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第25話 新たな家族
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「皆さん、エクトルさんが戻られましたよ」
玄関に応対に出たジネットが笑顔で戻ってきた。
その後ろにはソフィアの知らない男性が立っている。
名前に聞き覚えも無いし、亜麻色の髪の男性に見覚えも無いわね。
どなたかしら……。
ソフィアは見知らぬ男性を見て首を傾げる。
一方その姿を見て、食堂で昼食をとっていたソフィア以外の面々が喜びの声を上げた。
「おお、エクトル君じゃないか。おかえり」
「遠いところからお疲れ様。ゆっくりしていってね」
ジェラールとドリアーヌは料理を食べる手を止めて、エクトルの帰りを歓迎する。
テオドールも片手を挙げて挨拶し、柔らかな表情で迎え入れた。
エクトルは頭を下げて3人の挨拶に応え、その後ジョエルの元へ近付いた。
「ジョエル様、ご婚約、おめでとうございます」
「ああ、ありがとう。こちらが僕の婚約者のソフィアだ」
ジョエルに紹介されたソフィアは立ち上がり、挨拶をする。
「初めまして、ソフィアと申します。よろしくお願い致します」
ソフィアと初対面のエクトルも同じく自己紹介をした。
「初めまして、エクトル・ブランシール子爵です。ジョエル様から手紙で婚約を聞きました。僕は首都で裁判官をしています。数日、こちらに滞在するのでよろしくお願いします」
エクトルの自己紹介を聞いて、ソフィアは再び頭を下げた。
姓がブランシールということはジョエル様のご親戚なのかしら。
首都で働いているなんてきっと優秀な方なのね。
ジョエルとエクトルの関係を疑問に思っていると、ジョエルが詳しく紹介してくれた。
「彼は戸籍上は僕の弟となっているけど、養子なんだ。学業の成績がとても優秀だったから、貴族の身分になって貰って首都の学校に送り出したら、卒業後に首都での仕事が決まったんだ。僕のことを兄さんって呼ぶように頼んでいるんだけど、呼んでくれなくてね」
「恩人を軽々しく兄さんなんて呼べませんよ。今の僕があるのはブランシール家の皆さんのおかげですので、感謝しております」
「えー、僕は弟が出来るのに憧れていたのになあ」
ジョエルとエクトルの会話の様子を見ていると仲の良さが伝わってくる。
そう言えば以前、馬車の中でジョエル様に弟がいる話を聞いた気がするわ。
あのしっかりしているジョエル様が甘えるなんて、エクトル様のことを信頼しているのね。
エクトル様は礼儀正しいけど、ジョエル様の無茶振りを上手に流して本当の兄弟みたいだわ。
ジョエルの説明のおかげで、エクトルのことが詳しく分かり、ソフィアは納得していた。
「ジョエル様、紹介して下さり、ありがとうございます。エクトル様、今後もよろしくお願い致します」
「僕に様付けは無しで大丈夫ですよ。ソフィアさんとお呼びしてもいいですか?」
「はい、大丈夫です。では、エクトルさんとお呼びさせて頂きます」
一通り挨拶が終わったところで、ジネットがエクトルの分の昼食を運んできた。
共に食事をしながら、お互いの近況報告など話に花が咲く。
やがて、食事を終えると、ジョエルが話を切り出した。
「今日はわざわざ戻ってきて貰ってすまないね。頼みを聞いてくれてありがとう」
どうやらエクトルが戻ってきたのはジョエルの頼みを聞くためであったようだ。
どんな内容か少し気になって聞き耳を立てていたソフィアは、その依頼の内容を聞いて絶句することになるとはこの時、微塵も思っていなかった。
玄関に応対に出たジネットが笑顔で戻ってきた。
その後ろにはソフィアの知らない男性が立っている。
名前に聞き覚えも無いし、亜麻色の髪の男性に見覚えも無いわね。
どなたかしら……。
ソフィアは見知らぬ男性を見て首を傾げる。
一方その姿を見て、食堂で昼食をとっていたソフィア以外の面々が喜びの声を上げた。
「おお、エクトル君じゃないか。おかえり」
「遠いところからお疲れ様。ゆっくりしていってね」
ジェラールとドリアーヌは料理を食べる手を止めて、エクトルの帰りを歓迎する。
テオドールも片手を挙げて挨拶し、柔らかな表情で迎え入れた。
エクトルは頭を下げて3人の挨拶に応え、その後ジョエルの元へ近付いた。
「ジョエル様、ご婚約、おめでとうございます」
「ああ、ありがとう。こちらが僕の婚約者のソフィアだ」
ジョエルに紹介されたソフィアは立ち上がり、挨拶をする。
「初めまして、ソフィアと申します。よろしくお願い致します」
ソフィアと初対面のエクトルも同じく自己紹介をした。
「初めまして、エクトル・ブランシール子爵です。ジョエル様から手紙で婚約を聞きました。僕は首都で裁判官をしています。数日、こちらに滞在するのでよろしくお願いします」
エクトルの自己紹介を聞いて、ソフィアは再び頭を下げた。
姓がブランシールということはジョエル様のご親戚なのかしら。
首都で働いているなんてきっと優秀な方なのね。
ジョエルとエクトルの関係を疑問に思っていると、ジョエルが詳しく紹介してくれた。
「彼は戸籍上は僕の弟となっているけど、養子なんだ。学業の成績がとても優秀だったから、貴族の身分になって貰って首都の学校に送り出したら、卒業後に首都での仕事が決まったんだ。僕のことを兄さんって呼ぶように頼んでいるんだけど、呼んでくれなくてね」
「恩人を軽々しく兄さんなんて呼べませんよ。今の僕があるのはブランシール家の皆さんのおかげですので、感謝しております」
「えー、僕は弟が出来るのに憧れていたのになあ」
ジョエルとエクトルの会話の様子を見ていると仲の良さが伝わってくる。
そう言えば以前、馬車の中でジョエル様に弟がいる話を聞いた気がするわ。
あのしっかりしているジョエル様が甘えるなんて、エクトル様のことを信頼しているのね。
エクトル様は礼儀正しいけど、ジョエル様の無茶振りを上手に流して本当の兄弟みたいだわ。
ジョエルの説明のおかげで、エクトルのことが詳しく分かり、ソフィアは納得していた。
「ジョエル様、紹介して下さり、ありがとうございます。エクトル様、今後もよろしくお願い致します」
「僕に様付けは無しで大丈夫ですよ。ソフィアさんとお呼びしてもいいですか?」
「はい、大丈夫です。では、エクトルさんとお呼びさせて頂きます」
一通り挨拶が終わったところで、ジネットがエクトルの分の昼食を運んできた。
共に食事をしながら、お互いの近況報告など話に花が咲く。
やがて、食事を終えると、ジョエルが話を切り出した。
「今日はわざわざ戻ってきて貰ってすまないね。頼みを聞いてくれてありがとう」
どうやらエクトルが戻ってきたのはジョエルの頼みを聞くためであったようだ。
どんな内容か少し気になって聞き耳を立てていたソフィアは、その依頼の内容を聞いて絶句することになるとはこの時、微塵も思っていなかった。
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