんだね、ハリー。合衆国の国是は、全ての有色人種を地上から抹殺すること。そしてこの戦争の目的は、その最大の障害たる日本人を絶滅させることにある。違うかね?」
「日本人を奴隷化するというのは聞いていましたが、絶滅するというのは初耳なんですが……」
「おや、言っていなかったかね。まあ当然、最初は奴隷化だ。そうして日本の文化を奪い、言語を奪い、精神を奪い、教育を破壊し、日本人をじっくりと絶滅させていくのだ。私が生きている間には実現できないだろうが、そこは後世の大統領達に任せよう」
「はぁ、なるほど。ですが今更そんなことは不可能だと思いますが……」
「アメリカは負けない。この広大な国土、資源、生産能力があればいかなる国にも負けない。我々は日本を完全に奴隷化するまで戦い続ける。日本との交渉など論外だ。分かったかね?」
「はあ、分かりました。では引き続き、本土決戦ということで」
「準備を進めたまえ」
ルーズベルトには日本と交渉する気など毛頭ない。ハワイとアメリカ本土の間を遮るものは何もない。現在の小康状態が終わるとすれば本土決戦になることは間違いないだろう。
さて、ルーズベルトが狂気に取り憑かれていることは明白であった。それが生来のものなのか戦争に負け続けで狂ってしまったのかは分からないが、ともかく、トルーマンはこれ以上戦争を続けることの無意味さを理解していた。
トルーマンはマッカーサー大将を密かに呼び出して面会していた。
「何の用ですか、副大統領閣下?」
「単刀直入に言おう。ルーズベルトは気が狂っている。彼は日本を滅ぼすまで戦争を止める気などないが、そんなことは不可能だ」
「ルーズベルトが狂っている? 今更気付いたんですか?」
マッカーサー大将は挑発するように言う。
「……君はいつから気付いていたんだね?」
「奴が大統領になった時からですよ。あの男は大統領になってからずっと、どうやって戦争を起こすかばかり考えていました。合衆国の国益の為に戦争するのではなく、戦争することそのものが奴の目的です。大体、そんなこと知識人なら誰でも気付いてると思いますよ?」
「そ、そうか。いや、そんなことはどうでもいいんだ」
「私に何をさせたいんです?」
「奴は政治的には無能だが、プロパガンダだけはヒトラー並に上手い。馬鹿な人民は未だに正義の戦争をしていると信じ込んでいる。これを止めるには最早、武力で政権を倒すしかない」
「要するに、俺にクーデターを起こせってことですね?」
「そう大きな声で言うな。しかし、今はまだその時ではない。ルーズベルトを信じている人民が圧倒的多数派な以上、そんなことをしたら国が割れてしまう」
「じゃあ、いつになれば奴を殺していいんですかね?」
マッカーサーは内心では今すぐルーズベルトを殺したかった。ルーズベルトが起こした無用の戦争で、何百万というアメリカ人、何十万という彼の部下が死に追いやられたのだから。
「まだ分からない。だがこちらで準備を進める。君も信頼できる者を選んで、いつでもクーデターを起こせるようにしておきたまえ」
「了解です。喜んで協力しますよ」
政府上層部はルーズベルト排除に向けて動き出した。
○
一九四五年十二月九日、ホワイトハウス。
「大統領閣下、たった今、日本艦隊がハワイを出ました。戦力は空母4、戦艦1、他30隻程度です」
「また瑞鶴がやって来るか。面白くなって来たじゃないか。で、敵の狙いはどこだ?」
「まだ分かりません。しかし軍部としては、西海岸の主要都市のいずれか、特にサンフランシスコかロサンゼルスに攻撃を行うものかと予想しています」
「よろしい。では我が軍の総力を挙げ、敵を撃退しようではないか。ルメイ中将、任せたよ」
「はっ。敵は皆殺しにしてやります」
「例の特別攻撃部隊、ですか……」
「ああ。これから戦争はもっと楽しくなるよ」
カーチス・ルメイ陸軍中将は、民間人の虐殺を好んで行うアメリカ軍でも屈指の狂人である。だが、だからこそ、ルーズベルトに全幅の信頼を寄せられていた。
○
同日。ルメイ中将は直ちにサンフランシスコに飛び『特別攻撃部隊』に志願した数百の兵士に向かって演説していた。
「諸君、まずは諸君の勇気に感謝したい! 君達の命を私に預けてくれたこと、心より感謝する。これは民主主義を防衛する為の聖戦である! 諸君は民主主義に殉じた英雄として、未来永劫、アメリカ合衆国の歴史にその名が刻まれるだろう! 君達の犠牲の先に、民主主義の勝利があるのだ! 民主主義よ、永遠なれ!!」
「「「民主主義、万歳!!」」」
兵士は民主主義を信じ、死に向かって行く。
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