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第八章 帝都襲撃
ソ連艦隊敗れる
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「どうする、長門?」
「ソ連に瑞鶴を取られる訳にはいかん。連合艦隊司令部に問い合わせている時間もないし、私達で時間を稼ぐぞ」
「ソ連と戦争をする気か?」
「いいや、まさか。時間を稼ぐだけなら、手段は幾らでもあるというものだ。すぐに出撃できる艦は?」
「我と大鳳、駆逐艦は全て出せる」
「少し不安だが……いや、そもそもソ連を攻撃したい訳ではない。その戦力で直ちに出撃してくれ。その間に私が奴らと交渉する」
「承知した。直ちに行く」
長門は砲戦力がないのを心配していたが、空母と駆逐艦というのは悪くない組み合わせである。空母が最大戦速を出しても随伴艦が落伍することはないからだ。かくして信濃達を出撃させると、長門はすぐソ連艦隊に連絡をつけた。
『ソビエト連邦海軍太平洋艦隊旗艦、ソビエツキー・ソユーズだ。貴官は同志長門か?』
「ああ。大日本帝国海軍第五艦隊旗艦、長門だ。急な連絡に応じてくれて感謝する」
『その程度どうということはない。それで、何の用で連絡を?』
「しらばっくれるな。お前達が瑞鶴を狙っていることは知っている」
『それがどうしたと言うのだ? 我々はただ海賊退治に向かっているだけだ』
「瑞鶴も妙高も日本の艦なのだ。後始末は我々に任せてもらいたい」
『既に国家の管理を外れた軍艦だ。どこの艦でもない。日本も連邦も、特別な関係は最早持っていないのでは?』
「……聞き分けの悪い奴だな。であれば、奴はキューバ海軍の艦だ。ソ連もキューバを支援していた筈。キューバを敵に回すつもりか?」
『我々はそれを認めていない。それに、今回の行動は恐らく、キューバは積極的に関与していない。キューバの利益にならないからな。それに、同志長門こそそれを認めてよいのか? 瑞鶴を取り戻す大義名分が消え失せるが』
「いや、そ、それは……」
相変わらず言い争いが下手くそな長門であった。
『申し訳ないが、我々は今度こそ瑞鶴を捕獲させてもらう。他に言うことはあるか?』
「いや……ない。好きにしろ」
国際法に照らしてもソ連海軍の行動は合法的で合理的なものだ。とても瑞鶴への攻撃を止める理由を見つけられそうにない。
「あらあら、交渉は失敗かしら?」
すぐそこで話を聞いていた陸奥は挑発するように言った。
「失敗だ。悔しいが、奴らの方に理がある」
「まあそうでしょうねえ。公海で海賊退治をするのは寧ろ推奨されてるし」
「どうすればいい、陸奥?」
陸奥なら何か奥の手を知っているかもしれないと、長門は期待する。
「流石にこれはどうしようもないでしょ。信濃と大鳳に命令してソ連と戦争を始まるなら別だけど」
「真面目に考えろ」
「じゃあ、瑞鶴に教えてあげたら? ソ連軍が狙ってるって」
「なるほど……。先手を打てれば、瑞鶴なら容易に敵を撃退できるだろう」
「ふーん。瑞鶴を信頼してるのね」
「あ、あんな奴を信頼などするものか! ただ実力は本物というだけだ」
「何でもいいけど。とにかく、やるなら早くよ」
「分かっている」
長門は瑞鶴にソ連艦隊の動向を教えた。瑞鶴はソ連軍と1000km以上離れたところで艦載機を全て出し、先制攻撃に出た。
○
「ん? あれは……」
ソビエツキー・ソユーズは水平線の付近に妙な鳥の群れのようなものを発見した。その影はすぐに大きさを増していき、彼女はその正体を悟った。
「艦載機だと!? 馬鹿なッ! どうしてここまで!?」
『どうやら、超低空を飛行してレーダーから逃れたみたいだね……』
ソビエツカヤ・ベラルーシは不愉快そうな声で言う。瑞鶴の艦載機は水面に陰ができるほどの超低空を飛行していたのである。
「そんな馬鹿なことが……。いや、全艦直ちに戦闘用意!! 敵を迎え撃て!! ノヴォロシースクは艦載機を出せるか?」
『ちょっと間に合わないと思いますね……』
「クッ……」
肉眼で見えてから対処するようでは余りにも遅すぎる。ノヴォロシースクが4機の艦上戦闘機を発艦させた頃には、瑞鶴の航空戦隊がソ連艦隊に襲いかかっていた。
「撃ちまくれ!! 敵を近付けるな!!」
『そうは言っても、無理があるんじゃないかな……』
全艦が必死に対空砲火を行うが、瑞鶴は簡単に回避する。そして瑞鶴が狙っていたのはただ一隻のみ。
「ノヴォロシースク!! 敵の狙いはお前だ!!」
『やっぱり、そうなりますよね……!』
瑞鶴の艦爆がノヴォロシースクの直情に入り、一気に6発の爆弾を投下した。4発が命中して、ノヴォロシースクの飛行甲板は真っ二つに割れてしまった。
「大丈夫かノヴォロシースク!?」
『飛行甲板がやられました。もう艦載機は出せません』
『敵は逃げるみたいだよ』
「一撃離脱という訳か……」
瑞鶴はノヴォロシースクを無力化したことを確認するとすぐさま艦載機を引き上げさせた。ソ連艦隊の航空戦力は消滅したことになる。
『どうするんだい、ソユーズ姉さん?』
「制空権なしで戦うなど以ての外だ。作戦は、中止する。全艦引き上げろ」
瑞鶴は長門の期待通り、ソ連艦隊をあっという間に撃退したのであった。
「ソ連に瑞鶴を取られる訳にはいかん。連合艦隊司令部に問い合わせている時間もないし、私達で時間を稼ぐぞ」
「ソ連と戦争をする気か?」
「いいや、まさか。時間を稼ぐだけなら、手段は幾らでもあるというものだ。すぐに出撃できる艦は?」
「我と大鳳、駆逐艦は全て出せる」
「少し不安だが……いや、そもそもソ連を攻撃したい訳ではない。その戦力で直ちに出撃してくれ。その間に私が奴らと交渉する」
「承知した。直ちに行く」
長門は砲戦力がないのを心配していたが、空母と駆逐艦というのは悪くない組み合わせである。空母が最大戦速を出しても随伴艦が落伍することはないからだ。かくして信濃達を出撃させると、長門はすぐソ連艦隊に連絡をつけた。
『ソビエト連邦海軍太平洋艦隊旗艦、ソビエツキー・ソユーズだ。貴官は同志長門か?』
「ああ。大日本帝国海軍第五艦隊旗艦、長門だ。急な連絡に応じてくれて感謝する」
『その程度どうということはない。それで、何の用で連絡を?』
「しらばっくれるな。お前達が瑞鶴を狙っていることは知っている」
『それがどうしたと言うのだ? 我々はただ海賊退治に向かっているだけだ』
「瑞鶴も妙高も日本の艦なのだ。後始末は我々に任せてもらいたい」
『既に国家の管理を外れた軍艦だ。どこの艦でもない。日本も連邦も、特別な関係は最早持っていないのでは?』
「……聞き分けの悪い奴だな。であれば、奴はキューバ海軍の艦だ。ソ連もキューバを支援していた筈。キューバを敵に回すつもりか?」
『我々はそれを認めていない。それに、今回の行動は恐らく、キューバは積極的に関与していない。キューバの利益にならないからな。それに、同志長門こそそれを認めてよいのか? 瑞鶴を取り戻す大義名分が消え失せるが』
「いや、そ、それは……」
相変わらず言い争いが下手くそな長門であった。
『申し訳ないが、我々は今度こそ瑞鶴を捕獲させてもらう。他に言うことはあるか?』
「いや……ない。好きにしろ」
国際法に照らしてもソ連海軍の行動は合法的で合理的なものだ。とても瑞鶴への攻撃を止める理由を見つけられそうにない。
「あらあら、交渉は失敗かしら?」
すぐそこで話を聞いていた陸奥は挑発するように言った。
「失敗だ。悔しいが、奴らの方に理がある」
「まあそうでしょうねえ。公海で海賊退治をするのは寧ろ推奨されてるし」
「どうすればいい、陸奥?」
陸奥なら何か奥の手を知っているかもしれないと、長門は期待する。
「流石にこれはどうしようもないでしょ。信濃と大鳳に命令してソ連と戦争を始まるなら別だけど」
「真面目に考えろ」
「じゃあ、瑞鶴に教えてあげたら? ソ連軍が狙ってるって」
「なるほど……。先手を打てれば、瑞鶴なら容易に敵を撃退できるだろう」
「ふーん。瑞鶴を信頼してるのね」
「あ、あんな奴を信頼などするものか! ただ実力は本物というだけだ」
「何でもいいけど。とにかく、やるなら早くよ」
「分かっている」
長門は瑞鶴にソ連艦隊の動向を教えた。瑞鶴はソ連軍と1000km以上離れたところで艦載機を全て出し、先制攻撃に出た。
○
「ん? あれは……」
ソビエツキー・ソユーズは水平線の付近に妙な鳥の群れのようなものを発見した。その影はすぐに大きさを増していき、彼女はその正体を悟った。
「艦載機だと!? 馬鹿なッ! どうしてここまで!?」
『どうやら、超低空を飛行してレーダーから逃れたみたいだね……』
ソビエツカヤ・ベラルーシは不愉快そうな声で言う。瑞鶴の艦載機は水面に陰ができるほどの超低空を飛行していたのである。
「そんな馬鹿なことが……。いや、全艦直ちに戦闘用意!! 敵を迎え撃て!! ノヴォロシースクは艦載機を出せるか?」
『ちょっと間に合わないと思いますね……』
「クッ……」
肉眼で見えてから対処するようでは余りにも遅すぎる。ノヴォロシースクが4機の艦上戦闘機を発艦させた頃には、瑞鶴の航空戦隊がソ連艦隊に襲いかかっていた。
「撃ちまくれ!! 敵を近付けるな!!」
『そうは言っても、無理があるんじゃないかな……』
全艦が必死に対空砲火を行うが、瑞鶴は簡単に回避する。そして瑞鶴が狙っていたのはただ一隻のみ。
「ノヴォロシースク!! 敵の狙いはお前だ!!」
『やっぱり、そうなりますよね……!』
瑞鶴の艦爆がノヴォロシースクの直情に入り、一気に6発の爆弾を投下した。4発が命中して、ノヴォロシースクの飛行甲板は真っ二つに割れてしまった。
「大丈夫かノヴォロシースク!?」
『飛行甲板がやられました。もう艦載機は出せません』
『敵は逃げるみたいだよ』
「一撃離脱という訳か……」
瑞鶴はノヴォロシースクを無力化したことを確認するとすぐさま艦載機を引き上げさせた。ソ連艦隊の航空戦力は消滅したことになる。
『どうするんだい、ソユーズ姉さん?』
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