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始まりと転校生
2話
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「ついに当日ですね」
「そうだな龍御は来ていないが」
はぁ、とため息が思わず漏れる。
まさかとは思っていたがそのまさかだった。
「頼んだ正博」
「書記、貴方どうです?良かったら私の代わりに「だめ、人怖い…」ちっ!」
素が出てるけど、夏樹は無理だって正博も知ってるはずだけど、まぁそれだけ嫌ってことなんだろう。
「観念しろ正博、見た目アレでも悪い奴じゃないかもしれないだろ」
「そうやって上手く言いくるめようって魂胆でしょう。大体分かります」
「とにかく時間だ。早く行ってこい」
正博は最後まで嫌そうな顔をしていたが、最終的には意を決したように転校生との待ち合わせ場所に向かっていった。
後で絶対文句言われる気がする、いや確実に言われる。
言われたところで何も感じないけど。
取り敢えず、生徒会室に戻ろう。
in生徒会室
「ゴメンカイチョー!またちょっと用事があ「ナンパだろ」…あはは、流石会長ご名答~!」
と悪気なさそうにパチパチ拍手する龍御に、もうこいつ救いようがない。
と思いながら冷たい目で見つめる。
「本当ッゴメン!次は絶対やるから!…でさ~やっぱり副会長が転校生迎えに行ったの?」
「あぁ、お前の代わりに行ったぞ。あとで殴られるから準備でもしてろ」
「よし逃げよっかな~」
逃げようしたら抑えよう。
…そろそろ正博帰って来る筈なんだけど、とにかく無事を祈ろう。
ガチャ
「すみません!遅れました!」
帰ってきた。
何だか案内に行く前よりも穏やかな顔をしているのは何故だろう。
「副カイチョーなんか楽しそうだね~」
龍御は間延びした声で正博に話しかけているが、内心転校生と何があったのか気になっている筈。
現に俺も気になってる。
「そうですかね?でも予想していた子と全然違って普通にいい子でしたよ」
「「…」」
嘘でしょ副会長、あれを普通だと思ったの、それに龍御もポカーンとしてるよ。
「副会長、赤い、顔…」
「うぉっ!!」
びっくりした、夏樹だった。
どれどれ…うん、確かに頰がほんのりピンクだ。
さすが夏樹、人間観察力はこの学校でズバ抜けているだけある。
あとは口下手なところを直せば、完璧。
ところで龍御が夏樹の一言で、さらに、信じられないと言いたげな顔になってるけど、どうしたんだろう。
「…副カイチョーまさか…転校生に」
龍御が珍しく深刻そうなを顔し始めた。
正博なんか、気づかれちゃいましたか、みたいな感じでモジモジしてるし。
夏樹なんかあの一言を機に黙秘を続けている。
あれ、まてよ。
まさか気づいてないのは俺だけなんじゃ。
いやいや、そんな筈は。
「和馬に恋しちゃいました…」
「あー和馬、転校生の名前な。あぁ…恋しちゃったんだ。うん。…ん?恋?」
あれ?恋?
「副カイチョー趣味悪っ!」
「何ですか貴方は!?人を見た目で判断するなんて最低ですよ!和馬は貴方とは比べ物にならない位とても誠実な方です!」
「はぁ!?嘘でしょ!?てか副カイチョーだって最初嫌がってたじゃん!しかもあのマリモの何処に誠実さなんてあるの?惚れる理由が分からない」
バンッ!
正博が机をこれでもかと言うくらいに、勢いよく叩いた。
それにびっくりしたのか、龍御は開けた口を何度もパクパクさせながら、声を出せないでいる。
何せこんなにマジギレする正博を見るのは、初めてだ。
そして正博が怒りの籠った声で龍御に怒鳴るように口を開いた。
「和馬は私に無理して笑わなくていいって言ってくれたんです!
和馬は自分が良く思われていないことを知って、私にそういってくれました!
他の人達は初対面の私にいきなり媚を売ってきます!
それが和馬にはなかったんです…!」
「副カイチョー…」
激しい口論も幕引きを迎えようとしていた。
正博は息をゼーハーさせながら真っ直ぐ龍御を見つめている。
龍御は納得したような、まだありえないと言った表情をしている。
黙りだった夏樹も流石に状況が状況なのかチラホラ何か言いたげにこちらを見ている。
そして俺、日陰は、
「顔赤かったって…風邪じゃなかったの」
若干素が出ていたが、あまりの声の小ささで独り言に終わっていた。
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