17 / 72
前略、依頼とイケメンと
しおりを挟む
初めての酒場で美味しいスイーツショップの場所を聞いてきたあたしは、孤高なる暗黒騎士と共に目的地へ急ぐ。
それをリリアンに伝えると複雑そうな顔をして見送ってくれた。
道中、孤高なる暗黒騎士から足音がしないことを不思議に思い、聞いてみる。あんなに重そうなのに。
「生業ゆえな、もし時間があれば伝授しよう」
「嬉しいな、楽しみにしてるよ!」
元の世界に戻っても便利そう。ほら、抜け出すときとか。それにしても。
「プリンとか食べるんだね」
まぁ、世界共通にして、万能の食べ物であるゆえに、我ながら愚問なのだが。
それでも、男性?そもそも人間?が食べるイメージはあまり浮かばない。いや、些細な問題か。
「我自身はあまり食料を必要とはせぬ、しかし」
遠くを見るような、孤高なる暗黒騎士。
「子供たちがな、食べてみたいと、所謂おつかいである」
その視線彼方には、子供たちが待っているのだろう。
「いい人なんだね、子供好きなの?」
だんだんとプリンによるテンションのブーストが落ちてきて、少しだけ生まれていた恐怖は話す内に薄れていた。
プリンに関わる人に悪人はいない。至言である。
あたしは答えのわかっている質問をしてみる。もちろん、嫌いなはずがないだろう。
「うむ、宝である」
予想よりも強い肯定、だからあたしにも優しいのかな?
「故に、その背のカゴ。誰かに強要されてるなら話しをつけてやろう」
あたしの背負う石入りのカゴをみて言う。やっぱり優しい、ちょっと怖いけど。
強要といえば強要だけど、強くなれたのも事実だ、自分からやめる気はない。
「ありがと、でも大丈夫!特訓だから」
「鍛錬か、幼いのによくやる」
しばらくの間そんな話しに花を咲かせる。口調は硬いけど、孤高なる暗黒騎士は意外に話し上手だった。
「ここかな?」
酒場で描いてもらった簡単な地図、その地図の✕印の場所までたどり着く。
店の看板には『街のお菓子屋さん』これもまた、あたしの世界で見るような小さなお店だった。
さぁ、行こう!と入ろうとしたが、孤高なる暗黒騎士が入れない。身体が大きいから。
仕方なく、あたしが代わりを努めようと提案したところ、店員さんが店先まできて対応してくれた。まさに神対応である。
孤高なる暗黒騎士が店員と話してる間に、リリアンからもらったお小遣いで自分の分を買う。約1週間ぶりのプリンだった。
「幸せだぁ~」
少しだけ、知ってる味と違いはあるけど、紛れもなくプリンだった。
卵が違うからだろうか?そこからしばらく、あたしは新しい味を堪能し続けた。
買い物を終えて、出てきた孤高なる暗黒騎士に別れを告げる。また会えたらいいな。
リリアンのもとに帰ろうと、酒場を目指す。その途中、曲がり角でなにかにぶつかる。
「おわっ……ととっ」
ギリギリ踏みとどまる。石入りのカゴを背負いつづけたバランス感覚を、なめないでほしい。
いやそれよりも。
「ごめんごめん、前を見てなかったよ」
駆け寄り、倒してしまった人に謝る。ただその外見をみて少し後悔する。
パツキンの不良だった。金色の髪と少しはだけたYシャツ、学生服のズボンと完全に夏服の不良だった。しまったなぁ。
「いや、こっちこそ急いでたからな、わりぃ」
ザッと頭を下げる不良。いい不良だった、きっと雨の日に捨て猫を拾う系だろう。
「オイ!ギン!何してんだ!」
後ろから一回り大きな不良。学ラン付きだった。
「すんませんス!」
ずんずん、とこちらに近づいてくる。
おっと、こっちの不良は許してくれないやつかな?
「女の子に倒されてんじゃねぇよ!むしろお前が受け身をとってやんな!」
一見、熊のような印象を持つ不良は、そんなことを言う、この街は暖かい人ばっかりで楽しい。
「すんません!次こそは!」
楽しい流れにあたしも便乗したくなる。
「そうだぞ、精進しろよギン」
「何様だお前!?」
「「ははははは!」」
仲良くなれそうだ、しばらく談笑して自己紹介を済ませる。
どうやらギンは銀一、後ろの大きな人はタイザンさんと言うらしい。
「セツナか……格好いいじゃねぇか!」
名前を褒められる、悪い気はしないね。
聞けば2人はギルド活動の一環でこの街に寄り、もう出発するところらしい。
「それじゃあ引き止めちゃいけないね」
「おう、気にすんな」
少し調子に乗ってしまった、タイザンさんのきのいい返事が嬉しい。
「今度、俺らの拠点にしてる街まで遊びにこいよ。『テンカ』って街だからよ!」
「了解、連れの悪魔の気が向けば絶対に行くよ。」
別れをすませて、今度はゆっくりと急ぐ、またぶつかったらいけない。
さて、そろそろリリアンの方も終わったかな。
「おかえりなさい。ゴムザルの申請はつつがなく終了しました」
しっかりとやってくれたみたい。お礼をして、いつ出発するのかを聞く。
「いえ、まだこの街をでません。あなたにお仕事です」
「お仕事?」
珍しい、いつも出発を急かすのに。
「やることができたのでその間の特訓にと。パーティーを組み、その人の護衛です」
もしかして、あたしがパーティーに憧れるって言ったからかな?だとしたら嬉しいな。
「おっけー、依頼人は?」
「こちらです」
リリアンの視線の先には……
「どうも、魔術師のラルムです。セツナさんよろしくお願いしますね」
「イケメンだぁーー!」
ネオスティアにきてからおそらく、初めてみるまともなイケメンに驚きを隠せなかった。
それをリリアンに伝えると複雑そうな顔をして見送ってくれた。
道中、孤高なる暗黒騎士から足音がしないことを不思議に思い、聞いてみる。あんなに重そうなのに。
「生業ゆえな、もし時間があれば伝授しよう」
「嬉しいな、楽しみにしてるよ!」
元の世界に戻っても便利そう。ほら、抜け出すときとか。それにしても。
「プリンとか食べるんだね」
まぁ、世界共通にして、万能の食べ物であるゆえに、我ながら愚問なのだが。
それでも、男性?そもそも人間?が食べるイメージはあまり浮かばない。いや、些細な問題か。
「我自身はあまり食料を必要とはせぬ、しかし」
遠くを見るような、孤高なる暗黒騎士。
「子供たちがな、食べてみたいと、所謂おつかいである」
その視線彼方には、子供たちが待っているのだろう。
「いい人なんだね、子供好きなの?」
だんだんとプリンによるテンションのブーストが落ちてきて、少しだけ生まれていた恐怖は話す内に薄れていた。
プリンに関わる人に悪人はいない。至言である。
あたしは答えのわかっている質問をしてみる。もちろん、嫌いなはずがないだろう。
「うむ、宝である」
予想よりも強い肯定、だからあたしにも優しいのかな?
「故に、その背のカゴ。誰かに強要されてるなら話しをつけてやろう」
あたしの背負う石入りのカゴをみて言う。やっぱり優しい、ちょっと怖いけど。
強要といえば強要だけど、強くなれたのも事実だ、自分からやめる気はない。
「ありがと、でも大丈夫!特訓だから」
「鍛錬か、幼いのによくやる」
しばらくの間そんな話しに花を咲かせる。口調は硬いけど、孤高なる暗黒騎士は意外に話し上手だった。
「ここかな?」
酒場で描いてもらった簡単な地図、その地図の✕印の場所までたどり着く。
店の看板には『街のお菓子屋さん』これもまた、あたしの世界で見るような小さなお店だった。
さぁ、行こう!と入ろうとしたが、孤高なる暗黒騎士が入れない。身体が大きいから。
仕方なく、あたしが代わりを努めようと提案したところ、店員さんが店先まできて対応してくれた。まさに神対応である。
孤高なる暗黒騎士が店員と話してる間に、リリアンからもらったお小遣いで自分の分を買う。約1週間ぶりのプリンだった。
「幸せだぁ~」
少しだけ、知ってる味と違いはあるけど、紛れもなくプリンだった。
卵が違うからだろうか?そこからしばらく、あたしは新しい味を堪能し続けた。
買い物を終えて、出てきた孤高なる暗黒騎士に別れを告げる。また会えたらいいな。
リリアンのもとに帰ろうと、酒場を目指す。その途中、曲がり角でなにかにぶつかる。
「おわっ……ととっ」
ギリギリ踏みとどまる。石入りのカゴを背負いつづけたバランス感覚を、なめないでほしい。
いやそれよりも。
「ごめんごめん、前を見てなかったよ」
駆け寄り、倒してしまった人に謝る。ただその外見をみて少し後悔する。
パツキンの不良だった。金色の髪と少しはだけたYシャツ、学生服のズボンと完全に夏服の不良だった。しまったなぁ。
「いや、こっちこそ急いでたからな、わりぃ」
ザッと頭を下げる不良。いい不良だった、きっと雨の日に捨て猫を拾う系だろう。
「オイ!ギン!何してんだ!」
後ろから一回り大きな不良。学ラン付きだった。
「すんませんス!」
ずんずん、とこちらに近づいてくる。
おっと、こっちの不良は許してくれないやつかな?
「女の子に倒されてんじゃねぇよ!むしろお前が受け身をとってやんな!」
一見、熊のような印象を持つ不良は、そんなことを言う、この街は暖かい人ばっかりで楽しい。
「すんません!次こそは!」
楽しい流れにあたしも便乗したくなる。
「そうだぞ、精進しろよギン」
「何様だお前!?」
「「ははははは!」」
仲良くなれそうだ、しばらく談笑して自己紹介を済ませる。
どうやらギンは銀一、後ろの大きな人はタイザンさんと言うらしい。
「セツナか……格好いいじゃねぇか!」
名前を褒められる、悪い気はしないね。
聞けば2人はギルド活動の一環でこの街に寄り、もう出発するところらしい。
「それじゃあ引き止めちゃいけないね」
「おう、気にすんな」
少し調子に乗ってしまった、タイザンさんのきのいい返事が嬉しい。
「今度、俺らの拠点にしてる街まで遊びにこいよ。『テンカ』って街だからよ!」
「了解、連れの悪魔の気が向けば絶対に行くよ。」
別れをすませて、今度はゆっくりと急ぐ、またぶつかったらいけない。
さて、そろそろリリアンの方も終わったかな。
「おかえりなさい。ゴムザルの申請はつつがなく終了しました」
しっかりとやってくれたみたい。お礼をして、いつ出発するのかを聞く。
「いえ、まだこの街をでません。あなたにお仕事です」
「お仕事?」
珍しい、いつも出発を急かすのに。
「やることができたのでその間の特訓にと。パーティーを組み、その人の護衛です」
もしかして、あたしがパーティーに憧れるって言ったからかな?だとしたら嬉しいな。
「おっけー、依頼人は?」
「こちらです」
リリアンの視線の先には……
「どうも、魔術師のラルムです。セツナさんよろしくお願いしますね」
「イケメンだぁーー!」
ネオスティアにきてからおそらく、初めてみるまともなイケメンに驚きを隠せなかった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】
Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。
でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?!
感謝を込めて別世界で転生することに!
めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外?
しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?!
どうなる?私の人生!
※R15は保険です。
※しれっと改正することがあります。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる