61 / 341
第三章 戦いの布告
独ソ合作
しおりを挟む
『同志(タヴァーリシ)長門、ソビエツキー・ソユーズ、ソビエツカヤ・ウクライナ、ソビエツカヤ・ベラルーシ、貴艦の危機を知り参上した!』
『おお、来てくれたか、ソビエト三姉妹』
ソ連の最高戦力である戦艦三隻。国家の威信をかけた艦隊が今、戦場に到着した。
『ねえねえ、あれが敵? 殺していい?』
『ウクライナ、やめてくれ。私達の任務は第五艦隊の支援だよ』
ベラルーシはウクライナの猪突猛進を諫めるが、なかなか聞き入れてくれない。
『ええ~? 敵を皆殺しにしたら戦いは終わるでしょ? 違う?』
『ウクライナ、私からも頼む。我が第五艦隊の支援に当たってくれ』
長門はソビエツカヤ・ウクライナに直接頼んだ。と、その時、陸奥が長門に個人電話で呼び掛けた。長門は少しだけ艦隊の指揮を中断する。
『やっぱり瑞鶴は殺したくないものね、長門? あなたって本当に甘いわ』
『陸奥……本当に、お前はどこまで知っているんだ』
『結構色々知っているわ。なんたって私は連合艦隊直属だからね。たまに陛下に謁見したりもするのよ?』
『連合艦隊直属というのならもっと真面目に仕事をしろ』
『それじゃあつまらないじゃない?』
『……まあいい、この話は後だ。指揮に戻る』
陸奥との直接回線は切り、全体との通信に復帰する。
『同志ウクライナ、我々は同志長門の指示に従う。これはフルシチョフ第一書記からの命令でもある。反革命罪にでも問われたいのか?』
『え、それはやだ』
『では、同志長門に従うのだ』
『分かった、分かったよ! 素直に従うから!』
ソユーズがウクライナを黙らせると、やっと作戦に入れる。
『うむ。ソ連の諸君には、第五艦隊の陣形に加わり、対空戦闘を担当してもらいたい。いいか?』
『喜んで、同志長門。共に助け合おう。そう、共産主義のように!』
『お、おう……』
かくして第五艦隊は、臨時とは言え戦艦5隻という、一個艦隊にしては空前の火力を持つに至ったのである。ソビエツキー・ソユーズ級は艦体性能で長門型を上回る戦艦。その対空砲火もまた同様である。
⑦
『ちょっと、ふざけんじゃないわよ! 戦艦5隻とか聞いたことないわ!』
『我もだ。それもロシア人どもと組むとは……日本は誇りを忘れたのか?』
『そんなこと聞かれても知らないわよ。ねえ妙高?』
「さ、さあ……」
ともかく、長門と陸奥を相手取るので手一杯であったところに戦艦が3隻も追加された。第二次世界大戦を勝ち抜いた伝説級の船魄であっても、たったの2隻だけでこれを相手取るのはあまりにも厳しい。
「ど、どうしましょう……こんな数の戦艦……」
『まったくね。いくら私でもどうにもならない。牽制することですらやっとよ』
濃密な対空砲火には近づくこともままならない。艦隊の外周をグルグル飛行し敵を牽制しておくくらいしか、空母にできることはなかった。
『瑞鶴、妙高、我は撤退を命じたい』
ツェッペリンは勝てないと悟った。一度撤退して態勢を立て直し、機を見て再び襲撃を仕掛けようと。
「そ、それは……」
『妙高、お前の気持ちは分からぬでもない。だが、この状況で目標を達成することは不可能だ。これ以上の戦いは、我らの戦力を無為に消耗するだけであろう』
『ツェッペリンにしては意外な言葉だけど、その通りね。艦載機は貴重なの。今は撤退するべき』
「ですが、ここで下がって再びチャンスが訪れるとは思えません……」
彼女らへの警戒はカリブ海全域で高まるだろう。第五艦隊が単独で行動するという状況は二度と生まれないかもしれない。
『その懸念も分かるわ。けど、この状況で私達に勝ち目はない。戦艦5隻を無力化できるだけの魚雷なんて持ってないもの』
『そうだ妙高。お前より遥かに多くの戦場をくぐり抜けて来た我らが言っているのだ。素直に受け入れるがいい。二度と行動を起こせなくなるぞ』
「……そうですね。分かりました。撤退、します」
妙高は撤退を決意した。瑞鶴とツェッペリンは艦載機を引き上げ、撤退の用意を始める。だが、その時だった。またしても妙高が接近する艦影を捉えたのだ。
「――こ、今度は空母です。3時方向から来ます!」
『クソッ……。挟み撃ちされたってことね』
『そのようだな。退路を断とうとする――』
『グラーフ・ツェッペリンッ!! やっと見つけたぞ!』
その時、通信機から少女の荒々しい声が響いた。
『……我の名を呼ぶお前は誰だ?』
『我こそはペーター・シュトラッサー! ドイツを裏切った貴様を取り返しに来た!!』
グラーフ・ツェッペリン級航空母艦二番艦ペーター・シュトラッサー。つまりはツェッペリンのすぐ下の妹である。
『シュトラッサー? ああそうか。我が出奔したことを恨んでいるのか』
『恨みなどではない! これは正義だ! ドイツを裏切りドイツから逃げた貴様を取り返すのは、ドイツ海軍の船魄としての責務なのだ!』
『ほう? ではどうしてくれるのだ?』
『こうしてやろう。全艦載機、発艦!』
『ちょっとちょっと、どうしてくれるのよこれ』
シュトラッサーとツェッペリンの設計はほぼ同じ。つまりほぼ同じ戦力を持っているということだ。それが全艦載機を飛ばして来たというのは、非常によろしくない。逃げることすら儘ならなくなってしまう。
『おお、来てくれたか、ソビエト三姉妹』
ソ連の最高戦力である戦艦三隻。国家の威信をかけた艦隊が今、戦場に到着した。
『ねえねえ、あれが敵? 殺していい?』
『ウクライナ、やめてくれ。私達の任務は第五艦隊の支援だよ』
ベラルーシはウクライナの猪突猛進を諫めるが、なかなか聞き入れてくれない。
『ええ~? 敵を皆殺しにしたら戦いは終わるでしょ? 違う?』
『ウクライナ、私からも頼む。我が第五艦隊の支援に当たってくれ』
長門はソビエツカヤ・ウクライナに直接頼んだ。と、その時、陸奥が長門に個人電話で呼び掛けた。長門は少しだけ艦隊の指揮を中断する。
『やっぱり瑞鶴は殺したくないものね、長門? あなたって本当に甘いわ』
『陸奥……本当に、お前はどこまで知っているんだ』
『結構色々知っているわ。なんたって私は連合艦隊直属だからね。たまに陛下に謁見したりもするのよ?』
『連合艦隊直属というのならもっと真面目に仕事をしろ』
『それじゃあつまらないじゃない?』
『……まあいい、この話は後だ。指揮に戻る』
陸奥との直接回線は切り、全体との通信に復帰する。
『同志ウクライナ、我々は同志長門の指示に従う。これはフルシチョフ第一書記からの命令でもある。反革命罪にでも問われたいのか?』
『え、それはやだ』
『では、同志長門に従うのだ』
『分かった、分かったよ! 素直に従うから!』
ソユーズがウクライナを黙らせると、やっと作戦に入れる。
『うむ。ソ連の諸君には、第五艦隊の陣形に加わり、対空戦闘を担当してもらいたい。いいか?』
『喜んで、同志長門。共に助け合おう。そう、共産主義のように!』
『お、おう……』
かくして第五艦隊は、臨時とは言え戦艦5隻という、一個艦隊にしては空前の火力を持つに至ったのである。ソビエツキー・ソユーズ級は艦体性能で長門型を上回る戦艦。その対空砲火もまた同様である。
⑦
『ちょっと、ふざけんじゃないわよ! 戦艦5隻とか聞いたことないわ!』
『我もだ。それもロシア人どもと組むとは……日本は誇りを忘れたのか?』
『そんなこと聞かれても知らないわよ。ねえ妙高?』
「さ、さあ……」
ともかく、長門と陸奥を相手取るので手一杯であったところに戦艦が3隻も追加された。第二次世界大戦を勝ち抜いた伝説級の船魄であっても、たったの2隻だけでこれを相手取るのはあまりにも厳しい。
「ど、どうしましょう……こんな数の戦艦……」
『まったくね。いくら私でもどうにもならない。牽制することですらやっとよ』
濃密な対空砲火には近づくこともままならない。艦隊の外周をグルグル飛行し敵を牽制しておくくらいしか、空母にできることはなかった。
『瑞鶴、妙高、我は撤退を命じたい』
ツェッペリンは勝てないと悟った。一度撤退して態勢を立て直し、機を見て再び襲撃を仕掛けようと。
「そ、それは……」
『妙高、お前の気持ちは分からぬでもない。だが、この状況で目標を達成することは不可能だ。これ以上の戦いは、我らの戦力を無為に消耗するだけであろう』
『ツェッペリンにしては意外な言葉だけど、その通りね。艦載機は貴重なの。今は撤退するべき』
「ですが、ここで下がって再びチャンスが訪れるとは思えません……」
彼女らへの警戒はカリブ海全域で高まるだろう。第五艦隊が単独で行動するという状況は二度と生まれないかもしれない。
『その懸念も分かるわ。けど、この状況で私達に勝ち目はない。戦艦5隻を無力化できるだけの魚雷なんて持ってないもの』
『そうだ妙高。お前より遥かに多くの戦場をくぐり抜けて来た我らが言っているのだ。素直に受け入れるがいい。二度と行動を起こせなくなるぞ』
「……そうですね。分かりました。撤退、します」
妙高は撤退を決意した。瑞鶴とツェッペリンは艦載機を引き上げ、撤退の用意を始める。だが、その時だった。またしても妙高が接近する艦影を捉えたのだ。
「――こ、今度は空母です。3時方向から来ます!」
『クソッ……。挟み撃ちされたってことね』
『そのようだな。退路を断とうとする――』
『グラーフ・ツェッペリンッ!! やっと見つけたぞ!』
その時、通信機から少女の荒々しい声が響いた。
『……我の名を呼ぶお前は誰だ?』
『我こそはペーター・シュトラッサー! ドイツを裏切った貴様を取り返しに来た!!』
グラーフ・ツェッペリン級航空母艦二番艦ペーター・シュトラッサー。つまりはツェッペリンのすぐ下の妹である。
『シュトラッサー? ああそうか。我が出奔したことを恨んでいるのか』
『恨みなどではない! これは正義だ! ドイツを裏切りドイツから逃げた貴様を取り返すのは、ドイツ海軍の船魄としての責務なのだ!』
『ほう? ではどうしてくれるのだ?』
『こうしてやろう。全艦載機、発艦!』
『ちょっとちょっと、どうしてくれるのよこれ』
シュトラッサーとツェッペリンの設計はほぼ同じ。つまりほぼ同じ戦力を持っているということだ。それが全艦載機を飛ばして来たというのは、非常によろしくない。逃げることすら儘ならなくなってしまう。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【完結】【R18百合】会社のゆるふわ後輩女子に抱かれました
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
レズビアンの月岡美波が起きると、会社の後輩女子の桜庭ハルナと共にベッドで寝ていた。
一体何があったのか? 桜庭ハルナはどういうつもりなのか? 月岡美波はどんな選択をするのか?
おすすめシチュエーション
・後輩に振り回される先輩
・先輩が大好きな後輩
続きは「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」にて掲載しています。
だいぶ毛色が変わるのでシーズン2として別作品で登録することにしました。
読んでやってくれると幸いです。
「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/759377035/615873195
※タイトル画像はAI生成です
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
午後の紅茶にくちづけを
TomonorI
キャラ文芸
"…こんな気持ち、間違ってるって分かってる…。…それでもね、私…あなたの事が好きみたい"
政界の重鎮や大御所芸能人、世界をまたにかける大手企業など各界トップクラスの娘が通う超お嬢様学校──聖白百合女学院。
そこには選ばれた生徒しか入部すら認められない秘密の部活が存在する。
昼休みや放課後、お気に入りの紅茶とお菓子を持ち寄り選ばれし7人の少女がガールズトークに花を咲かせることを目的とする──午後の紅茶部。
いつも通りガールズトークの前に紅茶とお菓子の用意をしている時、一人の少女が突然あるゲームを持ちかける。
『今年中に、自分の好きな人に想いを伝えて結ばれること』
恋愛の"れ"の字も知らない花も恥じらう少女達は遊び半分でのっかるも、徐々に真剣に本気の恋愛に取り組んでいく。
女子高生7人(+男子7人)による百合小説、になる予定。
極力全年齢対象を目標に頑張っていきたいけど、もしかしたら…もしかしたら…。
紅茶も恋愛もストレートでなくても美味しいものよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる