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第六章 アメリカ核攻撃

重巡対戦艦

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『妙高、行きますよ!』
「もちろん!」

 アイオワ級の主砲の射程はおよそ40km。対して妙高と高雄は主砲も魚雷も30kmまでしか届かない。どうやってもアイオワ級の懐に潜り込まないといけないのだ。

『敵艦との距離およそ40km。間もなくアイオワ級の射程に入ります』
「やっぱりやだなあ……」 
『何を弱気になっているのですか』
「退く気はないよ、もちろん」

 前進すると、間もなくアイオワ級は砲撃を開始した。2隻で計18門の41cm主砲であり、当たりどころによっては一撃で撃沈されることも十分あり得る。

「高雄! 回避!」
『無論です!』

 等速直線運動などしていたら確実に撃たれる。妙高も高雄もバラバラに、左に行ったり右に行ったり、加速したり減速したりを繰り返し、敵に次の動きを予想させない。

『間もなく着弾します』
「当たらないで……」

 運が悪ければどんなに回避行動を取っても当たるものである。最後は神に祈るしかない。

 砲弾はほぼ高雄の予想通りの時間に着弾し、二人の周囲に大きな水飛沫を複数上げる。命中はなかったが、近くに砲弾が落ちてきただけでも海が抉られ、艦橋にも揺れが伝わる。

「ひいぃ……」
『これが戦艦の主砲の威力、ですね……』

 盾になってくれる戦艦がいないと流石に厳しいものがあると思いつつ、妙高も高雄も退くという選択肢はない。

『妙高、やられる前にさっさと終わらせましょう!』
「もちろん!」

 ニュージャージーとミズーリからの砲撃を何とか回避しつつ、ついにこちらも敵艦を射程に収める。

『魚雷、撃てます!』
「まずは右の方の戦艦の艦尾に集中攻撃で!」
『承知しました!』

 申し訳程度に主砲を撃ちつつ、本命の魚雷を放つ。妙高と高雄は大東亜戦争後に随分と雷撃能力を強化されて片舷12門の魚雷発射管を装備しているので、一気に24本の魚雷を射出した。狙いはミズーリの方である。

「早く届いて……」
『もう少しの辛抱です』

 可能な限り敵が回避に集中できないよう、砲撃を加え続ける。重巡の20.3cm砲では精々装甲に覆われていない高角砲などを破壊することしかできないが、それでもミズーリの意識を逸らすことには成功したようだ。

 10分後。ミズーリの艦尾にその巨大な船体すら覆い隠す水飛沫が上がった。

『4本ほど命中したようです』
「効果はどうかな?」
『あまり効果はなさそうですね……』

 ミズーリは若干傾斜するも、全門斉射を続ける。全く効いていないということはないが、無力化には程遠い。

「もう一回魚雷を叩き込もう。そうしたら無力化くらいはできる筈」
『ですがそれでは、魚雷を使い切ってしまいます』
「残りをもう一方に撃っても同じことだよ」
『そう、ですね。分かりました。もう一度同じことをしましょう』

 ミズーリとニュージャージーから大量の砲弾が飛んでくる中、妙高と高雄はランダムに航行しつつ反転して、左舷の魚雷24本を一気に発射した。魚雷はミズーリ艦尾に6本ほど命中する。

「これで効いてくれなかったら困るんだけど……」
『敵艦、動かなくなりました。成功です!』
「やった!」

 ミズーリは10度ほど傾斜して、全く動かなくなった。船魄が気絶して人間がダメージコントロールをしたのだろう。

 が、その時であった。ニュージャージーが放った砲弾が、高雄の左舷中央に命中して大爆発を起こした。高雄の中央から火の手が上がり急速に傾斜し始める。

「高雄ッ!!!」
『……だ、大丈夫。浸水と火災は、何とか、隔壁で押さえ込み、ました……』

 苦しそうに言葉を紡ぐ高雄。妙高は冷静ではいられない。

「ダメだよそんなんじゃ! すぐに撤退しないと!!」
『い、いえ……それはいけません。幸いにも、機関に損傷は、ありません。わたくしはまだ、戦えます……』
「いや、でも……」
『妙高、今は、残る戦艦の無力化に集中してください。そうでないと、逃げることも、できません』
「わ、分かった!」

 しかし魚雷は使い果たしてしまい、残った武器はニュージャージーの装甲に全く歯が立たない主砲だけ。魚雷10本近くでようやく沈黙するような相手にこれでは、どうにもならない。

『妙高、逃げてもいいわよ。援護するわ』

 状況を察し瑞鶴はそう提案した。瑞鶴とツェッペリンはずっとアメリカ空母の艦載機を押さえ込んでいるが、戦力を抽出しようと思えばいつでもできる。

「だ、ダメです、それは。天号作戦は成功させないと」
『どうする気? 魚雷のないあんた達に勝ち目があるとでも?』
「……方法なら、あります」

 妙高の心はすっと落ち着いた。

『何する気?』
「敵の艦橋を狙い撃つことができれば、無力化できます」
『船魄を殺すってこと?』
「はい、その通りです」
『妙高、そこまでする必要は、ありません。作戦失敗の責任は、わたくし達全員に、あるのですから』
「高雄、私やるよ。より多くの命を救う為なら」
『あんたがその気なら好きにしなさい』
「分かりました。高雄、手を貸してくれる?」
『わたくしは、元より敵を殺すことは必定と思っています。あなたがその気なら、わたくしは躊躇いません』
「ありがとう」

 妙高と高雄はニュージャージーに攻撃を開始する。
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