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第七章 アメリカ本土空襲
思わぬ援軍
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「妙高、悪いけど天弐号作戦は中止するわ。いいわね?」
『……分かりました』
些か不服そうだったが、妙高は瑞鶴の命令を認めた。
『だが瑞鶴、どのように逃げるというのだ?』
「知らないわよ、そんなの。あんたも考えなさい」
『いや、我にそんなこと言われても……』
『あれ、瑞鶴さん、ちょっと待ってください。新たに接近する艦隊が……』
「どうしたって?」
『その、長門様とか陸奥さんとかがいるように見えます……』
何か違和感を覚え水上偵察機を飛ばしていた妙高は、接近しつつある新手がどうも第五艦隊であることを認めた。
「本当?」
『は、はい。見間違えはしません!』
「なるほどねえ……」
あの長門がアメリカに味方するなどあり得ない以上、第五艦隊はアメリカ艦隊の敵である。月虹の味方になってくれるかは分からないが、両者が勝手に戦ってくれるのなら逃げる機会は簡単に生まれるだろう。
「どういうつもりか知らないけど、これは好機ね。あいつらの出方を見ましょうか」
『長門様と一緒に戦ったりなどは……』
「あいつの考え次第ね。っと、噂をすれば」
噂をすれば長門からの通信である。
「長門ね?」
『ああ。第五艦隊旗艦長門だ。瑞鶴だな?』
「そうだけど、何しに来たの? 漁夫の利でも狙いに来たの?」
『我々は現状協力関係にあるのだ。帝国軍人は約束は違えない』
「じゃあ私達を助けに来たって?」
『その通りだ。これより我々はアメリカ艦隊と交戦する。但し、アメリカ本土への攻撃はお前がやれ。分かったか?』
「え、ええ、ありがとう」
猫と手で藁をも掴みたい状況だったので、瑞鶴としては素直に協力を受け入れる以外の選択肢はなかった。
『瑞鶴、どうだったのだ?』
「あいつら手を貸すって。くれぐれも奴らを攻撃しないでよね?」
『我がそんな馬鹿なことをする訳なかろう』
第五艦隊が加わったことで、戦況は一気にひっくり返る。
○
「瑞鶴め、素直になったな。信濃、大鳳、敵を蹴散らすのだ!」
長門の心に迷いはなかった。瑞鶴は全くもって好きにはなれないが、これは正義の戦いなのである。
『承知した』
『あ、あの……長門さん……』
大鳳がおずおずと問いかけてくる。
「どうした、大鳳?」
『いや、その、どっちの敵を狙えばいいんでしょうか……?』
「ああ……それはだな……」
大鳳の視点からするとアイギスとアイギスが勝手に殺しあっているように見えている訳だ。やはり大鳳には識別装置のことをとっとと教えておいた方がよかったと、長門は思った。
「敵機の方を狙え。艦は無視していい」
『は、はい……。で、では出撃します』
「うむ。直ちに敵を殲滅するのだ」
装甲空母2隻から、合わせて120機ほどが繰り出される。航空戦力は完全にこちらが優位である。
○
「クッ……思ったより遥かに早い到着だな」
スプルーアンス元帥は第五艦隊が絶対国防圏を突破してここに迫りつつあることは把握していた。だが決戦に間に合うとは思っていなかった。
『あらあら、大変ですねえ、元帥閣下』
エンタープライズが挑発してくる。
「何を他人事のように言っているんだ。君の問題じゃないか。これほどの敵、支え切れるか?」
『流石の私でも、空母4隻を相手にはどうしようもありませんね』
「ならば、制空権は敵にある、か。制空権なき艦隊など、殲滅されるだけだ……」
例え日本海軍だったとしてもそうだろう。制空権は戦場を絶対的に支配する。故にスプルーアンス元帥は、またしても負けたことを悟った。
『ふふ、元帥閣下、何とかする方法は一つだけありますよ?』
「……何だ?」
『私が他の空母の制御を奪えば、戦力で互角に立てます』
「何? そんなことができるのか?」
スプルーアンス元帥には全く初耳であった。
『はい。最高機密として隠していましたが、元帥くらいには教えてもいいかと』
「本当に、やれるんだな?」
『もちろん』
「なら、やってくれ。この戦いの勝敗は君に掛かっている」
『喜んで』
アメリカ海軍は最後の切り札を切った。
○
「え、何、急に中身が変わった?」
瑞鶴はすぐさま異変に気が付いた。自身の上を飛び回る米軍機の動きが突如として別物になり、瑞鶴の対空砲火を軽々と回避し始めたのである。
『ず、瑞鶴さん、これは一体……』
「私に聞かれても分かんないわよ。でも、嫌な予感がする……」
信濃と大鳳の艦上戦闘機飄風か来援し、上空の敵機と交戦を始める。しかしさっきまで雑魚同然だった米軍機は、彼女らと互角に航空戦を演じているのである。
「さっきまで雑魚の振りをしていた……? いやでも、そんなことをする必要はない。これなら長門が来る前に私達は全滅していた筈……」
『瑞鶴、真上に敵だ!!』
「クッ……」
瑞鶴は間一髪のところで爆弾を回避する。爆風による水飛沫が飛行甲板に掛かった。信濃と大鳳を相手取りながら瑞鶴を攻撃する手腕、並の船魄ですらない。まるでエンタープライズのようだ。
「ああ、クソッ! 訳が分かんないわ!」
『落ち着いてください、瑞鶴さん。敵機が全て帝国海軍の精鋭並みの力量を備えているという事実だけが重要なのです。理由を考える必要はありません』
高雄が瑞鶴を諭した。
「そ、そうね……。ごめん、取り乱した」
『いえいえ。それより次の手を考えましょう』
「ええ、その通りよ」
どうやら長門と組むしか状況を打開する策はなさそうである。
『……分かりました』
些か不服そうだったが、妙高は瑞鶴の命令を認めた。
『だが瑞鶴、どのように逃げるというのだ?』
「知らないわよ、そんなの。あんたも考えなさい」
『いや、我にそんなこと言われても……』
『あれ、瑞鶴さん、ちょっと待ってください。新たに接近する艦隊が……』
「どうしたって?」
『その、長門様とか陸奥さんとかがいるように見えます……』
何か違和感を覚え水上偵察機を飛ばしていた妙高は、接近しつつある新手がどうも第五艦隊であることを認めた。
「本当?」
『は、はい。見間違えはしません!』
「なるほどねえ……」
あの長門がアメリカに味方するなどあり得ない以上、第五艦隊はアメリカ艦隊の敵である。月虹の味方になってくれるかは分からないが、両者が勝手に戦ってくれるのなら逃げる機会は簡単に生まれるだろう。
「どういうつもりか知らないけど、これは好機ね。あいつらの出方を見ましょうか」
『長門様と一緒に戦ったりなどは……』
「あいつの考え次第ね。っと、噂をすれば」
噂をすれば長門からの通信である。
「長門ね?」
『ああ。第五艦隊旗艦長門だ。瑞鶴だな?』
「そうだけど、何しに来たの? 漁夫の利でも狙いに来たの?」
『我々は現状協力関係にあるのだ。帝国軍人は約束は違えない』
「じゃあ私達を助けに来たって?」
『その通りだ。これより我々はアメリカ艦隊と交戦する。但し、アメリカ本土への攻撃はお前がやれ。分かったか?』
「え、ええ、ありがとう」
猫と手で藁をも掴みたい状況だったので、瑞鶴としては素直に協力を受け入れる以外の選択肢はなかった。
『瑞鶴、どうだったのだ?』
「あいつら手を貸すって。くれぐれも奴らを攻撃しないでよね?」
『我がそんな馬鹿なことをする訳なかろう』
第五艦隊が加わったことで、戦況は一気にひっくり返る。
○
「瑞鶴め、素直になったな。信濃、大鳳、敵を蹴散らすのだ!」
長門の心に迷いはなかった。瑞鶴は全くもって好きにはなれないが、これは正義の戦いなのである。
『承知した』
『あ、あの……長門さん……』
大鳳がおずおずと問いかけてくる。
「どうした、大鳳?」
『いや、その、どっちの敵を狙えばいいんでしょうか……?』
「ああ……それはだな……」
大鳳の視点からするとアイギスとアイギスが勝手に殺しあっているように見えている訳だ。やはり大鳳には識別装置のことをとっとと教えておいた方がよかったと、長門は思った。
「敵機の方を狙え。艦は無視していい」
『は、はい……。で、では出撃します』
「うむ。直ちに敵を殲滅するのだ」
装甲空母2隻から、合わせて120機ほどが繰り出される。航空戦力は完全にこちらが優位である。
○
「クッ……思ったより遥かに早い到着だな」
スプルーアンス元帥は第五艦隊が絶対国防圏を突破してここに迫りつつあることは把握していた。だが決戦に間に合うとは思っていなかった。
『あらあら、大変ですねえ、元帥閣下』
エンタープライズが挑発してくる。
「何を他人事のように言っているんだ。君の問題じゃないか。これほどの敵、支え切れるか?」
『流石の私でも、空母4隻を相手にはどうしようもありませんね』
「ならば、制空権は敵にある、か。制空権なき艦隊など、殲滅されるだけだ……」
例え日本海軍だったとしてもそうだろう。制空権は戦場を絶対的に支配する。故にスプルーアンス元帥は、またしても負けたことを悟った。
『ふふ、元帥閣下、何とかする方法は一つだけありますよ?』
「……何だ?」
『私が他の空母の制御を奪えば、戦力で互角に立てます』
「何? そんなことができるのか?」
スプルーアンス元帥には全く初耳であった。
『はい。最高機密として隠していましたが、元帥くらいには教えてもいいかと』
「本当に、やれるんだな?」
『もちろん』
「なら、やってくれ。この戦いの勝敗は君に掛かっている」
『喜んで』
アメリカ海軍は最後の切り札を切った。
○
「え、何、急に中身が変わった?」
瑞鶴はすぐさま異変に気が付いた。自身の上を飛び回る米軍機の動きが突如として別物になり、瑞鶴の対空砲火を軽々と回避し始めたのである。
『ず、瑞鶴さん、これは一体……』
「私に聞かれても分かんないわよ。でも、嫌な予感がする……」
信濃と大鳳の艦上戦闘機飄風か来援し、上空の敵機と交戦を始める。しかしさっきまで雑魚同然だった米軍機は、彼女らと互角に航空戦を演じているのである。
「さっきまで雑魚の振りをしていた……? いやでも、そんなことをする必要はない。これなら長門が来る前に私達は全滅していた筈……」
『瑞鶴、真上に敵だ!!』
「クッ……」
瑞鶴は間一髪のところで爆弾を回避する。爆風による水飛沫が飛行甲板に掛かった。信濃と大鳳を相手取りながら瑞鶴を攻撃する手腕、並の船魄ですらない。まるでエンタープライズのようだ。
「ああ、クソッ! 訳が分かんないわ!」
『落ち着いてください、瑞鶴さん。敵機が全て帝国海軍の精鋭並みの力量を備えているという事実だけが重要なのです。理由を考える必要はありません』
高雄が瑞鶴を諭した。
「そ、そうね……。ごめん、取り乱した」
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