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第八章

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 熱い湯で白く染まったシャワールームは、ガラス張りの造りになっている。一人で使うためのものなのだろう。大人二人が立っていると狭くて身動きさえ取れない。
「だから……そっちの、お風呂にしようって……っ」
「それはあとでな。お湯溜めてやるから」
 どうしても二人で入りたいと聞かなかったため、バスタブのある広いバスルームにしようと提案していたのだが、あえなく却下されてしまった。
 暁史が泊まっているエグゼクティブルームは、全面積三百平方メートルはあり、そもそも一人暮らしをするには贅沢すぎる部屋だ。
 そのためバスルームとシャワールームが二つ完備されているのだが、暁史は寝室に近いシャワールームを選んだ。何でも、身体を拭いてそのままセックスに持ち込めるから、だそうだ。
 身体を重ねることに対して異議はない。けれど、これでは身体を洗うこともできないだろうと、背後で怪しい動きを見せている男を睨む。
「我慢できない」
 背後から抱き締められて、脇から腰骨のあたりをツッと指を這わせて撫でられる。
「あっ……ん。まだ……身体洗ってな……」
「洗ってやる」
 ボディーソープを手にたっぷりとつけた暁史の手が首に回る。肩から下へと撫でるようにして、手のひらが動いた。
「はぁっ……」
 ただ、身体を洗われているだけなのに、腰からゾクゾクとした甘い痺れがせり上がってくる。ともすれば、下肢が濡れた感触までしてきて息が上がってしまう。
「感じてる?」
「そんな触り方、するから……っ」
腰のくびれを撫でていた暁史の手が膨よかな胸元を包む。乳房を押し上げるようにして揺らされると、手のひらの中で柔らかかった乳首が硬く勃ちあがってしまう。
「あっ、はぁっ……も、胸はい、っから」
「もう少しだけ」
 暁史は随分と楽しそうだ。もしかしなくとも、狭いのに託けてこれがやりたかっただけか。
 執拗にボディーソープでぬるついた手で、乳首を弄ってくる。手の腹でヌルヌルと撫で回されて、触れられてもいない下肢が疼いた。
 まだ、一度しか身体を重ねてはいないのに、もうこの身体は暁史の手で快感を得られる悦びを知ってしまっている。
 キュッと先端を引っ張られて、ふたばは淫らな声をシャワールームに響かせた。
「あぁあっ……あ、はっ、んあぁっ」
 腰が無意識に揺れてしまう。そのたびに、頭の中にクチュッとはしたない音が響いている気がする。
 乳房を捏ねくり回されて、緩急をつけるように痛いほどに乳首が抓まれる。息をつく間もないほどの胸への愛撫で、もう達してしまいそうだった。
 足を伝う確かな感触がある。シャワーの湯ではないぬめりは、中心から溢れでた自らの淫液だろう。
「あき、ふみさっ……おねがっ、もう」
「ふたばが欲しいものをあげよう。どこを、どうして欲しい?」
 そんなの言えるはずがない。ふたばが首を横に振って無理と言うと、さらに暁史が言葉を重ねてくる。
「君の一緒にいて、はこういう意味じゃなかったか……すまない」
 そう言って暁史の手が離されてしまう。
 けれど、そう余裕はないのか暁史の声は欲情し掠れていた。腰にあたる昂ぶりは血管が浮きでるほどに勃ち上がり、はち切れそうだ。
 結局は、ふたばは暁史の言葉に抗うことはできない。触れられたくて仕方がないのは、ふたばも同じだから。
「そういう意味だから……お願い、ちゃんとしてくださ……っ」
 暁史の手を取り、胸へと誘う。
 けれど、意地悪そうに目を細める暁史は何かのスイッチが入ってしまったのか、ふたばに決定的な言葉を言わせようとしてくる。
「ちゃんとって何?」
「もう……っ。触って……焦らさないで。コレ、挿れて」
 暁史の昂ぶりに手を添えながら、一言一言区切るように言えば、欲望が手の中でビクビクと跳ねた。
 先端からは先走りが溢れ、背後で暁史の息を詰めたような声がシャワーの水音に混じって聞こえる。
「ズルいな……っ、君は」
「だって……もうっ」
 淫口はヒクついてしとどに濡れそぼっている。触れられてもいないのに、奥が疼いて仕方がない。
 彼のモノで膣襞を擦り上げて欲しいと、はしたなく卑猥な想像でさらに愛蜜が噴き出してしまう。
 上から降り注いでいたシャワーが止められて、双丘に限界まで膨らんだ屹立が押し当てられる。ようやく中が埋め尽くされるという期待に、ふたばは恍惚とした表情で天を仰いだ。
「んん……っ」
 しかしいくら待てど尻に当たる欲望が膣口に挿れられることはなく、ふたばはもどかしさに自ら腰を揺らす。
 濡れた蜜壺に指が添えられると、チュポチュポと浅い場所を抜き差しされて、全身から玉のような汗が噴き出した。
「やぁっ、う、ああっ……」
「もう、ここ……ぐっしょりだな。まだ二回目だから慣らした方がいいかと思ったんだが、必要ないか?」
 欲情を滲ませた声で聞いてくる暁史の欲望もまた濡れそぼり、尻から太ももを通り、先走りが流れ落ちる。
(自分だって挿れたいんだから……っ、優しくしなくてもいいのに)
 もっと強引に進めてもいい。痛くてもいいから抱いて欲しいのだ。
「いいからぁっ……も、早く」
 シャワーの音がなくなり、ズチュズチュと耳を塞ぎたいほどの濡れ音がシャワールーム内に響く。もういいと言っているのに、暁史は手淫をやめてはくれない。
 以前よりも性急な手つきではあったが、中を拡げながら指を二本、三本と増やしていく。
「もう……っ、いいか?」
 声も出せずに頷くことしかできない。浴室の壁に縋りつきながら首を縦に振ると、猛々しいまでの屹立が背後から一気に蜜口に突き挿れられた。
「はぅっ……あぁぁ!」
 ジュポッと愛液が飛び散り太ももを濡らす。目の前が真っ白に染まり、快感が頭の先まで突き抜けた。
 あまりの衝撃にふたばは全身を波立たせて達してしまう。
 腰を震わせて凄烈な愉悦の波を享受しながらも、膣襞を埋め尽くす欲望の滾りをより奥へと引き込もうと内壁が蠢く。
 自分自身の淫さが信じられない。挿れられただけで達してしまうことも、こんなにも貪欲に男の肉棒を欲してしまうことも。
「挿れただけで達ったのか? 本当に君のことが可愛くて、堪らないよ」
 ググッと腰を捻るように最奥を突かれると、達したばかりの鋭敏な身体は顕著な反応を示してしまう。
「ひぁっ、今、ダメなのっ」
 濡れ襞をゆっくりと亀頭で刮ぐように動かされるたびに、短い絶頂が幾度となくやってくる。さらに肉感的な乳房を後ろから強く揉みしだかれるともう堪らなく気持ちいい。
「あぁ、うっ……はぁ、あぁんっ」
 意識を失いそうなほど次から次へと押し寄せる喜悦に、口を閉じることも忘れて喘ぎ声をあげてしまう。
 硬く尖った乳首を乳輪ごと指で抓られて、真っ赤に腫れ赤くなった尖が白い肌に浮き上がる。ヌチュヌチュと太い陰茎が膣襞を擦り上げ、二人分の淫らに濡れた呼吸がシャワールームに響く。
 全身の肌が凄絶な快感に粟立ち、ふたばの身体を労わるような緩やかな動きに、焦燥感ばかりが駆り立てられる。
 激しく穿って欲しいのに口には出せないもどかしさと、相反するように腰をくねらせていい場所に当てようとしてしまう自分自身の淫さがある。
 思考力まで奪われて、彼にしか見せないのだからいいかとすら思ってしまう。
「も、っと……奥、がっ、い」
 急に、中を穿つ陰茎の質量が増した。
 片足を抱え上げられて、より深い場所に屹立が入り込むと、隙間ないほどに密着し最奥を突かれる。
「はぁっ、う……っ、んあっ、そ、こ……気持ちい」
 片足で支えている足がガクガクと震えて倒れそうになるのを、背後から暁史の両腕で支えられた。
 擦られるたびに、膣襞が太い欲望を締めつけ、大量の蜜を吐きだしている。結合部から流れ落ちた愛液が太ももを伝い、排水溝へと吸い込まれていく。
「君は……っ、俺をおかしくさせたいのか」
 雁首で柔襞を抉るように腰を突き動かされると、頭の中が朦朧とするほどに心地よく、喘ぐ口元は半開きになり唾液を溢れさせる。
「あぅっ、んっ、はぁっ、ああぁあっ」
 蜜襞が彼の欲望をより奥へと引き込み、まるで男の精を絞り出そうとするかのごとく蠢動する。
 目の前がチカチカするほどの快感が押し寄せてきて、頭を振り乱し身悶えながら、もう少しでやってくる絶頂の波に流されようとしていた。
 それなのに。
「いやぁっ……やっ、ん、なんで……っ」
 濡れ音を立てて欲望が引き抜かれると、呼気を荒くした暁史が抱えていたふたばの足を床へとそっと下ろす。
「中で出したいが……ゴムはあっちだからな」
 暁史はガラス張りのドアを開けると、大判のバスタオルを手に取りふたばの身体に巻きつける。撫でるようにして濡れた肌を拭かれると、たったそれだけの刺激で達してしまいそうになるほどふたばは追い詰められていた。
「んあっ……触っちゃ、や」
 ビクビクと腰を震わせるふたばに、欲情めいた視線が突き刺さる。
 猛々しくそそり勃つ肉棒が視界に入って、もうどうかしているとしか思えないが、ふたばはそっと手を伸ばすと、互いの体液で濡れた陰茎に手を這わせた。
「な、にを……っ」
「これ……欲しいの」
 バスタオルを巻きつけたまま、床に膝をつき彼の欲望を口に含む。何とも言えぬ妙な味に顔をしかめながらも、笠の開いた先端を舌先で突つくと、粘ついた先走りが口の中に溢れた。
「はっ……あ、すぐ……出そうだから……しなくていい」
「やらぁ……」
 ジュッと先端を強く吸い暁史の顔を見上げると、狂おしいほどに熱を持て余した男の視線が絡み合う。息を詰めた様子でジッと見つめられて、暁史の手がふたばの濡れた髪に差し入れられる。
「んんんっ!」
 グッと頭を掴まれ、次の瞬間、喉奥にまで陰茎を突き入れられた。
 思わず吐きだしそうになるのを堪えて涙を浮かべると、薄っすらと笑みを浮かべた暁史が視線を合わせたまま腰を動かしてくる。
 舌先で裏筋を舐めながら、口の中にすべては入りきらない太い肉棒を必死で咥える。
 暁史の目元が赤く染まり全身に色香を纏わせている。感じてくれていると知り、ふたばはますます口淫を激しくさせた。
「んんっ、はぁっ、む、ん……」
 口の端から唾液が溢れ落ちて顎を伝う。
 ジュブジュブとまるで膣口を突き上げているかのように腰を動かされて、放置された下肢が愛液を溢れさせた。
 バスタオルの中で太ももを擦り合わせていると、ドクドクと脈打つ欲望がさらに口腔で膨れ上がった。
「出すから……全部、飲んで」
 快感に濡れた暁史の声にまで感じ入ってしまいそうになる。キュウッと子宮が収縮する感覚に全身を震わせると、口の中で限界まで膨れ上がった屹立が弾け、おびただしい量の射液が迸る。
「……っ、う」
 口腔に粘ついた射液が絡まるが、少しずつそれを嚥下して、床に膝をついたままうっとりと彼の姿を見上げた。
 口淫をしたのは二度目だが、一度目の時とは気持ちも感じ方もまったく違う。口の中に吐き出された精をあれほど気持ちが悪いと思っていたのに、今回は暁史がふたばの口で感じてくれていると知るだけで嬉しくなって、不快には思わなかった。
 まだ雄々しいままの屹立に手を伸ばすと、暁史が苦笑した。脇に手を入れられて立たされると、深く唇を貪るように口づけられた。
「はぁっ、んん……む」
 粘ついた精ごと舌をしゃぶられて、まだ達していない敏感な身体はすぐに芯を熱くさせる。足を擦り合わせると、膣口から溢れた愛液が下生えを濡らした。
「好きだよ、ふたば。まだ……全然君が足りない」
 暁史は、自らの濡れた身体を意にも介さず、バスタオルを巻きつけたふたばの身体を横抱きにしてシャワールームを出る。
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