Messiah～底辺召喚士の異世界物語～

開闢の始まり

四大学園対抗戦 予選13

ズパンッッッッッッ

乾いた音が鳴る。
メイの頬を、巨大な尻尾が叩きつけた。

そのままの勢いで、一際目立つ太い竹へと衝突する。

『へぶっ...！？』

今のは少し、痛かった。
だが、『これでいい』。

メイが右手を槙へと伸ばす。
何か魔法が来ると勘違いしていた彼の腹を、黒刀が後ろから貫いた。
刀は更に深く突き刺さり、槙の身体を貫通してメイの手元へと収まる。

『ガハァッ...！！』

まるでテンニーンの『フルルカンガス』の様な使い方で、槙に一矢報いた。
口から血を垂らしながらも、景色が変わるのと同時に槙は微笑む。

『頑張れよな』と、聞こえた気がした。



メイは変身を解き、息を切らしながら地面に仰向けになって倒れる。
灼熱の太陽と、延々と続く黄色い砂。
砂漠だ。

「っはぁっ...！きっつ...！！」

この場所で三ヶ所目。
しかし既に体力は限界を迎えようとしていた。

「オイオイ、もうギブアップか？」

またもや懐かしい顔が、メイを覗き込む。

「祐希っ...さんっ！！」

長浜ナガハマ 祐希ユウキ。
彼もまた、メイを『造った』一人。

赤髪ツンツンヘアーで、良い感じのマッチョ。
タンクトップから覗く肌は、少し焼けて黒っぽい。

「ったく、仕方ねぇな。」

祐希が手をかざすと、治癒魔法が発動する。
メイの体力は全快した。

「あ、ありがとうございますっ！！！」

跳ね起きたメイは、頭を下げて礼を言う。
ポリポリと赤髪を掻きながら「別にいいよ。」と漏らす祐希。
緑のカーゴパンツに白のタンクトップ。
黒っぽい肌と赤髪が地味に映えている。

「まぁ俺でも二人抜きすれば疲れるしな。」

そう言いながら、魔法陣から黒色の鎚を引っ張り出した。
鎚の先端には棘鉄球のフレイルがついており、広斗や槙の物よりも少しばかり禍々しい。

「疲れるどころじゃないですよぉ...。」

不満そうに、メイも同じモノを取り出した。

その名はレスグラビトン。
一メートル程はある黒色の鎚は、重さを全く感じさせない。

「いきますよっ！！！」

メイが振りかぶって跳躍する。
足元はサラサラの砂漠で踏ん張りが効かないが、魔力を使えばどうとでもなる。

それを見て、祐希はレスグラビトンを地面へと叩きつけた。
舞い上がる砂塵。

視界を塞がれたメイは着地を試みるが、目の前へと棘鉄球が迫っていた。

辛うじて魔法陣の足場を造り、最低限の動きで交わす。

『パラディン・クエイク！！！』

その祐希の掛け声と共に、鉄球の棘が伸びてメイを襲った。
しかしそれは以前に一度見たことがある。

伸びる刺突を鉄球で防ぎ叩き落とし、そのまま棘鉄球を射出。
ガシャガシャと鎖が音を出しながら伸びていく。


祐希が居たであろう所に、巨大な鉄球が打ち込まれた。

ズドンッッッッ

「そんな下手くそなAIMだと当たらないぞ？」

居るはずの無い祐希が、メイの後ろに出現する。
鎚でメイを横から叩き落とした。