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最終話
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シャロンはコーデリアとガブリエルが結ばれたことを心から喜んだ。
コーデリアを幸せにしてあげたかった。自分のような人生を送って欲しくなかった。
ガブリエルにどうして手紙が途絶えたのかを聞かれたが、答えないと決めた。
自分は何もしていないのだ。ふたりが辿り着いただけのだから。
即位の祝宴の前にマイルスとダイアナにガブリエルが報告した。
ガブリエルが女王の配偶者となることに意義はない。むしろそうなればいいと思っていたくらいだ。
めでたい話は早速宴の席で発表された。
いくらなんでも早すぎると思ったが、コーデリアが喜んでいるのでガブリエルは即位に続く慶事に湧く歓声を受け入れた。
*****
ガブリエルの領地の管理をシャロンがすることに決まった。
コーデリアにはまだシャロンが必要だとガブリエルは思ったが、シャロンが自分を使って欲しいと言ったのだ。
「男爵の娘が大出世したし。それに、元愛人が現妻と一緒にいるのもどうかと思われるわ」
シャロンの率直にガブリエルは気まずい気持ちで顔を擦った。
「そういう下世話な噂話が大好きな人種は多いのよ。コーデリアはわたしたちの関係はわかっているから大丈夫だけれど、少しでも嫌なことは避けてあげたいの。でもわたしがコーデリアを愛しているのは変わらないから、逢いに来るのはやめられないわよ?」
「馬鹿を言うな。当たり前だ。コーデリアから君を奪うことは誰にもできない」
コーデリアは淋しがったが、ガブリエルの屋敷にいつでもコーデリアが来られるようにするとシャロンが約束して納得させた。
使用人から即位の祝いの手紙やコーデリアの大好きなりんごやりんごの木で出来た宝石入れを受け取った時の喜びは、ガブリエルが想像していた以上だった。
あの屋敷の使用人たちを懐かしみ、会いたがった。
ガブリエルが側にいてくれるようになったとしても、あの屋敷はコーデリアにとって特別なことには変わらないのだ。
*****
宮廷のコーデリアの部屋から出られる広いベランダにあるカウチの上で、コーデリアはガブリエルの膝に頭を乗せて横たわり寛いでいた。
ガブリエルは自分の膝の上にあるコーデリアの頭を撫で、うっとりとする瞳を見て愛おしそうに微笑んでいた。
「ガブリエル、って声に出して呼べるのが嬉しくてたまらない」
「お前は昔からオレを扱うのが上手い。そんなことを言われたらオレが堪らなくなる」
「わたしがガブリエルを上手に扱ったことがあったの?」
「いつもお前にいいように扱われていたぞ。オレはお前に弱い。抗えないようになっていたんだ」
「変なの。ガブリエルがわたしを育てたのに」
「逆だ。オレがお前に育てられた。お前が俺の天使だ」
コーデリアが嬉しそうに笑うと、ガブリエルはそれだけで幸せだ。
コーデリアという天使がガブリエルを幸せにし、ガブリエルという天使がコーデリアを愛で溶かす。
コーデリアを幸せにしてあげたかった。自分のような人生を送って欲しくなかった。
ガブリエルにどうして手紙が途絶えたのかを聞かれたが、答えないと決めた。
自分は何もしていないのだ。ふたりが辿り着いただけのだから。
即位の祝宴の前にマイルスとダイアナにガブリエルが報告した。
ガブリエルが女王の配偶者となることに意義はない。むしろそうなればいいと思っていたくらいだ。
めでたい話は早速宴の席で発表された。
いくらなんでも早すぎると思ったが、コーデリアが喜んでいるのでガブリエルは即位に続く慶事に湧く歓声を受け入れた。
*****
ガブリエルの領地の管理をシャロンがすることに決まった。
コーデリアにはまだシャロンが必要だとガブリエルは思ったが、シャロンが自分を使って欲しいと言ったのだ。
「男爵の娘が大出世したし。それに、元愛人が現妻と一緒にいるのもどうかと思われるわ」
シャロンの率直にガブリエルは気まずい気持ちで顔を擦った。
「そういう下世話な噂話が大好きな人種は多いのよ。コーデリアはわたしたちの関係はわかっているから大丈夫だけれど、少しでも嫌なことは避けてあげたいの。でもわたしがコーデリアを愛しているのは変わらないから、逢いに来るのはやめられないわよ?」
「馬鹿を言うな。当たり前だ。コーデリアから君を奪うことは誰にもできない」
コーデリアは淋しがったが、ガブリエルの屋敷にいつでもコーデリアが来られるようにするとシャロンが約束して納得させた。
使用人から即位の祝いの手紙やコーデリアの大好きなりんごやりんごの木で出来た宝石入れを受け取った時の喜びは、ガブリエルが想像していた以上だった。
あの屋敷の使用人たちを懐かしみ、会いたがった。
ガブリエルが側にいてくれるようになったとしても、あの屋敷はコーデリアにとって特別なことには変わらないのだ。
*****
宮廷のコーデリアの部屋から出られる広いベランダにあるカウチの上で、コーデリアはガブリエルの膝に頭を乗せて横たわり寛いでいた。
ガブリエルは自分の膝の上にあるコーデリアの頭を撫で、うっとりとする瞳を見て愛おしそうに微笑んでいた。
「ガブリエル、って声に出して呼べるのが嬉しくてたまらない」
「お前は昔からオレを扱うのが上手い。そんなことを言われたらオレが堪らなくなる」
「わたしがガブリエルを上手に扱ったことがあったの?」
「いつもお前にいいように扱われていたぞ。オレはお前に弱い。抗えないようになっていたんだ」
「変なの。ガブリエルがわたしを育てたのに」
「逆だ。オレがお前に育てられた。お前が俺の天使だ」
コーデリアが嬉しそうに笑うと、ガブリエルはそれだけで幸せだ。
コーデリアという天使がガブリエルを幸せにし、ガブリエルという天使がコーデリアを愛で溶かす。
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どの小説も皆が幸せになって嬉しいのに、物語が終わってしまうのが寂しいです。
素敵なお話をありがとうございます。
次のお話も楽しみにしています。
mememeさん、最後まで読んでくださってありがとうございます!
嬉しいご感想頂き、ものすごい励みになっています。
また読んで頂けるものが書けるよう頑張ります。
優しいお言葉、本当にありがとうございました♪
小ろくさん、はじめまして!
牢獄王女の恋完結おつかれさまでした。
コーデリアが可愛すぎました。
牢獄でガブリエルが名前を確認した時に自分の名前を言ったシーンから心を鷲掴みされてしまいました。
登場人物が全てコーデリアを大事にしてくれほっこりしてしまいました。
切ない場面もありましたが、コーデリアはじめガブリエルもシャロンも幸せになって良かったです。
素敵なお話ありがとうございました😊
ななかさん、はじめまして!
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