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第7話 家族
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「僕は父の補佐として働いているんだ。父も母も役所の執務室で働いていて、力仕事とか外回りの仕事は僕がしているんだ。あっ、ソフィアは家族と連絡が取れない状況なのに、家族の話をしてごめんね」
「いえ、大丈夫です。ジョエル様のお話に興味がありますので、ぜひお聞かせ下さい」
本当は不仲な家族のことなど頭にも無かった。
しかし、そんなことを言う訳にもいかず、ソフィアはジョエルに話の続きをするように促した。
ソフィアにおだてられて上機嫌なジョエルは、子どもの頃の話などたくさん語る。
内心はどうでもいいと思いながら、ソフィアは笑顔で相槌を打ち続けた。
こんなに笑顔で家族の話が出来るなんて、やっぱりジョエル様は幸せな家庭で育ったのね。
私とは無縁の世界過ぎて理解出来ないわ。
ある程度話をするとジョエルはソフィアの話も聞きたくなって話題を振る。
「ソフィアには兄弟はいるのかい?」
「はい、弟と妹がいます。ジョエル様はご兄弟がいらっしゃるのですか?」
家族の話をしたくないソフィアは最低限だけ答えて、話をジョエルに戻す。
ソフィアからの質問に自分に興味を持って貰えたと思ったジョエルは、嬉しくてまた語り始めた。
「養子なんだけど弟がいるんだ。元は学校の後輩だから弟と言うより友人に近いんだけどね。優秀な弟は首都で働いているからまた帰って来たら紹介するよ」
「そうなんですね。お会い出来る日を楽しみにしております」
普通の人であれば、どんな仕事をしているのか、どんな経緯で養子になったのかなどを質問して話を広げるだろう。
しかし、あまり他人に興味の無いソフィアはそれ以上突っ込んで聞くことは無かった。
やがて、昼食の時間となったため、街に入ると馬車を止めて宿屋の食堂に入る。
庶民が多く集まる場所のようでガヤガヤとした店内にソフィアは少し驚いた。
「後宮暮らしの君には合わない場所でごめんね。手持ちが少ないから貴族が利用するレストランには行けそうに無いんだ」
眉を下げながら謝るジョエルに、ソフィアは慌ててフォローする。
「いえ、ジョエル様と同じ食事を頂けるだけで身に余る程です。ありがとうございます」
地下牢の粗末な食事に比べれば、温かいご飯が食べられるだけで十分幸せであった。
しかも、ここでは食事を奪われることは無い。
美味しそうに食べるソフィアを見て、ジョエルは口に合わない食事でも何一つ文句を言わない姿に感動しながら食事を終えた。
馬車は再び、ブランシール領に向けて進んでいく。
景色の良い湖畔の道に差し掛かり、2人は窓の外の景色を眺めていた。
ふとジョエルが視線をソフィアに向けると、満腹になり睡魔に襲われて船を漕ぐ姿が目に入る。
「眠たいのなら遠慮せずに寝て構わないよ」
「見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。ジョエル様の前で居眠りなど恐れ多いことです」
ソフィアは慌てて姿勢を正すが、ジョエルはソフィアに遠慮させてしまい、申し訳なく思う。
そんなつもりで言った訳じゃないんだ。
我慢しなくてもいいのに。
そう思ったジョエルはある提案を持ち掛ける。
「実は僕は女性に膝枕することに憧れていたんだ。ぜひやらせてくれないか?」
ジョエルの頼みであれば、ソフィアは断ることは出来ない。
ソフィアはジョエルの隣に座って、ジョエルの膝に頭を乗せた。
男性にこんなことしたこと無いから恥ずかしいわ。
でも、大きな手が気持ちよくて小さい頃にママにして貰ったのを思い出すわ。
ソフィアの頭を撫でるジョエルの手と馬車の揺れが気持ち良くて、ソフィアはいつの間にか眠っていた。
ソフィアの寝顔を見て、ジョエルは微笑む。
こんなかわいい姫がそばにいてくれるなんて幸せだな。
戦いに徴兵された時にはまさか姫を連れて帰るなんて想像もしてなかったよ。
ソフィアの栗色の髪を撫でながら、ジョエルは戦いの始まりを思い返していた。
「いえ、大丈夫です。ジョエル様のお話に興味がありますので、ぜひお聞かせ下さい」
本当は不仲な家族のことなど頭にも無かった。
しかし、そんなことを言う訳にもいかず、ソフィアはジョエルに話の続きをするように促した。
ソフィアにおだてられて上機嫌なジョエルは、子どもの頃の話などたくさん語る。
内心はどうでもいいと思いながら、ソフィアは笑顔で相槌を打ち続けた。
こんなに笑顔で家族の話が出来るなんて、やっぱりジョエル様は幸せな家庭で育ったのね。
私とは無縁の世界過ぎて理解出来ないわ。
ある程度話をするとジョエルはソフィアの話も聞きたくなって話題を振る。
「ソフィアには兄弟はいるのかい?」
「はい、弟と妹がいます。ジョエル様はご兄弟がいらっしゃるのですか?」
家族の話をしたくないソフィアは最低限だけ答えて、話をジョエルに戻す。
ソフィアからの質問に自分に興味を持って貰えたと思ったジョエルは、嬉しくてまた語り始めた。
「養子なんだけど弟がいるんだ。元は学校の後輩だから弟と言うより友人に近いんだけどね。優秀な弟は首都で働いているからまた帰って来たら紹介するよ」
「そうなんですね。お会い出来る日を楽しみにしております」
普通の人であれば、どんな仕事をしているのか、どんな経緯で養子になったのかなどを質問して話を広げるだろう。
しかし、あまり他人に興味の無いソフィアはそれ以上突っ込んで聞くことは無かった。
やがて、昼食の時間となったため、街に入ると馬車を止めて宿屋の食堂に入る。
庶民が多く集まる場所のようでガヤガヤとした店内にソフィアは少し驚いた。
「後宮暮らしの君には合わない場所でごめんね。手持ちが少ないから貴族が利用するレストランには行けそうに無いんだ」
眉を下げながら謝るジョエルに、ソフィアは慌ててフォローする。
「いえ、ジョエル様と同じ食事を頂けるだけで身に余る程です。ありがとうございます」
地下牢の粗末な食事に比べれば、温かいご飯が食べられるだけで十分幸せであった。
しかも、ここでは食事を奪われることは無い。
美味しそうに食べるソフィアを見て、ジョエルは口に合わない食事でも何一つ文句を言わない姿に感動しながら食事を終えた。
馬車は再び、ブランシール領に向けて進んでいく。
景色の良い湖畔の道に差し掛かり、2人は窓の外の景色を眺めていた。
ふとジョエルが視線をソフィアに向けると、満腹になり睡魔に襲われて船を漕ぐ姿が目に入る。
「眠たいのなら遠慮せずに寝て構わないよ」
「見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。ジョエル様の前で居眠りなど恐れ多いことです」
ソフィアは慌てて姿勢を正すが、ジョエルはソフィアに遠慮させてしまい、申し訳なく思う。
そんなつもりで言った訳じゃないんだ。
我慢しなくてもいいのに。
そう思ったジョエルはある提案を持ち掛ける。
「実は僕は女性に膝枕することに憧れていたんだ。ぜひやらせてくれないか?」
ジョエルの頼みであれば、ソフィアは断ることは出来ない。
ソフィアはジョエルの隣に座って、ジョエルの膝に頭を乗せた。
男性にこんなことしたこと無いから恥ずかしいわ。
でも、大きな手が気持ちよくて小さい頃にママにして貰ったのを思い出すわ。
ソフィアの頭を撫でるジョエルの手と馬車の揺れが気持ち良くて、ソフィアはいつの間にか眠っていた。
ソフィアの寝顔を見て、ジョエルは微笑む。
こんなかわいい姫がそばにいてくれるなんて幸せだな。
戦いに徴兵された時にはまさか姫を連れて帰るなんて想像もしてなかったよ。
ソフィアの栗色の髪を撫でながら、ジョエルは戦いの始まりを思い返していた。
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