瞳に映るものは

俺は

｢俺は…、まだはっきりとした夢はないかな。｣

｢そうなんだ。やりたいこととかないの？｣

｢やりたいことか。強いて言うなら、誰かを笑顔にしてやりたい。｣

｢それも立派な夢だよ。俺のやりたいことと似てるしな。叶えられるといいな。｣

俺には出来るのだろうか。

そんな不安に駆られていた。

｢お前なら大丈夫だって。お前は俺のことも笑顔にしてくれてるんだから。きっと大丈夫。｣

なんでだろう。こいつの言葉を聞くと自然と勇気が湧いてくる。

俺なら大丈夫。って思えるようになるんだ。

｢…ありがとう。俺、頑張るわ。｣

｢うん。それでこそ蓮だ。その顔の方が百倍いいよ。｣

俺は知らずのうちに笑顔になっていた。



お前の方こそ、人を笑顔にできる。

だから、お互い夢を叶えような。



そう、言葉を交わした。

俺達には明るくて希望で満ち溢れてる未来が来る。

そう信じていた。

なのに…。

｢本郷さん。よく聞いてください。あなたの病気はかなり進行しています。このまま行くと…｣

そのあたりから、俺の記憶はない。

だってそうだろ。

ついこの間あいつと。あいつと、夢を語って未来を見たのに。

俺には未来を見る権利なんてないのか。

冷静にいられなくなった俺は、あいつの優しい言葉も、笑顔も醜く感じた。

｢あ、蓮！どーだった？先生はなんて？｣

｢うるせーよ。｣

｢…え？｣

｢うるさいって言ってんだよ！…俺にもう話しかけんな。｣

あの時の隼人の顔は、絶望にも似た顔をしていた。