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この三か月、毎週欠かさず緑の離宮に行くことが習慣になっている。
アスランにとってそれが何よりもの楽しみでもあった。
その日のために毎日の公務を頑張れていると言っても過言ではない。
その日その時間を空けるためにかなりの無理もしていたが、ひとつの苦にも感じていない。
宿題にしていたわけではないがミシェルは持って行った本を翌週には必ず読了し、感想をアスランに聞かせてくれる。
着眼点がアスランとは違うところが面白く、話し込むといくらでも会話が弾む。
どうしても時間が取れない時もあったが、三十分逢うためにだけでもミシェルの所へ向かった。
逢えないと思うと、心が落ち着かないのだった。
ミシェルの微笑む口元を見るだけで幸せな気分になれる自分が滑稽でならないが、もう自分ではどうしようもないほどミシェルに夢中になってしまっている。
テイラーにもからかわれるが、仕方がない。
隠しようもないほど溢れてしまっているのだ。
もう自分でも認めている。ミシェルに恋をしていることを。
ただそれはアスランの一方的な想いだということも、悲しいことだが自覚している。
はにかむ様な態度も、緩む口元もアスランに見せてくれるのだが。線を引かれている。
目には見えないが確実にあるはっきりと引かれた線。
最初はそれがアスランがヒューブレインという大国の王であるからで、人質(とは言いたくないが……)の身だから仕方のないことなのだと思っていた。
なんでも比べるものではないが、今までアスランが近くに置いた女性は最初は引かれていた線を数日・数週間でいとも簡単に消してしまった。
傍に置いたことのない女性でも、数時間一緒に過ごし打だけで『アスラン様~』などとすぐに近しく呼んでくることもある。
アスラン自身はそれを怒ったこともないし、かわいい女性が甘えるような行為は正直嫌いではない。
しかしミシェルは、三か月も毎週逢っているにも関わらず線を消さないし超えない。
いつでもアスランを恐れるように、身分を常に意識させるのだ。
テイラーのブロンソン情報によると、グルシスタはヒューブレインよりも厳格な国らしく国王陛下という存在は神にも近いそうだ。
なので国の仕来り通りにアスランに接しているのだとは思うのだが。
少しも気が付かないものだろうか?
こんなにも自分に夢中になっている男が目の前にいることに。
三か月も!
テイラーやルリーンの態度を見て、もう少しくだけてもいいと思わないのだろうか?
身分の低いテイラーやルリーンよりも、ミシェルは遠い。
いや、ルリーンはいい。あの娘はいつでもいい仕事をする。
それはもちろんだ。アスランの気持ちは駄々洩れなので、ルリーンはアスランにいいようにミシェルに逢えるようにしてくれたりミシェルに必要な物をさりげなく伝えてきたり。よく動くのだ。
忠実な臣と言える。
一度ミシェルに屋敷の者の働きを聞いたことがあった。
ブロンソンの選んだ人材に間違いはないとはわかっていたが、万が一なにか粗相がないかと確認しておきたかったからだ。
するとミシェルは。
「執事のクロウのおかげで屋敷は規則正しく快適に回っております。コックの料理は素晴らしく美味しいので、食事の時間が毎回楽しみです。メイドも下僕もよく働いてくれます。そして侍女のルリーンは……」
ミシェルは言葉を切って。そして初めて聞く、小鳥の囀りのようなかわいらしい笑い声をアスランに聞かせた。
アスランの胸はまさしくキューンという音を鳴らして締め付けた。
きっとベールの中の目も微笑んでいるのだろう。モスリンの布が揺れて、頬が上がった様子がわかる。
こんなのは初めてだった。
「ルリーンとは、どうなのだ?」
堪らず聞くと、ミシェルは口元を手で隠して笑いを押さえると。
「彼女がそばにいてくれることに感謝しています。わたしはルリーンが大好きなのです」
それが本当に嬉しそうに話すので、アスランはルリーンに嫉妬してしまいそうだった。
「そうか、ルリーンはそれほど王女に尽くすのか。それは安心した」
「はい。ルリーンはいつでもわたしに寄り添ってくれています」
これほどに侍女が羨ましいと思ったことはない。
ルリーンの話をするミシェルは本当にかわいらしく、楽しげだ。
「ルリーンとは、いつもどんなことを?」
「何というわけではございませんが、お喋りをするだけでも、彼女はわたしを楽しませる天才なのです」
アスランが今一番欲しい才能をルリーンが持っていると聞くとルリーンへの嫉妬が増すばかりなのだが、ミシェルが嬉しそうなのでルリーンのおこぼれに預かれて嬉しいアスランだった。
そんなことがあったので、ルリーンだけ見送りに来た時にこっそりと聞いてみた。
「王女がそなたをいたく信頼しているようだが、普段はどんなふうにしているのだ?」
するとルリーンはアスランの欲しい情報を確実に話してくれた。
「ミシェル殿下はお国では普通に同じ年頃の女性と親しくお喋りしたりしたことがないそうで、わたしと他愛無いお喋りをするだけでも楽しんでくださいます。また色々なことが初体験だったこともあって最初は戸惑っておられましたが、今ではそれも楽しんでおられます」
「色々なこと、とは?」
「例えばフェイスマッサージとか、お化粧とか、お洒落とかですね。お顔を触られることに慣れていらっしゃらなかったので」
「そなたには、平気なのか?」
「はい。初めはわたしが医者の娘だということもあってだと思いますが、すぐに慣れてくださいました。普段はベールで隠れていますがヘイゼルの瞳が大きく、切れ長の目が美しくて。それが楽しそうに細められると、急にかわいらしく幼くなるんです。頬は毛穴がないんじゃないかってくらいすべすべで、ほっそりしていますけど、やわらかいんです」
アスランはルリーンの言葉を具体的に想像して、口もとが緩んでしまうのを手で隠した。
「そうか、王女は屋敷ではベールを着けていないのだな」
「いいえ。わたしの前だけです。陛下もご覧になったのでご存知でしょうか、痣が大きくそれを醜いと思い込んでいらっしゃいますので。以前お国のメイドがミシェル殿下の痣を見て驚いて泣いてしまった事があるそうです。なので私以外の者には決してお見せになりません。ですが、わたしの前だけは晒してくださいます」
「そうか。これからも王女に尽くしてやってくれ」
「はい。もちろんでございます」
ミシェルの見られない部分をルリーンだけが知っていることに羨ましくてしょうがないが、メイドが泣くようなことがあったのでは心の傷も大きかっただろう。
おれは絶対に泣かないし、驚いたりはもうしない。そう誓える。
けれどミシェルはベールを取ってくれることはないだろうし、アスランも取ってくれとは言えない。
ミシェルのすべてを見たいし、触れたい。
キスをして、ルリーンの言うヘイゼルの大きな瞳が輝くのを見たい。感じたい。
好きだと伝え自分のものになったとしても、ミシェルは隠し続けるのだろうか?
見せられないから、アスランの想いは受け入れないだろうか?
ミシェルが好きなのにそれを伝えられないのは、ミシェルがベールで隠し続ける傷が深すぎるからだ。
それでもアスランの中にある想いは簡単に捨てられるものではなくなってしまっている。
ルリーンを信じたように、自分のことも信じてほしかった。
だからもっと近くに、もっと自然にお互いの距離を縮めたい。
二人の間に引かれた線を、無くしたい。
*****
ルリーンがいい仕事をすることは解っていたし、今テイラーよりブロンソンよりアスランを理解しているのはルリーンに他ならない。
「来週なのですが。もし陛下の御都合が許されるなら、こちらでミシェル殿下とディナーをご一緒にいかがでしょうか?」
そうルリーンが言ってきたのは先週、帰り際だった。
「ミシェル殿下が先日陛下にコックの料理が美味しいとお話ししたと聞きまして。それをわたしがコックに伝えましたらそれはもう喜んで、いつか陛下にも振舞える機会があれば……と申しておりまして。ね、殿下!」
ルリーンがミシェルに満面の笑みを向けると、ミシェルは逡巡した。
「そうね、喜んでいたわね。でも、陛下はお忙しいお身体ですから……」
一緒に食事するのが嫌なのだろうか?
せっかく今ルリーンがいい仕事をしたのに、ミシェルはやんわりとではあるが取り消そうとしてしまう。
もちろん、アスランはミシェルと夕食を共にしたい。
「来週時間を作ろう。王女の気に入っている料理を作ってくれとコックに伝えてくれ」
ミシェルは下を向いてしまったが、ここは押し切る。
「王女、わたしと夕食を一緒にしてくれるか?」
身分を使うことがいいとは思わないが、国王に誘われては断ることは難しいとわかっている。
「……光栄に存じます」
ミシェルの返事は型通り。
しかし食事の約束はなされた。
ルリーンはアスランにとっても、こっそりと魔法使いだった。
*****
アスランの浮かれ具合はテイラーも引くほどだった。
時間を作るために仕事は前よりも熱心になった。ブロンソンも黙るほどに。
今日はミシェルとのディナーだからなのか、いつもより身支度に時間をかけていた。
昨夜散髪までしているのだから、気合はいかほどか想像に易い。
手土産はメレンゲの焼き菓子。ミシェルが気に入っていたとルリーンからの情報提供があったものだ。
謁見が長引きいつもより遅れてしまったが、今日は夕食も一緒に過ごせるので時間はたっぷりある。
テイラーが土産を持ち、さあ隠し扉から出かけようとしたところに寝室のドアがノックされた。テイラーが確認すると第二侍従のトマスが入ってきた。
「陛下。バルモア公爵夫人が応接室にお越しになっています」
アスランが固まる。
バルモア公爵夫人シャーロットは前国王の妹でアスランの叔母にあたる。
両親を早くに亡くしているアスランになにかと世話を焼くことを趣味としている。
ご機嫌を損ねると、宮廷のサロンで開かれる彼女のお茶会で愚痴りまくるという癖もある。
「出かけたと行ってくれ」
捕まると長いので居留守でやり過ごそうと思ったのだが。
「多分、陛下が来るまで待たれるんじゃないでしょうかねー」
テイラーはシャーロットのことをよくわかっている。
「さっさとに切り上げられるようにする」
仕方なく踵を返しながらテイラーに言うと、あからさまに『無理でしょうね』の顔をする。
苦虫を潰したような顔でテイラーを睨み、何としてでも早々に追い返してやると意気込んだ。ミシェルに逢いに行くのだから。
大きく深呼吸して笑顔を作り、応接室のドアを開ける。
「シャーロット叔母上。ご機嫌はいかがですか?」
笑顔を作ってソファーに座るシャーロットを目指すと、その横にもうひとり女性がいることに気が付く。
シャーロットは座ったままでアスランに手を差し出し、アスランはその手を取ってキスをした。
すると隣に座る女性は立ち上がりアスランに向かい膝を折って頭を下げた。
「アスラン、わたしの機嫌はあなた次第よ。こちらはソフィー、ミラー伯爵の御息女よ」
叔母の魂胆がはっきりわかり、アスランは胸の中だけで悪態をついた。
「ごきげんようレディソフィー」
「シャーロット様にお誘いいただきお邪魔させていただきました」
「どうぞくつろいでくれ」
向かいに腰かけながらアスランがシャーロットを見ると、それはもう満面の笑顔だ。
「早速だけど。ソフィーはね、本当にいい娘なの。頭も良くて、あなたとも仲良くなれると思うわ」
アスランは黙って作り笑いを返す。
つまりシャーロットはアスランの妻候補としてソフィーを連れてきたのだ。
こんなことはもう何度目かだ。
やめてほしいと言っても、アスランの嫁を見つけるのが使命だと思い込んでいる。
「美しい姫でしょう? 十七歳だけど、とてもしっかりしているの」
シャーロットが選んだだけあって、ミラー伯爵家の息女ならば結婚相手に問題もない家柄だし容姿も良い。
シャーロットが褒めるのをとなりに座るソフィーは照れながら、でもまんざらでもない顔で黙っていた。
まだ幼いのか、強かに王妃の座を狙っている下心が隠しきれていない。
「本当に美しい。求婚したい男はたくさんいるでしょうね。良いお相手はすぐに見つかるでしょう」
愛想笑いで言ってその中に自分は含まれていないことをやんわりと伝えようとしたが、シャーロットには無駄だった。
「あら、あなたが名乗りをあげてもよろしいのよ。そのつもりで連れてきたのだから」
悪意はないが、強引だ。
「叔母上、そんなことを軽々しくおっしゃいませんように。レディソフィーが困ってしまいますよ。初対面の男とそんなこと考えられるはずないじゃないですか」
もちろんアスラン自身が『初対面の女とそんなこと考えられるか!』という意味で言ったのだが、二人には通じていないようだ。
「わたしは困っておりませんわ、陛下」
「知り合うのは簡単よ。今日は三人で夕食をしましょう。お話しをしてみたらお互いを分かり合えるわ」
シャーロットはよほどソフィーを気に入っているようで、強引に事を進めようとしているようだ。
「叔母上、わたしにも予定がございます」
冗談じゃない。勝手に来てこれ以上付き合ってられるか!
しかしシャーロットは引かない。
「だめよアスラン。予定はキャンセルなさい。わたしが夕食を共にしましょうと言っているのよ」
「叔母上、いきなりは無理です」
「あなたがいつまでも妃を決めないからわたしが世話を焼くのです。あなたが結婚しない事には、弟のデイビットも結婚出来ないじゃないの」
アスランには五つ下のデイビットという弟がいるのだが、彼がアスランのせいで独身とは考えられない。
公務はきちんとするが、存外に自由な男だ。芸術を愛しており、今は新人画家を育てるのに夢中になっている。
「ソフィーなら申し分ないわ。食事をしながら彼女の人となりを知ってちょうだい。本当にいい娘なのよ」
「わたしも陛下とご一緒出来ることを楽しみに参りました。わたしのことをゆっくり知っていただきたいですわ」
勘弁してくれ!
どんなにいい娘であろうと。どんなに美しい娘であろうと。今のアスランにまったく興味がない。
アスランが恋しているのは、アスランが欲しいのはただひとり。
ミシェルだけなのだ。
胸のなかで叫び、ふと浮かぶ想い。
ミシェルを妻に。
それが叶うなら他に何もいらないほどの幸せだ。
けれど、問題は確実にある。
それでもその幸せを妄想すると、アスランは幸せで全身が熱くなって燃えるようだ。
「アスラン、聞いていますか? ソフィーはね、音楽にも精通していてピアノがとても上手なの。あなたに聞かせるために練習もしてきたのよ。さあソフィー聞かせてあげてちょうだい」
シャーロットは勝手に喋って勝手に進めていく。
ソフィーも乗り気でピアノまで行き、彼女の侍女からスコアを受け取る。
まんまとふたりのペースにはまって堪るか!
「叔母上。わたしにも予定があります。いきなり来てこんなことは無理です。今日はお引き取りください」
「予定? なんの予定があるの? まさか他の女性に逢う約束があるの?」
「ちがいます」
「じゃあ、なんの予定があるの? わたしを袖にしなくてはならない程の大切な予定とはなんなのです」
女性との約束に違いはないが、それを言えるわけがない。
シャーロットにミシェルを会わせサロンに引っ張りだされればミシェルが……。
ミシェルを妻にしたいという想いと、ミシェルを守りたい想いは矛盾する。
ミシェルを妻にすればアスランは一時最高の幸せを得るが、ミシェルはあの姿を晒される。ミシェルを守りたいならそんな立場に引っ張りださない事が一番大事で。
恋焦がれるだけでミシェルを妻に望まなかったのは、無意識にそれをわかっていたからだったと気が付いた。
あのベールを無理に取らせたりしない。そのままの姿を守ってあげたい。欲望を押さえる。貴族の興味を避けるため隠れて逢いに行く。
でも本当は全部逆だ。全部したいことの逆だ。
ベールを取った姿を見たい。横に並び庭を歩きたい。
片思いして守り続けるだけで幸せだと満足し続けられるだろうか?
「叔母上。今日はお引き取りください。お相手はできません。やらなくてはならないことがあるのです」
アスランは決して反論を受け付けない意思をシャーロットに見せた。
シャーロットは甥にこんな態度をされたことはなかった。
王の威厳を持って、はっきりと今日は帰れと言われたのだ。もう引くしかない。
「……わかったわ。今日は引き揚げます」
シャーロットが不機嫌に立ち上がると、ピアノの前に座っていたソフィーも従って立ち上がる。
部屋から出て行く二人を無言で見送ってから後ろに立って控えているテイラーを向く。
「少しひとりにしてくれ」
もちろんテイラーもアスランに従い、なにも言わずに部屋を出た。
アスランにとってそれが何よりもの楽しみでもあった。
その日のために毎日の公務を頑張れていると言っても過言ではない。
その日その時間を空けるためにかなりの無理もしていたが、ひとつの苦にも感じていない。
宿題にしていたわけではないがミシェルは持って行った本を翌週には必ず読了し、感想をアスランに聞かせてくれる。
着眼点がアスランとは違うところが面白く、話し込むといくらでも会話が弾む。
どうしても時間が取れない時もあったが、三十分逢うためにだけでもミシェルの所へ向かった。
逢えないと思うと、心が落ち着かないのだった。
ミシェルの微笑む口元を見るだけで幸せな気分になれる自分が滑稽でならないが、もう自分ではどうしようもないほどミシェルに夢中になってしまっている。
テイラーにもからかわれるが、仕方がない。
隠しようもないほど溢れてしまっているのだ。
もう自分でも認めている。ミシェルに恋をしていることを。
ただそれはアスランの一方的な想いだということも、悲しいことだが自覚している。
はにかむ様な態度も、緩む口元もアスランに見せてくれるのだが。線を引かれている。
目には見えないが確実にあるはっきりと引かれた線。
最初はそれがアスランがヒューブレインという大国の王であるからで、人質(とは言いたくないが……)の身だから仕方のないことなのだと思っていた。
なんでも比べるものではないが、今までアスランが近くに置いた女性は最初は引かれていた線を数日・数週間でいとも簡単に消してしまった。
傍に置いたことのない女性でも、数時間一緒に過ごし打だけで『アスラン様~』などとすぐに近しく呼んでくることもある。
アスラン自身はそれを怒ったこともないし、かわいい女性が甘えるような行為は正直嫌いではない。
しかしミシェルは、三か月も毎週逢っているにも関わらず線を消さないし超えない。
いつでもアスランを恐れるように、身分を常に意識させるのだ。
テイラーのブロンソン情報によると、グルシスタはヒューブレインよりも厳格な国らしく国王陛下という存在は神にも近いそうだ。
なので国の仕来り通りにアスランに接しているのだとは思うのだが。
少しも気が付かないものだろうか?
こんなにも自分に夢中になっている男が目の前にいることに。
三か月も!
テイラーやルリーンの態度を見て、もう少しくだけてもいいと思わないのだろうか?
身分の低いテイラーやルリーンよりも、ミシェルは遠い。
いや、ルリーンはいい。あの娘はいつでもいい仕事をする。
それはもちろんだ。アスランの気持ちは駄々洩れなので、ルリーンはアスランにいいようにミシェルに逢えるようにしてくれたりミシェルに必要な物をさりげなく伝えてきたり。よく動くのだ。
忠実な臣と言える。
一度ミシェルに屋敷の者の働きを聞いたことがあった。
ブロンソンの選んだ人材に間違いはないとはわかっていたが、万が一なにか粗相がないかと確認しておきたかったからだ。
するとミシェルは。
「執事のクロウのおかげで屋敷は規則正しく快適に回っております。コックの料理は素晴らしく美味しいので、食事の時間が毎回楽しみです。メイドも下僕もよく働いてくれます。そして侍女のルリーンは……」
ミシェルは言葉を切って。そして初めて聞く、小鳥の囀りのようなかわいらしい笑い声をアスランに聞かせた。
アスランの胸はまさしくキューンという音を鳴らして締め付けた。
きっとベールの中の目も微笑んでいるのだろう。モスリンの布が揺れて、頬が上がった様子がわかる。
こんなのは初めてだった。
「ルリーンとは、どうなのだ?」
堪らず聞くと、ミシェルは口元を手で隠して笑いを押さえると。
「彼女がそばにいてくれることに感謝しています。わたしはルリーンが大好きなのです」
それが本当に嬉しそうに話すので、アスランはルリーンに嫉妬してしまいそうだった。
「そうか、ルリーンはそれほど王女に尽くすのか。それは安心した」
「はい。ルリーンはいつでもわたしに寄り添ってくれています」
これほどに侍女が羨ましいと思ったことはない。
ルリーンの話をするミシェルは本当にかわいらしく、楽しげだ。
「ルリーンとは、いつもどんなことを?」
「何というわけではございませんが、お喋りをするだけでも、彼女はわたしを楽しませる天才なのです」
アスランが今一番欲しい才能をルリーンが持っていると聞くとルリーンへの嫉妬が増すばかりなのだが、ミシェルが嬉しそうなのでルリーンのおこぼれに預かれて嬉しいアスランだった。
そんなことがあったので、ルリーンだけ見送りに来た時にこっそりと聞いてみた。
「王女がそなたをいたく信頼しているようだが、普段はどんなふうにしているのだ?」
するとルリーンはアスランの欲しい情報を確実に話してくれた。
「ミシェル殿下はお国では普通に同じ年頃の女性と親しくお喋りしたりしたことがないそうで、わたしと他愛無いお喋りをするだけでも楽しんでくださいます。また色々なことが初体験だったこともあって最初は戸惑っておられましたが、今ではそれも楽しんでおられます」
「色々なこと、とは?」
「例えばフェイスマッサージとか、お化粧とか、お洒落とかですね。お顔を触られることに慣れていらっしゃらなかったので」
「そなたには、平気なのか?」
「はい。初めはわたしが医者の娘だということもあってだと思いますが、すぐに慣れてくださいました。普段はベールで隠れていますがヘイゼルの瞳が大きく、切れ長の目が美しくて。それが楽しそうに細められると、急にかわいらしく幼くなるんです。頬は毛穴がないんじゃないかってくらいすべすべで、ほっそりしていますけど、やわらかいんです」
アスランはルリーンの言葉を具体的に想像して、口もとが緩んでしまうのを手で隠した。
「そうか、王女は屋敷ではベールを着けていないのだな」
「いいえ。わたしの前だけです。陛下もご覧になったのでご存知でしょうか、痣が大きくそれを醜いと思い込んでいらっしゃいますので。以前お国のメイドがミシェル殿下の痣を見て驚いて泣いてしまった事があるそうです。なので私以外の者には決してお見せになりません。ですが、わたしの前だけは晒してくださいます」
「そうか。これからも王女に尽くしてやってくれ」
「はい。もちろんでございます」
ミシェルの見られない部分をルリーンだけが知っていることに羨ましくてしょうがないが、メイドが泣くようなことがあったのでは心の傷も大きかっただろう。
おれは絶対に泣かないし、驚いたりはもうしない。そう誓える。
けれどミシェルはベールを取ってくれることはないだろうし、アスランも取ってくれとは言えない。
ミシェルのすべてを見たいし、触れたい。
キスをして、ルリーンの言うヘイゼルの大きな瞳が輝くのを見たい。感じたい。
好きだと伝え自分のものになったとしても、ミシェルは隠し続けるのだろうか?
見せられないから、アスランの想いは受け入れないだろうか?
ミシェルが好きなのにそれを伝えられないのは、ミシェルがベールで隠し続ける傷が深すぎるからだ。
それでもアスランの中にある想いは簡単に捨てられるものではなくなってしまっている。
ルリーンを信じたように、自分のことも信じてほしかった。
だからもっと近くに、もっと自然にお互いの距離を縮めたい。
二人の間に引かれた線を、無くしたい。
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ルリーンがいい仕事をすることは解っていたし、今テイラーよりブロンソンよりアスランを理解しているのはルリーンに他ならない。
「来週なのですが。もし陛下の御都合が許されるなら、こちらでミシェル殿下とディナーをご一緒にいかがでしょうか?」
そうルリーンが言ってきたのは先週、帰り際だった。
「ミシェル殿下が先日陛下にコックの料理が美味しいとお話ししたと聞きまして。それをわたしがコックに伝えましたらそれはもう喜んで、いつか陛下にも振舞える機会があれば……と申しておりまして。ね、殿下!」
ルリーンがミシェルに満面の笑みを向けると、ミシェルは逡巡した。
「そうね、喜んでいたわね。でも、陛下はお忙しいお身体ですから……」
一緒に食事するのが嫌なのだろうか?
せっかく今ルリーンがいい仕事をしたのに、ミシェルはやんわりとではあるが取り消そうとしてしまう。
もちろん、アスランはミシェルと夕食を共にしたい。
「来週時間を作ろう。王女の気に入っている料理を作ってくれとコックに伝えてくれ」
ミシェルは下を向いてしまったが、ここは押し切る。
「王女、わたしと夕食を一緒にしてくれるか?」
身分を使うことがいいとは思わないが、国王に誘われては断ることは難しいとわかっている。
「……光栄に存じます」
ミシェルの返事は型通り。
しかし食事の約束はなされた。
ルリーンはアスランにとっても、こっそりと魔法使いだった。
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アスランの浮かれ具合はテイラーも引くほどだった。
時間を作るために仕事は前よりも熱心になった。ブロンソンも黙るほどに。
今日はミシェルとのディナーだからなのか、いつもより身支度に時間をかけていた。
昨夜散髪までしているのだから、気合はいかほどか想像に易い。
手土産はメレンゲの焼き菓子。ミシェルが気に入っていたとルリーンからの情報提供があったものだ。
謁見が長引きいつもより遅れてしまったが、今日は夕食も一緒に過ごせるので時間はたっぷりある。
テイラーが土産を持ち、さあ隠し扉から出かけようとしたところに寝室のドアがノックされた。テイラーが確認すると第二侍従のトマスが入ってきた。
「陛下。バルモア公爵夫人が応接室にお越しになっています」
アスランが固まる。
バルモア公爵夫人シャーロットは前国王の妹でアスランの叔母にあたる。
両親を早くに亡くしているアスランになにかと世話を焼くことを趣味としている。
ご機嫌を損ねると、宮廷のサロンで開かれる彼女のお茶会で愚痴りまくるという癖もある。
「出かけたと行ってくれ」
捕まると長いので居留守でやり過ごそうと思ったのだが。
「多分、陛下が来るまで待たれるんじゃないでしょうかねー」
テイラーはシャーロットのことをよくわかっている。
「さっさとに切り上げられるようにする」
仕方なく踵を返しながらテイラーに言うと、あからさまに『無理でしょうね』の顔をする。
苦虫を潰したような顔でテイラーを睨み、何としてでも早々に追い返してやると意気込んだ。ミシェルに逢いに行くのだから。
大きく深呼吸して笑顔を作り、応接室のドアを開ける。
「シャーロット叔母上。ご機嫌はいかがですか?」
笑顔を作ってソファーに座るシャーロットを目指すと、その横にもうひとり女性がいることに気が付く。
シャーロットは座ったままでアスランに手を差し出し、アスランはその手を取ってキスをした。
すると隣に座る女性は立ち上がりアスランに向かい膝を折って頭を下げた。
「アスラン、わたしの機嫌はあなた次第よ。こちらはソフィー、ミラー伯爵の御息女よ」
叔母の魂胆がはっきりわかり、アスランは胸の中だけで悪態をついた。
「ごきげんようレディソフィー」
「シャーロット様にお誘いいただきお邪魔させていただきました」
「どうぞくつろいでくれ」
向かいに腰かけながらアスランがシャーロットを見ると、それはもう満面の笑顔だ。
「早速だけど。ソフィーはね、本当にいい娘なの。頭も良くて、あなたとも仲良くなれると思うわ」
アスランは黙って作り笑いを返す。
つまりシャーロットはアスランの妻候補としてソフィーを連れてきたのだ。
こんなことはもう何度目かだ。
やめてほしいと言っても、アスランの嫁を見つけるのが使命だと思い込んでいる。
「美しい姫でしょう? 十七歳だけど、とてもしっかりしているの」
シャーロットが選んだだけあって、ミラー伯爵家の息女ならば結婚相手に問題もない家柄だし容姿も良い。
シャーロットが褒めるのをとなりに座るソフィーは照れながら、でもまんざらでもない顔で黙っていた。
まだ幼いのか、強かに王妃の座を狙っている下心が隠しきれていない。
「本当に美しい。求婚したい男はたくさんいるでしょうね。良いお相手はすぐに見つかるでしょう」
愛想笑いで言ってその中に自分は含まれていないことをやんわりと伝えようとしたが、シャーロットには無駄だった。
「あら、あなたが名乗りをあげてもよろしいのよ。そのつもりで連れてきたのだから」
悪意はないが、強引だ。
「叔母上、そんなことを軽々しくおっしゃいませんように。レディソフィーが困ってしまいますよ。初対面の男とそんなこと考えられるはずないじゃないですか」
もちろんアスラン自身が『初対面の女とそんなこと考えられるか!』という意味で言ったのだが、二人には通じていないようだ。
「わたしは困っておりませんわ、陛下」
「知り合うのは簡単よ。今日は三人で夕食をしましょう。お話しをしてみたらお互いを分かり合えるわ」
シャーロットはよほどソフィーを気に入っているようで、強引に事を進めようとしているようだ。
「叔母上、わたしにも予定がございます」
冗談じゃない。勝手に来てこれ以上付き合ってられるか!
しかしシャーロットは引かない。
「だめよアスラン。予定はキャンセルなさい。わたしが夕食を共にしましょうと言っているのよ」
「叔母上、いきなりは無理です」
「あなたがいつまでも妃を決めないからわたしが世話を焼くのです。あなたが結婚しない事には、弟のデイビットも結婚出来ないじゃないの」
アスランには五つ下のデイビットという弟がいるのだが、彼がアスランのせいで独身とは考えられない。
公務はきちんとするが、存外に自由な男だ。芸術を愛しており、今は新人画家を育てるのに夢中になっている。
「ソフィーなら申し分ないわ。食事をしながら彼女の人となりを知ってちょうだい。本当にいい娘なのよ」
「わたしも陛下とご一緒出来ることを楽しみに参りました。わたしのことをゆっくり知っていただきたいですわ」
勘弁してくれ!
どんなにいい娘であろうと。どんなに美しい娘であろうと。今のアスランにまったく興味がない。
アスランが恋しているのは、アスランが欲しいのはただひとり。
ミシェルだけなのだ。
胸のなかで叫び、ふと浮かぶ想い。
ミシェルを妻に。
それが叶うなら他に何もいらないほどの幸せだ。
けれど、問題は確実にある。
それでもその幸せを妄想すると、アスランは幸せで全身が熱くなって燃えるようだ。
「アスラン、聞いていますか? ソフィーはね、音楽にも精通していてピアノがとても上手なの。あなたに聞かせるために練習もしてきたのよ。さあソフィー聞かせてあげてちょうだい」
シャーロットは勝手に喋って勝手に進めていく。
ソフィーも乗り気でピアノまで行き、彼女の侍女からスコアを受け取る。
まんまとふたりのペースにはまって堪るか!
「叔母上。わたしにも予定があります。いきなり来てこんなことは無理です。今日はお引き取りください」
「予定? なんの予定があるの? まさか他の女性に逢う約束があるの?」
「ちがいます」
「じゃあ、なんの予定があるの? わたしを袖にしなくてはならない程の大切な予定とはなんなのです」
女性との約束に違いはないが、それを言えるわけがない。
シャーロットにミシェルを会わせサロンに引っ張りだされればミシェルが……。
ミシェルを妻にしたいという想いと、ミシェルを守りたい想いは矛盾する。
ミシェルを妻にすればアスランは一時最高の幸せを得るが、ミシェルはあの姿を晒される。ミシェルを守りたいならそんな立場に引っ張りださない事が一番大事で。
恋焦がれるだけでミシェルを妻に望まなかったのは、無意識にそれをわかっていたからだったと気が付いた。
あのベールを無理に取らせたりしない。そのままの姿を守ってあげたい。欲望を押さえる。貴族の興味を避けるため隠れて逢いに行く。
でも本当は全部逆だ。全部したいことの逆だ。
ベールを取った姿を見たい。横に並び庭を歩きたい。
片思いして守り続けるだけで幸せだと満足し続けられるだろうか?
「叔母上。今日はお引き取りください。お相手はできません。やらなくてはならないことがあるのです」
アスランは決して反論を受け付けない意思をシャーロットに見せた。
シャーロットは甥にこんな態度をされたことはなかった。
王の威厳を持って、はっきりと今日は帰れと言われたのだ。もう引くしかない。
「……わかったわ。今日は引き揚げます」
シャーロットが不機嫌に立ち上がると、ピアノの前に座っていたソフィーも従って立ち上がる。
部屋から出て行く二人を無言で見送ってから後ろに立って控えているテイラーを向く。
「少しひとりにしてくれ」
もちろんテイラーもアスランに従い、なにも言わずに部屋を出た。
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病気の症状に関してだけは、自分の実体験を元に書いております。
なので、一概には言えません。
◎その他の物語は、全てフィクションです。
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『喉頭ジストニア(こうとう じすとにあ)』
という、声が出づらい障害を持っている鳰都《にお みやこ》。
病気のせいで大人しく暗くなってしまった都は、大学の学生課の事務員として働く25歳。
一方、クールで感情表現が苦手な、奈古千隼《なこ ちはや》は、都の務める大学に通う、一年生。
*
あるきっかけで出会う二人。
だが、都は人と関わることに引け目を感じ、中々前に進めないでいた。
自分は社会のお荷物だ、家族の厄介者だ、必要のないものだと、ずっとずっと思っていた。
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「一歩、一歩、前を向いて歩こう。鳰さん、俺と一緒に歩こう」
執筆期間 2018.10.12~2018.12.23
素敵な表紙イラスト ─ しゃもじ様に許可を頂き、お借りしました。
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