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第三章
第六十一話 報仇
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私の声に反応して、オーガがこちらを振り向く。
その目は、怒りに燃えながらも蔑みと侮りを含んでいた。
――さっきからつまらないちょっかいを掛けてくる小娘か。お前なんぞいつでも殺せるが、この女騎士を仕留めるまでは猶予をくれてやろうと思っていたのだ。だがもう良い、こちらの勝負はついた。望み通り、次は貴様を屠ってやろう。
……そんなオーガの想念が、視線を通して私に伝わってくるようだ。
実際、私のフィジカルではシェーナの足元にも及ばない。オーガに太刀打ちなど出来ようはずもなく、黒犬を使った連携攻撃も一度見切られている。ろくな攻撃魔法ひとつも使えない出来損ないの魔術士など後回しにしても構わないと、オーガが考えたとしても不思議ではない。
だが、そこが狙いだ。
オーガの身体がこちらに向き直るのが、やけにスローモーションに見えた。
私の放った短刀は真っ直ぐオーガの頭部に向かっているが、それが命中するとは思っていない。オーガの方も、こんな小細工たやすく叩き落とせると踏んでいるだろう。
私はもう一度シェーナに目をやった。膝をつき、前に突っ伏してもがいている痛ましい姿。その顔は当然伏せられ、私もオーガも見えていない。
だからこそ、私も遠慮せずに全力を出せる。
――シェーナ、私もやるよ。あなたみたいに、全力でこいつと戦う!
心の中で親友に告げ、私は高らかに呪文を唱えた。
「秘術――“幽幻舞踊”!」
その途端、私の投げた短刀の刃から光が迸る。オーガは咄嗟に片手で目を庇いながらも、余ったもう片方の手を振って短刀を弾いた。
だが光が収まり、再び目を開けたヤツは驚愕することになる。
自分が見ている光景が、一瞬前までとはまるで異なっているからだ。
「もうこれ以上、お前の自由にはさせない! お前とは、ここで決着をつけてやる!」
絶えず流れる川の水面、その表面にしっかりと踵を付けて立ちながら私は高らかに宣言した。
オーガが困惑したように首を回す。周囲にあるのは背の高い木々に苔むした地面、好き放題に伸びた雑草に正面を横切る河川。
誰がどう見ても、此処はさっきまで居た大鐘楼の上ではない。人の手が入っていない森の中といった趣がある場所だ。
読みが当たった。やはりオーガは、私の魔術士としての本質を見誤っていたのだ。オーガの経験からすれば、前に対峙した私の戦法は“召喚魔法と光の魔法”を織り交ぜた小手先のものと映っていた可能性が高い。
私が駆使するのが、本当は幻術だったなんて分かりようもないのだ。
今度はあの時とは違い、シェーナの顔は伏せられている。彼女を、私の幻術に巻き込む恐れはない。だから私も、今ここでは全力を出せる。
「覚悟――!」
私の意思を反映して、川面が俄に隆起する。蛇が身を起こして首をもたげるように、突き出た水柱が器用に方向を折り曲げてオーガに狙いを定める。
それに対するオーガの反応は流石に速かった。すぐさま地面を蹴ってその場を飛び退り、水柱の直撃を回避しようとする。
しかし……
――ガウッゥ!?
いつのまにか、あたりの草や蔓や木の根がオーガの足首に巻き付いて動きを封じていた。オーガは慌ててそれらを引き剥がそうともがくが、いくら力を込めて引っ張ってもびくともしない。
オーガの逃げ道は、完全に閉ざされていた。
どうしようもなく立ち往生するオーガを、巨大な水柱が無慈悲に直撃した。激流に呑み込まれて草木ごと浚われるオーガが短い悲鳴を上げるが、それも怒涛の勢いにすぐかき消される。
荒れ狂う濁流が何もかもをえぐり取って、彼方へ彼方へと押し流してゆく。時折、暗く濁った水面にオーガの必死な顔が浮き沈みするが、その頻度も徐々に少なくなってくる。
「まだまだ!」
私は指を鳴らした。すると今までの一切合切が瞬時に消え去り、濁流から解放されたオーガが大きく膝をつく。しばらく肩で息をしていたが、やがて顔を上げるときっと私を睨みつける。
そして再び、オーガは驚愕で凍りついた。
彼の周囲では、巨大な炎がとぐろを巻いて取り囲んでいたのだ。
「あの程度で斃せるなんて思っていないわ! お次は、これよ!」
振り上げた手をオーガに向かって振り下ろす。オーガを厳重に包囲していた炎の渦が、先程の川の水と同様まるで生きているかのようにその身を踊らせ、その環を狭めていく。
迫る大火から逃れんと、オーガは膝を折り曲げ全身をバネにするとその場で大きく跳躍した。今度はさっきと違い、足をとられることはない。捷疾鬼の名に相応しい身体能力を遺憾なく発揮し、炎の包囲網から逃れ出ようとする。
だが追いすがる炎の速さは、逃げるオーガの瞬発力より勝り、鞭のようにしなる炎蛇の舌がたちまちオーガの全身に絡みつく。
苦痛の呻きを上げる間もなく、オーガの全身は炎で包まれた。オーガはめちゃくちゃに四肢を振り乱して炎の大蛇から逃れようともがくが、暴れるたびにその勢いは増すばかりだった。
「暴れても無駄よ! 私の術中に落ちた以上、もう逃さない! そしてこれで、トドメ!」
私が再び手を振り上げると、空中に幾本もの槍が出現して穂先をオーガに向かって揃えた。炎にのたうち苦しむオーガには、それを気にする余裕もない。
「デイアンさんの受けた苦しみ、それを――!」
あの時の光景、私を庇ってオーガの爪に引き裂かれたデイアンさんの姿。
決して脳裏から消えなかったあの一瞬に、終止符を打つべく――
「とくと思い知りなさい!」
私は手を振り下ろした。
瞬間、穂先を揃えた槍衾がオーガ目掛けて殺到する。そして未だ炎に巻かれるオーガの身体を、次々と串刺しにしていった。
――グォォォウ……!
鋭い槍の穂先が身体を貫く度、オーガが焼けた喉から絞り出すような断末魔を上げる。たくさんの槍を身体に林立させながら、オーガの目から光が消えてゆく。
ついに、オーガは立ったままがくりと首を落とした。
「や、やった……!」
オーガが無力化したのを見て、私は安堵のため息を漏らす。
幻術の力は五感を制す。現実の事象と区別出来ない幻術による苦痛は、相手の五感を必要以上に刺激して時には死に至らしめるほどのショックを与える――。
幻術士が最初に抑える基本にして決して忘れてはならない心得だ。師匠の元を巣立ったあの日、シェーナの忠告によってこの原則を強く意識したのがまだ記憶に新しい。
生き物相手に、ここまで容赦のない幻術を叩きつけたのは初めてだった。しかし、後悔はしていない。
これでこの大鐘楼は守られ、デイアンさんの意趣返しを果たすことも出来たのだから。
強敵を討ち果たし、ひとつの山場を越えたという意識に、私の気持ちが僅かに緩んだ。
……それがいけなかった。
――グガアアア!!
立ち往生を遂げたと思っていたオーガの四肢に突如力が戻る。大気を引き裂く怒号を上げ、燃えるような憤怨の目で私を射抜く。
そして、全身に幻の槍を生やしたまま、こちらに突進してきたのだ。
「うそ――っ!?」
ショック死したと見なしていたオーガが再び動き出したことに、私はすっかり動揺してしまっていた。
すぐに新たな術を使おうと身構えるが、到底間に合わない。捷疾鬼の異名を戴くオーガの速さに、私の心も身体も完全に遅れを取っている。
私が呪文を唱えようと口を開きかけた時、既に彼我の距離はワンインチもかくやという程に狭まっていた。大開きになったオーガの口から吐き出される暑い息が、私の顔にかかる。
――ああダメだ、死ぬ……。
ここから逆転出来る目は、無い。最後の最後で詰めを誤った代償を、私は受けなくてはならないのか。
恐怖は、感じなかった。ただ、無念さだけはどうしてもこみ上げる。
もう一歩、あと少しだったのに……。私しか出来ない、私の望む私だけの〈究極幻術〉まで――。
――ガファッ!?
どうしようもない現実を受け入れようとした時、急にオーガが動きを止めて仰け反った。
その胸からは、立派に鍛え上げられた刀の刀身が高々と突き出ている。
「シッスルに……私の親友に手を出すな!」
「シェーナ!」
そこには、新緑色の長髪を逆立て全身を青いオーラで包んだ彼女の姿があった。
私を切り刻もうとしていたオーガを、後ろから刺し貫いたのは、私を護ることを終生の使命と自らに任じたリョス・ヒュムの守護聖騎士だったのだ。
「シッスル、今よ!」
「っ! わかった!」
シェーナの合図を受けて、私はひっそり回収していた短刀を手に構えて、正面からオーガに突き出した。
――グファッ!?
背後からシェーナの刀を、正面から私の短刀をその身に受けたオーガが、今度こそ本当の断末魔を漏らす。
「私達は、貴様ごときに決して負けない……! さらばだ!」
オーガを貫くシェーナの刀が純白の光を発する。聖術の力を直接体内に流し込まれ、魔の眷属たるオーガの身体に光のヒビが入る。
そしてついに、オーガの全身はバラバラに砕け散り、白い光の粒子と一緒に天へ昇るかのように消えていく。
聖術の光が収まり、後には元通りの風景と生き残った私達だけが残された。
「ガハッ……! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……!」
「シェーナ、大丈夫!? しっかりして!」
力を出し切り、その場に膝をつく親友に私は急いで駆け寄った。
「はは……っ! やったわね、シッスル……!」
胸元をべったりと血で汚しながら、それでも彼女はやり遂げたと誇らしげな笑みを浮かべるのだった。
その目は、怒りに燃えながらも蔑みと侮りを含んでいた。
――さっきからつまらないちょっかいを掛けてくる小娘か。お前なんぞいつでも殺せるが、この女騎士を仕留めるまでは猶予をくれてやろうと思っていたのだ。だがもう良い、こちらの勝負はついた。望み通り、次は貴様を屠ってやろう。
……そんなオーガの想念が、視線を通して私に伝わってくるようだ。
実際、私のフィジカルではシェーナの足元にも及ばない。オーガに太刀打ちなど出来ようはずもなく、黒犬を使った連携攻撃も一度見切られている。ろくな攻撃魔法ひとつも使えない出来損ないの魔術士など後回しにしても構わないと、オーガが考えたとしても不思議ではない。
だが、そこが狙いだ。
オーガの身体がこちらに向き直るのが、やけにスローモーションに見えた。
私の放った短刀は真っ直ぐオーガの頭部に向かっているが、それが命中するとは思っていない。オーガの方も、こんな小細工たやすく叩き落とせると踏んでいるだろう。
私はもう一度シェーナに目をやった。膝をつき、前に突っ伏してもがいている痛ましい姿。その顔は当然伏せられ、私もオーガも見えていない。
だからこそ、私も遠慮せずに全力を出せる。
――シェーナ、私もやるよ。あなたみたいに、全力でこいつと戦う!
心の中で親友に告げ、私は高らかに呪文を唱えた。
「秘術――“幽幻舞踊”!」
その途端、私の投げた短刀の刃から光が迸る。オーガは咄嗟に片手で目を庇いながらも、余ったもう片方の手を振って短刀を弾いた。
だが光が収まり、再び目を開けたヤツは驚愕することになる。
自分が見ている光景が、一瞬前までとはまるで異なっているからだ。
「もうこれ以上、お前の自由にはさせない! お前とは、ここで決着をつけてやる!」
絶えず流れる川の水面、その表面にしっかりと踵を付けて立ちながら私は高らかに宣言した。
オーガが困惑したように首を回す。周囲にあるのは背の高い木々に苔むした地面、好き放題に伸びた雑草に正面を横切る河川。
誰がどう見ても、此処はさっきまで居た大鐘楼の上ではない。人の手が入っていない森の中といった趣がある場所だ。
読みが当たった。やはりオーガは、私の魔術士としての本質を見誤っていたのだ。オーガの経験からすれば、前に対峙した私の戦法は“召喚魔法と光の魔法”を織り交ぜた小手先のものと映っていた可能性が高い。
私が駆使するのが、本当は幻術だったなんて分かりようもないのだ。
今度はあの時とは違い、シェーナの顔は伏せられている。彼女を、私の幻術に巻き込む恐れはない。だから私も、今ここでは全力を出せる。
「覚悟――!」
私の意思を反映して、川面が俄に隆起する。蛇が身を起こして首をもたげるように、突き出た水柱が器用に方向を折り曲げてオーガに狙いを定める。
それに対するオーガの反応は流石に速かった。すぐさま地面を蹴ってその場を飛び退り、水柱の直撃を回避しようとする。
しかし……
――ガウッゥ!?
いつのまにか、あたりの草や蔓や木の根がオーガの足首に巻き付いて動きを封じていた。オーガは慌ててそれらを引き剥がそうともがくが、いくら力を込めて引っ張ってもびくともしない。
オーガの逃げ道は、完全に閉ざされていた。
どうしようもなく立ち往生するオーガを、巨大な水柱が無慈悲に直撃した。激流に呑み込まれて草木ごと浚われるオーガが短い悲鳴を上げるが、それも怒涛の勢いにすぐかき消される。
荒れ狂う濁流が何もかもをえぐり取って、彼方へ彼方へと押し流してゆく。時折、暗く濁った水面にオーガの必死な顔が浮き沈みするが、その頻度も徐々に少なくなってくる。
「まだまだ!」
私は指を鳴らした。すると今までの一切合切が瞬時に消え去り、濁流から解放されたオーガが大きく膝をつく。しばらく肩で息をしていたが、やがて顔を上げるときっと私を睨みつける。
そして再び、オーガは驚愕で凍りついた。
彼の周囲では、巨大な炎がとぐろを巻いて取り囲んでいたのだ。
「あの程度で斃せるなんて思っていないわ! お次は、これよ!」
振り上げた手をオーガに向かって振り下ろす。オーガを厳重に包囲していた炎の渦が、先程の川の水と同様まるで生きているかのようにその身を踊らせ、その環を狭めていく。
迫る大火から逃れんと、オーガは膝を折り曲げ全身をバネにするとその場で大きく跳躍した。今度はさっきと違い、足をとられることはない。捷疾鬼の名に相応しい身体能力を遺憾なく発揮し、炎の包囲網から逃れ出ようとする。
だが追いすがる炎の速さは、逃げるオーガの瞬発力より勝り、鞭のようにしなる炎蛇の舌がたちまちオーガの全身に絡みつく。
苦痛の呻きを上げる間もなく、オーガの全身は炎で包まれた。オーガはめちゃくちゃに四肢を振り乱して炎の大蛇から逃れようともがくが、暴れるたびにその勢いは増すばかりだった。
「暴れても無駄よ! 私の術中に落ちた以上、もう逃さない! そしてこれで、トドメ!」
私が再び手を振り上げると、空中に幾本もの槍が出現して穂先をオーガに向かって揃えた。炎にのたうち苦しむオーガには、それを気にする余裕もない。
「デイアンさんの受けた苦しみ、それを――!」
あの時の光景、私を庇ってオーガの爪に引き裂かれたデイアンさんの姿。
決して脳裏から消えなかったあの一瞬に、終止符を打つべく――
「とくと思い知りなさい!」
私は手を振り下ろした。
瞬間、穂先を揃えた槍衾がオーガ目掛けて殺到する。そして未だ炎に巻かれるオーガの身体を、次々と串刺しにしていった。
――グォォォウ……!
鋭い槍の穂先が身体を貫く度、オーガが焼けた喉から絞り出すような断末魔を上げる。たくさんの槍を身体に林立させながら、オーガの目から光が消えてゆく。
ついに、オーガは立ったままがくりと首を落とした。
「や、やった……!」
オーガが無力化したのを見て、私は安堵のため息を漏らす。
幻術の力は五感を制す。現実の事象と区別出来ない幻術による苦痛は、相手の五感を必要以上に刺激して時には死に至らしめるほどのショックを与える――。
幻術士が最初に抑える基本にして決して忘れてはならない心得だ。師匠の元を巣立ったあの日、シェーナの忠告によってこの原則を強く意識したのがまだ記憶に新しい。
生き物相手に、ここまで容赦のない幻術を叩きつけたのは初めてだった。しかし、後悔はしていない。
これでこの大鐘楼は守られ、デイアンさんの意趣返しを果たすことも出来たのだから。
強敵を討ち果たし、ひとつの山場を越えたという意識に、私の気持ちが僅かに緩んだ。
……それがいけなかった。
――グガアアア!!
立ち往生を遂げたと思っていたオーガの四肢に突如力が戻る。大気を引き裂く怒号を上げ、燃えるような憤怨の目で私を射抜く。
そして、全身に幻の槍を生やしたまま、こちらに突進してきたのだ。
「うそ――っ!?」
ショック死したと見なしていたオーガが再び動き出したことに、私はすっかり動揺してしまっていた。
すぐに新たな術を使おうと身構えるが、到底間に合わない。捷疾鬼の異名を戴くオーガの速さに、私の心も身体も完全に遅れを取っている。
私が呪文を唱えようと口を開きかけた時、既に彼我の距離はワンインチもかくやという程に狭まっていた。大開きになったオーガの口から吐き出される暑い息が、私の顔にかかる。
――ああダメだ、死ぬ……。
ここから逆転出来る目は、無い。最後の最後で詰めを誤った代償を、私は受けなくてはならないのか。
恐怖は、感じなかった。ただ、無念さだけはどうしてもこみ上げる。
もう一歩、あと少しだったのに……。私しか出来ない、私の望む私だけの〈究極幻術〉まで――。
――ガファッ!?
どうしようもない現実を受け入れようとした時、急にオーガが動きを止めて仰け反った。
その胸からは、立派に鍛え上げられた刀の刀身が高々と突き出ている。
「シッスルに……私の親友に手を出すな!」
「シェーナ!」
そこには、新緑色の長髪を逆立て全身を青いオーラで包んだ彼女の姿があった。
私を切り刻もうとしていたオーガを、後ろから刺し貫いたのは、私を護ることを終生の使命と自らに任じたリョス・ヒュムの守護聖騎士だったのだ。
「シッスル、今よ!」
「っ! わかった!」
シェーナの合図を受けて、私はひっそり回収していた短刀を手に構えて、正面からオーガに突き出した。
――グファッ!?
背後からシェーナの刀を、正面から私の短刀をその身に受けたオーガが、今度こそ本当の断末魔を漏らす。
「私達は、貴様ごときに決して負けない……! さらばだ!」
オーガを貫くシェーナの刀が純白の光を発する。聖術の力を直接体内に流し込まれ、魔の眷属たるオーガの身体に光のヒビが入る。
そしてついに、オーガの全身はバラバラに砕け散り、白い光の粒子と一緒に天へ昇るかのように消えていく。
聖術の光が収まり、後には元通りの風景と生き残った私達だけが残された。
「ガハッ……! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……!」
「シェーナ、大丈夫!? しっかりして!」
力を出し切り、その場に膝をつく親友に私は急いで駆け寄った。
「はは……っ! やったわね、シッスル……!」
胸元をべったりと血で汚しながら、それでも彼女はやり遂げたと誇らしげな笑みを浮かべるのだった。
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