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第七章 アメリカ本土空襲
承諾
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という訳で瑞鶴は早速、ゲバラにこれを相談してみた。
「――なるほど。上手くいけば効果的だとは思うけど、首都は流石に相当な防御がある。君達でも突破は難しいと思うけど……」
「私達を舐めないで欲しいわね。アメリカが本気出したところで敵じゃないわ」
「確かに君はアメリカ海軍を消滅させた実績があるが……」
「戦術上の判断はあなたにはできないでしょう? 私が聞きたいのは政治的に問題ないかってだけよ」
チェ・ゲバラに海戦の知識などほとんどない。どちらが勝てるか判断できる材料など最初からないのだ。
「アメリカに原子爆弾を落としておいて、ただの空爆がダメってことはないだろう」
「目標は奴らの首都だけど、いいの?」
「前回と同じく事前の警告をしておけば、条件は変わらない。僕達はあくまで正義の側にい続けることができるだろうね」
キューバは国際的な支持を得続けなければならない。敵国の民間人虐殺のような蛮行は断じて起こしてはならないのだ。仮にそういう制約がなくても、チェ・ゲバラは民間人への攻撃を許しはしない。
「事前の警告ねえ。あまりしたくはないんだけど」
純軍事的に言えば警告するのは不利でしかない。
「警告なしはダメだ。それではアメリカと同じになってしまう」
「分かってるわよ。せめて警告を直前にするとかはできないの?」
「できたとしても12時間前くらいだろうね。その条件が呑めないなら、この件は却下だ」
「分かったわ。そのくらいなら問題ない。そっちで調整してもらえる?」
「分かった」
ゲバラはキューバ政府に話を持ち込んで審議に掛けた。彼の言う通り、既に原子爆弾を投下しているキューバがただの空襲程度で怖気付い筈もなく、月虹の提案は即日承認された。
○
一方で、許可を得ないといけない連中がもう一ついる。ドイツ海軍である。ドイツの施設を借りている以上、何かをするには逐一許可を取らなければならない。面倒ではあるが、施設をタダで貸してもらえている代償としては非常に安いものである。
北米方面のドイツ海軍の本拠地、バミューダ諸島シュロス基地に向かったのはグラーフ・ツェッペリンと妙高であった。ツェッペリンが一人で行くのは嫌だと言い張ったからである。艦で向かうと時間が掛かりすぎるので、ツェッペリンの操縦する爆撃機で飛んで行った。一部の爆撃機に限り、人間が乗るスペースを残しているのである。
「ツェッペリンさん、大丈夫なんでしょうか……」
「ん? 何がだ?」
「その、もしも攻撃されたら何の抵抗もできずに撃墜される気がするんですけど……」
「安心せよ、妙高。それなりの武器はついておる」
「戦闘機相手にこんな遅い機体で戦えるんですか……?」
「まあ、何とかなるであろう」
「何とかならないんですね……」
「そ、そんなことは……ない……」
機銃が4丁ほど付いているとは言え――まあアメリカ軍機程度なら撃退できるだろうが――同格の敵に襲われたら逃げることも儘ならない。
とは言え、ここは完全なドイツ勢力圏内であり、ツェッペリンを消したとて瑞鶴がいる以上、ドイツが月虹に手を出してくるとは考えられない。
ツェッペリンと妙高は特に問題なく、2時間ほど飛んでドイツ海軍シュロス基地に降り立った。ここは一応イギリス領なのだが、まあ他の英領同様、ドイツのいいように扱われている。
「あらあら、あなたがわざわざ会いに来るなんて。明日は雪が降るかもね」
血塗れの翼を広げた少女、プリンツ・オイゲンが二人を迎えた。
「ふん、我がわざわざ来てやったのだ。喜ぶがいい」
「用がないなら今すぐ帰ってもらって構わないわ。さようなら」
「お、おい貴様! 話を聞け!」
「いやいや、人と話をする気がないのはそっちでしょ」
「ツェッペリンさん、ちゃんと話し合いをしてください……」
「……何なのだ、お前達は揃いも揃って。重巡だからか?」
「あなたが変人で私達がマトモなだけよ。ねえ妙高?」
「ま、まあ、ははは……」
何とも言えず苦笑い。ツェッペリンは妙高にも見捨てられて泣き出しそうになる。
「く、クソッ……貴様ら……!」
「はいはい泣かないの。で、何しに来たの?」
「ああ、お前達の旗艦、シャルンホルストに会わせよ。話はそれからだ」
「あまり情報は漏らしたくないもので……お願いしてもいいですか?」
「へえ。まあ構わないわよ。私も同行はさせてもらうけどね」
「ふん、好きにするがいい」
プリンツ・オイゲンはグラーフ・ツェッペリンと妙高を案内してシャルンホルストと引き合わせた。
○
「クソッ。どうして貴様もここにいるのだ」
その場にはペーター・シュトラッサーも臨席していた。
「私は大洋艦隊第二隊群唯一の空母なのだ。重要な話には参加させてもらう」
「ふん、偉そうに」
「確かに私の権限など大したことはないが、賊に過ぎないお前とは比べ物にもならなんだろうな」
「な、何だと貴様!」
「あの、シャルンホルストさん、交渉を始めましょうか」
妙高はツェッペリン抜きで交渉を始めようとする。
「ああ。シュトラッサーは、無視して構わない」
「ちょ、待て。我が交渉役なのだぞ!」
「でしたら真面目にやってください」
「…………」
妙高に一喝されると、ツェッペリンとシュトラッサーは席に着いて黙り込んだ。
「――なるほど。上手くいけば効果的だとは思うけど、首都は流石に相当な防御がある。君達でも突破は難しいと思うけど……」
「私達を舐めないで欲しいわね。アメリカが本気出したところで敵じゃないわ」
「確かに君はアメリカ海軍を消滅させた実績があるが……」
「戦術上の判断はあなたにはできないでしょう? 私が聞きたいのは政治的に問題ないかってだけよ」
チェ・ゲバラに海戦の知識などほとんどない。どちらが勝てるか判断できる材料など最初からないのだ。
「アメリカに原子爆弾を落としておいて、ただの空爆がダメってことはないだろう」
「目標は奴らの首都だけど、いいの?」
「前回と同じく事前の警告をしておけば、条件は変わらない。僕達はあくまで正義の側にい続けることができるだろうね」
キューバは国際的な支持を得続けなければならない。敵国の民間人虐殺のような蛮行は断じて起こしてはならないのだ。仮にそういう制約がなくても、チェ・ゲバラは民間人への攻撃を許しはしない。
「事前の警告ねえ。あまりしたくはないんだけど」
純軍事的に言えば警告するのは不利でしかない。
「警告なしはダメだ。それではアメリカと同じになってしまう」
「分かってるわよ。せめて警告を直前にするとかはできないの?」
「できたとしても12時間前くらいだろうね。その条件が呑めないなら、この件は却下だ」
「分かったわ。そのくらいなら問題ない。そっちで調整してもらえる?」
「分かった」
ゲバラはキューバ政府に話を持ち込んで審議に掛けた。彼の言う通り、既に原子爆弾を投下しているキューバがただの空襲程度で怖気付い筈もなく、月虹の提案は即日承認された。
○
一方で、許可を得ないといけない連中がもう一ついる。ドイツ海軍である。ドイツの施設を借りている以上、何かをするには逐一許可を取らなければならない。面倒ではあるが、施設をタダで貸してもらえている代償としては非常に安いものである。
北米方面のドイツ海軍の本拠地、バミューダ諸島シュロス基地に向かったのはグラーフ・ツェッペリンと妙高であった。ツェッペリンが一人で行くのは嫌だと言い張ったからである。艦で向かうと時間が掛かりすぎるので、ツェッペリンの操縦する爆撃機で飛んで行った。一部の爆撃機に限り、人間が乗るスペースを残しているのである。
「ツェッペリンさん、大丈夫なんでしょうか……」
「ん? 何がだ?」
「その、もしも攻撃されたら何の抵抗もできずに撃墜される気がするんですけど……」
「安心せよ、妙高。それなりの武器はついておる」
「戦闘機相手にこんな遅い機体で戦えるんですか……?」
「まあ、何とかなるであろう」
「何とかならないんですね……」
「そ、そんなことは……ない……」
機銃が4丁ほど付いているとは言え――まあアメリカ軍機程度なら撃退できるだろうが――同格の敵に襲われたら逃げることも儘ならない。
とは言え、ここは完全なドイツ勢力圏内であり、ツェッペリンを消したとて瑞鶴がいる以上、ドイツが月虹に手を出してくるとは考えられない。
ツェッペリンと妙高は特に問題なく、2時間ほど飛んでドイツ海軍シュロス基地に降り立った。ここは一応イギリス領なのだが、まあ他の英領同様、ドイツのいいように扱われている。
「あらあら、あなたがわざわざ会いに来るなんて。明日は雪が降るかもね」
血塗れの翼を広げた少女、プリンツ・オイゲンが二人を迎えた。
「ふん、我がわざわざ来てやったのだ。喜ぶがいい」
「用がないなら今すぐ帰ってもらって構わないわ。さようなら」
「お、おい貴様! 話を聞け!」
「いやいや、人と話をする気がないのはそっちでしょ」
「ツェッペリンさん、ちゃんと話し合いをしてください……」
「……何なのだ、お前達は揃いも揃って。重巡だからか?」
「あなたが変人で私達がマトモなだけよ。ねえ妙高?」
「ま、まあ、ははは……」
何とも言えず苦笑い。ツェッペリンは妙高にも見捨てられて泣き出しそうになる。
「く、クソッ……貴様ら……!」
「はいはい泣かないの。で、何しに来たの?」
「ああ、お前達の旗艦、シャルンホルストに会わせよ。話はそれからだ」
「あまり情報は漏らしたくないもので……お願いしてもいいですか?」
「へえ。まあ構わないわよ。私も同行はさせてもらうけどね」
「ふん、好きにするがいい」
プリンツ・オイゲンはグラーフ・ツェッペリンと妙高を案内してシャルンホルストと引き合わせた。
○
「クソッ。どうして貴様もここにいるのだ」
その場にはペーター・シュトラッサーも臨席していた。
「私は大洋艦隊第二隊群唯一の空母なのだ。重要な話には参加させてもらう」
「ふん、偉そうに」
「確かに私の権限など大したことはないが、賊に過ぎないお前とは比べ物にもならなんだろうな」
「な、何だと貴様!」
「あの、シャルンホルストさん、交渉を始めましょうか」
妙高はツェッペリン抜きで交渉を始めようとする。
「ああ。シュトラッサーは、無視して構わない」
「ちょ、待て。我が交渉役なのだぞ!」
「でしたら真面目にやってください」
「…………」
妙高に一喝されると、ツェッペリンとシュトラッサーは席に着いて黙り込んだ。
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