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第七章 アメリカ本土空襲
アメリカという国
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「何がしたいんだ貴様らは!? 私を失脚させたいのなら別の手を選べ! 市民の命をそんなことに利用するなッ!!」
「いえいえ、市長、我々は閣下の進退に特に興味はありません。我々はもっと大局的な観点から動いているのです」
「……言ってみろ」
「現下、残念ながら我が軍にはキューバ軍の攻撃を防ぐ方法はありません。よってそれらビルが破壊されるのは決定的。であるのならば、これを連邦の為に有効活用しなければなりません」
「市民を放置して何が連邦の為になると?」
「キューバ軍に大量虐殺の汚名を着せられます。キューバへの国際的な感情は確実に悪化するでしょう」
「そ、そんなことの為に、ニューヨーク市民を何千人と犠牲にするというのか……?」
「もちろんです、閣下。たかが数千数万の命、エンパイアステートビルやクライスラービルの不動産、動産の価値に比べれば、誤差程度にしか過ぎません」
「き、貴様……それでも人間か?」
「国家というのは常に最大の国益を目指し続けるべきです」
「クソッ。狂ってる」
「CIAがマトモな組織だとお思いですか?」
「いいや。だがここまでとは思わなかった」
ワグナー市長は改めて、ここで抵抗することの無意味さを悟った。仮にCIAの命令を無視して避難活動を始めたとしても、CIAが実力行使に出るだけだろう。
「だが、キューバ軍は既に避難勧告を出している。避難を怠ったこちらの責任ということにはならないのか?」
「避難が間に合わなかったということにすればいいのです。どの道、避難指示があったかどうかなど、ビルの瓦礫の下に埋もれて分からなくなります」
「それが首相の意思なのか?」
「はい。アイゼンハワー首相閣下よりCIAに下った命令です」
「はぁ……。ならもう言うことはない」
結局ニューヨーク市は何もしなかった。キューバ軍の声明自体は全世界に知れ渡っているので、自主的に引き上げた労働者は多かったが、なおも4千人程度が2つのビルに残っていた。
○
「首相閣下、攻撃予告時間まで1時間を切りました」
「そんなこと分かっている」
アイゼンハワー首相は酷く不機嫌そうに言った。
「本当にあの艦隊を放置してよろしいのですか?」
「敵は艦隊空母4隻、戦艦2隻の大艦隊だ。我々には最早、これを食い止められる戦力は残されていない」
「エンタープライズを投入するというのは……」
「いくら彼女でも、これほどの戦力差を埋めることは不可能だろう。それに向こうには、エンタープライズと伍する船魄が3隻もいるんだ」
「では、首都防衛を放棄するということですか……?」
「そうだ。まあ防衛しているというポーズは必要だろうが」
結局、アイゼンハワー首相は日本艦隊に抵抗することを諦め、戦力の温存を図ったのであった。
○
「時間ね。ツェッペリン、やるわよ」
『任せろ。アメリカ人に一泡吹かせてくれる』
結局、艦隊に対する攻撃は皆無であった。第五艦隊が抑止力となったからである。
瑞鶴とツェッペリンは全ての艦載機を発艦させ、ニューヨークに向けて出撃させた。ツェッペリンは飛行甲板が半分破壊されているので発艦に倍の時間がかかってしまったが。
「敵の局地戦闘機よ」
『所詮は人間の戦闘機であろう?』
「ええ。死に物狂いって奴かしら」
地上配備の迎撃戦闘機がおよそ300、瑞鶴とツェッペリンに立ちはだかる。しかしそんな抵抗は甚だ無意味である。人間の戦闘機など瑞鶴の攻撃機にすら敵わず、一瞬にして全滅した。更にニューヨーク周辺の高射砲台が健気な対空砲火を行うが、これも軽々と回避する。
瑞鶴とツェッペリン合わせて僅か2機しか失わず、攻撃隊はあっという間にニューヨーク中心部に到達した。2棟の巨大なビル、ニューヨークの象徴は、爆撃の目標として非常に分かりやすい。
「じゃあ、やるわよ。私はエンパイアステートビルを壊す」
『では我はクライスラービルを』
瑞鶴はビルに急降下爆撃を行い、民間の建物を破壊するには些か威力過大な爆弾を投下する。天井に命中した爆弾は簡単に数十階を貫通し、ビルの根元で大爆発を起こした。下階が崩壊し、ビルは少し短くなった。
「あれ、逃げてる連中がいる」
瑞鶴はビルから必死に走って逃げようとする人々を発見した。数は数百程度である。
『我らの警告を聞かなった愚か者共だ。放っておけ』
「ま、そうね。放っておく以外の選択肢はないけど」
わざわざ機銃掃射することもない。
「しかし意外と壊れないわね」
『もう一度爆撃するか?』
いずれのビルも爆弾一つでは壊れなかった。
「そうしましょう。中に人が残ってようと知ったこっちゃないわ」
これまでアメリカ軍がやってきたことと比べれば、ビルの1つや2つを破壊するなど些細なことである。軍がやったことで民間人は関係ないと言われても、民主主義なのだから戦争を選んだ国民にも責任がある。瑞鶴は例え中に人がいようとも、エンパイアステートビルを破壊することに躊躇いなどなかった。
「これで終わりにしましょう」
瑞鶴は更なる爆撃を行い、数個の爆弾がエンパイアステートビルを貫通した。ビルはついに、まるで上から押し潰されているかのように崩れ落ち、文字通り瓦礫の山と化した。クライスラービルも同様であった。
「天弐号作戦は成功した。全艦撤退!」
作戦は完了した。キューバ海軍に、月虹に、東海岸の如何なる場所でも爆撃する能力があると世界に知らしめることができたのだ。
「いえいえ、市長、我々は閣下の進退に特に興味はありません。我々はもっと大局的な観点から動いているのです」
「……言ってみろ」
「現下、残念ながら我が軍にはキューバ軍の攻撃を防ぐ方法はありません。よってそれらビルが破壊されるのは決定的。であるのならば、これを連邦の為に有効活用しなければなりません」
「市民を放置して何が連邦の為になると?」
「キューバ軍に大量虐殺の汚名を着せられます。キューバへの国際的な感情は確実に悪化するでしょう」
「そ、そんなことの為に、ニューヨーク市民を何千人と犠牲にするというのか……?」
「もちろんです、閣下。たかが数千数万の命、エンパイアステートビルやクライスラービルの不動産、動産の価値に比べれば、誤差程度にしか過ぎません」
「き、貴様……それでも人間か?」
「国家というのは常に最大の国益を目指し続けるべきです」
「クソッ。狂ってる」
「CIAがマトモな組織だとお思いですか?」
「いいや。だがここまでとは思わなかった」
ワグナー市長は改めて、ここで抵抗することの無意味さを悟った。仮にCIAの命令を無視して避難活動を始めたとしても、CIAが実力行使に出るだけだろう。
「だが、キューバ軍は既に避難勧告を出している。避難を怠ったこちらの責任ということにはならないのか?」
「避難が間に合わなかったということにすればいいのです。どの道、避難指示があったかどうかなど、ビルの瓦礫の下に埋もれて分からなくなります」
「それが首相の意思なのか?」
「はい。アイゼンハワー首相閣下よりCIAに下った命令です」
「はぁ……。ならもう言うことはない」
結局ニューヨーク市は何もしなかった。キューバ軍の声明自体は全世界に知れ渡っているので、自主的に引き上げた労働者は多かったが、なおも4千人程度が2つのビルに残っていた。
○
「首相閣下、攻撃予告時間まで1時間を切りました」
「そんなこと分かっている」
アイゼンハワー首相は酷く不機嫌そうに言った。
「本当にあの艦隊を放置してよろしいのですか?」
「敵は艦隊空母4隻、戦艦2隻の大艦隊だ。我々には最早、これを食い止められる戦力は残されていない」
「エンタープライズを投入するというのは……」
「いくら彼女でも、これほどの戦力差を埋めることは不可能だろう。それに向こうには、エンタープライズと伍する船魄が3隻もいるんだ」
「では、首都防衛を放棄するということですか……?」
「そうだ。まあ防衛しているというポーズは必要だろうが」
結局、アイゼンハワー首相は日本艦隊に抵抗することを諦め、戦力の温存を図ったのであった。
○
「時間ね。ツェッペリン、やるわよ」
『任せろ。アメリカ人に一泡吹かせてくれる』
結局、艦隊に対する攻撃は皆無であった。第五艦隊が抑止力となったからである。
瑞鶴とツェッペリンは全ての艦載機を発艦させ、ニューヨークに向けて出撃させた。ツェッペリンは飛行甲板が半分破壊されているので発艦に倍の時間がかかってしまったが。
「敵の局地戦闘機よ」
『所詮は人間の戦闘機であろう?』
「ええ。死に物狂いって奴かしら」
地上配備の迎撃戦闘機がおよそ300、瑞鶴とツェッペリンに立ちはだかる。しかしそんな抵抗は甚だ無意味である。人間の戦闘機など瑞鶴の攻撃機にすら敵わず、一瞬にして全滅した。更にニューヨーク周辺の高射砲台が健気な対空砲火を行うが、これも軽々と回避する。
瑞鶴とツェッペリン合わせて僅か2機しか失わず、攻撃隊はあっという間にニューヨーク中心部に到達した。2棟の巨大なビル、ニューヨークの象徴は、爆撃の目標として非常に分かりやすい。
「じゃあ、やるわよ。私はエンパイアステートビルを壊す」
『では我はクライスラービルを』
瑞鶴はビルに急降下爆撃を行い、民間の建物を破壊するには些か威力過大な爆弾を投下する。天井に命中した爆弾は簡単に数十階を貫通し、ビルの根元で大爆発を起こした。下階が崩壊し、ビルは少し短くなった。
「あれ、逃げてる連中がいる」
瑞鶴はビルから必死に走って逃げようとする人々を発見した。数は数百程度である。
『我らの警告を聞かなった愚か者共だ。放っておけ』
「ま、そうね。放っておく以外の選択肢はないけど」
わざわざ機銃掃射することもない。
「しかし意外と壊れないわね」
『もう一度爆撃するか?』
いずれのビルも爆弾一つでは壊れなかった。
「そうしましょう。中に人が残ってようと知ったこっちゃないわ」
これまでアメリカ軍がやってきたことと比べれば、ビルの1つや2つを破壊するなど些細なことである。軍がやったことで民間人は関係ないと言われても、民主主義なのだから戦争を選んだ国民にも責任がある。瑞鶴は例え中に人がいようとも、エンパイアステートビルを破壊することに躊躇いなどなかった。
「これで終わりにしましょう」
瑞鶴は更なる爆撃を行い、数個の爆弾がエンパイアステートビルを貫通した。ビルはついに、まるで上から押し潰されているかのように崩れ落ち、文字通り瓦礫の山と化した。クライスラービルも同様であった。
「天弐号作戦は成功した。全艦撤退!」
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