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前略、名前と帰還と

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「いや、一緒に行かないの!?」

 階段を走るあたしは少し前に、共に戦った金髪を思い出して叫ぶ。今更ながら。

 現在、あたしは1人だ、地上への階段を1人で走ってる。
 はて?あの流れだとギンも一緒にいるはずだけど、なにがどうしてこうなった。
 
 ほわんほわん、と回想が始まる、階段を登りきる前に思い出そう。

「悪いな、セツナ。俺は行かねぇ」

「え、なんでよ」
 
 戦いを終えて、走り、足を速めたあたしの背中から、ギンがそんなことを言い出した。
 あたしも思わず急ブレーキ。

「ここで3人で話し合ってみるよ。この街の事とかさ」

 そうか、それなら仕方がない、迷って自分を整理する時間は必要だ。
 ……それにほら、愛の話とかもあるんでしょ?
 戦闘中に聞いてきたくらいだし、ギンの恋路に良い結果があることを祈ろう。

「……なんか、変なこと考えられてるような、気がするんだが。まぁいいか、それよりよ!」

 友達の恋を心の中で祈っていると、ギンが興奮気味に詰め寄ってきた。
 危うく、剣を抜くところだった。

「『セツナドライブ』超!格好良いじゃねぇか!」

「だよね!」

 心の友がいた。ずっと信じてたぜ!

「やっぱりあれか?自分の名前が入ってるところが自分だけの必殺技!感を強めてるよな!」

「おぉ!分かってくれてる!」
 
 嬉しい、思わずハイタッチ!
 なんだろうこの嬉しいの、今までダサいダサいと言われ続けた身としては、ついに報われた気持ちでいっぱいだ。

「クッソ!盲点だったぜ!俺も新技には自分の名前入れるか!」

「いいんじゃないかな!高らかに叫ぼう!」

 しばらく考えて、あたしの心の友は閃いたような顔で。

「The・シルバーファースト」

「かっけぇぇええ!」

 なるほど、銀一でシルバーファーストか、それこそ盲点だった。
 あたしも刹那を英語にしようかな?……なんて言うんだろ?

 今更ながらネオスティアには、いろいろな文字がある。
 まさに異世界語!って感じのが5割程。あたしのいた世界の文字が4割程、残り1割はよくわからない、文字かどうかも判断つかない。

「なんか違和感なく受け入れてたけど、異世界だけど漢字もあるんだよね」

 普通の異世界に漢字や英語はないだろう。もちろん平仮名と片仮名も。

「う~ん、今更ながら名前、漢字にしようかな?」

 口に出して考える、なんか異世界への先入観から『セツナ』を名乗っていたけど、ネオスティアにおいて『刹那』でもなんの問題もない。

「書くの面倒だし、このままでいっか」

 実は昔から、画数の多さが不満だったのだ。
 結論、今の方が楽。

「よし、そろそろ行くよ!」
 
 1つの考えが纏まり、一区切りついたところで先に進む意志を固める。

「俺が言っていいのかわかんねぇけどさ、頑張れよセツナ!」

「りょーかい。行ってくるよ、シルバー!」

 格好良く返す。最高にイカすコードネームと共に。

「あぁ!任せたぜ!モーメント!」

 なるほど、刹那はモーメントか。
 ……なんでギンの方が詳しいんだ?元の世界に帰ったら英語を頑張ろう。

「回想終了、今回は早かったね」
 
 自分に語りかける。そんなこんなで出口が見えたので飛び込む。

「あたし、帰還!シャバの空気はおいしいな!」

 1度は言ってみたかったセリフを言えて、あたしは大変満足だった。
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