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番外編
導かれる未来(Side アラン 後編)
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どうも泣いて帰るプラムを見た騎士がいたようで、翌月、アランが訓練後に食堂に寄ると、何人かの騎士から声を掛けられた。
1人でいるとプラムのことを考えてしまうため、騎士たちと談笑して気を紛らわそうと思ってアランは食堂を訪れたが、結局プラムのことから逃れられなかった。
「副団長、あんなかわいい女の子を泣かすなんて、何やってるんですか」
「いや、すまない。何とか彼女を傷付けないように断ろうと思ったが、出来なかった」
「どんな言い方でも好きな相手に断られたら、誰でも傷付きますよ。俺だったら喜んで付き合うのに。今度、声を掛けてみようかな」
彼女と他の男性が付き合うのは嫌だとアランは感じたが、自分にそんなことを言う権利がないのは分かっていた。
渋い顔をしていると、突然食堂の扉が開き、聞き馴染みのある声が響いた。
「失礼します!副団長のアラン様はいらっしゃいますか?お話したいことがあります!」
先月、告白を断ったからもう来ないと油断していたアランは、プラムの姿を見て驚いた。
皆の前で逃げる訳にもいかず、空き部屋を探して彼女と移動した。
そして、プラムの生い立ちを知ることとなった。
「だから、私は見かけだけの令嬢なのです。むしろ私の方が釣り合わないのですが、どうか告白の返事を考え直していただけませんか?」
その話を聞いて、アランは同じ境遇のプラムならば信用出来るかもしれないと感じた。
しかし、貴族の令嬢に対する劣等感は無くなったが、歳の差が気になり、まだ一歩踏み出せない。
「7年前、後から助けた相手が貴族の子と知り、なぜ1人で街を歩いていたのか不思議に思ったことを思い出しました。話しにくいことを勇気を出して伝えてくださり、ありがとうございます。しかし、未来ある若者と私のようなおじさんは釣り合いません」
そんなアランを見限らず、プラムは説得を続ける。
アランの好きなところを彼女が並べ立て、聞いていてアランは少し気恥ずかしくなった。
「お会いしなければ、どれも知らないままでした。だから、もし私のことが嫌いでなければ、試しにお付き合いをしてくださいませんか?」
「確かにあなたのことは嫌いではありません。むしろ惹かれているのかもしれません」
真っ直ぐなプラムにつられて、アランもプラムの好きなところを初めて口にした。
しかし、好意を口にしながらも現実が忘れられず、不安感を拭えない。
「ただ貴族同士の結婚はしがらみも多い。反対されるかもしれない。だから、気軽に付き合うなど……」
「それはやってみないと分かりませんわ!アラン様はまだ起こってもいないことばかり心配されています」
確かに彼女の言う通りだとアランは感じた。
失敗ばかりを心配して行動を起こせない自分を恥じた。
「まずはやってみたいのです!壁にぶつかった時に足掻く覚悟は出来ています。どうか私とお付き合いしてください!」
このプラムの言葉にアランの心が動いた。
彼女とならばこの先の困難も一緒に乗り越えていけるかもしれない。
そう思えたアランはようやく自分の気持ちに素直になることが出来た。
「あなたの言う通りかもしれない。やってみないと結果など分からないのに、私はやる前から躊躇っていた。それに気付かせてくれてありがとう。私でよければ、どうかお付き合いしていただきたい」
これ程まで彼女に思われる自分は何て幸せ者なんだろうとアランは感じた。
それなのに今まで現実から逃げてばかりで、彼女に要らぬ苦労を掛けたことを恥じた。
自分の気持ちに素直になると、愛しい彼女への愛情が溢れ出てきて、彼女を抱き締めたくなった。
「あの、お願いがあるんだが、ハグしてもいいだろうか?」
「恋人になったのだから、許可なんていりませんよ!」
彼女を抱き締めると、今までの孤独な心が優しい気持ちで満たされていく。
そして、目が合った彼女と口付けを交わした。
1人でいるとプラムのことを考えてしまうため、騎士たちと談笑して気を紛らわそうと思ってアランは食堂を訪れたが、結局プラムのことから逃れられなかった。
「副団長、あんなかわいい女の子を泣かすなんて、何やってるんですか」
「いや、すまない。何とか彼女を傷付けないように断ろうと思ったが、出来なかった」
「どんな言い方でも好きな相手に断られたら、誰でも傷付きますよ。俺だったら喜んで付き合うのに。今度、声を掛けてみようかな」
彼女と他の男性が付き合うのは嫌だとアランは感じたが、自分にそんなことを言う権利がないのは分かっていた。
渋い顔をしていると、突然食堂の扉が開き、聞き馴染みのある声が響いた。
「失礼します!副団長のアラン様はいらっしゃいますか?お話したいことがあります!」
先月、告白を断ったからもう来ないと油断していたアランは、プラムの姿を見て驚いた。
皆の前で逃げる訳にもいかず、空き部屋を探して彼女と移動した。
そして、プラムの生い立ちを知ることとなった。
「だから、私は見かけだけの令嬢なのです。むしろ私の方が釣り合わないのですが、どうか告白の返事を考え直していただけませんか?」
その話を聞いて、アランは同じ境遇のプラムならば信用出来るかもしれないと感じた。
しかし、貴族の令嬢に対する劣等感は無くなったが、歳の差が気になり、まだ一歩踏み出せない。
「7年前、後から助けた相手が貴族の子と知り、なぜ1人で街を歩いていたのか不思議に思ったことを思い出しました。話しにくいことを勇気を出して伝えてくださり、ありがとうございます。しかし、未来ある若者と私のようなおじさんは釣り合いません」
そんなアランを見限らず、プラムは説得を続ける。
アランの好きなところを彼女が並べ立て、聞いていてアランは少し気恥ずかしくなった。
「お会いしなければ、どれも知らないままでした。だから、もし私のことが嫌いでなければ、試しにお付き合いをしてくださいませんか?」
「確かにあなたのことは嫌いではありません。むしろ惹かれているのかもしれません」
真っ直ぐなプラムにつられて、アランもプラムの好きなところを初めて口にした。
しかし、好意を口にしながらも現実が忘れられず、不安感を拭えない。
「ただ貴族同士の結婚はしがらみも多い。反対されるかもしれない。だから、気軽に付き合うなど……」
「それはやってみないと分かりませんわ!アラン様はまだ起こってもいないことばかり心配されています」
確かに彼女の言う通りだとアランは感じた。
失敗ばかりを心配して行動を起こせない自分を恥じた。
「まずはやってみたいのです!壁にぶつかった時に足掻く覚悟は出来ています。どうか私とお付き合いしてください!」
このプラムの言葉にアランの心が動いた。
彼女とならばこの先の困難も一緒に乗り越えていけるかもしれない。
そう思えたアランはようやく自分の気持ちに素直になることが出来た。
「あなたの言う通りかもしれない。やってみないと結果など分からないのに、私はやる前から躊躇っていた。それに気付かせてくれてありがとう。私でよければ、どうかお付き合いしていただきたい」
これ程まで彼女に思われる自分は何て幸せ者なんだろうとアランは感じた。
それなのに今まで現実から逃げてばかりで、彼女に要らぬ苦労を掛けたことを恥じた。
自分の気持ちに素直になると、愛しい彼女への愛情が溢れ出てきて、彼女を抱き締めたくなった。
「あの、お願いがあるんだが、ハグしてもいいだろうか?」
「恋人になったのだから、許可なんていりませんよ!」
彼女を抱き締めると、今までの孤独な心が優しい気持ちで満たされていく。
そして、目が合った彼女と口付けを交わした。
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