残党シャングリラ

タビヌコ

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第三章「中年サヴァイヴァーと徒然デイズ21」

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前回のあらすじ

中年、裏社会に知り合い


僕は訳あって、人より少しだけ自分の過去が鮮明だ。
それは僕が、よく過去を顧みるからに他ならない。
まぁ、僕の人生なんて、戦いに次ぐ戦いで進歩がないわけだけど、
その代わり映えしない戦いの中でも強く記憶に残る戦いがいくつかある。その中の一つ。最も新しい記憶。。
それは、我ら悪魔が最大戦力と言われていた【メメント・モリ】と同じく最高戦力の呼び声高い【悪海組】が神宿エリアを取り合って起きた戦い。
通称【二魔神宿戦線】。
僕はこの戦いに、いつも通り最前線で参加していたわけだけれど。
その中で、とても印象に残っていた奴が居る。
悪海組組長の当時側近であった男。國門 忠堅である。
彼は当時、まだ幼さが残る少年であったにもかかわらず、メメント・モリの猛襲を、その身一つでなんども耐え抜いてみせたのだ。
最前線で活き活きと組織の盾となるその在り方は、僕には少し、眩しかったのを覚えてる。
だが、長い間硬直状態にあったこの戦いも、とある事件をきっかけに動きだす。
原因は他でもない。尾方巻彦。僕だ。
膠着状態を良く思わない僕は、単身悪海組の陣営に赴き、交渉を持ちかけた。
「もう一騎打ちで決めない?」
そして悪海組が、僕の相手として選出して来たのが、後の若頭、國門 忠堅だった。
しかし、僕の権能、また彼の権能も相まって一騎打ちは泥仕合へ。
勝者無きこの戦いは、引き分けで幕を下ろし、結局神宿は、両組織が真っ二つにして管理することになった。
そこから先はご存知のとおり、両組織は現在、壊滅しております。

「と、そんな感じかな」
尾方は、加治医師に知ってる事を話せと言われ、つらつらと過去の話を語った。
「なるほどな。それで先ほどの殺気か。簡単に話したが尾方。お前なにか彼に恨みを買うような事したんじゃないか?」
尾方は少し考える。
「どれだろ? ま、数え切れないほどにはあると思うよ?」
「...まぁいい、流石に過去の因縁までは俺の治療対象外だ。そっちでなんとかしろ」
「へいへい」
尾方がやれやれと國門の方に向き直ったその時、
國門が目を開けているのに尾方が気づいた。
「やぁ、國門少年久しぶり。相変わらず頑丈だねぇ?」
「......夢じゃなかったんか」
國門は、心底うんざりしたように大きな溜息を吐く。
「俺もだが、お前も歳食ったなぁ。いけすかん感じはなんも変わりゃせんが...」
「君の方は結構変わったね。そのちょくちょく出るよく分からない方言みたいなのは相変わらずみたいだけど」
ふんっと國門は尾方から目を逸らし、部屋の中を見渡す。
すると必然、白衣の男が目に入った。
「...白衣、医者か? まさかこの治療はあんたが?」
加治医師は一歩前に出て答える。
「尾方の担当医、加治健二郎だ。君の事を見かけたのは偶然だが、重傷だったゆえ、応急措置のみさせて貰った。あとは担当医に引き継がせて欲しい」
すると國門はバッと座りなおし、深々と頭を下げる。
「助かった! 先生は命の恩人だ! あの傷で生きてるなんて夢みとうようじゃ」
「あまり動くな。傷に響くぞ」
あくまで傷に心配をする加治医師
すると國門は、ニカッと笑う。
「心配無用よ先生! 俺は!」
バンッと國門はその場で飛び上がる。
「あ! こら! ここではやめ――」
慌てて尾方が止めに入る。
そして、國門が足を床に着けた瞬間。
ザァン!!!!
衝撃と共に、國門の足元に無数の裂けた様な傷跡が出現する。
舞う床の断片、顔を避けた二人が再度國門に目を移すと、
そこには、『無傷』の國門忠堅の姿があった。
「俺は、不屈の悪魔、悪海組若頭! 國門忠堅だ!」

悪魔組織『悪海組』、若頭、『國門 忠堅』
権能『不撓式(カットアンドトライ)』
【地に足着く限り、体への損害が全て足元の物質に置換される。既になんらかの損害を被っていた場合、その総量に比例した損害が足元の物質に置換され、体の傷は無くなる】

「あー...床が...敷金が...」
尾方は緩やかに膝から崩れ落ちた。
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