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第七章 アメリカ本土空襲

決着

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 一方その頃、長門と陸奥は予想以上に苦戦を強いられていた。

『ようやく一隻沈黙したみたいね』
「クソッ。これでは……」

 長門と陸奥は先頭のアイオワの上甲板を徹底的に破壊してついに無力化することに成功した。しかし敵はまだ2隻、ニュージャージーとケンタッキーが無傷で残っている。航行不能に陥ったアイオワを無視して突進してきた。

『これじゃあとても食い止められる気がしないんだけど?』
「そのようだが、しかし……」

 と、その時、ようやく敵艦が主砲を放って来た。

『あら、撃って来た』
「何を呑気なことを言っている! 回避しろ!」
『あんまり意味ないと思うけどなあ』

 魚雷のようにどう飛んでくるか分かるものでもない。戦艦の速力で回避行動を取るのも限度がある。回避行動を取ればこちらの命中率も下がってしまう。戦艦同士の撃ち合いで回避など非現実的と言わざるを得ないのだ。

「だ、だからと言って何もしない訳には……」
『いいじゃない。私達は元から壁なんだし』
「どうなっても知らんからな」

 長門は回避行動を取らず敵を待ち受けることにした。もちろん砲撃は継続する。しかし運悪く、ニュージャージーの砲撃が初弾から長門の左舷艦首を撃ち抜いたのである。

「うぐっ……」
『あら長門、大丈夫?』

 まるでちょっと躓いた時のように、緊張感なく陸奥は言った。長門型の装甲なら多少撃たれたくらい問題ないと確信しているからだ。

「問題ない。私に構わず撃ち続けろ!」
『そうは言ってもねえ……』

 問題は敵に何発主砲弾を叩き込んでも止まる気配が全くないことである。

『10kmを切った。このままじゃ押し通られると思うんだけど、どうするの?』
「空母達を攻撃される訳にはいかん。ここは……体当してでも食い止める」
『あらあら。それは大変ね』
「お前もやるんだぞ、陸奥」
『えー、そういうの好きじゃないんだけど』
「敵は2隻いるのだ。お前が必要だ」
『はいはい。分かりましたよ』

 アイオワ級と長門型の排水量は大差ない。長門と陸奥はそれしか方法がないと判断した。故に砲撃など捨て、真正面から敵艦に突っ込んだのだ。

「うっ……ぐっ……」
『これは、ちょっと……』

 お互いの船首がのめり込んで破壊される。主砲弾を喰らうより遥かに大きな衝撃であった。そして、全ての艦が機関を停止した。

『撃って、こないみたいね……』
「ここで撃てば相打ちだと、連中も分かっているのだろう」

 お互いのすぐ目の前にある主砲は、艦橋に狙いを定めつつも、火を噴くことはなかった。どちらかがそれをすれば最後、ここにいる戦艦は全滅すると分かっているからである。

「さて、後は水雷戦隊に掛かっているな」

 長門は瑞牆に通信を掛けた。

「そちらの調子はどうだ?」
『敵の戦艦を無力化したよ。これで、空母共は丸裸さ』
「よくやってくれた。後は宜しく頼む。あまり無駄な殺しはするなよ」
『君がそんなことを気にするのかい?』
「敵を殺すことは戦争の目的ではない。履き違えるな。アメリカと同じになるぞ」
『分かってるよ。大丈夫大丈夫』

 勝敗はほとんど決した。後は止めを刺すだけである。

 ○

「瑞牆さん、敵に降伏を呼びかけましょう。もう戦う力は残っていない筈です」

 妙高は提案した。

『アメリカが降伏を受け入れるとでも?』
「好きに逃げていいという条件にすれば、降伏してくれる筈です」
『君、それを降伏とは言わないよ。それに、そんな言葉の問題を抜きにしても、アメリカの空母を取り逃がすなんて論外だ』

 帝国海軍としてそれだけは譲れない。

「で、ですが、これ以上の戦いは無意味です」
『まあねえ。でも、それでも戦うのが軍人ってものじゃないかな? いずれにせよ、未来は二つしかない。アメリカがボク達の軍門に下るか、ボクたちに殲滅されるかだ』
「で、でしたら、そう呼びかけるくらいはしてもいいと思います」
『まあそれくらいはしてあげてもいいよ』
「お願いします」

 瑞牆は米艦隊に対し全面的に降伏するよう要求を突きつけた。

 ○

「閣下、敵から降伏の呼びかけが来ています。無条件に全面降伏せよ、と」
「論外だ。そんなもの受け入れられる筈がない。無駄だと連中も分かっているだろう」
「では何故このような……」
「この前の妙高とかいった子かもな。ともかく、降伏など論外だ。徹底抗戦する」
「いや、しかし、我が方には空母しか残っていませんが……」
「エンタープライズを逃がすんだ。他の空母を、このフォレスタルも盾にして」

 空母を使い捨てにしてエンタープライズだけを逃がすと言うのがスプルーアンス元帥の判断であった。

『――あらあら、私の為に3人を犠牲になんて、よろしいのですか?』
「君はアメリカ海軍の希望だ。君が死ねば、我が軍は日本軍に抵抗する力を全く失ってしまうだろう」
『ふふふ、そうですか』
「君はいいのか?」
『私は瑞鶴を確実に私のものにしたいんです。勝ち目のない戦いなどには興味ありませんよ』
「そうか。なら、逃げてくれ」
『そうさせていただきます』

 エンタープライズは艦載機を引き上げ、言われた通りに逃げるのであった。
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