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前略、合流と再会と

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「取り逃がしました」

「ごめん、あたしも逃げられちゃった」

 とりあえず合流したあたしたちは、それぞれの結末を報告しあった。

「話す機会があったんだ、でも、何もできなかったよ……」

「1度は捕らえました、ですが消えました」

 リリアンは捕らえるところまでいったらしい、あたしはダメだなぁ……、せっかく話せたのに。
 それにしても、消えたというのは魔術だろうか、便利なものだ。

「さて、どうしますか?」

 リリアンは、そんなあたしに何か文句を言うこともなく聞いてくる。 
 出会った頃のリリアンなら、先に進むと言っていただろう。

 なら、あたしの答えは決まっている、なんとかしたい。
 何ができるかは分からない、でもそう思うなら、そのまま伝えよう。

「私は……1度ここを見捨てるべきだと思います」

 あたしが口を開くよりも先に、リリアンが言う。
 まるで出会った頃のようなセリフを。
 ただ……

「えっと、理由を教えてくれる?」

 聞いてみよう、あたしも前みたく、すぐに否定するのではなく。
 
 理由は2つ。
 その言葉に迷いを感じる事。
 そして、今のリリアンは自分の目的の為だけに、行動してるわけじゃないと知ってるからだ。

 ならリリアンなりの考えがあるはずだ。
 あたしも、リリアンも変わったのだ、ここまで歩いてきて。

「ドラゴンには勝てません。今の私たちには打つ手がありません」

「打つ手がない……」

「はい、最強の種族です」

 あんなにも強いリリアンが言う、打つ手がない、勝てないと。
 確かに、あたしもその姿から感じた、崩壊を。

「ならば今度こそ大きな街に出て、助けを呼びましょう。これだけの事件です、すぐに動いてくれるでしょう」

 正しい、リリアンの考えは今回も正しい。
 あたしもそうしたい、でも1つだけ気になる事がある。

「ねぇ、リリアン。そうしたらラルム君やドラゴンはどうなるのかな」

 答えたくなければそれでいい、嘘をついても構わない。
 そうすればあたしも納得して、街へ向かえる。

 少しの沈黙。
 リリアンはゆっくりと口を開く。

「おそらく、いえ、確実に報いをうけるでしょう。その命で」

 それだけの事をした、当たり前だ。
 それでも、それでもさ。

「ごめんね、リリアン。あたし、なんとかしたいよ、何にもできないかもしれない、だとしても」

「やっぱり、あなたはそうなんですね」

 想像していたのは呆れた声。
 返ってきたのは悲しい声で。

「少し前まで戦友だったんだ、ぶん殴って、謝らせて、償わせたい、生きてるままで」

 死は逃げだ、なんて格好良いことは言えない。
 でも、死んだらそこから何も変わらない、彼が変わってしまったのなら戻したい。

「ですが、謝る相手も、償う相手も、すでに失われてしまいました」

 そうだ、勢いこそ弱まっているが、今なお燃え盛る炎。
 その中で、全てが失われた、多くの命が。

「大丈夫、命に関してはあたしがなんとかするよ」

 正確にはあたしじゃないけど、多分、なんとかなる。

「……それでも私は、あなたのやる事ではないと思います」

 リリアンはまだ納得してくれないみたい、あたしが引き下がらないのを知っててもなお。
 
「私もそう思いますねぇ」

 リリアンを説得するべく、言葉を選んでいると、別の声が聞こえた。
 ここには、あたしとリリアンしかいないはずなのに……
 それに……聞いたことがある、この胡散臭い声。

「はろはろ~」

「このエセ天使がぁ!!!」

 片手剣を抜く、装備変更、両手剣へ。
 前の反省をいかして縦ではなく横、全力で振り抜く!

「なにゆえ!?」

 防がれる、膝と肘に刃を挟み、受け止められる。
 その少しオシャレな防ぎ方に、加速する苛立ち。

「次に会ったらただじゃ置かない、そう言ったはずだ」

 冷たくて吐き捨てる。
 前回も言ったが、忠告を無視して出てくるほうが悪い。

「だから言われてませんけど!?」

 あ、そういえば心の中で言っただけだった。
 まぁ、差し引きでエセ天使が悪い。

 そんなこんなで、あたしをネオスティアに送り込んだ張本人。
 エセ天使と久しぶりの再会だった。
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