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33:不法入街

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 高い石造りの塀に囲まれた、それは確かに街と呼ばれるにふさわしい場所だった。

 村人たちからの襲撃からまる4日、僕らの足でそれだけ掛かったのだから普通の人間なら一体何日掛かるのか。それだけ離れた距離に、目的の街とやらが見えて来た。

 塀の向こうには赤い屋根がひょこひょこと数個、頭を覗かせている。
 如何にもファンタジーという雰囲気に、少し心が躍った。

 「へぇ、良さそうな街ね!ちょっと観光していきましょうよ!」

 灰田さんもウキウキとした様子だ。

 『……先ずは用事を済ませてからだ……こっちだ……付いてこい……』

 死神は見えていた門の方では無く、街とは少し離れた方へと移動する。

 「ちょっと、街に入るんじゃないの?」

 灰田さんが疑問を口にすると、直ぐに死神が答える。

 『……我が正面から入れる筈なかろう……大騒ぎになる……塀の横手から入るぞ……』
 「裏口でもあるの?」
 『……そんなものは必要ない……』
 「?」

 少し歩いて人目のない場所まで移動した。

 『……ここから入るぞ……』
 「入るって―――どうやって?」

 そこには確かに裏口などなく、周囲と変わらず塀がそびえ立っている。塀の高さは5メートルはあるだろうか、かなり立派なものだ。

 『……決まっている……こうだ……』

 死神は言うと、その場でジャンプし、垂直飛びでその5メートルはあろうかという塀の上に飛び乗った。

 『……ここの向こう側は私有地でな……我の馴染みの店の土地だ……だから見つかっても問題ない……ほら……さっさと来い……』

 見ると灰田さんは躊躇っているようだ。
 それはそうか。不法入国ならぬ不法入街だ。門には兵士みたいな人もいたから本来なら街に入るのには許可が必要なのだろう。灰田さんが躊躇う気持ちも分かる。

 「いや、さっさと来いとか言われても。こんな高さ飛べるわけないでしょ」

 違った。飛び越えられないと思っているだけの様だ。

 『……阿呆が……あの速度で走れる人間が……この程度の高さ飛び越えれぬわけが無かろう……良いから……さっさと飛べ……』
 「私、垂直飛びの記録、確か40cmとかそのぐらいだったんだけど……」
 『多分飛べると思うよ?それじゃ、お先に』

 僕は灰田さんに先んじてジャンプする。
 少し目測を誤り飛び過ぎてしまった。8メートルぐらいは飛んだだろうか?
 塀に結構な奥行きがあり、塀を飛び越えることは避けれた。

 『おっとっと―――ね?僕でも出来るし、灰田さんも出来るよ』
 「そ、そうね」

 灰田さんは覚悟を決めて、勢いをつける為に膝を曲げた。

 ……ちなみに、僕の垂直飛びの記録は33cmだったことは黙っておく。
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