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第六章 アメリカ核攻撃
第2艦隊との砲撃戦
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『妙高、敵前衛艦隊が間もなく射程に入ります』
高雄はカタパルトから飛ばした水上機を通し、戦場を俯瞰している。もちろん妙高もだ。
「う、うん。分かってるよ……」
『妙高、しゃきっとしてください』
覇気のない妙高に、高雄は怒り気味に言う。
「そ、そうだね。今度もきっと、大丈夫」
妙高と高雄を迎撃しに打って出てきたのは、巡洋艦が3隻と駆逐艦が6隻の小部隊であった。バランスが悪いのはアメリカ海軍に――少なくとも東海岸にロクな艦隊が残っていないからである。
『射程に入りました。砲撃を始めましょう』
「分かった。まずは巡洋艦から狙おう!」
『承知しました』
妙高と高雄は単縦陣を組み、敵に対して斜行し全ての主砲を指向しながら、砲撃を開始した。最初の目標は敵の巡洋艦である。
「よし、命中……」
妙高は最初の砲撃で主砲弾2発を命中させることに成功する。
『敵方に損害はほとんど見られません。どうやらかなりの重装甲のようです』
敵艦は舷側装甲が多少が凹んでいるようだが、特に影響はなさそうだ。
「だったら、そう簡単には沈まないよね?」
『ええ、恐らく――妙高、敵が撃って来ます!』
「大丈夫!」
敵重巡も当然ながら攻撃を開始した。ほとんどの弾は見当違いの方向に飛んでいくが、数発は精度が良く、妙高のすぐ左に大きな水柱が複数上がった。
『妙高! 大丈夫ですか!?』
「至近弾だよ。このくらいなら大丈夫」
駆逐艦なとであれば至近弾でも損傷するが、仮にも重巡である妙高にそれは通じない。注射針を刺されたくらいなものだ。
『そ、それなら、よかったです』
「高雄、攻撃するよ!」
『はい!』
敵がそうそう沈まないと知ると、妙高は本気を出せる。
「まずは一番左の巡洋艦から集中攻撃して!」
『承知しました!』
妙高と高雄の合計20門の主砲が全力で砲撃を開始する。2人揃っての斉射で6発の命中弾を与えることに成功し、敵艦から炎が上がり始める。
『効果はあるようです。しかし主砲や機関は無傷かと』
「……なら、もっと撃とう」
妙高も覚悟を決める。敵艦が全力で砲撃してくるのをジグザグ針路で回避しつつ、全主砲で砲撃を行う。普通は止まって撃っている方が有利なのだが、船魄の性能差で逆に妙高が圧倒していた。
「よし、命中」
『10発喰らっても平気そうとは……アメリカの技術も侮れませんね』
「妙高にはその方がありがたいかな」
船魄化されたからと言って主砲の攻撃力が向上する訳ではない。敵艦を沈めるのに必要な鉄量は変わらないのだ。それに要する時間は大幅に短縮されるが。
「今度こそ、黙ってもらう!」
妙高は5度目の斉射を行う。砲弾は命中したが、次の瞬間、敵重巡の艦首付近で大爆発が起こった。主砲塔が幾らか吹き飛び、たちまち炎に包まれたのである。
「な、何で急に……」
妙高は青ざめる。
『弾薬庫を撃ち抜いたのでしょう。沈みはしません』
「本当に……?」
『船体そのものに大きな損傷はないようです。大丈夫でしょう。それに、あれで船魄が動けるとは思えません。わたくし達の目的通りです』
「そ、そうだね……」
重巡は大炎上しているが、沈む気配はなさそうだった。そして同時に完全に沈黙し、殺さず無力化するという妙高の目的通りの結果になった。
『さあ妙高、次も参りますよ!』
「うん!」
あれだけの大爆発を起こしても沈まないのだから、敵重巡が沈む筈がない。そう自分に言い聞かせて意識を集中させ、隣の重巡も無力化することに成功する。と、その時である。
『妙高、魚雷です!!』
「うっ……」
先の戦いで魚雷を叩き込まれた痛みが思い出される。
『妙高! 回避してください! 大した数ではありません!』
「……分かった!」
水中聴音機で魚雷の位置と速度を把握し、妙高は回避行動を取った。落ち着けばどうということはない。魚雷は妙高の左右を通り抜けていった。
「よ、避けれた……」
『気を抜いている場合ではありませんよ! 攻撃しましょう!』
「もちろん!」
砲撃を再開する。戦闘は終始月虹優位に進み、最後の巡洋艦に15発程度の砲弾をぶち込んで大破炎上させ沈黙させた。これで妙高と高雄に対抗できる艦は完全に沈黙したことになる。
「これって、どうすればいいのかな……。駆逐艦も無力化するもの?」
『彼らが逃げるのならばそれに任せましょう。ほら、逃げていくようです』
「いや、あれは、そういう訳じゃ……」
『と言うと?』
逃げるという風でもない。駆逐艦達は重巡の後背に回り込んでその姿を隠した。高雄もようやく察した。
『まさか、自沈……』
「うん……止めないと!!」
『妙高、待ってください! どうするというのですか? ここから砲撃すれば重巡も巻き込んでしまいます。駆けつけようにも間に合いません』
「で、でも」
『これが、軍艦の運命です。彼女達には武人として、最期を迎えさせてあげるべきです』
「そんな…………」
せっかく殺さずに済んだと思ったのに、それは間違いだった。妙高と高雄が見守る前でアメリカ軍は自沈処理を行う。駆逐艦から至近距離で魚雷を放つのだ。艦が沈めば船魄も死ぬのは必定。結局、妙高の努力は無駄になってしまった。
高雄はカタパルトから飛ばした水上機を通し、戦場を俯瞰している。もちろん妙高もだ。
「う、うん。分かってるよ……」
『妙高、しゃきっとしてください』
覇気のない妙高に、高雄は怒り気味に言う。
「そ、そうだね。今度もきっと、大丈夫」
妙高と高雄を迎撃しに打って出てきたのは、巡洋艦が3隻と駆逐艦が6隻の小部隊であった。バランスが悪いのはアメリカ海軍に――少なくとも東海岸にロクな艦隊が残っていないからである。
『射程に入りました。砲撃を始めましょう』
「分かった。まずは巡洋艦から狙おう!」
『承知しました』
妙高と高雄は単縦陣を組み、敵に対して斜行し全ての主砲を指向しながら、砲撃を開始した。最初の目標は敵の巡洋艦である。
「よし、命中……」
妙高は最初の砲撃で主砲弾2発を命中させることに成功する。
『敵方に損害はほとんど見られません。どうやらかなりの重装甲のようです』
敵艦は舷側装甲が多少が凹んでいるようだが、特に影響はなさそうだ。
「だったら、そう簡単には沈まないよね?」
『ええ、恐らく――妙高、敵が撃って来ます!』
「大丈夫!」
敵重巡も当然ながら攻撃を開始した。ほとんどの弾は見当違いの方向に飛んでいくが、数発は精度が良く、妙高のすぐ左に大きな水柱が複数上がった。
『妙高! 大丈夫ですか!?』
「至近弾だよ。このくらいなら大丈夫」
駆逐艦なとであれば至近弾でも損傷するが、仮にも重巡である妙高にそれは通じない。注射針を刺されたくらいなものだ。
『そ、それなら、よかったです』
「高雄、攻撃するよ!」
『はい!』
敵がそうそう沈まないと知ると、妙高は本気を出せる。
「まずは一番左の巡洋艦から集中攻撃して!」
『承知しました!』
妙高と高雄の合計20門の主砲が全力で砲撃を開始する。2人揃っての斉射で6発の命中弾を与えることに成功し、敵艦から炎が上がり始める。
『効果はあるようです。しかし主砲や機関は無傷かと』
「……なら、もっと撃とう」
妙高も覚悟を決める。敵艦が全力で砲撃してくるのをジグザグ針路で回避しつつ、全主砲で砲撃を行う。普通は止まって撃っている方が有利なのだが、船魄の性能差で逆に妙高が圧倒していた。
「よし、命中」
『10発喰らっても平気そうとは……アメリカの技術も侮れませんね』
「妙高にはその方がありがたいかな」
船魄化されたからと言って主砲の攻撃力が向上する訳ではない。敵艦を沈めるのに必要な鉄量は変わらないのだ。それに要する時間は大幅に短縮されるが。
「今度こそ、黙ってもらう!」
妙高は5度目の斉射を行う。砲弾は命中したが、次の瞬間、敵重巡の艦首付近で大爆発が起こった。主砲塔が幾らか吹き飛び、たちまち炎に包まれたのである。
「な、何で急に……」
妙高は青ざめる。
『弾薬庫を撃ち抜いたのでしょう。沈みはしません』
「本当に……?」
『船体そのものに大きな損傷はないようです。大丈夫でしょう。それに、あれで船魄が動けるとは思えません。わたくし達の目的通りです』
「そ、そうだね……」
重巡は大炎上しているが、沈む気配はなさそうだった。そして同時に完全に沈黙し、殺さず無力化するという妙高の目的通りの結果になった。
『さあ妙高、次も参りますよ!』
「うん!」
あれだけの大爆発を起こしても沈まないのだから、敵重巡が沈む筈がない。そう自分に言い聞かせて意識を集中させ、隣の重巡も無力化することに成功する。と、その時である。
『妙高、魚雷です!!』
「うっ……」
先の戦いで魚雷を叩き込まれた痛みが思い出される。
『妙高! 回避してください! 大した数ではありません!』
「……分かった!」
水中聴音機で魚雷の位置と速度を把握し、妙高は回避行動を取った。落ち着けばどうということはない。魚雷は妙高の左右を通り抜けていった。
「よ、避けれた……」
『気を抜いている場合ではありませんよ! 攻撃しましょう!』
「もちろん!」
砲撃を再開する。戦闘は終始月虹優位に進み、最後の巡洋艦に15発程度の砲弾をぶち込んで大破炎上させ沈黙させた。これで妙高と高雄に対抗できる艦は完全に沈黙したことになる。
「これって、どうすればいいのかな……。駆逐艦も無力化するもの?」
『彼らが逃げるのならばそれに任せましょう。ほら、逃げていくようです』
「いや、あれは、そういう訳じゃ……」
『と言うと?』
逃げるという風でもない。駆逐艦達は重巡の後背に回り込んでその姿を隠した。高雄もようやく察した。
『まさか、自沈……』
「うん……止めないと!!」
『妙高、待ってください! どうするというのですか? ここから砲撃すれば重巡も巻き込んでしまいます。駆けつけようにも間に合いません』
「で、でも」
『これが、軍艦の運命です。彼女達には武人として、最期を迎えさせてあげるべきです』
「そんな…………」
せっかく殺さずに済んだと思ったのに、それは間違いだった。妙高と高雄が見守る前でアメリカ軍は自沈処理を行う。駆逐艦から至近距離で魚雷を放つのだ。艦が沈めば船魄も死ぬのは必定。結局、妙高の努力は無駄になってしまった。
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