転 神 ~ 人類の系譜・日本神話 編 ~

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第 十九 話 平穏な日々?

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壱 戻れない、平凡な時の流れ

 如月の月の蜘蛛神との決戦からもう三ヶ月も経っちまったぜ。色々な異種族と協力し合い完全じゃないけど八岐大蛇ってヤツの復活を抑えることが出来た。
 どうしてかって?ずっと昔この地に神様が降り立った時、神器と言う物を持って一緒に現れたみたいで其れが持つ力、すべての邪悪を祓う力が蟒蛇の蘇りを封じたんだとさ。
 本当は三つの神器を使ってこの国全体を覆う大きな守護結界を張って蟒蛇を封印するついでに瘴気をすべて浄化させるはずだったんだけど、完成させるために一つだけ道具が足りなくそれは未完成のままだった。 一度は皆も聞いたことがあるような宝剣、草薙の剣、あめのなんたらって難しい漢字で書くあれさ。
 完全じゃない封印のせいでいまだ魑魅魍魎はうろついている。武甕槌、天国津たちの力はいまだに俺達の中に居てくれている。だから、国の復興なんってそんなでっかい事は国の御偉いさん方に降りた神々に任せて、俺達学生は詠華さんと琢磨さんの指示通り、あやかし退治をする日々が続いていた。
 普通に生きる人からは俺達の送る日々は異常なほど常識から掛け離れた非現実のような世界。でも、もう俺達にとってはそれは普通に生きて行く当たり前の日常と変わっていた。だけど、こうなってしまった事に殆どの連中は後悔していない。いや、もしかすると全員かな?
 そして、今は経司も大地も・・・、俺は留年してしまうほど成績が悪かったんだけどそこは校長先生のお力により有難く三年生にさせてもらっていた。 
 俺達の担任は岸峰椿先生。其れと学級男女三十六人、全員天国津だ。化け物事件が発生したら学級全体で早退する組・・・、非常識甚だしいぜ。
 卒業してしまった照神先輩は現在、東京府内の超有名一流大学に通っている。内の姉ちゃんもそこに受験で合格して一緒に通っているみたいだった。なんで一緒の大学を選んだのか俺は全然知らないけど経司の話によると何かを何かから監視、保護をするためらしい。まったく持って理解不明な行動だぜ。
「フアァ~~~~~~、眠い、眠い」と今日までの出来事を頭の中で纏めつつ欠伸をしていた。
「鹿嶋君、わたくしの授業でもう居眠りをさせませんわよ。確りと目を開けて受けてください」
 岸峰先生は眼鏡越しに鋭い視線を俺に向けていた。だがずるいぜ、一番前の席に居る大地は堂々と其れをしているくせに注意する事は無いんだ。もしかすると若しかして大地と先生は出来てんじゃないのかと勘繰るってしまうがそれは有り得ない・・・、多分。
 どうせ、〝大地の野郎は寝てるのにオレは駄目なんですか〟なんて口に出して言っても余計にお叱りを受けるだけ、みんなに笑われるだけだから気の無い返事を返していた。
 そんな俺の不真面目な態度に呆れる岸峰先生、俺の隣で可愛らしく笑う那波ちゃん、授業に対してだけはマジメっぷりを見せる勇輔は俺に文句を口にし、経司はヤツの趣味の本に没頭、それに他の学級の連中だって好き勝手やっているくせに何でこの俺だけが・・・、不公平だ。
「なんですか?鹿嶋君。そのアナタだけ特別扱いされていません、というお顔は?」
「だってそうじゃないっすかぁ~~~、俺が一番苦労してんのにぃ~~~」
 俺が情け無い声でそんな風に答えると先生の表情が険しくなる。
「・・・、そうなんですか・・・どうして・・・はい、わかりました。皆さん、物の怪がまた異常発生してしまったようです。現場をお伝えしますので所定の班でそちらへと急行してください」
 先生は化け物たちが現れた複数の場所を俺達に伝えてきた。
「其れでは私のこの授業は此れにて休講です。・・・はぁ」
 授業を潰された事が悔しいんだろうな、先生のとっても残念そうな表情、其れを見て心の中で苦笑してしまう。大抵、俺達が学級早退をするのは岸峰先生が講義を行っている時が多く、最終学年になって二ヶ月とちょい、いまだ一度もまともに授業が終わった事はない。
「武さん、ぼさっとしていないで行きましょう」
 那波ちゃんに言われて俺は行動を起す。いまだ周りの騒ぎに気付かない大地を叩き起こし、経司と勇輔を連れて宮城県、松島の方に出向した。
 学級の中で最強部隊とされている俺達五人、その俺達が向かう場所が一番大変な場所なのは言うまでも無い。
 その場に到着すると名所と呼ばれているその場所が・・・、見るも無残に魑魅魍魎に埋め尽くされてた。
「俺達こんなところで戦ったら絶景が失景に変わっちまうぜ、いいのか?」
「武君、そんなコト心配ないよ。後で琢磨様や博志様に頼めば簡単に元通りさ。もしかすると今以上のいい景色に変わるかもよ?」
「武さんもお兄様もその様なコトを心配している場合じゃありません。早く・・・」
「無駄なお喋りは終わりだ。さっさと片付けて学校へ還るぞ」
「はぁあん?なにマジメなこと言ってやがる。戦いが終わったら観光に決まってんじゃねえか。か・ん・こ・うだっ!児屋根、上手いもん食いに行こうな」
〈ハイ、大地様。ですから直ぐに終わりにして差し上げましょうね〉
 俺達はそんな平凡?な会話を交えながらも十握剣を手に魍魎祓いを開始していた。いつもの事だけど俺が出現させる剣にみんな一笑してから戦いは始まる。
 ださい形のその剣を武甕槌と会話を交えながら戦う俺。
 今も矢張り、真剣を媒体に十握剣を作って其れを振るう経司。だけど、俺が陽久との対戦時見せた二刀流を真似るように今は持つ刀が二振りだった。剣術に対しては俺にいまだ対抗意識を燃やしていやがる。
 那波ちゃんが手にする十握剣の刀身が一番長い。俺や経司と違って別に剣術とか習ったことの無いはずの彼女。でもその動きは達神の域だった。流石は建御名方の神の生まれ変わりって奴か?
 勇輔は今日も何かを神憑りさせていたようだ。今回も少しばかり巨大化していて〝巍巌鎚須ギガンテス〟って言葉を呟いていた。剣を握っているけど何故か其れよりもこぶしの方を多く振り回していた。
 大地の奴は俺達の力を強める祝詞を謳うと同時に全体に攻撃を加えるような神降ろしの其れも歌っていた。たまに直接、十握剣で攻める事もしばしば。だけど一度に浄化できる瘴気は精々十体程度。神降ろしの力とは大きな力の開きがあるようだった。
 俺達五人は今の時代の宮城県の総人口のそれ以上多い瘴気に取り憑かれたモノ共を約一時間と少々かけて祓い除去していた。海岸沿いだっただけにとんでもなくでかい廃棄物に取り付いていた物の怪もあった。それはいつの時代の物だか分からないけど大型輸送船。
 憑依する媒体が大きければ、大きいほどにその中に入り込む瘴気の量は多くなる。そして、その分強くもなるんだ。だから、其奴はかなり強敵で戦いの中の半分くらいはそいつとの戦闘だったぜ。
 其れが最後の相手で悪霊掃除が終了した頃は丁度お昼時でもあった。
「よっしゃぁ~~~ッ、ぁあぁ~、終わった、終わったぁ、飯食い行くぞ。いざ米の都仙台へ」
 大地の奴は嬉しそうに残りの神気を放出しながら神速移動で先にその街に行ってしまった。そして、其れを苦笑しながら追う俺達四人。
 情報通の大地、その親友の案内で美味い場所で昼食を取ってからまた別の飲食店に入っていた。その食べ物屋さんとは甘味処ってやつさ。
 俺達五人の中で甘い物が嫌いって奴は一人もいない。女の子の那波ちゃんは偏見なのかも知れないけどやっぱりそういった物が好きみたいだ。
 しかし・・・、流石は兄妹と言うべきなのか勇輔の奴も那波ちゃんと同じくらい、それともそれ以上か?十数分前に昼食を食べたばかりなのに三人前くらい注文していた。
 其れを表情を子供の笑顔のように綻ばせ嬉しそうに頬張る勇輔を俺は抹茶最中アイスを食べながら呆れて見ていた。でも、そんな無邪気な勇輔の顔も、こいつ好きの女の子達はきゃぁ、きゃー言いながら喜ぶんだろうな。
「武さん、ここの特製餡蜜とても美味しいですよ。たべてみます?・・・はい、どうぞ」
 那波ちゃんはそう言って長めのさじに其れを乗せニッコリとしながら俺の方に向けていた。別に断る理由もなかったから其れを口の中に運んでいた。・・・・・・、しかし、その行動は致命的な間違った選択だったのかもしれない。
『パシュゥッ☆』
「よしっ、よしまた武の秘密、一つ握ってやった、クックック」
「牧岡、あとでそのTCDのデータ俺にもよこせ。美姫さんに見せてやる」
「フッフッフッ、武君。那波との間接のお味のキ・・・、ウグッ」
 勇輔がとんでもない事を口にしようとしたとき俺はとっても怖い光景を目のあたりにする。それは那波ちゃんが悲鳴を上げないように勇輔の口を手で押さえ、ヤツの指一本を意識して曲げる事は出来ない方向に折っていた。俺のコメカミと額からは行く筋も脂汗が流れる。
「・・・、ワッ、私とした事が武さんの前で・・・・・・、勇輔お兄様のせいですからね。お兄様が変な事を口にするから・・・、武さんに・・・」

*TCD=TCDカメラ(Thin Card Digital Camera)の略でこの時代の名刺サイズで厚さ3㎜弱の超薄型デジタルカメラの事で携帯情報端末搭載カメラよりもはるかに扱いやすく高機能。
「ナッ・・・、那波ちゃん。大丈夫、俺何も見て無いから。大丈夫、大丈夫、そのくらいで嫌いになったりしないぜ」
 俺のその言葉を聞いて彼女は安堵の笑みを浮かべるが直ぐにもう一度、勇輔の方を向いて睨んでいた。そんな諏訪兄妹を静かに笑いながら眺める経司とゲラゲラと笑う大地だった。だがしかし、照神先輩は目が見えないから良いとして美姫姉ちゃんや詠華さんにさっきのあれの写真を見られたら・・・、ウッ、嫌だ、想像したくない。今よりも、酷い光景を想像して、青ざめた表情に成り掛ける俺。だが、何とかそうならないように努力した。
 何とか大地からさっきの写真の画像データーを奪わないと。
〈武、伝えておくが私はただの戦う力しか持たぬ武人だぞ。大地の其れを消去して呉などと言う力はない〉と俺の中の神様が俺が願おうとしていた事を拒否してきやがった。
 大地と戦えば簡単に力で屈服させてやる事も可能だけどそんな事のために武甕槌の力を使う事は許されるはずも無いし、若し大地なんかと喧嘩してそんな力を使った、って詠華さんに知られたら天照大神としての彼女から相当厳しいお叱りを受けそうなので結局、俺は大地に何も出来なかった。できた事といえば言葉で忠告するくらい。
「オイッ、大地。頼むから経司にそのデータを渡さないでくれ。其れと姉ちゃんにも先輩にも詠華さんにも絶対秘密にしてくれよ」
「ソリャァ~~~、これからのお前の態度しだいだぜ。なぁっ、相棒!」
 満足そうなえ顔を造って嫌味たっぷりな言葉でそう口にする大地の奴であった。
 
弐 経司とその妹、麻緒

 武達は優等生な経司と性格の一部に問題があるものの矢張り優等生の部類に入る勇輔に連れられ学校へ残り授業を受ける為に戻されていた。彼等以外戻ってきた学級の生徒と一緒に午後の授業を受け、其れが終わると部活に所属しているものは其れに参加していたようだった。
 そうで無い者達はまとまって関東近辺の治安維持をするためにその周囲を循環しに出かけて行く。受験の学年で有る事を全く意識していないのか、皆当たり前のように行動していた。
 去年、冬の全国高校サッカー大会で優勝を勝ち取っていた靖華城学院。二連覇を獲得するために大地と武は受験の事など頭の中から其方退けにしてクラブ活動に力を入れていた。
 しかし、先週の全日本剣道連盟大会で個人団体、その両方の頂点を手にしていた経司は新しい部長を決定するとすべてをその人物に任せ、すぐに引退してしまった。そして、今彼は独りあやかし退治へと出かけて行く。
「矢張り守護結界が未完成な所為で・・・、いや違うな、不完全だからこそ、その反発で瘴気が漂うのか・・・。まあ、いい。魑魅魍魎が出たら人、人間に被害が出る前に滅すれば良いだけの事。経津主、オレが生きている限り、その間ずっとお前の力を貸してくれ。ずっと俺の中に居てくれ」
〈経司殿・・・、それは・・・〉
「すまないな、ただのオレのわがままだ。気にするな。だが、今は・・・、今しばらくはどんな事があっても俺の中から消えないでくれ」
〈心得ております。・・・、それより向かいましょう戦地へ〉
 経司は内なる神のその声で漂う瘴気の波を辿り、兵庫県の播磨平野と昔、平野と呼ばれていた場所へと降り立った。何故現在、平野と呼ばれないのか?その理由はその言葉とは違う地形へと変化していたからだ。第三次世界大戦の大きな傷痕。核兵器とはまったく異質の武器、シューティング・スターと呼ばれる其れによって、その地形は大凡に二百七十五平方キロメートル日本第二番目の湖になっていた。
「フンッ、本当にここは平野だったのか?・・・、しかし、ここもいずれ大国主や少彦名それと天津の自然を司る者達が元通りにしてくれるだろうな。経津主、戦うぞ」
〈ええ、分かっていますよ、経司殿〉
 経司は二本の刀を同時に鞘を持たずして抜く。そう出来るように鞘を工夫して身に着けていた。彼の二刀流から放たれる神技は一刀の何倍以上もの力を発揮していた。
 彼は武と違って殆どその剣技名を口にすることがなかった。ただ、大きな気合と共にその技を揮うのみ。
 夕暮れを背に赤に映える漆黒の学生服。詰襟の鉤を崩していないのは彼、経司の性格を如実に表していた。一糸乱れない正鵠を射る動きで、確実に相手を倒す経司。
 何手も先を読む冷静な判断力、精確無双な漸撃、多くの経験を積んだ者だけが得られる強い闘争心と気迫。それらの力を出し惜しみせず、全力を持って敵を叩き伏せる経司。
 彼が敵に見せるぞっとする様な鋭く冷徹な視線と表情。だが、そんな彼の表情でも見る者が見れば心奪われるかもしれないその様な整った雰囲気を顔に出していた。
 だが、今ここに彼しか居ない。故、彼の外見の評価など無意味だった。
 ただ、彼の戦う勇姿だけを語れば良いだけの事。
 刀神、経津主に選ばれた経司の剣技の斬れは多々有る褒め言葉で表すことは難しい程、秀逸。
 見せるためのものではないが剣技を絶えず工夫し、最も効率のよい動きを模索する彼。経司自身意識はしていないが、その動き、一刀一刀を振りぬく様は雅、端麗さは芸術と言っていい。
 神気が纏う刀身が相手に向かって空を奔るその経司の姿、一コマ一コマが極めて完成された絵画の一品とも芸術写真とも思える位、戦いの空間に映えていた。「クッ、まだ半分近くいるな・・・、此れが今まで人がしてきた業、罪の現われか・・・、厄介なものだな。これから先の将来にはこんな物共に出てきて貰いたくないものだ」
 経司が愚痴をこぼしながら再び刀に力を込めて神技を放とうとした時、一つの影が現れた。彼の吐く息、その度毎に、多くの瘴気が浄化されて逝く。どれだけ多くの憑き物を祓った頃だろうか、冷静だった彼の表情が、微妙に苛立っていた。
「あれ?若しかしてケイ君?経君一人だけなのね」
「美姫さん、どうして?もうあなたは戦わなくても良いのに・・・」
「経君?その様なこと誰が決めたのですか?大きな結界が出来ているはずなのにいまだにあれ等はその数を減らしてはくれないわ。武や経君、他の人たち、それに八坂さんが戦っているのに私だけ戦わないなんって・・・・・・、経君が私の事を心配してくれるのは分かるの。でもね、私だって経君や武が戦いで怪我をするのなんって嫌。だから、その可能性を出来るだけ少なくするために戦っているのよ、私は」
「美姫さん・・・、分かりました。だが、無理はしないでください」
「けい君、ありがとう。でも、それは貴方もよ」
 彼女と彼はそんな会話を交わしながらも魑魅と魍魎を討つ。美姫には戦って欲しくないと思う経司にとって彼女の到来は嬉しいものではなかった。だが、その逆の気持ちでもある。
 故に美姫が来た事により、普通以上に張り切る経司がそこにいた。そして、化け物退治が思っていた以上に早く終わる。
「ふぅ~~~、何とか片付いた。・・・、美姫さん、直ぐに帰ってしまうのですか?」
「そんなコト無いわ、夕食の準備は既にやってきてあるし・・・、特に急ぐ必要はありません。其れがどうかしたのかしら経君?」
「えぇえとですね、ちょっと神戸に買い物に行きたいんだが何を選んでいいのか分からなくて・・・、付き合ってくれないですか?」
「別に構いませんよ。何を買う積りなの経君?その口ぶりだと・・・、アッ、もしかして麻緒ちゃんにお土産か何か?今日は・・・」
「えっ、あぁっ、はいそんなところです」
 経司のその言葉に微笑む美姫。辺りは暗かったが其れを見る彼の頬は赤くなっていた。
 真緒を実の妹のように慕う美姫にとって、彼が妹に向けるの心の変化は純粋にうれしいものだった。故、経司の予想以上に嬉しがっている美姫は無視意識に彼の手を取り先行しようと動き出し、無理に表面は冷静になっている経司の内心はかなりしどろもどろでどのように対応してよいのか、焦っていた。それでも結局、美姫の手を緩やかに握り、彼女の行動に従う経司。
 それから都市として確りと機能を回復させている神戸市の繁華街に二人は向かっていた。
 数世紀前から西日本地区大都市の冠を授かっていた大阪を退け、町並みの華やかさも第三次大戦以降、精力的に復興を見せた神戸。
 二人はその町の中に違和感なく駅の付近に降り立ち、普通に人ごみの中に溶け込んでいた。
 東京都は違う街並みを楽しむ様に眺める美姫。度々、その姿を少し横目で嬉恥ずかしそうに窺う経司。不意に経司のほうを振り向く美姫に顔を紅くした経司はすぐに明後日に顔を向け、自分の行動が彼女に気づかれないような仕草をとっていた。
 彼のその行動に小さな笑い声を立て微笑む美姫。からかわれていると思った経司は余計に表情を紅くしていた。
 他者から見たら、二人のやり取りも、恋人同士に見えなくはない。だが、美姫にとって弟、武同様、経司を可愛い弟、年下の幼馴染としか思っていない。
 あらゆる美姫の行動に恋愛感情などという物は含まれていなかった。自然な経司への接し方だった。其れを知るが故に経司は彼女の仕草に色々と思い悩む。
 日常的な話題を話しながら、概ね三十分、街路を歩き目的の店に辿り着いた。
 美姫にとっても次にいつ訪れることが出来るか分からない場所。そのような理由で、彼女はあれこれ見回り必要以上に時間を費やしてしまう。
 どのくらいの割合の男が女性の買い物の時間の長さに耐えられるのだろうか、そんな統計はない。経司はそういった意味で忍耐力はない方だ。だが、苛立ちそうな心境も彼女と長く二人で居られること、普段見られない彼女の仕草を観れることで何とか平静を維持し続ける。
繁華街にある一番大きな店で経司は美姫の見繕いで選んだ品物、抱えたら前が見えなくなってしまいそうな物を買って其れを背負いその場で彼女に礼と別れを告げると自宅へと帰省。
 自宅玄関前に降り立つと経司は腕時計で時間を確かめた。予想以上に時間を費やしてしまい、妹に寂しい思いをさせてしまったのではと大きなため息を吐く。
 軽く息を吐き、表情を整え、普段どおりに帰宅のあいさつを声に出し、玄関を開けた。「ただいま・・・」
 経司は玄関外に妹の為に買ってきたものを隠す様に置くと帰宅の挨拶を家の中に向けていた。兄を出迎える妹の表情に帰りが遅かったことに不満を訴える様子はなく、とても元気なものだった。そんな妹の顔を見た兄は表面は冷静を装い、内心、胸を撫で下ろし安堵する。
「アッ、経司お兄ちゃん、おかえりなさぁ~~~い。ご飯まだ食べていないんでしょう?麻緒がお兄ちゃんのために今日も一生懸命作ったの。一緒に食べよォ~~~」
「食べないでまっていたのか、こんな時間まで?・・・、父さん、それと亜由美さんは?」
「今日もお仕事・・・、帰りは遅いからって・・・しょうがないよ、今も病院一杯に患者さんがいるんだもん。人でぶそくだぁ~~~ってパパもママも愚痴をこぼしてた」
「まったく父さんも、亜由美さんも今日は何の日か忘れているのか」
「どうしたの?経司お兄ちゃん」
「いや、なんでもない。それより、麻緒十一歳の誕生日おめでとう。これお前にプレゼントだ。小さいがケーキも買って来てある」
 経司はそう言って玄関外からそれを取り出して渡していた。しかも透明な包装紙だったのでその中身が何であるのか分かるようになっていた。
「とってもおおきなテディイーちゃん?これ麻緒に?」
 兄の突然の行動に、キョトンとする妹、不思議そうな表情とどう感情表現していいのか分からず、声が棒状態になる麻緒。彼女の対応に僅かに顔を不安げにする経司は、
「将か、自分の誕生日を忘れた訳じゃないだろう?美姫さんに選んでもらったんだけど気にいってくれなかったか?」
 兄に誕生日の事を言われなくても今日がその日である事を理解していた。しかし、誰も祝ってくれないだろうとそんな風に思い、今日はその様な日ではないと記憶から閉じていた彼女にとって予想外の出来事だった。だが、現実は彼女を祝福する。 嬉しさの心の波が溢れ、麻緒の感情の堰が切れる。
「そんな事ないよ、全然そんなコト無いの。麻緒スッゴクうれしい。有難う、経司お兄ちゃん。うぐっ、ひくっ、ふううぅ~~~んっ」
 経司の妹はプレゼントを脇にどけ兄に抱きつき可愛らしく嗚咽をしていた。
「おっ、麻緒?何で泣くんだ。うれしいんだろう?どうして泣く」
「きまってるよぉ~~~、うれしいから麻緒は泣くんです。だって、だってお兄ちゃん、麻緒の誕生日ちゃんと知っていてくれたんだもん。初めて麻緒にプレゼントしてくれたんだもん。だから、とっても、とっても嬉しいのぉ。・・・・・・、経司おにいちゃんは嬉し泣きとかしないのぉ?」
「そんなコトした事も無い。その前に・・・泣いた記憶など無い」
 そう、経司が言葉に出したように彼は今まで一度も感情的に泣いた事など無かった。それは彼の母親が亡くなった時ですらも。
「駄目だよ、そんなの。あのね、経司お兄ちゃん?泣きたい時には泣かないと心が駄目になっちゃうんだって亜由美ママが言っていたの。だからお兄ちゃんもそうしたい時はそうした方がいいの」
「だが、今は俺にとってそんな時ではない様だ。だからそんなもの流さないぞ。・・・、其れよりも夕食にしよう。せっかく麻緒が作ってくれた物だ、暖かい内に食べたい」
 今の状況を取り繕う手段として経司がそう言うと麻緒は泣き止み、涙を拭き兄の手を取ってプレゼントされた物を引き摺らないように片方の手で一生懸命に担ぎながらダイニングに向かおうとしたが・・・、
矢張りそんなコトは出来ず、其のぬいぐるみに何か一言声を掛けてから彼と一緒にその部屋に着いてから急いで玄関口まで戻り其れを抱えて彼女の座る席の隣に巨大熊のぬいぐるみを座らせていた。
 経司は箱からケーキを取り出し、それにロウソクを立て、火をつけると部屋の照明電源を下ろした。
 十一本の蝋燭に揺らめく炎。それを眺める二つの顔。麻緒の表情は燈る火よりも、明るいように経司には思えた。
 そして、そのように感じる事ができるようになった自己の変化に戸惑いを感じつつ、麻緒に蝋燭の炎を消すように促す経司。
 兄ににっこりと感謝の意をこめつつ微笑んでから大きく頬を膨らませ、一息で消そうと努力する妹。だが、数本いたずらに笑い踊るように揺れ残る。麻緒ははにかみもう一度、残りの蝋燭に息を吹きかけた。
 それから其れが終わると再び、明かりをつけ二人で夕食を食べ始める。
「経司お兄ちゃん美味しい?」
「上達したな、麻緒。とても美味しく出来てる」
「麻緒、お兄ちゃんのために一生懸命頑張って覚えたもん。亜由美ママがね、ちゃんとノートにレシピを書いてくれているから絶対間違わないの」
「そうか・・・・・・、亜由美さんが・・・」
「あのね、麻緒、おにいちゃんにお願いがあるの。聞いてくれる?」
「なんだ?俺にできる事なのか?」
「もっとパパと仲良くしてほしいの、それとね、麻緒のばかりじゃなくてママが作るのもちゃんと食べてあげて欲しいの・・・、駄目?」
「わかった、麻緒が普通に良い子にしていてくれば何とか頑張ってみる」
「うん、麻緒はね、経司おにいちゃんのために一杯良い子にしている。勉強だってスポーツだってなんだって頑張っちゃうの。学級の誰にも負けないくらいに成るから」
「そうなってくれるのは兄として鼻は高いが無理はしてくれるな」
「はぁ~~~いッ!」
 歳の離れた香取兄妹、その二人は夕食を取りながら年齢的隙間のある話を麻緒から経司にするため大きく話が食い違う。しかし、二人共とても楽しそうであった。
「ご馳走様。麻緒、本当に美味しかった」
「お粗末様なの。経司お兄ちゃん、これからお風呂に入るの?」
「エッ、ああ、そうだが其れがどうかしたのか?」
「決まってるの。麻緒も一緒に入るの」
「バッ、馬鹿を言っているんじゃない。何が決まっているというのだ?まったく歳を考えなさい。今日一歳、増えたばかりだろう?駄目に決まっている、そんなコトと。駄目だ、絶対駄目だぞ」
「歳なんって関係ないよぉ。いやァ~ッ、麻緒は経司お兄ちゃんと一緒にお風呂入るのォ~~~」
「だから駄目だって言ったろうが」
「うぅ~~~、嫌、いやぁ。一緒に入ってくれないと麻緒ぐれちゃうの。タバコすっちゃうよぉ~~~、危ないお薬飲んじゃうのぉ~~~、麻緒がそうなってもいいの?経司お兄ちゃん」
「クッ、またこのパターンか・・・頼む、経津主何とかしてくれ」
〈経司殿、何を言っているのか私は理解できません。何を迷っているのですか?迷う事はありません私の意志は経司殿の意志、経司殿の心は私の心です。さぁ~~~、麻緒殿に・・・〉
「おのいちゃぁ~~~ん、麻緒のこと嫌いなのぉ?グスンッ」
「あぁあぁ、わかった。だからそんな顔を俺に見せるな。一緒に入るから・・・」
「ホント、経司お兄ちゃん大好きなの。・・・・・・それじゃ、麻緒お片付けしてからそっち行くから其れが終わるまで絶対お風呂から出ちゃ嫌なの」
「それとね、麻緒がお背中流してあげるから其れも待っていて欲しいの」
「早く来ないと上がってしまうぞ」
「うぅ~~~ん、やっぱりお皿を洗うのはあとォ~~~」
 麻緒は直ぐに行動を変更して経司を引っ張って浴室へと向かっていった。経司はこれからもこうやって妹に我侭を言われながらそれに逆らえず其れを甘やかし何年も先に進むのだろうか?
 彼は一抹の不安を感じながら脱衣所で服を脱ぎながら既に下着にブラを付け始めた妹の後姿を表現にし難いくらい悩ましい表情を浮かべ、とても大きく、非常に重そうな溜息を吐きながら眺めていたのであった。
 そんな彼の姿が鏡に映って麻緒には見えていた。そんな兄の姿に彼女は鏡の中に向かってニッコリと悪戯に微笑んでいた。その時の彼女心境を経司が理解できるはずも無く・・・・・・、二人は風呂場へと足を踏み入れていたのであった。
 
参 超人気歌姫、その実態

 武は今、詠華の誘いで親友二人を連れ北海道函館市のコンサート会場まで足を運んでいた。会場の人の群れ、混雑具合の異常さは彼女の人気の並外れた凄さを物語っている。観客の声援や盛り上がりから発せられる熱気が局地的に気温を真夏日よりも昇らせていた。その様な環境下の武や大地達はと言うと・・・。
「なんだ?武、周りみたいにもっとはしゃげよ。のりわるいやっちゃなぁ~~~、チッ!香取はこういうのホントは嫌いなくせにまんざらじゃねえって感じだし」
「俺は何とか雰囲気を合わせてやれるが。牧岡、お前とコイツを一緒にするな。・・・・・・、武、せっかくの彼女から直接の誘いだがつまらないんだったら平潟マネージャ、彼女に適当な理由でも告げて帰るか?」
「そんなコト無い。・・・、ただ、やっぱ詠華さんの人気ってすごいんだなって圧倒されてた、だけだぜ・・・、それにオレ歌とかあまり興味ないけど詠華さんの歌は聴いているなんだかとても安らぐって言うか・・・」
 詠華さんが初出演してもう五年位になるらしいぜ。だけど、その人気はいまだ上昇中。新しい曲を出せばミリオンどころじゃなくテンミリオンセラーだ。しかも何処かの音楽プロデューサーがそれを作るんじゃなくて詠華さん自身が旋律も歌詞も作っているって大地が教えてくれた。
 其奴に今まで彼女が出した曲を聞かせてもらったけど詠華さんの才能の凄さを納得。それに関係ない話だけど詠華さんこんな活動しながらも実は受験で現在、日本で一番入学試験が難しいところの大学に合格していた。でも、頭のよさなら照神先輩の方が上の様だった・・・・・・。莫迦な俺にとっては雲の上のような話だぜ。
 話を戻して、っと・・・。公演会場の最前列真正面に居る俺達、周囲を確認すると物騒な世の中とか簡単な言葉で表す事の出来ない昨今の日本と言うこの国、その各地から詠華さんのこの公演会を聴きたくて、彼女を見たくて何万人と詰め掛けている信者が箱詰めの様にぎっしりと会場に集まっていた。
 年齢幅も凄い、俺の半分にも満たないお子様から四、五倍は生きている爺ちゃん、婆ちゃんまで・・・、しかも年寄り連中はオレよりも元気で騒がしく〝えぇかさぁ~~~ん!〟や〝ヒィ~~~子ちゃん〟とか恥ずかしげも無く叫びながら手に持っている物を振りかざしていた。
 ある意味、信者?ファンの男女比率は女の方が多いみたいだぜ。やっぱそれは今の日本で女より男の方が少ないからだろうか?・・・、そんな事はどうでも良いんだけど。
 芸能通の大地の話だと天照大神を降ろす前の詠華さんの全国支持率はなんと六割強らしい。・・・やっぱりそれは彼女がその神様の正当な適格者だったせいなのだろうか定かじゃない。
 だけど、現在調査中の大地の新しい其れによると人気は更に上がっているとのことらしいぜ。・・・もっ、もしやぁーッ、詠華さん、アナタは天照の力を使って歌や女の子としての魅力を使って人々を洗脳しているのか・・・、って詠華さんに限ってそんなコトは無いはずだ・・・、多分。
「なあ、武甕槌、詠華さん・・・、いや、天照大神様ってそんなコトしないよな?」
〈武・・・、私にも主がいったい何をお考えなのか分からぬ。その様なこと聴かずとも分かっておろう。だが、汝が詠華を信じるように私も遣えるべき主のやる事を信じている。我々ただそれに従うのみ〉
 俺の中に宿る神様とそんな会話を交えてから直ぐにまた、熱狂的な観客のやる事なんって無視して詠華さんのなんとも心地のよい歌声を耳にしていた。
 本当は・・・、実は俺、知っていたんだ。詠華さんが何で今この状況で各地方を回りライヴ・ショーをするのかって言うのを。彼女の神気を乗せた声には特殊な力があって、それを歌にして人々に聴かせる事で瘴気から取り憑かれないようにしたり、魑魅魍魎に襲われない様にしてたりしていたんだぜ。とそんな訳で詠華さんのライヴ・ショーに来る連中には彼女の生の姿を見れる事、ナマの歌声を聴ける事だけじゃなくてそんな有難いご利益りやくもあった。
 それはさておき、たまに詠華さんが歌の振りで体を移動して顔を動かす時・・・・・・、何故かオレの方を向いてニッコリと微笑む。更に手だって振っていやがるぜ。・・・そんな風に見えるのは俺の自意識過剰なのか、それとも本当に詠華さんが意識してそんな事をやっているのか知らないけどその度に勘違いしている俺の周りに居る連中が老若男女関係なしに嬉しさの余り卒倒したり、余計に騒ぎ立てる。
 そのつど都度、俺は小さく溜息を吐き、両隣に居る経司と大地はそんな顔をする俺を馬鹿にするように笑ってくれる。
 最後は詠華さんの新曲〝シン・アイ(神愛)〟で締めくくられた。しかし、タイトルが何ともいえないぜ。そして、其れが終わると俺達三人は平潟さんに連れられ詠華さんが戻る前の彼女の控え室に通されていた。
 その場所で数分待つと俺達の主神がご満悦の笑みで現れる。だが、何故彼女がそんな表情を作っているのか俺に知る事は出来ない。
「武さん、それと大地さんも経司さんも私の歌をちゃんと聴きに来てくださったんですね」
「詠華さん、これそこら辺に並べている奴なんかより凄く安もんだけど・・・」
「そんなことないです。他の方々からお花を頂くより詠華は武さんから戴けます方がとてもうれしいです。有難う御座いますね、武さん。ポッ♡」
「うわっ、詠華さん、何するんですか!そんなコトはしちゃ駄目っすよ」
『カシュッ☆!パシッ※』
「クックック、此れでまた一つ武、お前の弱み握ってやったぞ」
「フフッ、こんな時のために俺もこれ用意していて良かった」
「てっ、てめえら、大地!経司も!なに撮ってんだよ」
 俺が詠華さんに花束を渡すと彼女は其れを持ったまま俺に抱きついてきたんだ。そして、那波ちゃんの時と同じようにその現場を大地にまたもやディジタル化されてしまった。しかも、今回は経司まで。親友のクセに其れをネタに俺を強請ろうって言うのか?
「詠華さん、その様な事をされては品行の宜しくない悪い記者の方々に尾ひれはひれ付けられて変な風に書かれてしまいます。ですから。・・・・・・それと香取さん、牧岡さん、そのTCDの画像データこちらにお渡ししてください。特に牧岡さんは」
「別に構いませんよ、その様なこと自由に書かせれば良いじゃないですか。書かれても私は気にしませんから」
「詠華さん、何を言っているのですか。貴女様が良くても事務所の上が煩いのです。私だって許しません、この大宮能売として私たちの御上が・・・」
「平潟マネージャーさん、其れと大宮能売。私は天照であり一人の人間の女の子でもあるのですよ。そのわたしがどのような方を好きになるかなんて自由でしょう?」
「詠華さんがそう言ってくれるのは嬉しいっすけど・・・」
 照神先輩もそうだけど・・・、詠華さんからもどうしてなのか好かれちまっている。それはやっぱり彼女たちは双子だから男の好みとかも一緒なのだろうか?そんなコトを思いながら詠華さんを俺から引き離し彼女の方を見ると薄っすらと涙を浮かべていた。
「こんなに詠華は武さんのコト好きなのに武さんが私を好きになってくれないのは・・・、ショウちゃんのことが・・・・・・、それともあの諏訪那波って女の子が・・・・・・・・・、違いますよね、ただ私のことが嫌いなだけですよね。私が天照だから武さんが嫌だと思っていても無理して付き合ってくれているだけなのですよね・・・」
「どっちでも無いぜ、そんなの事。俺はそういった異性の子を好きになるって言う感情が良く解かんないんだ。それに俺が詠華さんのこと嫌いなわけ無いじゃないですか。嫌いだったら遠くまで人足でなんか来ないぜ、まったく」
「詠華さん、武の言っていることは嘘じゃない。コイツのその感情はある事情により欠落してる。だから信じてやってくれ。こいつにアプローチ掛けたいならもっと積極的にならないと難しいぞ」
「おい、経司何ってコト言うんだ。詠華さんがその気になっちまったらどうすんだ!」
「そうですよ、香取さん。言葉を慎んでください。これからもまだまだ詠華さんにはご活躍していただきたいのに」
「そんくれぇ、大丈夫だって詠華に男の一人や二人出来た所で簡単に人気は落ちやしねえよ」
「平潟マネージャーさん?こそこそするからいけないんです。ですから私と武さんの仲を正式に発表しましょう。クスッ♡」
「だからなんでそうなんだってぇ~~~の。俺の気持ちを無視するなっ、おっ」
 次の言葉を声にしようとした時、仄かに鼻腔をくすぐる甘い香りと、柔らかい感触によってそれは防がれてしまった。
「クククッ、はぁ~~~はっはっは、羨ましいねぇ武。超人気歌姫のキスのお味はどうだった?さぁ~~~て、さて、これを那波ッチが耳にしたらどんな形相してくれんだろうねぇ~、楽しみ、楽しみ。オッカナやぁ~~~、おっかなやっ。ヒッヒッヒ」
「照神先輩にも言ってみるのも面白いかもな・・・」
「貴様ら、もう俺の親友じゃねえ。瘴気が取り憑いた魍魎めっ!悪魔に魂を売りやがった畜生め、それを祓ってくれてやる。覚悟しやがれぇーーーッ!」
「牧岡、ここからこいつ置いて消えるぞ」
「そうだなぁ、香取。ウンじゃタケル、明日学校で会おう。さらば!」
「あぁあっ、おっ、オイッ、待ちやがれ」
 瞬転して逃げる二人を追って俺もその技を使おうとしたが何故か無理だった。なぜだ?・・・、それは詠華さんの天照の力によって俺のすべての力が封じられてしまったからの様だ。
「武さん、一緒に東京までお帰りしましょう。ウフッ」
「平潟さん、詠華さんを何とかしてくださいよ。・・・、武甕槌何とかしろ!」
〈ウグッ、力がでぬ。この力は・・・〉
「もう私にも無理です。上の人たちは私の方から何とかしますから詠華さんのお相手をしてあげてください。・・・・・・・・・、フッ、ハァ~~~。詠華さん、くれぐれも行動をお慎みくださいね。良識の範囲内に留めて置いてください。それでは失礼します」
 詠華さんのマネージャーは軽い溜息を吐いて落胆した表情を見せてから俺と彼女だけを置いて控え室から出て行ってしまった。そして、詠華さんと俺の二人だけが取りに残されてしまった。
「どうしたのですか、武さん?そんなに怯えてしまって?フフフッ、わたくし詠華はショ~ちゃんと違いまして武さんにフシダラな事なんてしませんよ。クスッ♡武さんって本当にショウちゃんが言っていた通りとても可愛らしいのですね・・・、お姉ちゃんなんかにもう絶対触れてほしく無いくらいに・・・」
 かなり距離をお居ていたはずなのにいつの間にかそれは縮まっていた。さらに今、目と鼻の先まで近寄っていた。・・・、付け加えるなら何故か身動きが取れなくなるようなコーナーへと追いやられても居た。そして、俺の身に危険が・・・。
 うわぁああん、神様タスケテェ・・・と心の中で切実に願うと・・・。
「くをぉらぁぁっ、私のタケちゃんに何しようとしてんのっ、エイちゃん!!」
 なんと、俺の心の叫びに現われてくれたのは照神先輩だった。嬉しいようで・・・な気分。
 空間転移でふわりと舞い降りる照神先輩。すげぇ、神々しいけど・・・、なんとも先輩の性格からすると似つかわしい。
 双子の姉妹はお互いを牽制するかのように睨み合う。今から取っ組み合いが始まるんじゃないかと二人から物凄い気迫が俺へ伝わってきた。余りの怖さに怯えて隅の方で小さく成る俺。
 頼む、お願い、二人とも神様の力なんて使って喧嘩しないでくれと思いつつも震えて声が出せない。
 初めに声を出したのは詠華さんの方だった。そして、其れに答える照神先輩。二人は物凄い剣幕で罵声を浴びせ合うが、其の言葉の意味が俺には到底理解不能だった。
 度々、罵りのような会話の中に俺の名前が入っていたけど、多分一つも良い事はない。
 長い言葉の戦いが続き、照神先輩と詠華さんのやり取りは一時間を過ぎようとしていた。そして、気付く、武甕槌と会話が出来るように成っている事を。
 俺は自分の中の神様と算段し、二人に気付かれないよう、抜き足、差し足、忍足で壁を背に出口の方へと二人の様子を伺いながら、微妙に移動していた。
 そして、遂に俺は出口まで辿り着いた。だが、扉は閉まっている。先ほど、平潟さんが出て行くときにちゃんと閉めて退出したためだ。
 だが、ここまできて諦めるわけには行かないっ!
「三十六家、逃げるに死活っ!」と叫ぶ俺に冷静に
〈其れを言うなれば、兵法三十六計、逃げるに如かずだ、武〉とつっこんでくる武甕槌だった。
 おれはその言葉を吐きながら、勢いよく扉を開くと外へと駆け出し、少しジャンプして、瞬転の体制に入っていた。刻よ、俺を導いてくれ。
 おれの勝ちだぁぁあっ!!と意味もなく心の中で喜ぶ俺・・・、しかし現実は厳しい。
 両手首に言い知れ圧力・・・、痛みを感じた。
「たぁ~けちゃん、私達をおいて、どぉこにいくのかなぁ~」
「私達を置いてけぼりにしまして、どちらに参られようとするのです、武さん」
 二人の顔は怒った様な表情ではなかった、寧ろ笑顔。だが、其の笑顔こそ、俺には末恐ろしく感じるのは何故だろう?
 いつの間にか、二人に握られていた両手からの痛みは無く成っていた。
 だらしなく、だらけていた隙だらけの俺の両手。
 双子姉妹は俺の両脇に移動すると俺の其れを優しく握ってくれるけど、俺の頭の中に浮かび上がっている光景は時代物のUFO番組なんか出てくる黒服捜査官にとらわれた哀れな宇宙人的映像だ。
 要するにもう逃げられない状況と言うことです。
 それから詠華さんと照神先輩に連行された俺は一体どの様に成ったかと言うと・・・、
 思い出すだけで寝込んでしまいそうだから話さないぜ・・・。 
四 大地!沙由梨に屈服?

 それは天照大神の陽の力と大国主神の自然の力により晴れ空が広がり、清々しい風の吹く麗らかな水無月の日曜の日の事であった。
「くおぉらぁーーーーーーッ、馬鹿大地っ!いつまで寝てんのよ?さっさと起きなさい。今日は桜香祭おうかさい一緒に行くって約束したでしょうぉーーーッ!だから早く起きてよぉ」
「うっせぇよ、サユサユ。まだ昨日、化け物との戦い疲れが取れなくて少し眠いんだ、寝かせろ」
「ダメッ、友達との約束の時間まに合わなくなるのよ。昨日はアタシも、アタシの仲間も一緒に戦ってあげていたでしょ。大地だけ疲れているなんてわがまま言うなっ!だから早く起きてよぉ」
「ダマレッ!」
 大地は妹の声から逃れようと掛け布団を頭からかぶってた。しかし、沙由梨はそんな兄の掛かっている物を剥ぎ取り、言葉を続け、
「大地、これ見なさいよ」
「・・・?オイ、沙由梨ッ!いつの間にそんな物をっよこしやがれっ!」
「お父さんもお母さんもこんな大地と一緒に居る女の人のこと知ったらこの人職失っちゃうかもねぇ~~~、どうすんのぉ?早く起きてアタシと桜香祭に行く?・・・、それに武さん、最近大地に弱み握られているって哀しそうな顔してたんだよねぇ?これ渡しちゃおうかなぁ~~~?」
「わかった、起きるから、起きてサユサユと一緒に学校行ってやるからそれを俺によこせ」
「今日一日が終わるまで駄目ね、大地って他の人にはそんなコト無いけど、アタシには全然信用無いんだもん」
 悪びれた笑みを作る妹の目の前で兄は慌てて直ぐに着替えを始める。それに驚きを見せないで待っている彼女。沙由梨が持ち出した物とは小型のFDMから写しださえる大地とどこかの教師らしき人物のデート姿だった。
「フフフッ大地、朝食は出来ているからさっさと済ませちゃってね」
 沙由梨は勝ち誇ったような表情を作りながら大地の部屋から出ていた。そして、それをそれを気だるそうに頭を掻きながら追う彼。
 いつものように妹の作るそれを見て溜息を吐いてから食べ始める。五、六分くらいで朝食を平らげるとその食器を洗ってから洗面所に向かっていた。それから、だらしなくなっている顔と酷い寝癖がついている髪の毛を丁寧に直し、最後にヘアーワックスだのフェイスクリームだのを塗って芸能界に居る美少年、美青年顔負けの顔に仕立て上げ、更に鏡を見ながら着ている服が違和感無いかどうか確認してからその鏡の中に指を立て妹のところへ戻っていた。
「ちゃんと身支度して来てくれたんだね?大地」
「どうせ、だらしないカッコウでもしようものなら文句言うだろう、サユサユ。いくぞ」
*FDM=Free Dimension Movieの略で小型の空間立体投影映像器の類。大型はSpace Solid Projection S2Pなるものがある。
 大地は戸締りをしている沙由梨を玄関外で待っていた。
〈どうなさったのですか、大地様?これから沙由梨様とデートだと申しますのに不機嫌そうですね〉
「てめぇ、児屋根。わざと言ってやがるな?兄妹でそんな言葉つかわねぇ~~~ちゅぅの。畜生め、どこでサユサユの奴あんなもの手に入れたんだ。くそったれがっ!」
〈それは大地様の日頃の沙由梨様に対する行いの悪さのせいでしょう。今日は沢山沙由梨様を可愛がって差し上げたらどうですか〉
「うっせぇよ、だまれ莫迦野郎」
「大地っ、おまたせぇ~~~、それじゃァアタシの学校行きましょう。・・・、あっ、そうだ。武さんや経司さんも、そうだ、そうだ、勇輔さんも呼んでって言われてたんだっけ。大地、三人に連絡入れてよ」
「ああぁん?なに言ってやがんだ?経司はトモカク、武が騒がしいところ来るわけねえだろ?沙由梨、お前それに、お前ン所女子高だろう。勇輔の奴なんか呼んだらアイツなに仕出かすかワカンねぞ。あぁあぁ~~~、ヤダ、やだ。ソンなのは認めネエゼ。態々火種に成りそうなやつなんぞぉ、よんでやれないってぇの」
「大丈夫よ、そのくらいで驚く様な程うち等柔じゃないから。・・・、別に大地がそんなんでもいいけどぉ~~~。武さん、アタシからサッそっちゃおうかなぁ~~~~~~これだしにしてぇ。勇輔さんだって十五年に一度しかない桜香女学園の文化祭って知ったら絶対来るだろうし」
「わかったよ、待ってろ今連絡するから・・・・・・、よっ、武お早う。もうおきてたんだな?なにぃ~~~、朝の稽古で、ふぅ~~~ん。これから暇か?」
「暇じゃねえよ。飯喰ったらまた昼ごろまで稽古だ。チッ、嫌なのに」
「ウンだったらさぁ今日サユサユの学校の文化祭なんだってよ。一緒に来ないか?」
「はぁあん?そんな騒がしそうなところ俺が行くと思ってんのか大地?そっちの方がもっと嫌だぜ、まったく」
「まあなぁ、相棒の考えくらい判らない俺様じゃねえんだけどよ。沙由梨がうっさくてな。来てくれるんだったら一つTCDの画像データ消してやっても良いけどなぁ~~~」
「クッ、大地。テメぇ、其れでも俺の相棒かよ・・・」
「相棒だからこそお互いの大事な秘密は知っておかないとなぁ~~~って、剣道の稽古だろ?経司もそっち行ってんのか?ハァ~~~、ウンそうか。だったら経司も連れてこい。そしたら後九つあるもう一つ消してやってもいいかなぁ~~~」
「ちきしょぉ~~~めっ・・・、チッ、分かったぜ。俺ん家まで迎えにこいよ。友達からの誘いだって爺ちゃんにはっきり示せば外出許してくれるからさ」
「おっけぇ~~~OK。ウンじゃ、今からそっち行くぞ。直ぐに出られるように用意しとけな。・・・・・・、って訳だサユサユ。武も経司も一緒に言ってやるってよ」
「そんなコト会話聴いてればわかるあよ。・・・、しかし、大地アンタ最低ね。人の弱み握って」
「はっぁあん?沙由梨、貴様!そんなコトいえる立場か」
「へぇ~、アタシにそんなコト言うんだ?言って置くけどあれ以外にもあるんだけどなぁ」
「ハイ、ハイ、失礼しました沙由梨様。次は勇輔様をお呼びすればよいのですね」
 兄は妹にこびる様に胡麻すり手つきで頭をへこへこしていた。そして、諏訪勇輔にも連絡を入れる。
「そんな訳でな、遊びにこいや。桜香に直接行っても駄目なようだぜ。何でもサユサユが持っているチケットが無いと男は入れないみたいだから直接俺の所だ。いいな?」
 電話を掛け終わって数分経ってから勇輔と何故か一緒に那波が神速の速さで姿を見せていた。
「アッ、那波さんおはよう御座います。那波さんもご一緒してくれたんですね?」
「お兄様、にこやかな顔して出かけようとしていましたから、お尋ねしたのですが。・・・その様な場所へ勇輔お兄様を連れこもうだなんって危険すぎます。・・・ですから私はそのお目付け役としてお付き合いさせてください」
「フフフッ、沙由梨ちゃん、今日も一段と可愛いねぇ~~~、こんなボクをお招き有難う」
「可愛いダなんっていやだぁ~~~、勇輔さんたら・・・、それじゃ大地、武さん達のところへも行こうよ」
 沙由梨は大地の手を引き鹿嶋家まで向かう。そして、そこで鹿嶋兄妹とその幼馴染みを連れると上野区荒川にある彼女の通学する桜香女学園大学付属高校へと足を運んでいた。そこは数ヶ月前まで伊勢野詠華が通学していた場所でもある。
「沙由っちぃ~~~、おっはよぉ~~~、???きゃぁ~~~、高校サッカーのプリンスでフィールドのマジシャン牧岡大地さんよ。握手してください」
「ほら、ほらっ、こっちに鹿嶋武さん、靖華のエースのぉ疾風の貴公子様っ。それにそれに剣道界の神様で美男の香取経司様までぇ~~~。はぁ、夢のようだわ、サインくださいっ!」
「この男の人が諏訪勇輔くんっ人ね?思っていた以上に可愛らしいワァ~~~」
「良いなァ、あの子。鹿嶋君と腕組んでるぅ~~~。しかも凄く綺麗、うらやましいぃ~~~。それにその隣のお姉様も・・・」
「ハイッ、あんたたち。それ以上、近寄らない、近寄らない。大地はアタシの兄貴よ。それに武先輩たちだってとってもお知り合いなんだから。どうう・ら・や・しい?」
『うらやまシィ~~~』
 彼等に取り囲むように現れたミーハーな桜香女子学生、十数人の沙由梨の友達に対して彼女は凄く幸せそうな、極上な笑顔をしながら大地の腕に絡まっていた。そんな大地の妹がする行動に彼女の友達等は本当に羨ましそうな顔をしてそれを声に出してもいた。
「おっ、オイ、サユサユ、くっ付くんじゃねえよ。変な誤解招くだろうがっ!それに見ろっこの騒ぎに武の奴思いっきり退いてるぞ。しかも蒼ざめてやがる。早く騒ぎとめろよ。ぶっ倒れちまうかもよ。勇輔っ!へんな気起こすなよ」
「沙由梨ちゃん、大地、何とかしてくれ。マジで頭が・・・」
「俺達は有名人でもなんでもない。騒がれるのは困る。特に武はこういうのに弱いんだ。だから静かにしてくれ」
「きゃぁ~~~、香取さんとってもクール。惚れちゃいますっ♡」
「経君、こういう女の子達にそういうこと言っても無駄ですよ。失礼な言葉かと思いますが、こういった女子学園は経君が思っているほど純粋な場所ではないんですから。男の子に群がる亡者ですよ、クスッ。でも武も経君も私がお守りしてあげますね」
 鹿嶋姉はそんなコトを一つ歳下の幼馴染みに囁いてた。
「ハイ、はい、そう言うわけで武さんが気分悪くしちゃうのでみんな戻ってねぇ。彼等の顔を見れただけでも満足しなさい。若しそれでも私と一緒に歩いてくれるお兄様方たちとどうこうした言っていウンならこれ以上ね!」
 群がる女子生徒どもに沙由梨は人差し指を立てて金額のような物を示していた。それは百円とか千円とかの単位じゃなくて・・・。
「アッ、アタシ三十だすから武様と一緒させてください」
「何言ってんのあんた。三十万年早いわよ。私なら五十ね!いいえ六十出すわ!」
「そんならわたし百出すから勇輔さんと経司さん貸してよ」
「オホッホッホッホッホ、小さいことその程度では殿方はお安くてよ。わたくしならこれだけ、少ないかしら?三百・・・・・・、矢張り六百で皆様をこのわたくしに」
「オイッ、サユサユ俺らで商売スンナ!うぅ~~~でも六百かぁ~~~?色々買えるなぁ」
 金持ちばかり集まるお嬢様私立だけにその金額は異常だった。
「大地?欲におぼれて今すぐ死にたいか?」
「勇輔お兄様何ってどうでも良いですけど。武さんを物みたいに扱わないで戴きたいです。それに私が居るまえどその様なこと許すわけがありません」
「那波さん?そう言ってくれるのはとても嬉しいことですけど、いい加減に武から離れてくれないかしら?力で貴女を押さえつけたくありませんが・・・それ以上・・・」
「姉ちゃんもみんなもいい加減にしてくれよ・・・?・・・?この気配、武甕槌?」
〈その様だ、武!だがこれだけの人前でどうするのだ?〉
「武甕槌神さんも武も心配スンナ。おい、サユサユお前も感じているだろこいつらのそれに惹かれて来たあれが?文化祭だ、仮装とかするんだろう?その部屋にあるもの使うぞ。どこだ?」
 沙由梨は大地にそう言われ初め以上に押し寄せていた女学生を押しやり、仮装衣装がある部屋へと皆を導いていた。
 演劇部の衣裳部屋に到着するとその場に居たい人を全員外に出し部屋の鍵を閉めて神様としての素顔を隠すための衣装を探しそれを着ていた。しかし・・・、どうしてなのか武の体格に合う男物が見付からない。
「経司、サユサユ、勇輔、できれば那波ッチも鹿嶋先輩も武を取り押さえてくれ」
「ややぁやっ、やめろよ大地。絶対そんなもん俺は着ないぞ。そんなもの着せられるくらいだったら俺、正体なんかばれてても良いぜ」
「オウオウ、俺に逆らう気か?武。この場で那波ッチにあれ見せるぜ。・・・、怯んだっ!いまだ取り押さえろっよっし沙由梨、コイツのメークを手伝え。流石に女のそれはわからねぇからな」
「それでしたら私もお手伝いします」
「武、可愛らしくしてあげますからネェ~~~、少しお静かにしててください」
 大地の祝詞の力により武甕槌の持つ瞬転、神速などの力を抑えられた武は衣裳部屋を人足で逃げ回っていた。だが、彼の抵抗もむなしく大地と他の友人に取り押さえられ嫌がっていた物を着せられてしまうのであった。そして、そんな武の姿をみんな、色々な表情を作りながら、
「うっしっ、ばっちり。うぅ~~~んやっぱ鹿嶋先輩が美人だからその弟のお前、マジで可愛いよ。俺様の女にならないか?クックック・・・、よしここで一枚コイツのスガタを・・・」
「大地ッ~!お前、それが目的だったのかぁ!」
「ウフフフッ、武とても綺麗よ。さあ、そのままの格好で物の怪から女の子たちを護りましょう」
「とてもお美しいですね、武さん。私、それに武さんの今のお姿に嫉妬してしまいそうです。クスッ」
「武君、化け物退治終わったらぼっ、ボクとデートしないかい?ポッ」
「良かったな、武。皆がほめてくれているぞ。男を辞めて今日から女として生きて行け。そうしたらお前の悩みも少しは解消するかもな」
「準備はばっちり化け物退治に行くとしようかぁ~~~」
 大地は武に掛けていた神力を解除して、皆を纏めて魑魅魍魎が現れた学校の校庭の上空に移動させていた。その場所に行けば既にかなりの多くのそれらが暴れていた。建物にも被害が出ている。
 七人の天国津は仮装したまま直ぐに戦闘には突入していた。たいした数じゃなかったために退治し終えるのに伝説の三分間インスタン・ラーメンを作り終えるより早く片付き、魑魅魍魎をすべて浄化し終えた時に校庭に残ったものはそれらに取り憑いていたかなり大きなゴミの塊の山だった。それを見てうんざりするその七人。
 それらを物理的な力によってすべて消滅させる事の出来るのは武と那波、そして経司だった。残りの四人はそれが終わるまでじっと待っているだけ。大地はその三人の姿を眺めながら空中であぐらをかき、器用に空中回転しながら天児屋根の神と言葉を交わしていた。
「フゥ~~~、いつまで俺様達の戦いは続くんでしょうかねぇ」
〈それは僕にも分かりません。ですけど、僕等天国津が居る間には何とかなると思いますよ〉
「そっか・・・、でも俺はお前とずっと一緒に居たいからこのままずっと続いてくれてもいいんだけどなぁ~~~」
「莫迦大地、何を言ってるのよ!私も天児屋根さんといつかはお別れしなくちゃならないの分かっていて悲しいけど・・・、コンナ奴等何時までものさばらしてちゃいけないでしょう?」
「うんなこちゃぁ~、わかってすさぁ。ただ言ってみただけだ。おっ、武達片付け終わったみたいだ。それじゃこの衣装返しに行こうか・・・」
 校庭から消えようとしていた天国津たちに数人の女子学生が詰め寄り、お礼を口にし、
「どこのどなたか・・・?えっ、もしかして沙由梨ちゃんなの?」
「レエェッ、違うわよ、アタシそんなひとじゃないわ」
「その口ぶり、やっぱりユーリンね。いいなぁ~~~、カッコイイ男の子たちに囲まれちゃって凄い力まで持っているんだもの。羨ましすぎるよぉ」
「なんだ、サユサユ?こいつ等おまのダチか」
「莫迦大地、アタシの名前を口にするナッ!ばれちゃうでしょうよ」
「フッ、牧岡妹。コイツの名前言った時点でその言葉に意味も無い」
「せっかく変装したけどまァ~~~、ばれちまったもんはしかたねぇ~~~。そうそう、こいつ女のカッコしているが鹿嶋武だ。綺麗だろう?」
「・・・、美しいです。これから公演する演劇部の舞台に貸してください」
「ふっ、ふざけたこと言ってんじゃネエゼ、まったく。そんなのは絶対嫌だ」
「武の貸し料金はこんなもんだぜ!」
「さんびゃくまんですか?それくらいで宜しいのですか?それだったら十分払えますよ。ねえ、早紀ちゃん」
「ちゃう、ちゃう。三十円だ!」
「俺ってそんなに安いのかよ、大地っ」
「これひきうけてくれたらねぇ~~~、今まで俺が集めた秘蔵の相棒データ全部消してやっても良いけどなぁ~~~」
「うっうぅぅうっ・・・、大地、クソ相棒!」
 武はそう吐き捨てるとそこから姿を晦ました。
「アァアッ、消えちまったよ。ッてなわけで商談は無効ってことで引き取ってくれ。俺達はこれからサユサユ達と学校見て回るから邪魔すんじゃねえよ。うっしっ、武を追いかけるかぁ~~~」
 そんな言葉を残して大地は武の神気を追って相棒の所へと移動していた。更にそれを追う他の者達。それからは大地は武をひっつかまえ、借りていた衣装を返していた。
 沙由梨は嫌がる兄の腕を組みながら学園内を食べ歩き、案内して、さまざまな催し物を見学、見物をしていた。そして、彼女の反対側、大地の隣に歩く者、武。その時の彼の格好は・・・。
 
伍 デート?とそのおまけ達

 今日、靖華城学院の創立記念日だった俺は那波ちゃんに誘われて東京府内にあるテーマ・パークへ遊びに来ていた。もっ、若しかしてこれってデートって奴か?・・・だけど、俺も那波ちゃんも彼氏とか彼女って関係じゃないんだよな?だがしかし、何故かデートってそんな雰囲気じゃない。
 それの理由は・・・。
「何しに来た、お前等!それに美姫姉ちゃんも照神先輩も大学サボってんじゃねぇよ!」
「私はテルの監視よ。付いて来たらここへ来てしまったんです。それと那波さん、武と腕なんか組んではいけません」
「タケちゃん、酷いよぉ~~~、私のこと誘ってくれないでナナちゃんばっかり。私はタケちゃんの恋人なのにぃ、えこひぃきぃ~~~」
「何時から俺は照神先輩のそれになったんだよ?それにこんな所、目の見えない先輩は面白く無いだろう?」
「テルッ!また何回も同じ事を口にして何を馬鹿なこと言っているの」
「べぇ~~~ダッ!ミッキーは高校卒業したんだからさっさとタケちゃんからも卒業しちゃってよ、偏狭おねえさぁ~~~ん。それにタケちゃんがデート誘ってくれるなら目の治療しても良いの。タケちゃんが私の傍に居てくれるって言うのなら治すよ」
「何を言っているんですか馬鹿馬鹿しい。武さんのお姉さんも伊勢野さんも早く帰ってください、私と武さんの邪魔をしないで・・・・・・。それに勇輔お兄様は一体こちらへ何しにこられたのですか?それに経司さんも大地さんも、皆さんしてどうしたのですカッ!」
「俺は麻緒が遊びにいきたいって言うから。今日は妹も学校休みだし・・・」
「沙由梨の奴がどっか行こう、って騒ぎ立てるからしゃぁねえからよ、ここにつれてきたって訳。好きだからなここ、サユサユは」
「那波、そんな怖いかをしちゃ嫌だよぉ。武君に嫌われちゃうぞ。僕はただ天気が良いからぶらぶ空中散歩していたらコンナとこに来ちゃったって訳だよ」
「大地さんも経司さんも妹さんのお相手なら仕方が無いですけど・・・・・・、勇輔お兄様?とても白々しいですわねぇ~~~」
 那波ちゃんはニッコリ微笑みながら勇輔の野郎を見ると俺から離れ、大勢が居る前で白昼堂々何か長いものを右手に握り締めていた。周りの連中は何かのアトラクションとだとでも思っているんだろう。だから、楽しそうに眺めていた。
「どうどうどうどう那波、落ち着くんだよぉ~~~。そんな物騒なものこんな所で出しちゃ、いけませんってお兄さんいつも言っているでしょう?ですから早くしまいなさい」
「勇輔お兄様がお帰りしてくれましたらお納めします」
「えぇぇえ、別に一緒にいたって良いじゃない、邪魔しなければ。ボクのことなんって気にしないでイチャついていいって」
 その言葉を聞いた那波ちゃんは何の躊躇もなく手に握る十握剣を勇輔に向けていた。振り下ろされたその衝撃で地面が割れる。しかし、那波ちゃんの兄貴はそれを難なく躱し悠然としていた態度で言葉を続けるようだった。
「そんなお痛しチヤ、お兄さん武君に那波の小さい頃の秘密とか教えちゃおうかなぁ~~~」
「ダッ、だめです。それは絶対だめです。勇輔お兄様、それだけは・・・」
 何故かその言葉でしゅんとして、十握剣を収めてしまう那波ちゃんであった。
「おい、勇輔、那波ちゃんをいじめるなよ」
「虐められていたのはどう見てもボクの方だって・・・、でもまあいいや、ほら皆さん向こうにいきましょう。これ以上内の妹をからかうとここ消えちゃうかもしれないから」
 勇輔の奴はそう言葉に残すと美姫姉ちゃんや照神先輩の手を引き更に経司や大地に蹴りを入れて向こうの地へと追いやっていた。そして、彼も姿を消す。
「那波ちゃん、そんな顔するなよ。皆帰ってくれたぜ。それじゃ楽しもうか」
「ハイッ、武さん。それではどれからお乗りしましょうか?」
 直ぐに彼女は笑顔を取り戻し、そう言葉にすると腕を組んできて俺の事を導くように歩き始めた。
 実は俺も那波ちゃんも遊園地に来るのは生まれて初めて。姿をどこかに隠しているはずの美姫姉ちゃんだって今日までたぶん足を踏み入れていない聖地。多分、それは経司も麻緒ちゃんも。
 大地の奴はどうなんだろうな?アイツは根っからの遊び人だから女の子と来る事はなくても俺と知り合う前に何度かこういった場所には男達と来ていたかも知れない。だけど、若しかすると沙由梨ちゃんとは初めてなのかもしれない。
 はっきし言うけど照神先輩は論外。目の見えない先輩がこんな所へ来るはずが無い。ここに来ていない先輩の双子の妹はどうなんだろうか?・・・、そんなコトを考えるのは止めて那波ちゃんと一緒に楽しもう。
 色々な乗り物や体感ゲームで遊びながら園内をゆっくとと彼女と二人きり?で回る。・・・、しかし、色々な場所から色々な視線を感じるのは俺の気のせいか?武甕槌も同族の気配を近くに感じているような事を教えてくれたけど、四方八方を眺めてもどこにも見当たらなかった。しかも、神気を辿ろうにも上手くそれを捉えることが出来なかった。
 そんな視線を気にしながら今は那波ちゃんとおそい昼食を取っているところだった。
「武さん、ホッペタにご飯粒がお付していますよ。わたくしが・・・」

~ 何処かの木の茂みの中 ~
「那波さん、なんて事を武に・・・、お姉さんの私だってあの様なことは・・・」
「えぇ、エッ、ナナちゃんいったいどんな事をタケちゃんにしてくれちゃっているわけ」
「テル煩いわ少し黙っていなさい!」
 照神の持つ気配を隠す技で二人は九メートル先の武と那波の行動を監視していた。そして、どんな事をしているのか見えていなかった彼女は親友の身体に触れその映像を頭の中に投影してもいた。
「ウニュウぅ~~~、そんな羨ましい私のタケちゃんにしてるなんってとっても許せないぃ~~~っ、グスン」
「何時から貴女のモノになったのよ、武は。誰がなんと言おうと武は私のもの・・・、誰にも譲ったりなんってしません」
 そんな会話を姉ちゃんと照神先輩がしていること何って知らず呑気に俺は那波ちゃんとおしゃべりをしながら昼食を取っていた。
 飯が食い終わり、大きなグラスに入ったトロピカルジュースを二口あって一本に繋がったストローで飲んでいた。

◇ 動く巨大なゴミ箱の中 ◆
「那波のやつあんな女の子らしい事しちゃってぇ~、フッフッフでも武君、キミはまだまだ甘いよ。そんなコト今までボクは何回もあるんだぞ。・・・はぁ~~~、那波なにやってるのかな?もっと顔を近付いて飲んでる振りしてブチュゥ~~~ッて・・・、それからその後は白昼堂々と・・・ムフフフフフフゥッ」
「それに武君も那波にもっと積極的になってあげないと・・・、男じゃないねぇ~~~クックック。ボクならわざとあんな大量の飲み物だ・・・・・・、那波が着ているような服の胸元に掛かったらニュフフフ」
 勇輔はゴミ箱にある紙くずに埋もれて危ない妄想しながら彼の妹の観察をしていた。
 そんなヤツの馬鹿げた行いなど知らずに俺と那波ちゃんは手を繋いで歩いていた。
 いつの間にか俺は再び彼女に引っ張られるように歩いていた。そして、少し出っ張っていたレンガ道のそれに足を躓き転びそうになってしまう。
「うわちっ・・・・・・・・・、アッ・・・、その・・・、那波ちゃんごめん。悪気はなかったんだ」
「もォ~~~、武さんのエッチ。でも業とらしくそれをやる勇輔お兄様と違って武さんのそれは不可抗力だったんですよね?でしたら私は気にしませんよ。それに・・・、ポッ」

▽ きぐるみを身に着ける二人 ▲
「ねえ、お兄ちゃん。どうしてそんな嬉しそうな顔してるの?麻緒わかんないよぉ」
「ばっちりデータも取ったぞ。これは重要事項だ、詠華さんにご報告ッと・・・」
「いいか麻緒。若しお前の彼氏にアンなことされたら不可抗力でもビンタしなさい。俺は許さない、あんな間抜けな事は。武なら余裕で体勢立て直せたはずだ」
「経司お兄ちゃんこの兎さんのぬいぐるみとっても暑いのォ~~~。早く脱ぎたいよぉ。べとべとしますぅ。お風呂に入りたいですぅ~~~」
「我慢してくれ、終わったら一緒に近くの銭湯に行こう」
「ウン、だったら麻緒頑張る。だから、一緒にお風呂入ろうねぇ」
「バッ場かいうな!そんなところでお前と一緒に入ったら警察に捕まってしまうぞ、俺は」
「嫌ァ!一緒に入るのぉ~~~、そんなんじゃないとこれ脱いじゃうよ」
「アァアァ、わかった、わかった。家の風呂で一緒に入ろうな」
「ウン、だったら麻緒もう少し辛抱する・・・、アッ、武おにいちゃんなんか凄い事してる」
「おおォ~~~っ、これは特種!デカシタ、麻緒」
 牧岡大地の悪い部分が経司にも染み付き始めていた。そして、今決定的な瞬間を経司は目のあたりにする。それは・・・。

 経司の奴が麻緒ちゃんとそんな事をしているとは知らずに俺は那波ちゃんに目に入ったゴミを取ってもらっていた。かなり接近していたので見る方向によってはキスしている様に見えるかもしれない。・・・、後二、三㎜近付けば俺の唇と彼女のそれがふれてしまう距離でもあった。

$ 売り子に変装する兄妹 $
「へぇぇいっ、らっしゃい、らっしゃいぃ~~~、当店ご入館の記念に・・・」
「大地、そんな呼び込みじゃお客さん来ないわよ莫迦ねぇ~~~、まったくって、そんなコト言っている場合じゃないわ。アンタ何時まで武さんの弱み握ろうとしてる積り?」
「相棒が俺の相棒である続ける限り」
「サイテェ~~~、なんだか武さんが可哀想になってきちゃった。これ、渡しちゃおっかなぁ?」
「てっ、てめぇ、沙由梨!そのデータ消したんとちゃうのかよ?」
「なに言ってんのバッカじゃないの?データあれ一個だけだと思ってたわけ?良くそんなんで武さんの弱み握ったなんって言えるわよ」
 最近、大地よりやり手の彼の妹、沙由梨。掌サイズのFDMプレーヤーで兄の弱みである映像を見せながらそう言葉にしていた。
「たっ、頼むあと一時間ばっかこの尾行はミのがしてくれ!終わったら一緒に遊んでやっからさ。なぁ」
「なに言ってんのかなぁ~~~、頼むんならもっと丁寧に言ってくれないとねぇ。それにそれだけじゃァ」
「沙由梨様、どうか私目のお願いをお聞き届けください。帰りにはラ・シュールのトリスタンを贈り物として差し上げますから」
「クックック、なにその口調似合わないわよ。フゥ~、でもあと一時間だけだからね?それ以上続けるならアタシ、武さんの味方するから」
 そうやって何とか妹との交渉に成功した大地は武の尾行を続けて何かの事実を得様としていた。しかし、沙由梨は知らない大地が本当は妹の弱みを握っている事を・・・。

 ッてそんなコトを牧岡兄妹がしてるなどとは知らないでローラー・コースターの列に並んでいた。そして、そこで俺は大地のヤツに人生最大の汚点を握られてしまうことは・・・。
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