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前略、宴会と悲鳴と
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その夜は宴会だった。
遺跡の踏破と、隠れ住んでいた呪術師を捕まえたことを祝いって、酒場側が冒険者を集めて開いてくれたのだ。
「よう嬢ちゃん!あんたがリーダーか?とりあえず食いな!」
「ありがとう!知らない人!いただきまーす!」
別にリーダーではないけど、依頼人のラルム君がそういったらしい。少し照れる。
漫画でしか見たことのない骨付きの肉にかぶりつく。うん!美味しい!
酒場を見渡す、すると今日、一緒に死線を乗り越えた仲間たちも、あちこちで楽しんでるみたい。
「それでさ!そこでギュンて飛んで、あたしの弾にさ!」
リッカは他の冒険者たちに、今日のことを興奮気味に語っている。
遺跡で見せた弱気な表情はもうどこにもない。
「えぇ…大変興味深い遺跡でした」
ラルム君は魔術師仲間?同じようにローブを着た人たちと静かに飲み交わしてる。
あの後、呪術師を縛ったあと遺跡の文字をゆっくりと読んでいた、なにか前に進めたらいいな。
孤高なる暗黒騎士は……ここにはいない。あの後すぐに、子供たちの待つ場所へ帰ってしまった。
寂しいけど寂しくない、だってまた会うって約束したからね。
「なにをふけっているんですか」
この声、もはや安心感すらある。
振り返ると、リリアンが皿一杯の料理と共にそこにいた。
相変わらず、よく食べる。
「ちょっとね。出会いと別れについて」
寂しい気持ちに気づかれないように、笑顔で。
仕方ない、みんな冒険者だ。それぞれ欲しいものや、やりたいことがあって旅をしている、だから。
「寂しいなんて勝手だよね」
本当はもうちょっと、みんなで冒険したい。
でもあたしの独りよがりで誰かの足枷になってはいけない、やっぱり明日は前にしかないのだ。
「別にいいじゃないですか」
「え……」
あまりに予想外の反応に驚く、てっきり厳しい言葉が飛んでくるものだと…
「仲良くなった人と分かれるのが寂しい、当たり前です、人は孤独に生きれるようにできてません。」
隣に座り、リリアンは言葉を紡ぐ。
「私たちは冒険者です。自分だけの冒険がしたくて世界を回ります、出会いも別れも日常茶飯事です」
いつになく喋るリリアン。そして、と前置いて。
「その2つは矛盾しません。別れの度に寂しいと思ってもいいじゃないですか」
あたしに顔を向けず、でも料理にも手をつけず、リリアンは続ける。
「だって、また会えるんですから。自分なりの道を歩き続ければ、明日は前にしかないんでしょう?」
そうだ……そうだね!
リリアンがあたしの言葉を言うのは…なんだか照れくさい。それでも。
「ありがとう、リリアン。元気でたよ」
満足げな顔で、なによりです。優しくて温かい言葉だった。
「それと3つほど質問が」
「ん?なにかな?」
3つもあるのか、でも励ましてもらったし、答えられる事なら答えよう。
「諦めない、諦めない。なにがあなたを、そこまでさせるのですか?」
あぁ、それか…悪いけど、それに関しては話すつもりはない。
昔の事は、元の世界の話は、あたしの人格形成に深く関わっているが、少なくともネオスティアに、その話しを持ち込むつもりはない。
嘘をついてもバレるだろうから、言えないということを伝える。
「だからさ、主人公になりたいからってことで、納得してくれないかな?」
もちろん、これも嘘じゃない。これまでの冒険があって本当にそう思う。
やっぱり納得いかなそうだけど、諦めたように次の質問に移ってくれた。
「では2つ目、あれは口説き文句ですか?」
んん?質問の意図がわからない。あれ、とは?
「あの『~~なら、あたしが~~』ってやつですよ。ノノさんにもいってましたよね?」
あ、あれか。
やっぱり聞いていた、ノノちゃんに勇気を、りやラルム君に夢を。
「深い意味はないよ、勢いで喋ってるからね」
本当だ、別に口説いてるわけじゃない。
「そうですか。では最後の質問です」
まだ納得のいってないようなリリアンは、あたしの腕を固めて………腕を固めて?
「ラルムさんにメイド服を着せようとしてましたね?こんなに完璧なメイドが近くにいるのに」
ギリギリと腕に圧がかかる。これ、折れちゃわない?
「最高のメイドはリリアン様です。と言うまで離しません」
ま、まずい…!!リリアンは本気だ…!そういうところだぞ!!
さっきまでの雰囲気はどこへやら、高まる圧に冷や汗が…!
「て、訂正する気はないよ!」
こっちも折れる気はない!まだいける!
あたしは諦めない!
「少し強めに締めましょう」
ぎゃあぁぁぁぁぁああああっ!!!!!
ガヤガヤと活気の溢れる宴会で、あたしの悲鳴は騒ぎの中に紛れていった。
遺跡の踏破と、隠れ住んでいた呪術師を捕まえたことを祝いって、酒場側が冒険者を集めて開いてくれたのだ。
「よう嬢ちゃん!あんたがリーダーか?とりあえず食いな!」
「ありがとう!知らない人!いただきまーす!」
別にリーダーではないけど、依頼人のラルム君がそういったらしい。少し照れる。
漫画でしか見たことのない骨付きの肉にかぶりつく。うん!美味しい!
酒場を見渡す、すると今日、一緒に死線を乗り越えた仲間たちも、あちこちで楽しんでるみたい。
「それでさ!そこでギュンて飛んで、あたしの弾にさ!」
リッカは他の冒険者たちに、今日のことを興奮気味に語っている。
遺跡で見せた弱気な表情はもうどこにもない。
「えぇ…大変興味深い遺跡でした」
ラルム君は魔術師仲間?同じようにローブを着た人たちと静かに飲み交わしてる。
あの後、呪術師を縛ったあと遺跡の文字をゆっくりと読んでいた、なにか前に進めたらいいな。
孤高なる暗黒騎士は……ここにはいない。あの後すぐに、子供たちの待つ場所へ帰ってしまった。
寂しいけど寂しくない、だってまた会うって約束したからね。
「なにをふけっているんですか」
この声、もはや安心感すらある。
振り返ると、リリアンが皿一杯の料理と共にそこにいた。
相変わらず、よく食べる。
「ちょっとね。出会いと別れについて」
寂しい気持ちに気づかれないように、笑顔で。
仕方ない、みんな冒険者だ。それぞれ欲しいものや、やりたいことがあって旅をしている、だから。
「寂しいなんて勝手だよね」
本当はもうちょっと、みんなで冒険したい。
でもあたしの独りよがりで誰かの足枷になってはいけない、やっぱり明日は前にしかないのだ。
「別にいいじゃないですか」
「え……」
あまりに予想外の反応に驚く、てっきり厳しい言葉が飛んでくるものだと…
「仲良くなった人と分かれるのが寂しい、当たり前です、人は孤独に生きれるようにできてません。」
隣に座り、リリアンは言葉を紡ぐ。
「私たちは冒険者です。自分だけの冒険がしたくて世界を回ります、出会いも別れも日常茶飯事です」
いつになく喋るリリアン。そして、と前置いて。
「その2つは矛盾しません。別れの度に寂しいと思ってもいいじゃないですか」
あたしに顔を向けず、でも料理にも手をつけず、リリアンは続ける。
「だって、また会えるんですから。自分なりの道を歩き続ければ、明日は前にしかないんでしょう?」
そうだ……そうだね!
リリアンがあたしの言葉を言うのは…なんだか照れくさい。それでも。
「ありがとう、リリアン。元気でたよ」
満足げな顔で、なによりです。優しくて温かい言葉だった。
「それと3つほど質問が」
「ん?なにかな?」
3つもあるのか、でも励ましてもらったし、答えられる事なら答えよう。
「諦めない、諦めない。なにがあなたを、そこまでさせるのですか?」
あぁ、それか…悪いけど、それに関しては話すつもりはない。
昔の事は、元の世界の話は、あたしの人格形成に深く関わっているが、少なくともネオスティアに、その話しを持ち込むつもりはない。
嘘をついてもバレるだろうから、言えないということを伝える。
「だからさ、主人公になりたいからってことで、納得してくれないかな?」
もちろん、これも嘘じゃない。これまでの冒険があって本当にそう思う。
やっぱり納得いかなそうだけど、諦めたように次の質問に移ってくれた。
「では2つ目、あれは口説き文句ですか?」
んん?質問の意図がわからない。あれ、とは?
「あの『~~なら、あたしが~~』ってやつですよ。ノノさんにもいってましたよね?」
あ、あれか。
やっぱり聞いていた、ノノちゃんに勇気を、りやラルム君に夢を。
「深い意味はないよ、勢いで喋ってるからね」
本当だ、別に口説いてるわけじゃない。
「そうですか。では最後の質問です」
まだ納得のいってないようなリリアンは、あたしの腕を固めて………腕を固めて?
「ラルムさんにメイド服を着せようとしてましたね?こんなに完璧なメイドが近くにいるのに」
ギリギリと腕に圧がかかる。これ、折れちゃわない?
「最高のメイドはリリアン様です。と言うまで離しません」
ま、まずい…!!リリアンは本気だ…!そういうところだぞ!!
さっきまでの雰囲気はどこへやら、高まる圧に冷や汗が…!
「て、訂正する気はないよ!」
こっちも折れる気はない!まだいける!
あたしは諦めない!
「少し強めに締めましょう」
ぎゃあぁぁぁぁぁああああっ!!!!!
ガヤガヤと活気の溢れる宴会で、あたしの悲鳴は騒ぎの中に紛れていった。
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