残党シャングリラ

タビヌコ

文字の大きさ
上 下
44 / 58

第四章「隻腕アヴェンジャーと奪還キャッスル⑭」

しおりを挟む
前回のあらすじ
新しく搦手が仲間に加わった!


ところ変わらず尾方達。
一行は新たな協力者、搦手を引き連れアジトを奥へと進んでいた。
「もう、信頼してよん。私達、仲間でしょ?」
ついさっき無理やり仲間になったばかりの搦手が、これでもかとワザとらしい猫撫で声で尾方に語りかける。
「信頼はしないけど信用はしてあげるから今はそこで譲歩してよ。どう考えても怪しすぎるってば」
尾方は片手で頭を抱えながら早足で絡んでくる搦手を引き離す。
それに負けじと搦手も歩幅を広げる。
「まぁ、今はそれでいいかしら。それより現状把握してる情報交換をしましょう?」
搦手はその場でクルリとターンをし、話題も変える。
「まずは信用を勝ち取るためにも私からね。私達、睦首劇団の今回の目的は、貴方との接触、及び同盟の締結。私は手勢を率いて貴方の行き先をリサーチ。先回りしてこのアジトに到着。でもなんか先客がいたから喧嘩売って暴れてたって感じかしら」
「目的忘れるの早くない...?」
尾方は呆れて溜息を吐く。
「ほら、今度はそっちのお話を聴かせて頂戴?」
搦手はお次にどうぞといった風に、手の平を上にして尾方に向ける。
「(さて、どこまで話していいものか...)」
「どこまでも行きましょう?」
「モノローグ読まないで?」
困った尾方は視線を後ろに流す。
そこに飛んでいるドローンの主に助けを求めているのは明確である。
空気を読んでドローンが尾方に近づく。
「メメカちゃん...! お願い出来る...!」
「えー、私さん係わり合いになりたくないからワザと口を閉ざしてたんスけど...」
「そこをなんとか...! この辺の線引きはおじさんには酷なんだよ...!」
「大げさッスねぇ、こっちも大した情報持ってないんスし、全部言っちゃっても大丈夫ッスよ」
「......メメカさん!」
「...ハァ、...今度私さんの買い物に付き合ってくれるなら考えなくもないッスよ」
「やるやる! 荷物もちでもサイフ役でも頑張っちゃうから!」
「...交渉成立ッスね」
中年の悲壮な願いにJKが応える。
ドローンは早速尾方の前に出る。
『あー、あー、突然失礼するッス搦手さん。私さんは葉加瀬 芽々花。メメント・モリに技術提供している者ッス』
「あら、ご丁寧にどうもありがとう葉加瀬ちゃん。搦手よん。メメント・モリの協力者同士仲良くしましょう♪」
突然の知らぬ存ぜぬの声にも搦手は平然と対応する。
「はい、どうぞよろしくッス。ここからは尾方のおっさんに代わりまして、勝手ながら現状の情報開示を私さんが務めさせていただくッス」
「全然構わないわよ。誰にでも得意不得意あるものね」
搦手は快諾する。
葉加瀬は、差し障りのない部分。組織の目的や今回の作戦の内容、組織復興の経緯などを搦手に語った。
その際、現組織の構成やメメント・モリの壊滅に関する情報など、後に交渉のカードになりそうな情報は伏せて伝えた。
「なるほどねん。大体流れは分かったわん♪」
一連の情報を、搦手は吟味するように傾聴した後、そう満足そうに言った。
「貴方みたいな人が裏にいるならひとまずは安心かしら、正直その辺りは心配だったから」
本当に安心したように搦手は一息つく。
「ご納得いただけたようでなによりッス」
ふぅっと葉加瀬も同じく一息つく。
「メメカちゃんお疲れ様。大変助かりました」
そそくさと尾方がドローンの後ろから出てくる。
「全くッスよおっさん。こういう事も少しづつこなせる様になってくださいね?」
「それ私も思ったわ。任せっきりは良くないと思うの。もうベテランなんだから弁舌も多少は出来るようにならないと」
尾方は静かに悟る。
「あ、こういう時僕を責める役が一人増えた」と。
尾方が達観の眼差しを虚空に向けている時、
なにかに気づいたように搦手がドローンに話しかける。
「あ、そういえば直近のことだから教えて欲しいんだけど。襲撃してきた天使についての情報ってある? もしかしたら私の組織の情報で割り出せるかも」
「あー、それには及ばないッスよ。既に名乗りを聴いてるッスから。確か戒位二十九位。筋肉の天使、筋頭 崇って言うマッチョッス」
その名前を聴いたとき、これまで平静を装ってきた搦手の眉がピクリと揺れた。
「そう、よりにもよって...向こうもかなりキテるってことね」
眉間に手を当てて、首を横に振る搦手。
「ど、どうしたッスか搦手さん? なにか知ってるんスか?」
搦手は顔をあげて言う。
「大天使って知ってるかしら?」
「は、はい...戒位十位以下の天使側の最高戦力ッスよね...?」
「そう。味方にも天災として恐れられる化け物共。それが大天使十躯」
無論、尾方達は知っている。
尾方に関しては、その片鱗を味わっている。
「それで、その大天使がどうかしたんスか? 件の天使は二十九躯ッスよね?」
搦手はそこで一呼吸置く。
「三回よ」
「へ?」
「筋頭崇、彼が大天使への昇級要請を断った回数よ。...彼は、実力だけなら間違いなく大天使級に匹敵するわ」
固まる一行。
その時、おあつらえ向きにアジトの奥から、鈍い爆発音の様な音が響いて来て、かの者との再戦を予感させた。


第四章「隻腕アヴェンジャーと奪還キャッスル⑭」END
第四章「隻腕アヴェンジャーと奪還キャッスル⑮」へ続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

後宮物語〜身代わり宮女は皇帝に溺愛されます⁉︎〜

菰野るり
キャラ文芸
寵愛なんていりません!身代わり宮女は3食昼寝付きで勉強がしたい。 私は北峰で商家を営む白(パイ)家の長女雲泪(ユンルイ) 白(パイ)家第一夫人だった母は私が小さい頃に亡くなり、家では第二夫人の娘である璃華(リーファ)だけが可愛がられている。 妹の後宮入りの用意する為に、両親は金持ちの薬屋へ第五夫人の縁談を準備した。爺さんに嫁ぐ為に生まれてきたんじゃない!逃げ出そうとする私が出会ったのは、後宮入りする予定の御令嬢が逃亡してしまい責任をとって首を吊る直前の宦官だった。 利害が一致したので、わたくし銀蓮(インリェン)として後宮入りをいたします。 雲泪(ユンレイ)の物語は完結しました。続きのお話は、堯舜(ヤオシュン)の物語として別に連載を始めます。近日中に始めますので、是非、お気に入りに登録いただき読みにきてください。お願いします。

アデンの黒狼 初霜艦隊航海録1

七日町 糸
キャラ文芸
あの忌まわしい大戦争から遥かな時が過ぎ去ったころ・・・・・・・・・ 世界中では、かつての大戦に加わった軍艦たちを「歴史遺産」として動態復元、復元建造することが盛んになりつつあった。 そして、その艦を用いた海賊の活動も活発になっていくのである。 そんな中、「世界最強」との呼び声も高い提督がいた。 「アドミラル・トーゴーの生まれ変わり」とも言われたその女性提督の名は初霜実。 彼女はいつしか大きな敵に立ち向かうことになるのだった。 アルファポリスには初めて投降する作品です。 更新頻度は遅いですが、宜しくお願い致します。 Twitter等でつぶやく際の推奨ハッシュタグは「#初霜艦隊航海録」です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

処理中です...