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第八章
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第八章
彼女が銀行を辞めて二年が経った秋頃だろうか。
融資先へと赴いた帰り道、ちょうど昼時だったこともあってレストランはどこも混雑している。そこまで空腹だったわけでもなかったから、軽食を提供するカフェへと足を運んだ。
一面がはめ殺し窓になっていて、テラスもあった。店内は混雑していたが、テラス席は空いている。そう長居するつもりはない、史哉がテラスに出てテーブルにつくと、ウッドデッキからは通りを歩く人々を眺められる。
サンドウィッチ二つをあっという間に食べ終えてコーヒーで流し込み、トレイを片付けようと立ち上がりかけたその時、記憶の奥底にあるなにかが頭を掠めた。
なんだろう、と周囲を見回すと歩く人々の中に、二年ぶりに見る顔があった。
(静香……?)
忘れもしない。今でも飲みの席で圭に会うたびに、胸が苦しくなる。あの時の痛みはいまだ言えずに、史哉の胸をひどく疼かせていたから。
あの頃から綺麗な女だとは思っていたが、今は大人の色気が身についていて落ち着いた印象だ。
(変わってないな……)
静香はこちらには目もくれずに、コーヒーのチェーン店へと入っていった。
こんなところで何をしているのだろう。
席を立とうと思ったが、史哉は腰掛けたまま彼女が入っていったビルを見上げた。しばらくすると、窓際に腰掛けた女性の姿がある。逆光でよく顔は見えないが、服の形状からおそらく静香だろう。
静香と思われる女性は窓際の席でパソコンを開いていた。
そういえば、圭から静香は翻訳の仕事についたと聞いた。異動の多い自分に合わせてもらうことになり申し訳ないと言っていたように記憶している。
(仕事で来たのか……)
誰かと待ち合わせかもしれない。圭が今住んでいるマンションはここから電車で何十分かのところで、とくに栄えているわけでもないこの駅にわざわざ来る用事もないだろう。
そろそろ仕事に戻らないといけない。史哉は名残惜しく思いながらも、店を後にした。
(俺もバカだな……もういい加減に忘れればいいものを)
そう自嘲しながらも、静香に会えたことが嬉しくて堪らなかった。
もちろん圭には言えない。圭は史哉が静香に恋心を抱いていることを知らないし、自分の妻に恋慕を抱く話を聞かされたら圭だって困るだろう。
別に横恋慕しようという話ではないのだ。ただ、もう一度だけでも会えたら、それだけだった。
そして、また会えるかもしれないという期待から、つい時間が合えば同じカフェに足を運んでしまっていた。
ランチの時間の指定席。何度目かで、静香が自分を見ているような気がしてならなかった。
静香は必ず同じ席に座る。
店に入っていったのに、なかなか顔が見えないと思うと、別の客がカウンターに座っていた。窓を見上げていると、客が席を立ったタイミングでカウンターに移動する静香の姿を見たことがあるからだ。
(もしかして……俺に会いにきてないか?)
そう自惚れるのも仕方のないことだ。仕事かと思っていたが、彼女はずっと窓の外を見ている。さすがに距離があり、何となくこちらを見ているとしかわからないが、何度か目が合ったような気さえするのだ。
けれど静香は話しかけてくることはない。店を出て三メートルほどの短い信号を渡れば会うこともできるのに、彼女も自分もそれをしなかった。
ほんの短い間の逢瀬。静香がどう思っているのか知らないが、史哉はそのつもりだった。話すことも直接会うこともできないが、自分たちはたしかに通じ合っている、そんな気がしたのだ。
それも、圭が亡くなるまでのことだった。
事故に遭ったという圭の通夜で、静香はまるで半身を失ってしまったかのように憔悴していた。ああ、圭への愛情は本物だったのだと思うと、もうあのカフェに行こうとは思わなかった。
それから五年が経ち、やっと焦がれるような恋心も落ち着いて来た頃。まさか、あの場所でもう一度再会することになるとは夢にも思わなかった。
女性と子どもの二人暮らしの家に入るのは気が引けたが、鍵を静香に返せば彼女は二度と史哉を頼らないだろうと確信があった。
服や下着は買えばいい、金なら出すから、と言ったのに彼女は頷かなかった。仕方なく奈津子に連絡を取り、簡単に事情を説明し来てもらうことになった。
「いくら元同期って言ってもさ~そんなことする?」
史哉の後に続いて静香の部屋に入った奈津子が訝しげに口を開いた。
「子どもと二人暮らしなんだ。また倒れでもしたら大変だろう」
「へぇ~優しいわね」
まったく信じていない口調だ。奈津子が納得するとは思っていない。別に自分の気持ちを吐露することに抵抗はない。すでに静香にも気持ちを伝えているくらいだし、奈津子にバレたところで問題はなかった。
「下心はあるさ。当たり前だろ」
「うん、でしょうね。それでいいと思うわよ」
靴を脱いで、玄関脇に飾ってあった家族写真を見つめながら、奈津子はひどく悲しげな顔で写真に写った圭を見つめた。
息子、幸太はあまり圭には似ていない。ふっくらとした頬が愛らしく、静香によく似ていると思った。
まだ圭を忘れていないのかと、胸がチクリと痛むがもう彼女を手放すつもりもないのだ。圭に邪魔をされることもないと考えてしまう自分は、冷徹でひどい人間なのだろう。
「お前は反対するかと思ったよ」
「どうして?」
「奈津子は静香の味方だからな。あいつが望まないことはしないだろ」
卑怯な手だと思いながらも、選んだのは自分だ。今度こそ彼女を手に入れるために。
亡くなった圭には悪いとは思う。けれど、戸澤の家との確執は静香を苦しめている。それは圭だって望んでいなかったはずだ。と、そう自分を納得させてはいるが、死んだ人間に訊こうと思ったところで叶うはずはないのだから、自分がそう思いたいだけだろう。
「そろそろいいと思うのよ。圭を忘れても」
デスクの上にあったパソコンをアダプターと一緒に鞄に入れていると、静香の洋服をクローゼットから取り鞄に詰めている奈津子が独り言のようにボソリと言った。
「ねぇ、史哉。あの子のこと、ちゃんと幸せにしてあげてよ」
「そのつもりだ」
史哉が言うと、驚いたように目を見開いた奈津子が、嬉しそうに頬を緩めた。
奈津子に礼を言って、近くの駅まで車で送り届けると、駅で手土産を買い、その足で戸澤家に向かった。
おそらく静香は事を荒立てたくはないのだろう。幸太が奪われても警察を呼ばなかった。圭の両親だからと遠慮もあるのかもしれない。しかし、彼らがしたことはれっきとした誘拐だ。
七歳の子どもに判断能力はさしてない。知り合い、それも祖父母に声をかけられたら、考えもせずに行ってしまうのは致し方ないことだ。
けれど、母親が会いに行っても門前払いとくれば、未成年者略取誘拐に当たる。たしか子ども──未成年者の同意があったとしても、保護者の同意がなければ犯罪となるはずだ。
監獄に見えないこともないな、と史哉は鉄製の門を見上げた。インターフォンを鳴らして、営業で鍛えられた人好きのする笑みを顔に浮かべる。
『はい、どちらさまでしょうか』
「私、青葉銀行の真嶋と申します。いつも弊社をご利用いただいているお礼に参った次第ですが、旦那様、もしくは奥様はご在宅でしょうか?」
『あら、青葉銀行さんの? 少々お待ちくださいませ』
応対したのは家政婦だろう。戸澤ホテルのメインバンクは青葉だ。担当する支店は違うが、仕事の話をしにきたのではないのだからどうとでもなる。
まさか史哉が静香の使いで来たとは思ってもみないのか、しばらく待っていると鉄製の門が内側に開き、インターフォンから『どうぞ』と声が聞こえた。
玄関まで二十メートルはあるだろうか。無駄に広い庭を眺めながら、史哉は鼻を鳴らす。圭の母親はとにかく派手好きで金目のもの=美しいという考えだ、と生前圭から聞いたことがあった。
庭に植えられているアーチ型の四季咲き性のつる薔薇が鬱蒼と咲いているが、家主が大事に管理しているという感じはしない。ただ、そこに植えられているだけに見える。見栄えがよく雑草など生えてはいないのに冷たく見えるのは、戸澤家に対しての先入観のせいだろうか。
玄関先のインターフォンを鳴らすと、ややあってドアが開けられた。出迎えてくれたのは、圭の母親だ。
値踏みするような視線が足元から這い上がってきて、史哉の顔のところでピタリと止まる。女子供に受けがいい甘い顔に笑みを浮かべれば、目の前の老齢の女も例外ではなく頬を染めた。
「あ、あら……青葉銀行のとおっしゃるから、いつもの担当かと思ったのだけれど」
「はじめまして。私、真嶋と申します。担当が変わったわけではないのですが、最近異動で参ったので、ぜひうちと懇意にしている戸澤様のお宅へ御挨拶に伺いたいと思っていたのです。ああ、こちらシャトードゥガトーの春の新作ケーキらしいので、よろしければお召し上がりになりませんか?」
「ありがとう。鈴代《すずよ》さんにお茶を入れさせるわね。入りなさい」
「いえ、お気遣いなく、ご挨拶に伺っただけですから。そういえば、庭の薔薇も素晴らしいですね。奥様が手入れをされているんでしょう? 荘厳で高貴な赤い薔薇は、奥様によくお似合いです」
歯の浮くようなセリフも、人によっては効果的だ。予想通り、戸澤夫人は相合を崩して、うっとりと目を細めて史哉を見つめた。
「嬉しいわ。わかっていただける? ぜひ、お入りなさいな。最近異動になったばかりなら、まだうちの関連企業への挨拶回りはしていないでしょう? 私の方で紹介して差し上げることもできますから」
「それではお言葉に甘えまして。少しだけお邪魔させていただきます」
彼女が銀行を辞めて二年が経った秋頃だろうか。
融資先へと赴いた帰り道、ちょうど昼時だったこともあってレストランはどこも混雑している。そこまで空腹だったわけでもなかったから、軽食を提供するカフェへと足を運んだ。
一面がはめ殺し窓になっていて、テラスもあった。店内は混雑していたが、テラス席は空いている。そう長居するつもりはない、史哉がテラスに出てテーブルにつくと、ウッドデッキからは通りを歩く人々を眺められる。
サンドウィッチ二つをあっという間に食べ終えてコーヒーで流し込み、トレイを片付けようと立ち上がりかけたその時、記憶の奥底にあるなにかが頭を掠めた。
なんだろう、と周囲を見回すと歩く人々の中に、二年ぶりに見る顔があった。
(静香……?)
忘れもしない。今でも飲みの席で圭に会うたびに、胸が苦しくなる。あの時の痛みはいまだ言えずに、史哉の胸をひどく疼かせていたから。
あの頃から綺麗な女だとは思っていたが、今は大人の色気が身についていて落ち着いた印象だ。
(変わってないな……)
静香はこちらには目もくれずに、コーヒーのチェーン店へと入っていった。
こんなところで何をしているのだろう。
席を立とうと思ったが、史哉は腰掛けたまま彼女が入っていったビルを見上げた。しばらくすると、窓際に腰掛けた女性の姿がある。逆光でよく顔は見えないが、服の形状からおそらく静香だろう。
静香と思われる女性は窓際の席でパソコンを開いていた。
そういえば、圭から静香は翻訳の仕事についたと聞いた。異動の多い自分に合わせてもらうことになり申し訳ないと言っていたように記憶している。
(仕事で来たのか……)
誰かと待ち合わせかもしれない。圭が今住んでいるマンションはここから電車で何十分かのところで、とくに栄えているわけでもないこの駅にわざわざ来る用事もないだろう。
そろそろ仕事に戻らないといけない。史哉は名残惜しく思いながらも、店を後にした。
(俺もバカだな……もういい加減に忘れればいいものを)
そう自嘲しながらも、静香に会えたことが嬉しくて堪らなかった。
もちろん圭には言えない。圭は史哉が静香に恋心を抱いていることを知らないし、自分の妻に恋慕を抱く話を聞かされたら圭だって困るだろう。
別に横恋慕しようという話ではないのだ。ただ、もう一度だけでも会えたら、それだけだった。
そして、また会えるかもしれないという期待から、つい時間が合えば同じカフェに足を運んでしまっていた。
ランチの時間の指定席。何度目かで、静香が自分を見ているような気がしてならなかった。
静香は必ず同じ席に座る。
店に入っていったのに、なかなか顔が見えないと思うと、別の客がカウンターに座っていた。窓を見上げていると、客が席を立ったタイミングでカウンターに移動する静香の姿を見たことがあるからだ。
(もしかして……俺に会いにきてないか?)
そう自惚れるのも仕方のないことだ。仕事かと思っていたが、彼女はずっと窓の外を見ている。さすがに距離があり、何となくこちらを見ているとしかわからないが、何度か目が合ったような気さえするのだ。
けれど静香は話しかけてくることはない。店を出て三メートルほどの短い信号を渡れば会うこともできるのに、彼女も自分もそれをしなかった。
ほんの短い間の逢瀬。静香がどう思っているのか知らないが、史哉はそのつもりだった。話すことも直接会うこともできないが、自分たちはたしかに通じ合っている、そんな気がしたのだ。
それも、圭が亡くなるまでのことだった。
事故に遭ったという圭の通夜で、静香はまるで半身を失ってしまったかのように憔悴していた。ああ、圭への愛情は本物だったのだと思うと、もうあのカフェに行こうとは思わなかった。
それから五年が経ち、やっと焦がれるような恋心も落ち着いて来た頃。まさか、あの場所でもう一度再会することになるとは夢にも思わなかった。
女性と子どもの二人暮らしの家に入るのは気が引けたが、鍵を静香に返せば彼女は二度と史哉を頼らないだろうと確信があった。
服や下着は買えばいい、金なら出すから、と言ったのに彼女は頷かなかった。仕方なく奈津子に連絡を取り、簡単に事情を説明し来てもらうことになった。
「いくら元同期って言ってもさ~そんなことする?」
史哉の後に続いて静香の部屋に入った奈津子が訝しげに口を開いた。
「子どもと二人暮らしなんだ。また倒れでもしたら大変だろう」
「へぇ~優しいわね」
まったく信じていない口調だ。奈津子が納得するとは思っていない。別に自分の気持ちを吐露することに抵抗はない。すでに静香にも気持ちを伝えているくらいだし、奈津子にバレたところで問題はなかった。
「下心はあるさ。当たり前だろ」
「うん、でしょうね。それでいいと思うわよ」
靴を脱いで、玄関脇に飾ってあった家族写真を見つめながら、奈津子はひどく悲しげな顔で写真に写った圭を見つめた。
息子、幸太はあまり圭には似ていない。ふっくらとした頬が愛らしく、静香によく似ていると思った。
まだ圭を忘れていないのかと、胸がチクリと痛むがもう彼女を手放すつもりもないのだ。圭に邪魔をされることもないと考えてしまう自分は、冷徹でひどい人間なのだろう。
「お前は反対するかと思ったよ」
「どうして?」
「奈津子は静香の味方だからな。あいつが望まないことはしないだろ」
卑怯な手だと思いながらも、選んだのは自分だ。今度こそ彼女を手に入れるために。
亡くなった圭には悪いとは思う。けれど、戸澤の家との確執は静香を苦しめている。それは圭だって望んでいなかったはずだ。と、そう自分を納得させてはいるが、死んだ人間に訊こうと思ったところで叶うはずはないのだから、自分がそう思いたいだけだろう。
「そろそろいいと思うのよ。圭を忘れても」
デスクの上にあったパソコンをアダプターと一緒に鞄に入れていると、静香の洋服をクローゼットから取り鞄に詰めている奈津子が独り言のようにボソリと言った。
「ねぇ、史哉。あの子のこと、ちゃんと幸せにしてあげてよ」
「そのつもりだ」
史哉が言うと、驚いたように目を見開いた奈津子が、嬉しそうに頬を緩めた。
奈津子に礼を言って、近くの駅まで車で送り届けると、駅で手土産を買い、その足で戸澤家に向かった。
おそらく静香は事を荒立てたくはないのだろう。幸太が奪われても警察を呼ばなかった。圭の両親だからと遠慮もあるのかもしれない。しかし、彼らがしたことはれっきとした誘拐だ。
七歳の子どもに判断能力はさしてない。知り合い、それも祖父母に声をかけられたら、考えもせずに行ってしまうのは致し方ないことだ。
けれど、母親が会いに行っても門前払いとくれば、未成年者略取誘拐に当たる。たしか子ども──未成年者の同意があったとしても、保護者の同意がなければ犯罪となるはずだ。
監獄に見えないこともないな、と史哉は鉄製の門を見上げた。インターフォンを鳴らして、営業で鍛えられた人好きのする笑みを顔に浮かべる。
『はい、どちらさまでしょうか』
「私、青葉銀行の真嶋と申します。いつも弊社をご利用いただいているお礼に参った次第ですが、旦那様、もしくは奥様はご在宅でしょうか?」
『あら、青葉銀行さんの? 少々お待ちくださいませ』
応対したのは家政婦だろう。戸澤ホテルのメインバンクは青葉だ。担当する支店は違うが、仕事の話をしにきたのではないのだからどうとでもなる。
まさか史哉が静香の使いで来たとは思ってもみないのか、しばらく待っていると鉄製の門が内側に開き、インターフォンから『どうぞ』と声が聞こえた。
玄関まで二十メートルはあるだろうか。無駄に広い庭を眺めながら、史哉は鼻を鳴らす。圭の母親はとにかく派手好きで金目のもの=美しいという考えだ、と生前圭から聞いたことがあった。
庭に植えられているアーチ型の四季咲き性のつる薔薇が鬱蒼と咲いているが、家主が大事に管理しているという感じはしない。ただ、そこに植えられているだけに見える。見栄えがよく雑草など生えてはいないのに冷たく見えるのは、戸澤家に対しての先入観のせいだろうか。
玄関先のインターフォンを鳴らすと、ややあってドアが開けられた。出迎えてくれたのは、圭の母親だ。
値踏みするような視線が足元から這い上がってきて、史哉の顔のところでピタリと止まる。女子供に受けがいい甘い顔に笑みを浮かべれば、目の前の老齢の女も例外ではなく頬を染めた。
「あ、あら……青葉銀行のとおっしゃるから、いつもの担当かと思ったのだけれど」
「はじめまして。私、真嶋と申します。担当が変わったわけではないのですが、最近異動で参ったので、ぜひうちと懇意にしている戸澤様のお宅へ御挨拶に伺いたいと思っていたのです。ああ、こちらシャトードゥガトーの春の新作ケーキらしいので、よろしければお召し上がりになりませんか?」
「ありがとう。鈴代《すずよ》さんにお茶を入れさせるわね。入りなさい」
「いえ、お気遣いなく、ご挨拶に伺っただけですから。そういえば、庭の薔薇も素晴らしいですね。奥様が手入れをされているんでしょう? 荘厳で高貴な赤い薔薇は、奥様によくお似合いです」
歯の浮くようなセリフも、人によっては効果的だ。予想通り、戸澤夫人は相合を崩して、うっとりと目を細めて史哉を見つめた。
「嬉しいわ。わかっていただける? ぜひ、お入りなさいな。最近異動になったばかりなら、まだうちの関連企業への挨拶回りはしていないでしょう? 私の方で紹介して差し上げることもできますから」
「それではお言葉に甘えまして。少しだけお邪魔させていただきます」
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