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最終話 繰り返される永遠の日々の続き
しおりを挟む「ルカ、これ持って帰ってカミさんと食え。ウチの庭で採れたやつだ」
鍛冶屋の親方に紙袋を渡され、ルカは中を覗き込んだ。
オレンジ色の小さな果実がゴロゴロと入っている。ビワだった。
「嬉しいな。これは好ですよきっと。ありがとうございます」
ルカはニコニコと微笑んで親方に礼を言った。
ルカがスヴェトラーナを見続け、もしかしたらこのハロペスの街からすぐには出ないかもしれないと思いこの鍛冶屋で働き始めた。
当時泊まっていた宿屋の旦那に仕事を探していると話をしたら紹介されたのがきっかけで働くことになった。
鍛冶屋の仕事は兵士しかしたことのないルカには初めての経験だったが、元々自分の剣は自分で研いでいたしコツコツとやっていくような仕事は真面目なルカに合っていた。
もう随分長く務めることとなったものだ。
スヴェトラーナがこの街からいなくなったら辞めると決めていたが、ふたりでここで生きて行くと決めてからルカはこの仕事を続けて行くことも決めた。
働き始めた頃はここに長くは居ないと言っていたし、自分の事をあまり話さないルカを親方は掴めない男だと思っていた。
真面目で誠実な人柄が伝わって、いつしか親方にとって息子のように思うまでになっていた。
真面目に仕事はするが毎日休憩になると外に出ては苦しい顔をして戻ってくるルカを、親方はなにをしてそうなっているのかと思っていた。
一年半を過ぎた頃、酒のせいもあって溢れる苦しみを零してしまったルカからその理由を聞いた。
「姫様に直接聞きゃあいいじゃないか、なんでまだここに居るんだって」
「……出来ません」
「こんなに待っていてくれてるかもしれない女に、酷じゃねーか?」
「いつまでも続くことではないと、思ってますから……」
ルカの頑なに、なんて気の毒な男だと親方は思った。
そこまで自分を低く置かなくてもいいのではないかと思うのだが、これは他人がどう言おうとルカ自身が変わらなくては無理なことだ。
親方は見守ると決め、ルカがスヴェトラーナを見続けるのを好きにさせてやった。
どんな娘がルカをそこまでにしているのか気になり、何度かスヴェトラーナが来るのを通りに出て待ったことがあった。
それは美しい、さすが公女という上品な娘だった。
見かける度に切ない顔をしていて、スヴェトラーナのことも気の毒に思った。
そして諦めないで欲しいとも願った。
この娘が諦めず、ルカがいつか自分の存在を肯定出来るようになることを願った。
その反面。この娘と思いが通じ合ったらここから出て行くかもしれないという寂しさもあった。
娘がルカの地位を上げる事も考えられる。
イグナシオ侯爵がスヴェトラーナのために働きかければ、どこか爵位のある所へ養子にということも考えられる。
公女をかわいがっている侯爵が支援するなら、平民になって暮らすよりそちらの方が公女には現実的だ。
しかしスヴェトラーナはルカがそんなことを望まないと知っていたし、自分が平民になる覚悟はとうに出来ていた。
ルカの貯めた金で粗末で小さな家を買い鍛冶屋で働き続けたいと言うので、親方は心底喜んだ。
*****
「おかえりなさい、ルカ」
「ただいまスヴィ。親方からビワをもらいました」
仕事が終わり家に帰るとスヴェトラーナが笑顔でルカを迎える。
ルカの一日の中で一番幸せを感じる瞬間だ。
『姫様』から『スヴィ』と呼ぶようになってもう何年もこの幸せを感じ続けている。
子供が出来ないことをスヴェトラーナは気にしているが、ルカはスヴェトラーナほど気にしていない。
スヴェトラーナが欲しいなら出来たらいいとは思うが、スヴェトラーナがいるだけでルカは幸せなので出来なかったらそれでもいい。
親方から貰った袋を渡しスヴェトラーナの額にキスをすると、満面の笑みが返ってくる。
「うれしいわ。食後に一緒に食べましょう」
「はい。あ、明日の休みにハナツメクサを見に行きませんか。草原いっぱいに敷き詰められているようですごく綺麗だと聞きました」
店に来た客から聞いて、これはスヴェトラーナを連れて行ってあげたいと思ったのだ。
「はい。行きましょう。楽しみです」
こんなことでスヴェトラーナが輝いて喜んでくれるので、ルカは胸の中が温かくなって込み上げてくる。
「幸せですか?」
「はい。幸せです」
「俺も幸せです」
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初めて感想寄せさせて頂きます。
完結済の作品を一気に読むのがすきなので、この作品は長さも丁度いいし(もちろん長編も大好きですが)読みやすく1日で一気に読みました。
実は前作の『夢見る乙女と優しい野獣』を先に読んでツンデレ?!な令嬢と根気強く愛を注ぐ英雄との面白おかしい攻防もとっても楽しかったですが、この作品はまたタッチが違ってでも一途が貫かれている点では共通だなぁと感じました。
前作を読んで直ぐにこちらの作品を読みだしたのであちらに感想は書けていませんが、最後のやり取りも、らしくて良かったです。ってこっちに書くなよ!って感じですよね。
ルカとスヴェトラーナの互いを思いやる気持ちが切なくも温かい。そして運命・・・ってやっぱりありますよね。初めての出会いから、再会し命を懸けての逃避行・・・短くても濃い10日間、そして別れ、その後の会えなくても何年も互いを思いやる日々。
誠実な二人らしい月日で、本当に幸せになってくれて良かったと思いました。
あの大変は逃避行があったからこそ、ただ穏やかに淡々と小さな幸せを噛みしめて日々を大切に生きる二人の姿にホッとし心が満たされました。
素敵なお話をありがとうございました。他の方も書いていましたが二人が幸せに暮らしている何気ない日常を後日談として書いて頂けたら私も嬉しいなと思いました。
他の作品もこれから読み始めようと思います。今後のご活躍もプレッシャーにならない程度に楽しみにしています。
栗栖 瀬貴哉さん、読んでくださってありがとうございます!
『夢見る乙女…』の方も読んでくださったんですね、あの酷い(笑)やりとり楽しんでいただけましたでしょうか?
一途な恋の話が好きなのですが、さすがにギルバートは気の毒すぎたかもしれませんw
運命は、ありますよ!って信じたいですw
苦しいことが続くお話でしたが、平凡な毎日が一番の贅沢だなーと思ってあの結末になりました。
最後まで読んでくださって、こんな素敵なご感想頂けて本当に幸せです。励みになります。
他の作品も気に入って頂けたら嬉しいです。
完結、お疲れ様でした。
幸せな結末に向かって、一気に更新してくださって、本当に嬉しい。幸せ。
(終わってしまう寂しさはあるんですけども…)
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改めて一気読みしつつ、次回作、お待ちいたしておりまーす⁽⁽ ◟(∗ ˊωˋ ∗)◞ ⁾⁾
(番外編、さらなる後日談もお待ちしてます!)
いのんさん♪最後まで読んでくださってありがとうございます。
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いつも感想ありがとうございます。本当に励みになります!
勿論です!小ろく様!最後まで付き合わせてください。お願いします。
読んでて、とても切なかったです。
スヴェトラーナが無事に母と弟に亡命先で落ち合えてよかったです。囮になった
甲斐がありましたね。侍女も無事であってくれたらと願ってしまいます。
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