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第六章 アメリカ核攻撃
ソ連艦隊の襲撃Ⅲ
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「私を狙ってくるか……。随分と切羽詰まっているようだな」
瑞鶴とツェッペリンの艦載機を迎撃しながら、月虹の意図をすぐさま察したソビエツキー・ソユーズ。彼女自身は自らの生死など気にしていなかったが、彼女の部下達はそうではない。
『ほら、言わんこっちゃない。先程の時点で諦めておくべきだったんですよ』
「命令は変わらん! 敵を生け捕りにせよ!」
『あなたが沈んで困るのは、私達じゃなくて人間の方々なんですよ? 分かってるんですか?』
「そ、それは、そうかもしれんが……」
そう言われると、ソユーズは弱かった。人に迷惑を掛けるのは、社会主義者として容認できないのである。
『ならば今回の作戦は――』
その時、割り込むように、ソビエツカヤ・ウクライナが通信機を破壊せんばかりの勢いで叫んだ。
『ノヴォロシースクッ!! 御託はいい!! とっととお姉ちゃんを援護しろッ!!』
『はいはい、分かりましたよ』
ノヴォロシースクはすぐに艦上戦闘機をソユーズの援護に回す。艦隊の方は敵に無視されているので、直掩を捨てて構わない。
『お姉ちゃん!! 今行くからね!!』
「同志ウクライナ、一旦落ち着くのだ」
『落ち着いてなんてられないよ!!』
ウクライナは艦隊の中で勝手に回頭を始めた。当然、何隻かの艦がウクライナと衝突しそうになるが、辛うじて回避することに成功する。
『ちょっ、ウクライナ、危ないよ。気をつけてくれ』
『ベラルーシ!! お前も早くお姉ちゃんのところに向かえ!!』
『そのつもりだよ。その行動で友軍を傷付けるのは違うと思うけどね』
『そんなの知るか!! とっととしろ!!』
『はいはい、分かったから。全艦引き返し、ソビエツキー・ソユーズの援護に向かってくれ』
ソ連艦隊は反転してソユーズの援護に向かった。状況は振り出しに戻ると言ったところである。
○
「流石にソユーズを守るようね……」
瑞鶴は呟いた。
『沈まれたら困る、ということか』
ソビエツキー・ソユーズは機動力を失っただけで武装は健在である。また上甲板や砲塔の防御は非常に固く、多少爆撃したくらいではビクともしない。それに艦隊が合流し、またしても手出しできなくなってしまった。
『もう一度特攻してみるか?』
『それでは本当に沈んでしまいます!』
妙高は叫ぶ。妙高はあくまで誰も沈めたくなかった。
「じゃあどうしろって言うのよ?」
『このまま逃げればいいんじゃないんでしょうか?』
『妙高、わたくし達が攻撃をやめれば、彼らはまた追って来ますよ』
「そうね。それに、艦載機の燃料はそう長くは持たない。いずれ私達がジリ貧で負けるわ」
一見月虹が押しているように見えるが、このまま艦載機の燃料切れまでソ連艦隊に粘られると、瑞鶴もツェッペリンもその後6時間は行動不能になってしまう。
『た、確かに、そうですね……』
『なれば特攻で全ての戦艦の足を奪えばよいのではないか? 戦艦がいなければ、妙高と高雄で対処できるぞ』
「あんな奇策が二度も通じるとは思えないわ」
『そう、だな……』
ツェッペリンは珍しく気落ちする。それほどまでに事態の打開策が見つからないのである。
と、その時であった。
『瑞鶴さん!! 北から多数の航空機が来ます! 100機ほどが距離300kmです!』
「北? アメリカか? まさかソ連と手を組んでるとでも?」
『さ、さあ……』
「クソッ。最悪ね。ツェッペリン、ソ連の奴らは任せたわよ」
『分かった』
一時的に抑え込むだけならツェッペリンだけだ十分だ。瑞鶴は自分の艦載機を月虹艦隊直上に戻して、接近する航空編隊を迎え撃とうとする。だが、それらは月虹に見向きもせず、ソ連艦隊に一直線に突っ込んでいったのである。
○
「アメリカ軍だと!? まさか連邦と戦争を始める気なのか!?」
それはソビエツキー・ソユーズにとって一番信じられない光景であった。アメリカは第三次世界大戦を始めるつもりなのかと。
「全艦、接近する航空機を迎え撃て!」
『お姉ちゃんの敵は皆殺しだ!!』
『ウクライナ、落ち着いてくれ』
『戦艦の皆さんは元気がよろしいことで』
たちまち来襲したアメリカ軍機。だが、それらは別にツェッペリンと手を組んでいる訳でもないらしい。ソ連艦隊の上空で両者は勝手に争い始めた。三つ巴の航空戦である。
「一体何が起こっているんだ……」
と、その時であった。ソビエツキー・ソユーズ相手に直接通信が掛かってきた。ソユーズは迷わずそれを受けた。
「何者だ?」
『ふふふ、私はアメリカ合衆国のエンタープライズです』
狂気の声の主は、あのエンタープライズであった。正直言ってノヴォロシースクでは相手にならない。
「エンタープライズ、我々と戦争をするつもりなのか?」
『いえいえ、まさか。ただ我々はあなた方に、臨検を要請したいだけです』
「臨検だと? ふざけているのか?」
『いえいえ、ふざけてなどいませんよ。我々アメリカ海軍は、あなた方が敵国に便宜を図っている可能性が高いと判断し、積載する物資の捜査を要求します』
エンタープライズの要求は合法的だ。アメリカ海軍は敵国キューバに利益をもたらす可能性のある船を捜査し、敵対的な船だと判断すれば拿捕する権利を有している。
『命令に従わぬ場合、あなた方を敵船と見なしますが、よろしいのですか?』
「そんなことを言う前に、あの海賊共を何とかすることを考えたらどうだ!?」
『あら、そちらはもう手を打ってありますよ。ほら、ツェッペリンの艦載機が帰っていくでしょう?』
「そ、そのようだな……」
エンタープライズの出現で、戦場はたちまち静まり返った。ソ連艦隊も月虹も下手に動けなくなってしまったのだ。
瑞鶴とツェッペリンの艦載機を迎撃しながら、月虹の意図をすぐさま察したソビエツキー・ソユーズ。彼女自身は自らの生死など気にしていなかったが、彼女の部下達はそうではない。
『ほら、言わんこっちゃない。先程の時点で諦めておくべきだったんですよ』
「命令は変わらん! 敵を生け捕りにせよ!」
『あなたが沈んで困るのは、私達じゃなくて人間の方々なんですよ? 分かってるんですか?』
「そ、それは、そうかもしれんが……」
そう言われると、ソユーズは弱かった。人に迷惑を掛けるのは、社会主義者として容認できないのである。
『ならば今回の作戦は――』
その時、割り込むように、ソビエツカヤ・ウクライナが通信機を破壊せんばかりの勢いで叫んだ。
『ノヴォロシースクッ!! 御託はいい!! とっととお姉ちゃんを援護しろッ!!』
『はいはい、分かりましたよ』
ノヴォロシースクはすぐに艦上戦闘機をソユーズの援護に回す。艦隊の方は敵に無視されているので、直掩を捨てて構わない。
『お姉ちゃん!! 今行くからね!!』
「同志ウクライナ、一旦落ち着くのだ」
『落ち着いてなんてられないよ!!』
ウクライナは艦隊の中で勝手に回頭を始めた。当然、何隻かの艦がウクライナと衝突しそうになるが、辛うじて回避することに成功する。
『ちょっ、ウクライナ、危ないよ。気をつけてくれ』
『ベラルーシ!! お前も早くお姉ちゃんのところに向かえ!!』
『そのつもりだよ。その行動で友軍を傷付けるのは違うと思うけどね』
『そんなの知るか!! とっととしろ!!』
『はいはい、分かったから。全艦引き返し、ソビエツキー・ソユーズの援護に向かってくれ』
ソ連艦隊は反転してソユーズの援護に向かった。状況は振り出しに戻ると言ったところである。
○
「流石にソユーズを守るようね……」
瑞鶴は呟いた。
『沈まれたら困る、ということか』
ソビエツキー・ソユーズは機動力を失っただけで武装は健在である。また上甲板や砲塔の防御は非常に固く、多少爆撃したくらいではビクともしない。それに艦隊が合流し、またしても手出しできなくなってしまった。
『もう一度特攻してみるか?』
『それでは本当に沈んでしまいます!』
妙高は叫ぶ。妙高はあくまで誰も沈めたくなかった。
「じゃあどうしろって言うのよ?」
『このまま逃げればいいんじゃないんでしょうか?』
『妙高、わたくし達が攻撃をやめれば、彼らはまた追って来ますよ』
「そうね。それに、艦載機の燃料はそう長くは持たない。いずれ私達がジリ貧で負けるわ」
一見月虹が押しているように見えるが、このまま艦載機の燃料切れまでソ連艦隊に粘られると、瑞鶴もツェッペリンもその後6時間は行動不能になってしまう。
『た、確かに、そうですね……』
『なれば特攻で全ての戦艦の足を奪えばよいのではないか? 戦艦がいなければ、妙高と高雄で対処できるぞ』
「あんな奇策が二度も通じるとは思えないわ」
『そう、だな……』
ツェッペリンは珍しく気落ちする。それほどまでに事態の打開策が見つからないのである。
と、その時であった。
『瑞鶴さん!! 北から多数の航空機が来ます! 100機ほどが距離300kmです!』
「北? アメリカか? まさかソ連と手を組んでるとでも?」
『さ、さあ……』
「クソッ。最悪ね。ツェッペリン、ソ連の奴らは任せたわよ」
『分かった』
一時的に抑え込むだけならツェッペリンだけだ十分だ。瑞鶴は自分の艦載機を月虹艦隊直上に戻して、接近する航空編隊を迎え撃とうとする。だが、それらは月虹に見向きもせず、ソ連艦隊に一直線に突っ込んでいったのである。
○
「アメリカ軍だと!? まさか連邦と戦争を始める気なのか!?」
それはソビエツキー・ソユーズにとって一番信じられない光景であった。アメリカは第三次世界大戦を始めるつもりなのかと。
「全艦、接近する航空機を迎え撃て!」
『お姉ちゃんの敵は皆殺しだ!!』
『ウクライナ、落ち着いてくれ』
『戦艦の皆さんは元気がよろしいことで』
たちまち来襲したアメリカ軍機。だが、それらは別にツェッペリンと手を組んでいる訳でもないらしい。ソ連艦隊の上空で両者は勝手に争い始めた。三つ巴の航空戦である。
「一体何が起こっているんだ……」
と、その時であった。ソビエツキー・ソユーズ相手に直接通信が掛かってきた。ソユーズは迷わずそれを受けた。
「何者だ?」
『ふふふ、私はアメリカ合衆国のエンタープライズです』
狂気の声の主は、あのエンタープライズであった。正直言ってノヴォロシースクでは相手にならない。
「エンタープライズ、我々と戦争をするつもりなのか?」
『いえいえ、まさか。ただ我々はあなた方に、臨検を要請したいだけです』
「臨検だと? ふざけているのか?」
『いえいえ、ふざけてなどいませんよ。我々アメリカ海軍は、あなた方が敵国に便宜を図っている可能性が高いと判断し、積載する物資の捜査を要求します』
エンタープライズの要求は合法的だ。アメリカ海軍は敵国キューバに利益をもたらす可能性のある船を捜査し、敵対的な船だと判断すれば拿捕する権利を有している。
『命令に従わぬ場合、あなた方を敵船と見なしますが、よろしいのですか?』
「そんなことを言う前に、あの海賊共を何とかすることを考えたらどうだ!?」
『あら、そちらはもう手を打ってありますよ。ほら、ツェッペリンの艦載機が帰っていくでしょう?』
「そ、そのようだな……」
エンタープライズの出現で、戦場はたちまち静まり返った。ソ連艦隊も月虹も下手に動けなくなってしまったのだ。
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